2021年1月28日木曜日

「パースの法則」は「当然」である(Ⅳ)。

(01)
10個の原始的規則、あるいは「定理」を用いて、つぎの連式を証明せよ(Using 10 primitive rules or theorems, prove the following sequent)。
{(P→Q)→P}→P ┤├{(P&~Q)∨P}→P
(ⅰ)
1   (1) {(P→ Q)→P}→P A
 2  (2)  (P&~Q)∨P    A
  3 (3)  (P&~Q)      A
  3 (4)~~(P&~Q)      3DN
  3 (5)~(~P∨ Q)      4ド・モルガンの法則
  3 (6) ~(P→ Q)      5含意の定義
  3 (7) ~(P→ Q)∨P    6∨I
   8(8)         P    A
   8(9) ~(P→ Q)∨P    8∨I
 2  (ア) ~(P→ Q)∨P    23789∨E
 2  (イ)  (P→ Q)→P    ア含意の定義
12  (ウ)            P 1イMPP
1   (エ) {(P&~Q)∨P}→P 2ウCP
(ⅱ)
1   (1)  {(P&~Q)∨ P}→P A
1   (2) ~{(P&~Q)∨ P}∨P 1含意の定義
 3  (3) ~{(P&~Q)∨ P}   A
 3  (4)  ~(P&~Q)&~P    3ド・モルガンの法則
 3  (5)  ~(P&~Q)       4&E
 3  (6)   ~P∨ Q        5ド・モルガンの法則
 3  (7)    P→ Q        6含意の定義
 3  (8)          ~P    4&E
 3  (9)   (P→ Q)&~P    78&I
 3  (ア)  {(P→ Q)&~P}∨P 9∨I
  イ (イ)              P A
  イ (ウ)  {(P→ Q)&~P}∨P イ∨I
1   (エ)  {(P→ Q)&~P}∨P 23アイウ∨E
1   (オ)~~{(P→ Q)&~P}∨P エDN
1   (カ)~{~(P→ Q)∨ P}∨P オ、ド・モルガンの法則
1   (キ) ~{(P→ Q)→ P}∨P カ含意の定義
1   (ク)  {(P→ Q)→ P}→P キ含意の定義
cf.
「含意の定義、ド・モルガンの法則」は、「定理theorem)」である。
(02)
10個の原始的規則のみを用いて、つぎの連式を証明せよ(Using only 10 primitive rules, prove the following sequent)。
{(P→R)→P}→P ┤├{(P&~R)∨P}→P
〔解答〕
(ⅰ)
1         (1) {(P→ R)→ P}→P A
 2        (2)  (P&~R)∨ P    A
  3       (3)   P&~R        A
   4      (4)   P→ R        A
  3       (5)   P           3&E
  34      (6)      R        45MPP
  3       (7)     ~R        3&E
  34      (8)   R&~R        67&I
  3       (9) ~(P→ R)       48RAA
  3       (ア) ~(P→ R)∨ P    9∨I
    イ     (イ)          P    A
    イ     (ウ) ~(P→ R)∨ P    イ∨I
 2        (エ) ~(P→ R)∨ P    23アイウ∨E
     オ    (オ)  (P→ R)&~P    A
      カ   (カ) ~(P→ R)       A
     オ    (キ)  (P→ R)       オ&E
     オカ   (ク) ~(P→ R)&
               (P→ R)       カキ&I
      カ   (ケ)~{(P→ R)&~P}   オクRAA
       コ  (コ)          P    A
     オ    (サ)         ~P    オ&E
     オ コ  (シ)       P&~P    コサ&I
       コ  (ス)~{(P→ R)&~P}   オシRAA
 2        (セ)~{(P→ R)&~P}   エカケコス∨E
        ソ (ソ)  (P→ R)       A
         タ(タ)         ~P    A
        ソタ(チ)  (P→ R)&~P    ソタ&I
 2      ソタ(ツ)~{(P→ R)&~P}&
              {(P→ R)&~P}   スチ&I
 2      ソ (テ)        ~~P    タツRAA
 2      ソ (ト)          P    テDN
 2        (ナ)  (P→ R)→ P    ソトCP
12        (ニ)             P 1ナMPP
1         (ヌ) {(P&~R)∨ P}→P 2ニCP
(ⅱ)
1       (1)  {(P&~R)∨ P}→P A
 2      (2)   (P→ R)→ P    A
  3     (3)  ~(P&~R)&~P    A
  3     (4)  ~(P&~R)       A
   5    (5)    P           A
    6   (6)      ~R        A
   56   (7)    P&~R        56&I
  356   (8)  ~(P&~R)&
              (P&~R)       47&I
  35    (9)     ~~R        68RAA
  35    (ア)       R        9DN
  3     (イ)    P→ R        5アCP
 23     (ウ)           P    2イMPP
  3     (エ)          ~P    3&E
 23     (オ)        P&~P    ウエ&I
 2      (カ)~{~(P&~R)&~P}   3オRAA
     キ  (キ) ~{(P&~R)∨ P}   A
      ク (ク)   (P&~R)       A
      ク (ケ)   (P&~R)∨ P    ク∨I
     キク (コ) ~{(P&~R)∨ P}&
             {(P&~R)∨ P}   キケ&I
     キ  (サ)  ~(P&~R)       クコRAA
       シ(シ)           P    A
       シ(ス)   (P&~R)∨ P    シ∨I
     キ シ(セ) ~{(P&~R)∨ P}&
             {(P&~R)∨ P}   キス&I
     キ  (ソ)          ~P    シセRAA
     キ  (タ)  ~(P&~R)&~P    サソ&I
 2   キ  (チ)~{~(P&~R)&~P}&
            {~(P&~R)&~P}   カタ&I
 2      (ツ)~~{(P&~R)∨ P}   キチRAA
 2      (テ)  {(P&~R)∨ P}   ツDN
12      (ト)              P 1テMPP
1       (ナ)  {(P→ R)→ P}→P 2トCP
従って、
(01)(02)により、
(03)
①{(P→ Q)→P}→P
②{(P&~Q)∨P}→P
③{(P→ R)→P}→P
④{(P&~R)∨P}→P
に於いて、
①=② であって、
③=④ である。
然るに、
(04)
命題計算では、パースの法則は {(P→Q)→P}→P のことを言う。この意味するところを書き出すと、命題Pについて、命題Qが存在して、「PならばQ」からPが真であることが従うときには、Pは真でなければならないとなる。とりわけ、Qとして偽を選んだ場合には、Pから偽が従うときは常にPが真であるならば、Pは真であるとなる(ウィキペディア)。
従って、
(03)(04)により、
(05)
①{(P→ Q)→P}→P
②{(P&~Q)∨P}→P
③{(P→ R)→P}→P
④{(P&~R)∨P}→P
に於いて、
①=② であって、
③=④ であって、
① は、「パースの法則」である。
然るに、
(06)
①{(P→ Q)→P}→P
③{(P→ R)→P}→P
に於いて、
① が、「パースの法則」である以上、
② も、「パースの法則」である。
従って、
(06)により、
(07)
①{(P→ Q)→P}→P
③{(P→ R)→P}→P
に於いて、
③ R=~Q
といふ「代入(Substitution)」を行ふと、
①{(P→ Q)→P}→P
③{(P→~Q)→P}→P
に於いて、
① は、「パースの法則」であって、
② も、「パースの法則」である。
従って、
(05)(06)(07)により、
(08)
①{(P→ Q)→P}→P
②{(P&~Q)∨P}→P
③{(P→~Q)→P}→P
④{(P& Q)∨P}→P
に於いて、
①=② であって、
③=④ であって、
① は、「パースの法則」であって、
③ も、「パースの法則」である。
従って、
(08)により、
(09)
「日本語」で言ふと、
①{(Pならば、 Qである)ならばP}ならばPである。
②{(Pであって、Qでない)か、または、Pである}ならば、Pである。
③{(Pならば、 Qでない)ならばP}ならばPである。
④{(Pであって、Qである)か、または、Pである}ならば、Pである。
に於いて、
①=② であって、
③=④ であって、
① は、「パースの法則」であって、
③ も、「パースの法則」である。
然るに、
(10)
①{(Pならば、Qである)ならばP}ならばPである。
③{(Pならば、Qでない)ならばP}ならばPである。
に於いて、
① は、「パースの法則」であって、
③ も、「パースの法則」である。
といふのであれば、
①{(Pならば、Qであっても、Qでなくとも)、Pならば}Pである。
③{(Pならば、Qでなくとも、Qであっても)、Pならば}Pである。
に於いて、
① は、「パースの法則」であって、
③ も、「パースの法則」である。
従って、
(09)(10)により、
(11)
①{(Pならば、 Qであっても、Qでなくとも)、Pならば}Pである。
②{(Pであって、Qでない)か、または、Pである}ならば、Pである。
③{(Pならば、 Qでなくとも、Qであっても)、Pならば}Pである。
④{(Pであって、Qである)か、または、Pである}ならば、Pである。
に於いて、
①=② であって、
③=④ であって、
① は、「パースの法則」であって、
③ も、「パースの法則」である。
然るに、
(12)
①{(Pならば、 Qであっても、Qでなくとも)、Pならば}Pである。
②{(Pであって、Qでない)か、または、Pである}ならば、Pである。
③{(Pならば、 Qでなくとも、Qであっても)、Pならば}Pである。
④{(Pであって、Qである)か、または、Pである}ならば、Pである。
に於いて、
① が、「恒に真」であることは、「当然」であり、
② が、「恒に真」であることは、「当然」であり、
③ が、「恒に真」であることは、「当然」であり、
④ が、「恒に真」であることは、「当然」である。
従って、
(11)(12)により、
(13)
「記号」で書くと、
①{(P→ Q)→P}→P
②{(P&~Q)∨P}→P
③{(P→~Q)→P}→P
④{(P& Q)∨P}→P
に於いて、
①=② であって、
③=④ であって、
① は、「パースの法則」であって、
③ も、「パースの法則」であって、
① が、「恒に真」であることは、「当然」であり、
② が、「恒に真」であることは、「当然」であり、
③ が、「恒に真」であることは、「当然」であり、
④ が、「恒に真」であることは、「当然」である。
従って、
(13)により、
(14)
①{(P→ Q)→P}→P≡{(Pならば、Qである)ならばP}ならばPである。
③{(P→~Q)→P}→P≡{(Pならば、Qでない)ならばP}ならばPである。
である所の、「パースの法則」が「恒真式(トートロジー)」であることは、「当然」である。
令和03年01月28日、毛利太。

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