2019年8月10日土曜日

「象は鼻が長い」と「鼻は象が長い」の述語論理。

(01)
①{象の体の、各部分}を「変域(ドメイン)」とすると、
①「象の鼻は長く、象の鼻以外は長くない。」
従って、
(01)により、
(02)
① 象は鼻長い。⇔
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
(03)
②{象、兎、馬、キリン}を「変域(ドメイン)」とすると、
②「鼻は象が長く、耳は兎が長く、顔は馬が長く、首はキリンが長い。」
従って、
(03)により、
(04)
② 鼻は象が長い。⇔
② 鼻は象は長く、象以外(兎、馬、キリン)は長くない。⇔
② ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}⇔
② すべてのxとyについて、xがyの鼻であって、yが象であるならば、xは長く、xがyの鼻であって、yが象でないならば、xは長くない。
然るに、
(05)
(ⅰ)
1     (1)象は鼻長い。                        A
1     (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
 2    (2)兎の耳は長く、兎の耳は鼻ではない。              A
 2    (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
  3   (3)有る兎は象である。                      A
  3   (〃)∃x(兎x&象x)                      A
  3   (〃)あるxは兎であって象である。                 A
1     (4)   象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  1UE
 2    (5)   兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  1UE
   6  (6)   兎a&象a                       A
   6  (7)   兎a                          6&E
   6  (8)      象a                       6&E
1  6  (9)      ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  48MPP
 2 6  (ア)      ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  57MPP
1  6  (イ)      ∃y(鼻ya&長y)               9&E
 2 6  (ウ)      ∃y(耳ya&長y)               ア&E
    エ (エ)         鼻ba&長b                A
     オ(オ)         耳ba&長b                A
1  6  (カ)                 ∀z(~鼻za→~長z)  9&E
1  6  (キ)                    ~鼻ba→~長b   カUE
 2 6  (ク)                 ∀z(耳za→~鼻za)  ア&E
 2 6  (ケ)                    耳ba→~鼻ba   クUE
    オ (コ)                    耳ba        オ&E
 2 6オ (サ)                        ~鼻ba   ケコMPP
12 6オ (シ)                         ~長b   キサコMPP
    オ (ス)             長b                オ&E
12 6オ (セ)             長b&~長b            シス&I
12 6  (ソ)             長b&~長b            ウオセEE
123   (タ)             長b&~長b            36ソEE
12    (チ)~∃x(兎x&象x)                     3タRAA
12    (ツ)∀x~(兎x&象x)                     チ量化子の関係
12    (テ)  ~(兎a&象a)                     ツUE
12    (ト)  ~兎a∨~象a                      テ、ド・モルガンの法則
12    (ナ)   兎a→~象a                      ト含意の定義
12    (ニ)∀x(兎x→~象x)                     ナUI
12    (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。   ナUI
12    (〃)兎は象ではない。                       ナUI
(ⅱ)
1   (1)鼻は象長い。                         A
1   (〃)∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x} A
 2  (2)兎は象ではないが、兎には鼻がある。               A
 2  (〃)∃y∃x(兎y&~象y&鼻xy)                A
1   (3)  ∀y{(鼻ay&象y)→長a&(鼻ay&~象y)→~長a} 1UE
1   (4)     (鼻ab&象b)→長a&(鼻ab&~象b)→~長a  3UE
1   (5)                 (鼻ab&~象b)→~長a  4&E
  6 (6)  ∃x(兎b&~象b&鼻xb)                A
   7(7)     兎b&~象b&鼻ab                 A
   7(8)     兎b                         8&E
   7(9)        ~象b                     8&E
   7(ア)            鼻ab                 8&E
   7(イ)                  鼻ab&~象b       アイ&I
1  7(ウ)                           ~長a  4ウMPP
1  7(エ)     兎b&鼻ab                     9ア&I
1  7(オ)     兎b&鼻ab&~長a                 ウエ&I
1  7(カ)  ∃x(兎b&鼻xb&~長x)                オEI
1 6 (キ)  ∃x(兎b&鼻xb&~長x)                67カEE
1 6 (ク)∃y∃x(兎y&鼻xy&~長x)                キEI
12  (ケ)∃y∃x(兎y&鼻xy&~長x)                26クEE
12  (〃)あるyは兎であって、あるxはyの鼻であって、xは長くない。   26クEE
12  (〃)鼻が短い兎がゐる。                       26クEE
って、
(01)~(05)により、
(06)
それぞれ、
① 象は鼻長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 鼻は象長い=∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}。
といふ「等式」が、成立する。
然るに、
(07)
② 鼻は象長い=∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}。
であるならば、
③ 象は鼻長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
であっても、良いのではと、思はれるかも、知れない。
然るに、
(08)
③ 象は鼻が長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
に於いて、「左辺」である、
③ 象は鼻長い。
といふ「日本語」は、
③{象以外の動物}に関しては、「何も、述べてはゐない」。
然るに、
(09)
③ 象は鼻長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
に於ける、「右辺」である、
③ ∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
の場合は、
③                  (~象x&鼻yx)→~長y=象以外の動物の鼻は長くない
に於いて、
③{象以外の動物}に、「言及してゐる」。
従って、
(08)(09)により、
(10)
③ 象は鼻が長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
の場合は、
③「左辺」「右辺」 であって、
③「左辺」=「右辺」 ではない
従って、
(06)~(10)により、
(11)
① 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 鼻は象が長い=∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}。
③ 象は鼻が長い=∀x∀y{(象x&鼻yx)→長y&(~象x&鼻yx)→~長y}。
に於いて、
① は、「正しく」、
② も、「正しく」、
③ は、「正しくはない」。
従って、
(12)
① 象は鼻が長い。
② 鼻は象が長い。
といふ「日本語」の「論理構造」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② ∀x∀y{(鼻xy&象y)→長x&(鼻xy&~象y)→~長x}。
といふ風に、「同じ」ではない
然るに、
(13)
① 象は鼻が長い。
② 鼻は象が長い。
に於いて、
①「述語」は「長い」であって、
②「述語」は「長い」である。
然るに、
(14)
① 象は鼻が長い。
② 鼻は象が長い。
に於いて、
①「長い」のは、「象は」ではなく、「鼻が」であって、
②「長い」のは、「象が」ではなく、「鼻は」である。
然るに、
(15)
学校文法は単純な英語文法からの輸入で、主語・述語関係を単純に当てはめたものだ。そのため、「象は、鼻が長い」という単純な文でさえ、どれが主語だか指摘できず、複数主語だとか、主語の入れ子だとか、奇矯な技を使う。これに対して三上は、日本語には主語はない、とする。「象」は、テーマを提示する主題であり、これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する(この場合は「長い」までをスコープとする)。また、「鼻」は主格の補語にすぎなく、数ある補語と同じ格であるとする。基本文は述語である「長い」だけだ(三上文法! : wrong, rogue and log)。
従って、
(14)(15)により、
(16)
① 象は鼻が長い。
に於いて、
①「鼻」が、「長い」に対する「主格の補語」であるならば、
②「鼻」は、「長い」に対する「主格の補語」でなければ、ならない。
従って、
(15)(16)により、
(17)
三上章先生が言ふやうに、単純に、
「~」は「主題は」であって、
「~」は「主格は」である。といふことには、ならない。
(18)
Antonius(主格) amabat(動詞) Cleopatram=アントニウス(主語、クレオパトラ愛してゐた。
Antonium amabat(動詞) Cleopatra(主格) =アントニウス、クレオパトラ(主語愛してゐた。
従って、
(18)により、
(19)
「ラテン語」等に於いて、「一番簡単な、主格の定義」は、
「述語動詞の主語」を「指定」するのが「主格」である。といふことになる。
従って、
(18)(19)により、
(20)
Antonius(主格) amabat(動詞) Cleopatram=アントニウス(主語、クレオパトラを愛してゐた。
Antonium amabat(動詞) Cleopatra(主格) =アントニウスを、クレオパトラ(主語愛してゐた。
の場合は、「主語とは、すなはち、主格である。」
従って、
(21)
主語」と「主格」が「別のもの」である。といふ「前提」が、私には良く分からない。
令和元年08月10日、毛利太。

0 件のコメント:

コメントを投稿