(01)
8.2 日本語文法を見直して作文する
8.2.3 「象は鼻が長い」の文法論争
表題の文は、名詞二つ、助詞二つ、形容詞一つで構成されています。普通に読めば違和感を起こしませんが、それは文の意味論(semantics)の方を感覚的に理解しているからです。
したがって、「鼻は象が長い」「象の鼻は長い」と言い換えても、正しく理解されます。
従って、
(01)により、
(02)
① 鼻は象が長い。
② 象の鼻は長い。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(03)
② 象の鼻は長い。
③ 象の鼻が長い。
に於いて、
②=③ であるとは、「思へない」。
然るに、
(04)
{象、兎、馬}が{変域}であるならば、
① 鼻は象が長く、
② 耳は兎が長く、
③ 顔は馬が長い。
然るに、
(05)
{象、兎、馬}が{変域}であるならば、
① 象の鼻が長く、
② 兎の耳が長く、
③ 馬の顔が長い。
然るに、
(06)
1 (1)∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)} A
2 (2)∀x∃y(兎x→~象x&鼻yx) A
1 (3) ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(~象a&鼻ya→~長y)} 1UE
4 (4) (象a&鼻ba→長b)&(~象a&鼻ba→~長b) A
4 (5) ~象a&鼻ba→~長b 4&E
2 (6) ∃y(兎a→~象a&鼻ya) 2UE
7 (7) 兎a→~象a&鼻ba A
8(8) 兎a A
78(9) ~象a&鼻ba 78MPP
4 78(ア) ~長b 59MPP
78(イ) 鼻ba 9&E
4 78(ウ) 鼻ba&~長b アイ&I
4 7 (エ) 兎a→鼻ba&~長b 8ウCP
4 7 (オ) ∃y(兎a→鼻ya&~長y) エEI
24 (カ) ∃y(兎a→鼻ya&~長y) 67オEE
12 (キ) ∃y(兎a→鼻ya&~長y) 34カEE
12 (ク) ∀x∃y(兎x→鼻yx&~長y) キUI
従って、
(06)により、
(07)
(ⅰ)∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}。然るに、
(ⅱ)∀x∃y(兎x→~象x&鼻yx)。従って、
(ⅲ)∀x∃y(兎x→鼻yx&~長y)。
といふ「推論」、すなはち、
(ⅰ)すべてのxとあるyについて{(xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く)、(xが象ではなく、yがxの鼻であるならば、yは長くない)}。然るに、
(ⅱ)すべてのxとあるyについて( xが兎であるならば、xは象ではなく、yはxの鼻である)。従って、
(ⅲ)すべてのxとあるyについて( xが兎であるならば、yはxの鼻であって、yは長くない)。
といふ「推論」、すなはち、
(ⅰ)象の鼻は長く、象以外の鼻は長くない。然るに、
(ⅱ)兎は象ではないが、兎に鼻がある。従って、
(ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ「推論」は、「妥当」である。
然るに、
(08)
(ⅰ)鼻は象が長い。然るに、
(ⅱ)兎は象ではないが、兎に鼻がある。従って、
(ⅲ)兎の鼻は長くない。
といふ「推論」は、「妥当」である。
従って、
(07)(08)により、
(09)
① 鼻は象が長い。⇔
② 象の鼻は長く、象以外の鼻は長くない。⇔
③ ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}。⇔
④ すべてのxとあるyについて{(xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く)、(xが象ではなく、yがxの鼻であるならば、yは長くない)}。
といふ「等式」が、「成立」する。
然るに、
(10)
1 (1) ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2) ∀x{兎x→∃z(耳zx&~鼻zx&長z)} A
3 (3) ∃x(象x&兎x) A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻ax→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃z(耳za&~鼻za&長z) 2UE
6 (6) 象a&兎a A
6 (7) 象a 6&E
6 (8) 兎a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
1 6 (ア) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
1 6 (イ) ~象ba→~長b アUE
1 6 (ウ) 象ba∨~長b イ含意の定義
1 6 (エ) ~(~象ba& 長b) ウ、ド・モルガンの法則
1 6 (オ) ∀z~(~象za& 長z) エUI
1 6 (エ) ~∃z(~象za& 長z) オ量化子の関係
2 6 (オ) ∃z(耳za&~鼻za&長z) 57MPP
カ(カ) 耳ba&~鼻ba&長z A
カ(キ) ~鼻ba&長b カ&E
カ(ク) ∃z(~鼻ba&長b) キEI
2 6 (ケ) ∃z(~鼻ba&長b) オカクEE
12 6 (コ) ∃z(~鼻za&長z)&~∃z(~鼻za&長z) エケ&I
123 (サ) ∃z(~鼻za&長z)&~∃z(~鼻za&長z) 36コEE
12 (シ)~∃x(象x&兎x) 3サRAA
12 (ス)∀x~(象x&兎x) シ量化子の関係
12 (セ) ~(象a&兎a) スUE
12 (ソ) ~象a∨~兎a セ、ド・モルガンの法則
12 (タ) 象a→~兎a ソ、含意の定義
12 (チ)∀x(象x→~兎x) タUI
従って、
(10)により、
(11)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。然るに、
② ∀x{兎x→∃z(耳zx&~鼻zx&長z)}。従って、
③ ∀x(象x→~兎x)。
といふ「推論」、すなはち、
① すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは(xの鼻であり、長く)、すべてのzについて(zがxの鼻でないならば、zは長くない)}。然るに、
② すべてのxについて{xが兎であるならば、あるzは(xの耳であって、鼻ではないが、長い)}。従って、
③ すべてのxについて(xが象ならば、xは兎ではない)。
といふ「推論」、すなはち、
① 象は、鼻は長く、鼻以外は長くない。然るに、
② 兎の耳は、鼻ではないが、長い。従って、
③ 兎は象ではない。
といふ「推論」は、「妥当」である。
然るに、
(12)
① 象は鼻が長い。然るに、
② 兎の耳は長いが、耳は鼻ではない。従って、
③ 兎は象ではない。
といふ「推論」は、「妥当」である。
従って、
(11)(12)により、
(13)
① 象は鼻が長い。⇔
② 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。⇔
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。⇔
④ すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは(xの鼻であり、長く)、すべてのzについて(zがxの鼻でないならば、zは長くない)}。
といふ「等式」が、「成立」する。
従って、
(09)(13)により、
(14)
① 鼻は象が長い。
② 象は鼻が長い。
③ 象の鼻は長く、象以外の鼻は長くない。
④ 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
に於いて、
①=③ であって、
②=④ である。
従って、
(14)により、
(15)
① BはAがCである。
② AはBがCである。
③ AのBはCであり、A以外のBはCではない。
④ AはBはCであり、B以外はCではない。
に於いて、
①=③ であって、
②=④ である。
令和5年4月19日、毛利太。
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