2019年12月13日金曜日

「象は鼻が長い」といふ「日本語の論理」。

― しばらく、「返り点」に関する「記事」を書いてゐません。「返り点と括弧」に関しては、
(α)「返り点」と「括弧」に付いて。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_11.html
(β)「返り点」と「括弧」の条件。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_15.html
(γ)「返り点」と「括弧」の条件(Ⅱ):(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_16.html
(δ)「返り点」は、下には戻らない。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_20.html
(ε)「下中上点」等が必要な「理由」。:(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_22.html
(ζ)「返り点・モドキ」について。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_24.html)⇒
 Web上には存在しますが、何故か、アクセス出来ません。
(η)「一二点・上下点」に付いて。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_26.html
(θ)「括弧」の「順番」。      :(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post.html
(ι)「返り点」と「括弧」の関係   :(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html
等々、「その他」を、お読み下さい。―

(01)
① 象は鼻長い。然るに、
② 兎は耳長い。故に、
③ 兎は象ではない(Rabbits can not be elephants)。
といふ「推論」は、「妥当」である。
然るに、
(02)
① 象は鼻と耳が長い。然るに、
② 兎も鼻と耳が長い。故に、
③ 兎は象かも知れない(Rabbits may be elephants)。
といふ「推測」は、「マチガイ」ではない。
然るに、
(03)
① 象は鼻が長い。然るに、
② 兎は耳が長いが、兎の耳は鼻である。故に、
③ 象鼻が長い。故に、
④ 兎は象かも知れない(Rabbits may be elephants)。
といふ「推測」も、「マチガイ」ではない。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
① 象は鼻長い。然るに、
② 兎は耳長い。故に、
③ 兎は象ではない(Rabbits can not be elephants)。
といふ「推論」が「妥当」であるといふことは、は、「厳密」に言へば、
① 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。然るに、
② 兎は耳は長いが、耳以外は長くなく兎の耳は鼻ではない。故に、
③ 兎は象ではない(Rabbits can not be elephants)。
といふ「推論」が「妥当」であるといふことに、他ならない。
然るに、
(05)
1     (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}          A
 2    (2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(~耳zx→~長z&耳zx→~鼻zx)} A
  3   (3)∃x(象x&兎x)                               A
1     (4)   象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)           1UE
 2    (5)   兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(~耳za→~長z&耳za→~鼻za)  2UE
   6  (6)   象a&兎a                                A
   6  (7)   兎a                                   6&E
   6  (8)      兎a                                6&E
1  6  (9)      ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)           47MPP
 2 6  (ア)      ∃y(耳ya&長y)&∀z(~耳za→~長z&耳za→~鼻za)  58MPP
1  6  (イ)      ∃y(鼻ya&長y)                        9&E
    ウ (ウ)         鼻ba&長b                         A
1  6  (エ)                 ∀z(~鼻za→~長z)           9&E
1  6  (オ)                    ~鼻ba→~長b            エUE
 2 6  (カ)      ∃y(耳ya&長y)                        ア&E
     キ(キ)         耳ba&長b                         A
 2 6  (ク)                 ∀z(~耳za→~長z&耳za→~鼻za)  ア&E
 2 6  (ケ)                    ~耳ba→~長b&耳ba→~鼻ba   クUE
 2 6  (コ)                             耳ba→~鼻ba   ケ&E
     キ(サ)         耳ba                            キ&E
 2 6 キ(シ)                                 ~鼻ba   コサMPP
12 6 キ(ス)                         ~長b            オシMPP
    ウ (セ)             長b                         ウ&E
12 6ウキ(ソ)             長b&~長b                     シス&I 
12 6ウ (タ)             長b&~長b                     カキソEE 
12 6  (チ)             長b&~長b                     イウタEE
123   (ツ)             長b&~長b                     36チEE
12    (テ)~∃x(象x&兎x)                              3ツRAA
12    (ト)∀x~(象x&兎x)                              テ量化子の関係
12    (ナ)  ~(象a&兎a)                              トUE
12    (ニ)  ~象a∨~兎a                               ナ、ド・モルガンの法則
12    (ヌ)  ~兎a∨~象a                               ニ交換法則
12    (ネ)   兎a→~象a                               ヌ含意の定義
12    (ノ)∀x(兎x→~象x)                              ネUI
12    (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。            ネUI
12    (〃)兎は象ではない(Rabbits can not be elephants)。                 ネUI
従って、
(05)により、
(06)
1     (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}          A
 2    (2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(~耳zx→~長z&耳zx→~鼻zx)} A
12    (ノ)∀x(兎x→~象x)                              ネUI
といふ「推論」、すなはち、
      (1)象は鼻長い。然るに、
      (2)兎は耳長いが、兎の耳は鼻ではない。従って、
      (3)兎は象ではない(Rabbits can not be elephants)。 
といふ「推論」は、「妥当」である。
従って、
(01)~(06)により、
(07)
① 象は鼻長い。然るに、
② 兎は耳長い。故に、
③ 兎は象ではない(Rabbits can not be elephants)。
といふ「推論」は、「妥当」であると、するならば、その一方で、
① 象は鼻長い。⇔
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない}。
といふ「等式」を、「否定」することは、出来ない
然るに、
(08)
① 象は鼻長い。然るに、
② 兎は耳長い。故に、
③ 兎は象ではない(Rabbits can not be elephants)。
といふ「推論」は、明らかに、「妥当」である。
従って、
(07)(08)により、
(09)
三上章先生であらうと、金谷武洋先生であらうと、田中智恵子先生であらうと、
① 象は鼻長い。⇔
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない}。
といふ「等式」を、「否定」することは、出来ない
然るに、
(10)
(ⅰ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲は、問題になっている変数が現れる少なくとも2つの箇所を含むであろう(その1つの箇所は量記号そのもののなかにある);
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、183頁)
従って、
(10)により、
(11)
② 象は鼻長いが、象の鼻は耳ではない。⇔
② 象は鼻は長く、鼻以外は長くないが、象の鼻は耳ではない。⇔
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z&鼻zx→~耳zx)}⇔
② すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くないが、zはxの耳ではない。
に於いて、
② x=象
の「意味」は、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z&鼻zx→~耳zx)}。
といふ「論理式の全体」に及んでゐて、
② y=鼻
の「意味」は、
② ∃y(鼻yx&長y)
といふ「命題関数」だけにしか、及んでゐない。
従って、
(11)により、
(12)
② 象は鼻長いが、象の鼻は耳ではない。⇔
② 象は鼻は長いが、鼻以外は長くなく、象の鼻は耳ではない。⇔
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z&鼻zx→~耳zx)}⇔
② すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くないが、zはxの耳ではない。
といふ「命題(文)」に於ける、
②「語(MAIN WORD)」は、
② x=象 であって、
② y=鼻 ではない。
然るに、
(13)
③ 象は動物である。⇔
③ ∀x(象x→動物x)⇔
③ すべてのxについて、xが象であるならば。xは動物である。
といふ「命題(文)」に於いて、
③ 動物x=∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z&鼻zx→~耳zx)
といふ「代入(Substituition)」を行ふと、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z&鼻zx→~耳zx)}。
といふ「命題(文)」になる。
然るに、
(14)
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z&鼻zx→~耳zx)}。
に於いて、
③ ∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z&鼻zx→~耳zx)=動物x
といふ「代入(Substituition)」を行ふと、
③ ∀x(象x→動物x)。
といふ「命題(文)」になる。
従って、
(12)(13)(14)により、
(15)
③ ∀x(象x→動物x)。
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z&鼻zx→~耳zx)}。
に於いて、
③ ∀x(象x→ と
② ∀x{象x→ に、「区別」は無い
従って、
(15)により、
(16)
「述語論理(Predicate logic)」といふ「視点」からすれば、
③ 象は(動物である)。
② 象は{鼻は長いが、鼻以外は長くなく、象の鼻は耳ではない}。
に於いて、
③ 象は と、
② 象は に、「区別」は無い
然るに、
(17)
 象は 鼻長い。
「象」はこの文の主題です。「鼻は長い」は全体で「象の説明」を行っているという構造をしています。これがもし「象の鼻が長い」であれば、単に「象の鼻=長い」といっているだけで、「象」が主題となっているとは言えません。ところが、「象は鼻が長い」にすると、「象について言えば、鼻が長い」という意味になります。
(橋本陽介、日本語の謎を解く、2016年、141・142頁)
然るに、
(18)
③ すべてのxについて、xが象であるならば、xは動物である。⇔
すべての象について、象をxとするならば、xは動物である。⇔
③ ∀x(象x→動物x)⇔
③ 象は動物である。
従って、
(17)(18)により、
(19)
   「象は」は「(すべての)象について言えば、」という意味である。
「∀x{象x」は「(すべての)象について言えば、」という意味である。
然るに、
(20)
④ Elephants are animals.      ⇔
④ ∀x(ELEPHANTx→ANIMALx)⇔
For all x, if x is an elephant then x is an animal. ⇔
すべての象について、象をxとするならば、xは動物である。
従って、
(19)(20)により、
(21)
   「象は」は「(すべての)象について言えば、」という意味である。
Elephants」は「(すべての)象について言えば、」という意味である。
従って、
(17)(21)により、
(22)
   「象」が「主題」であるならば、
「Elephants」も「主題」である。
然るに、
(23)
② Elephants are animals.
に於いて、
② Elephants は「主語(Subject)」である。
従って、
(22)(23)により、
(24)
① 象動物である。
② Elephants are animals.
に於いて、
「Elephants」が「主語」であるならば、
   「象」も「主語」である。
然るに、
(25)
1   (1)∀x∀y{象x&鼻yx→長y&(~象x&鼻yx)→~長y} A
1   (2)  ∀y{象a&鼻ya→長y&(~象a&鼻ya)→~長y} 1UE
1   (3)     象a&鼻ba→長b&(~象a&鼻ba)→~長b  1UE
1   (4)     象a&鼻ba→長b                3&E
1   (5)               (~象a&鼻ba)→~長b  3&E
 6  (6)  ∀x{兎x→~象x&∃y(鼻yx)}          A
 6  (7)     兎a→~象a&∃y(鼻ya)           1UE
  8 (8)     兎a                       A
 68 (9)        ~象a&∃y(鼻ya)           78MPP
 68 (ア)        ~象a                   9&E
 68 (イ)            ∃y(鼻ya)           9&E
   ウ(ウ)               鼻ba            A
 68ウ(エ)        ~象a&鼻ba               アウ&I
168ウ(オ)                         ~長b  5エMPP
168ウ(カ)           鼻ba&~長b            ウオ&I
168ウ(キ)        ∃y(鼻ya&~長y)           カEI
168 (ク)        ∃y(鼻ya&~長y)           イウキEE
16  (ケ)     兎a→∃y(鼻ya&~長y)           8クCP
16  (コ)  ∀x{兎x→∃y(鼻yx&~長y)}          ケUI
従って、
(25)により、
(26)
(1)∀x∀y{象x&鼻yx→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
(6)  ∀x{兎x→~象x&∃y(鼻yx)}。
(コ)  ∀x{兎x→∃y(鼻yx&~長y)}。 
といふ「推論」、すなはち、
(1)すべてのxとyについて、xが象であり、yがxの鼻であるならば、yは長く、xが象ではなくて、yがxの鼻であるならば、yは長くない。
(6)すべてのxについて、  xが兎であるならば、xは象ではなく、あるyはxの鼻である。
(コ)すべてのxについて、  xが兎であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長くない。
といふ「推論」は、「妥当」である。
然るに、
(27)
(1)象の鼻_長い。 然るに、
(6)兎は象ではないが、鼻がある。 従って、
(コ)兎の鼻は長くない。
といふ「推論」は、「妥当」である。
然るに、
(28)
Q:Which nose is long ? Is it elephant's or rabbit's ?
A:象の鼻長い。
であって、
Q:Which nose is long ? Is it elephant's or rabbit's ?
A:象の鼻は長い。
ではない
然るに、
(28)
Q:Which nose is long ? Is it elephant's or rabbit's ?
A:象の鼻長い。
といふのであれば、
A:象の鼻長い=象の鼻は長く、象以外(兎の鼻)は長くない
といふことに、ならざるを得ない。
従って、
(25)~(28)により、
(29)
② 象の鼻長い。⇔
② 象の鼻は長く、象以外の鼻は長くない。⇔
② ∀x∀y{象x&鼻yx→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}⇔
② すべてのxとyについて{xが象であり、yがxの鼻であるならば、yは長く、xが象ではなくて、yがxの鼻であるならば、yは長くない}。
といふ「等式」が、成立する。
従って、
(07)(29)により、
(30)
① 象は鼻長い=象は鼻は長く、鼻以外は長くない
② 象の鼻長い=象の鼻は長く、象以外の鼻は長くない
といふ「等式」が、成立するものの、
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない
② 象の鼻は長く、象以外の鼻は長くない
のやうな「命題」を、「排他的命題(exclusive proposition)」といふ。
然るに、
(31)
③ お前言ふな。⇔
③(他の人間はともかく、なら)お前言ふな。⇔
③(他の人間はともかく、お前以外ではない所の)お前言ふな。
であるため、かうした「言ひ方」も、「排他的命題」であると、することが、出来る。
従って、
(01)~(31)により、
(32)
「~」といふ「日本語」は、第一義的に、「排他的命題の主語」を表す。
令和元年12月13日、毛利太。

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