(01)
今両虎共闘、其勢不俱生=
今両虎共闘、其勢不(俱生)⇒
今両虎共闘、其勢(俱生)不=
今両虎共に闘はば、其の勢ひ(俱には生)ず=
もし、二頭の虎が闘へば、成り行きとして、両方が、ともに生きることはない(どちらかが死ぬ)。
cf.
今ここで我々両雄が争ったならば、ことの成りゆきから二人は両立できないだろう。
(史記「刎頸之交」、日栄社 要説 十八史略・史記、1970年、155頁)
然るに、
(02)
(ⅰ)
1 (1)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x&生y)} A
1 (2) ∀y{虎a&虎y&闘ay→~(生a&生y)} 1UE
1 (3) 虎a&虎b&闘ab→~(生a&生b) 2UE
4 (4) 虎a&虎b A
5 (5) 闘ab A
45 (6) 虎a&虎b&闘ab 45&I
145 (7) ~(生a&生b) 36MPP
145 (8) ~生a∨~生b 7ド・モルガンの法則
145 (9) 生a→~生b 8含意の定義
14 (ア) 闘ab→(生a→~生b) 59CP
イ(イ) 闘ab& 生a A
イ(ウ) 闘ab イ&E
14 イ(エ) 生a→~生b アウMPP
イ(オ) 生a イ&E
14 イ(カ) ~生b エオMPP
14 (キ) 闘ab&生a→ ~生b イカCP
1 (ク) 虎a&虎b→(闘ab&生a→~生b) 4キCP
1 (ケ) ∀y{虎a&虎y→(闘ay&生a→~生y)} クUI
1 (コ)∀x∀y{虎x&虎y→(闘xy&生x→~生y)} ケUI
(ⅱ)
1 (1)∀x∀y{虎x&虎y→(闘xy&生x→~生y)} A
1 (2) ∀y{虎a&虎y→(闘ay&生a→~生y)} 1UE
1 (3) 虎a&虎b→(闘ab&生a→~生b) 2UE
4 (4) 虎a&虎b&闘ab A
4 (5) 虎a&虎b 4&E
14 (6) (闘ab&生a→~生b) 35MPP
4 (7) 闘ab 4&E
8 (8) 生a A
48 (9) 闘ab&生a 78&I
148 (ア) ~生b 69MPP
14 (イ) 生a→~生b 8アCP
14 (ウ) ~生a∨~生b イ含意の定義
14 (エ) ~(生a&生b) ウ、ド・モルガンの法則
1 (オ) 虎a&虎b&闘ab→~(生a&生b) 4エCP
1 (カ) ∀y{虎a&虎y&闘ay→~(生a&生y)} 2UI
1 (キ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x&生y)} カUI
従って、
(02)により、
(03)
① ∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x&生y)}
② ∀x∀y{虎x&虎y→(闘xy&生x→~生y)}
③ ∀x∀y{虎x&虎y→(闘yx&生y→~生x)}
に於いて、すなはち、
① すべてのxとyについて{xが虎でyも虎で、xとyが闘ふならば、(xが生きて、その上、yも生きる)といふことは無い}。
② すべてのxとyについて{xが虎でyも虎ならば、(xとyが闘ってxが生きるのであれば、yは死ぬ)}。
③ すべてのxとyについて{xが虎でyも虎ならば、(yとxが闘ってyが生きるのであれば、xは死ぬ)}。
に於いて、
①=②=③ であるものの、
この「等式」であれば、AIにも、「理解(?)」出来るかも知れない。
然るに、
(04)
この場合に、
虎=相如
虎=廉将軍
であることも、AIにも、「理解(?)」出来かも知れない。
然るに、
(05)
相如曰、
「夫以秦王之威、而相如廷叱之、辱其群臣。
相如雖駑、独畏廉将軍哉。
顧吾念之、彊秦之所以不敢加兵於趙者、徒以吾両人在也。
今両虎共闘、其勢不俱生。
吾所以為此者、以先国家之急、而後私讎也。」
の「全体」を、従って、
相如曰はく、
「夫れ秦王の威を以てしても、相如之を廷叱して、其の群臣を辱む。
相如駑なりと雖も、独り廉将軍を畏れんや。
顧だ吾之を念ふに、彊秦の敢へて兵を趙に加へざる所以の者は、徒だ吾が両人の在るを以てなり。
今両虎共に闘はば、其の勢ひ俱には生きざらん。
の「全体」を、AIが、「述語論理」に「翻訳」することは、恐らく『無理』である。
(06)
例へば、
其勢不俱生。
で使はれてゐる、
其の勢ひ=その成り行き。
などといふ「言葉」を、「述語論理」に翻訳することは、固より、「不可能」に決まってゐます。
(07)
皆さんが家庭で使っているコンピュータ、最近よく耳にする「人工知能」という言葉。歴史を紐解けば、推論の正しさを研究する論理学がなければ、コンピュータも人工知能研究もなかったかもしれません(佐野 勝彦 北海道大学大学院文学研究院哲学倫理学研究室 准教授)。
とのことなのですが、私自身は、AIのことを、何も分かってはゐません。
令和04年04月25日、毛利太。
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