(01)
1 (1) ∀x{象x→~∃z(~鼻zx&長z)} A
2 (2) ∀x{兎x→ ∃z(~鼻zx&長z)} A
1 (3) 象a→~∃z(~鼻za&長z) 1UE
2 (4) 兎a→ ∃z(~鼻za&長z) 2UE
5 (5) ~∀x(象x→~兎x) A
5 (6) ∃x~(象x→~兎x) 5量化子の関係
7(7) ~(象a→~兎a) A
7(8) ~(~象a∨~兎a) 7含意の定義
7(9) 象a& 兎a 8ド・モルガンの法則
7(ア) 象a 9&E
7(イ) 兎a 9&E
1 7(ウ) ~∃z(~鼻za&長z) 3アMPP
2 7(エ) ∃z(~鼻za&長z) 4イMPP
12 7(オ) ~∃z(~鼻za&長z)&
∃z(~鼻za&長z) イウ&I
125 (カ) ~∃z(~鼻za&長z)&
∃z(~鼻za&長z) 67オEE
12 (キ)~~∀x(象x→~兎x) 5カRAA
12 (ク) ∀x(象x→~兎x) キDN
従って、
(01)により、
(02)
① ∀x{象x→~∃z(~鼻zx&長z)}。然るに、
② ∀x{兎x→ ∃z(~鼻zx&長z)}。従って、
③ ∀x(象x→~兎x)。
といふ「演繹推理」は、「妥当」である。
然るに、
(03)
(演繹推理は)前提を追加しても結論は不変でよい。結論は前提が含むものだけを導出するのであるから、
新前提を加えても、これから新結論を引き出す必要はないからである(岩波全書、論理学入門、156頁)。
然るに、
(04)
① ∀x{象x→~∃z(~鼻zx&長z)}。
② ∀x{兎x→ ∃z(~鼻zx&長z)}。
に対して、
① ∃y(鼻yx&長y)
② 耳zx
を「追加」すると、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx&長z)}。
② ∀x{兎x→∃z(耳zx&~鼻zx&長z)}。
然るに、
(05)
1 (1) ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx&長z)} A
2 (2) ∀x{兎x→∃z(耳zx&~鼻zx&長z)} A
3 (3) ∃x(象x&兎x) A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&~∃z(~鼻za&長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃z(耳za&~鼻za&長z) 2UE
6 (6) 象a&兎a A
6 (7) 象a 6&E
6 (8) 兎a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&~∃z(~鼻za&長z) 47MPP
1 6 (ア) ~∃z(~鼻za&長z) 9&E
2 6 (イ) ∃z(耳za&~鼻za&長z) 58MPP
ウ(ウ) 耳ba&~鼻ba&長b A
ウ(エ) ~鼻ba&長b ウ&E
ウ(オ) ∃z(~鼻za&長z) エEI
2 6 (カ) ∃z(~鼻za&長z) イウオEE
12 6 (キ) ∃z(~鼻za&長z)&~∃z(~鼻za&長z) アカ&I
123 (ク) ∃z(~鼻za&長z)&~∃z(~鼻za&長z) 36キEE
12 (ケ)~∃x(象x&兎x) 3クRAA
12 (コ)∀x~(象x&兎x) ケ量化子の関係
12 (サ) ~(象a&兎a) コUE
12 (シ) ~象a∨~兎a サ、ド・モルガンの法則
12 (ス) 象a→~兎a シ含意の定義
12 (セ)∀x(象x→~兎x) スUI
従って、
(05)により、
(06)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx&長z)}。然るに、
② ∀x{兎x→∃z(耳zx&~鼻zx&長z)}。従って、
③ ∀x(象x→~兎x)。
といふ「演繹推理」、すなはち、
① すべてのxについて{もしそのxが象であるならば(yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い)が、あるzが(xの鼻以外であって、長い)といふことはない}。然るに、
② すべてのxについて{もしそのxが兎であるならば(yなるものが存在し、そのyは耳であり、xはyを所有しており、このyは長い)が、あるzは(xの鼻以外であって、長い)}。従って、
③ すべてのxについて(xが象であるならば、xは兎ではない)。
といふ「演繹推理」、すなはち、
① 象は鼻が長く、鼻以外は長くない。然るに、
② 兎の耳は鼻ではないが、長い。従って、
③ 象は兎ではない。
といふ「演繹推理」は「妥当」である。
従って、
(01)~(06)により、
(07)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx&長z)}。
② ∀x{兎x→∃z(耳zx&~鼻zx&長z)}。
といふ「命題」に「含まれる」、
① ∀x{象x→~∃z(~鼻zx&長z)}。
② ∀x{兎x→ ∃z(~鼻zx&長z)}。
といふ「命題」が、
③ ∃x(象x&兎x)。
といふ「命題」と「矛盾」するため、
① ∀x{象x→~∃z(~鼻zx&長z)}。
② ∀x{兎x→ ∃z(~鼻zx&長z)}。
といふ「命題」が「真」である限り、
③ ∃x(象x&兎x)。
が「偽」となり、その「結果」として、
③ ∀x(象x→~兎x)。
といふ「命題」が「真」になる。
従って、
(07)により、
(08)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx&長z)}。
② ∀x{兎x→∃z(耳zx&~鼻zx&長z)}。
といふ「命題」から、
① ~∃z(~鼻zx&長z)
といふ「命題(関数)」を「取り除いた」場合は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。然るに、
② ∀x{兎x→∃z(耳zx&~鼻zx&長z)}。従って、
③ ∀x(象x→~兎x)。
といふ「演繹推理」は、「妥当」ではない。
然るに、
(09)
沢田充茂の『現代論理学入門』(一九六ニ年)には楽しい解説が載っています。
・・・・・・たとえば「象は鼻が長い」というような表現は、象が主語なのか、鼻が主語なのかはっきりしないから、このままではその論理的構造が明示されていない。いわば非論理的な文章である、というひともある。しかしこの文の論理的な構造をはっきりと文章にあらわして「すべてのxについて、もしそのxが象であるならば、yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い」といえば・・・・・・たとえば動物園で象をはじめて見た小学生が、父親にむかってこのような文章で話しかけたとすれば、その子供は論理的であるといって感心されるまえに社会人としての常識をうたがわれるにきまっている。常識(すなはち共通にもっている情報)でわかっているものはいちいち言明の中にいれないで、いわば暗黙の了解事項として、省略し、できるだけ短い記号の組み合せで、できるだけ多くの情報を伝えることが日常言語の合理性の一つである。・・・・・・
(山崎紀美子、日本語基礎講座―三上文法入門、2003年、214頁)
従って、
(09)により、
(10)
「沢田先生」は、
① 象は鼻が長い。
といふ「日本語」を、
① すべてのxについて{もしそのxが象であるならば(yなるものが存在し、そのyは鼻であり、xはyを所有しており、このyは長い)が、あるzは(xの鼻以外であって、長い)といふことはない}。
といふ「意味」に、すなはち、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx&長z)}。
といふ「意味」ではなく、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}。
といふ「意味」に、「翻訳」してゐる。
従って、
(06)(10)により、
(11)
「沢田先生」の「誤訳」からすると、
① 象は鼻が長い。然るに、
② 兎の耳は鼻ではないが、長い。従って、
③ 象は兎ではない。
といふ「演繹推理」は、「妥当」ではない。
令和5年4月18日、毛利太。
0 件のコメント:
コメントを投稿