(01)
⑤ 使{籍誠不[以〔畜( 子)憂( 寒)〕乱( 心)]有( 財)以済( 薬)}。
⑥ 使{籍誠不[以〔畜(妻子)憂(飢寒)〕乱(良心)]有(銭財)以済(医薬)}。
に於いて、
使{ }⇒{ }使
不[ ]⇒[ ]不
以〔 〕⇒〔 〕以
畜( )⇒( )畜
憂( )⇒( )憂
乱( )⇒( )乱
有( )⇒( )有
済( )⇒( )済
といふ「移動」を行ひ、「平仮名」を加へると、
⑤{籍をして誠に[〔( 子を)畜ひ(寒さを)憂ふるを〕以て( 心を)乱さ]不( 財)有りて以て( 薬を)済さ}使む。
⑥{籍をして誠に[〔(妻子を)畜ひ(飢寒を)憂ふるを〕以て(良心を)乱さ]不(銭財)有りて以て(医薬を)済さ}使む。
然るに、
(02)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(01)(02)により、
(03)
⑤ 使{籍誠不[以〔畜( 子)憂( 寒)〕乱( 心)]有( 財)以済( 薬)}。
⑥ 使{籍誠不[以〔畜(妻子)憂(飢寒)〕乱(良心)]有(銭財)以済(医薬)}。
に於ける、
⑤{ [ 〔 ( )( ) 〕( ) ]( )( ) }
⑥{ [ 〔 ( )( ) 〕( ) ]( )( ) }
といふ「括弧」は、
⑤ 使籍誠不以畜_子憂_寒乱_心有_財以済_薬。
⑥ 使籍誠不以畜妻子憂飢寒乱良心有銭財以済医薬。
といふ「漢文の補足構造」と、
⑤ 籍をして誠に 子を養ひ、寒さを憂ふるを以て 心を乱さず、 財有りて以て 薬を済さ使む。
⑥ 籍をして誠に妻子を養ひ、飢寒を憂ふるを以て良心を乱さず、銭財有りて以て医薬を済さ使む。
といふ「訓読の語順」を、表してゐる。
然るに、
(04)
に於いて、
① 籍誠 以
② 籍誠 子 寒 心 財 以 薬
③ 籍誠 以
④ 籍誠 妻 飢 良 銭 以 医
には、「返り点」が付いてゐない。
従って、
(04)により、
(05)
① 籍をして誠に子を養ひ、寒さを憂ふるを以て心を乱さず、財有りて以て薬を済さ使む。
② 籍をして誠に妻を養ひ、子、飢えを憂へずを以て、寒い、良を乱さず、心、銭有りて、財、以て医を済さしむ薬。
③ 籍をして誠に子を養ひ、寒さを憂ふるを以て心を乱さず、財有りて以て薬を済さ使む。
④ 籍をして誠に妻子を養ひ、飢寒を憂ふるを以て良心を乱さず、銭財有りて以て医薬を済さ使む。
といふ風に、「読む」ことになる。
然るに、
(06)
④ 籍をして誠に妻子を養ひ、飢寒を憂ふるを以て良心を乱さず、銭財有りて以て医薬を済さ使む。
といふ「訓読」に対して、
② 籍をして誠に妻を養ひ、子、飢えを憂へずを以て、寒い、良を乱さず、心、銭有りて、財、以て医を済さしむ薬。
といふ「訓読」は、「有り得ない」。
従って、
(03)~(06)により、
(07)
① 使乙 籍誠不下 以二 畜レ 子 憂一レ 寒 乱上レ 心 有レ 財 以済甲レ 薬。
③ 使人 籍誠不丙 以下 畜二 子一 憂中 寒上 乱乙 心甲 有二 財一 以済地 薬天。
④ 使人 籍誠不丙 以下 畜二 妻子一 憂中 飢寒上 乱乙 良心甲 有二 銭財一 以済地 医薬天。
⑤ 使{籍誠不[以〔畜( 子)憂( 寒)〕乱( 心)]有( 財)以済( 薬)}。
⑥ 使{籍誠不[以〔畜(妻子)憂(飢寒)〕乱(良心)]有(銭財)以済(医薬)}。
に於いて、
① は、「訓読の語順」を、表してゐる。
③と④ は、「漢文の補足構造」と「訓読の語順」を、表してゐる。
⑤と⑥ は、「漢文の補足構造」と「訓読の語順」を、表してゐる。
令和元年12月28日、毛利太。
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