2021年2月15日月曜日

「幾らかのフランス人は寛大である。」の「述語論理」(Ⅱ)。

(01)
「幾らかのフランス人は寛大である」を、正しく、
∃x(Fx&Gx)と記号化するかわりに、むしろ、
∃x(Fx→Gx)とするのは、よくある間違いである。しかし、
∃x(Fx→Gx)は、
それがフランス人であるならば、寛大であるようなものが存在することを主張するのであって、
これは、かりにフランス人が存在しないとしても真であろう。しかるに、
幾らかのフランス人は寛大である」は決してそうではない。
(E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、124頁)
然るに、
(02)
『定理』を用いて、次の連式を証明せよ(Using theorems, prove the following sequent)。
∃x(Fx→Gx)┤├ ∃x(~Fx)∨∃x(Gx)
(ⅰ)
1   (1) ∃x(Fx→Gx)     A
 2  (2)    Fa→Ga      A
 2  (3)   ~Fa∨Ga      2含意の定義
  4 (4)   ~Fa         A
  4 (5)∃x(~Fx)        4EI
  4 (6)∃x(~Fx)∨∃x(Gx) 5∨I
   7(7)       Ga      A
   7(8)    ∃x(Gx)     7EI
   7(9)∃x(~Fx)∨∃x(Gx) 8∨I
 2  (ア)∃x(~Fx)∨∃x(Gx) 24679∨E
1   (イ)∃x(~Fx)∨∃x(Gx) 12アEE
(ⅱ)
1    (1)∃x(~Fx)∨∃x(Gx) A
 2   (2)∃x(~Fx)        A
  3  (3)   ~Fa         A
  3  (4)   ~Fa∨Ga      3∨I
  3  (5)    Fa→Ga      4含意の定義
  3  (6) ∃x(Fx→Gx)     6EI
 2   (7) ∃x(Fx→Gx)     236EE
   8 (8)        ∃x(Gx) A
    9(9)           Ga  A
    9(ア)       ~Fa∨Ga  9∨I
    9(イ)        Fa→Ga  ア含意の定義
    9(ウ)     ∃x(Fx→Gx) イEI
   8 (エ)     ∃x(Fx→Gx) 89EE
1    (オ)     ∃x(Fx→Gx) 1278エ∨E
(03)
『定理』を用いずに、次の連式を証明せよ(Not using theorems, prove the following sequent)。
∃x(Fx→Gx)┤├ ∃x(~Fx)∨∃x(Gx)
(ⅰ)
1     (1) ∃x(Fx→Gx)     A
 2    (2)    Fa→Ga      A
  3   (3) ~(~Fa∨Ga)     A
   4  (4)   ~Fa         A
   4  (5)   ~Fa∨Ga      4∨I
  34  (6) ~(~Fa∨Ga)&
           (~Fa∨Ga)     35&I
  3   (7)  ~~Fa         46RAA
  3   (8)    Fa         7DN
 23   (9)       Ga      28MPP
 23   (ア)   ~Fa∨Ga      9∨I
 23   (イ) ~(~Fa∨Ga)&
           (~Fa∨Ga)     2ア&I
 2    (ウ)~~(~Fa∨Ga)     3イRAA
 2    (エ)   ~Fa∨Ga      ウDN
    オ (オ)   ~Fa         A
    オ (カ)∃x(~Fx)        オEI
    オ (キ)∃x(~Fx)∨∃x(Gx) カ∨I
     ク(ク)       Ga      A
     ク(ケ)    ∃x(Gx)     クEI
     ク(コ)∃x(~Fx)∨∃x(Gx) ケ∨I
 2    (サ)∃x(~Fx)∨∃x(Gx) 2オキクコ∨E
1     (シ)∃x(~Fx)∨∃x(Gx) 12サEE
(ⅱ)
1           (1)∃x(~Fx)∨∃x(Gx)  A
 2          (2)∃x(~Fx)         A
  3         (3)   ~Fa          A
  3         (4)   ~Fa∨Ga       3∨I
  3         (5)∃x(~Fa∨Ga)      4EI
 2          (6)∃x(~Fa∨Ga)      235EE
   7        (7)        ∃x(Gx)  A
    8       (8)           Ga   A
    8       (9)       ~Fa∨Ga   6∨I
    8       (ア)    ∃x(~Fx∨Gx)  9EI
   7        (イ)    ∃x(~Fx∨Gx)  78アEE
1           (ウ)    ∃x(~Fx∨Gx)  1267イ∨E
     エ      (オ)       ~Fa∨Ga   A
      カ     (カ)        Fa&~Ga  A
       キ   (キ)       ~Fa      A
      カ    (ク)        Fa      カ&E
      カキ   (ケ)       ~Fa&Fa   キク
       キ   (コ)      ~(Fa&~Ga) カケRAA
        サ  (サ)           Ga   A
      カ    (シ)           ~Ga  カ&E
      カ サ  (ス)        Ga&~Ga  サシ&I
        サ  (セ)      ~(Fa&~Ga) カスRAA
     エ     (ソ)      ~(Fa&~Ga) エキコサセ∨E
         タ (タ)        Fa      A
          チ(チ)           ~Ga  A
         タチ(ツ)        Fa&~Ga  タチ&I
     エ   タチ(テ)      ~(Fa&~Ga)&
                     (Fa&~Ga) ソツ&I
     エ   タ (ト)          ~~Ga  チテRAA
     エ   タ (ナ)            Ga  トDN
     エ     (ニ)         Fa→Ga  タナCP
     エ     (ヌ)      ∃x(Fx→Gx) ニEI
1          (ネ)      ∃x(Fx→Gx) ウエヌEE
従って、
(02)(03)により、
(04)
① ∃x(Fx→Gx)
② ∃x(~Fx)∨∃x(Gx)
に於いて、
①=② である。
従って、
(01)(04)により、
(05)
① ∃x(Fx→Gx)
② ∃x(~Fx)∨∃x(Gx)
に於いて、すなはち、
① ある人について(その人がフランス人であるならば、その人は寛大である)。
② ある人は(フランス人でない)か、または、ある人は(寛大である)。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(06)
② ある人は(フランス人でない)。
といふ「命題」が「真」であるならば、それだけで、
② ある人は(フランス人でない)か、または、ある人は(寛大である)。
といふ「命題」は「真」である。
従って、
(07)
② ある人が(ドイツ人であって)、その人が寛大である。
とすれば、
② ある人は(フランス人でない)か、または、ある人は(寛大である)。
といふ「命題」は「真」である。
然るに、
(08)
② ある人はドイツ人であって、その人は寛大である。
といふ「命題」は、
フランス人が存在しないとしても真である。
従って、
(01)~(08)により、
(09)
E.J.レモン が言ふやうに、
① ∃x(Fx→Gx)⇔
② ∃x(~Fx)∨∃x(Gx)
といふ「論理式」は、かりにフランス人が存在しない(even if there are no French)としても真である。
令和03年02月15日、毛利太。

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