2019年8月17日土曜日

「聖人所不知未必不為愚人所知也」の「述語論理」。

(01)
(ⅰ)
1  (1)~∀x{∃y(聖人y&~知yx)→ ∀z(愚人z→~知zx)} A
1  (〃)すべてのxについて、あるyが聖人であって、yがxを知らなければ、すべてのzについて、zが愚人であるならば、zはxを知らない。といふわけではない。
1  (2)∃x~{∃y(聖人y&~知yx)→ ∀z(愚人z→~知zx)} 1含意の定義
 3 (3)  ~{∃y(聖人y&~知ya)→ ∀z(愚人z→~知za)} A
 3 (4) ~{~∃y(聖人y&~知ya)∨ ∀z(愚人z→~知za)} 3含意の定義
 3 (5)    ∃y(聖人y&~知ya)&~∀z(愚人z→~知za)  4ド・モルガンの法則
 3 (6)    ∃y(聖人y&~知ya)                5&E
 3 (7)                 ~∀z(愚人z→~知za)  5&E
 3 (8)                 ∃z~(愚人z→~知za)  7量化子の関係
  9(9)                   ~(愚人c→~知ca)  A
  9(ア)                  ~(~愚人c∨~知ca)  9含意の定義
  9(イ)                     愚人c& 知ca   ア、ド・モルガンの法則
  9(ウ)                  ∃z(愚人c& 知za)  イEI
 3 (エ)                  ∃z(愚人c& 知za)  89ウEE
 3 (オ)    ∃y(聖人y&~知ya)& ∃z(愚人c& 知za)  6エ&I
1  (カ)    ∃y(聖人y&~知ya)& ∃z(愚人c& 知za)  23オEE
1  (キ) ∀x{∃y(聖人y&~知yx)& ∃z(愚人c& 知zx)} カUI
1  (〃)いかなるxであっても、xを知らない聖人が存在し、xを知ってゐる愚人が存在する。
(ⅱ)
1  (1) ∀x{∃y(聖人y&~知yx)& ∃z(愚人c& 知zx)} A
1  (2)    ∃y(聖人y&~知ya)& ∃z(愚人c& 知za)  1UE
1  (3)    ∃y(聖人y&~知ya)                2&E
1  (4)                  ∃z(愚人c& 知za)  2&E
 5 (5)                     愚人c& 知ca   A
 5 (6)                  ~(~愚人c∨~知ca)  5ド・モルガンの法則
 5 (7)                   ~(愚人c→~知ca)  6含意の定義
 5 (8)                 ∃z~(愚人c→~知za)  7EI
 5 (9)                 ~∀z(愚人c→~知za)  8量化子の関係
1  (ア)                 ~∀z(愚人c→~知za)  459EE
1  (イ)    ∃y(聖人y&~知ya)&~∀z(愚人c→~知za)  3ア&I
1  (ウ) ~{~∃y(聖人y&~知ya)∨ ∀z(愚人z→~知za)} イ、ド・モルガンの法則
1  (エ)  ~{∃y(聖人y&~知ya)→ ∀z(愚人z→~知za)} ウ含意の定義
1  (オ)∃x~{∃y(聖人y&~知ya)→ ∀z(愚人z→~知za)} エEI
1  (カ)~∀x{∃y(聖人y&~知yx)→ ∀z(愚人z→~知zx)} オ量化子の関係
1  (〃)すべてのxについて、あるyが聖人であって、yがxを知らなければ、すべてのzについて、zが愚人であるならば、zはxを知らない。といふわけではない。
従って、
(01)により、
(02)
① ~∀x{∃y(聖人y&~知yx)→ ∀z(愚人z→~知zx)}
②   ∀x{∃y(聖人y&~知yx)& ∃z(愚人c& 知zx)}
に於いて、すなはち、
① すべてのxについて、あるyが聖人であって、yがxを知らなければ、すべてのzについて、zが愚人であるならば、zはxを知らない。といふわけではない。
② いかなるxであっても、xを知らない聖人が存在し、xを知ってゐる愚人が存在する。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(03)
③ 聖人所知未必不一レ愚人所一レ知也=
③ 聖人所〔不(知)〕未〈必不{為[愚人〔所(知)〕]}〉也⇒
③ 聖人〔(知)不〕所未〈必{[愚人〔(知)所〕]為}不〉不也=
③ 聖人の〔(知ら)不る〕所未だ〈必ずしも{[愚人の〔(知る)所と〕]為さ}不んば〉あら不る也。
然るに、
(04)
[訳]聖人の知らないことでも、必ずしも愚人が知らないとは限らない(愚人が既に知っている場合もある)。
(教学社、風呂で覚える漢文、1998年、26頁)
然るに、
(05)
② いかなるxであっても、xを知らない聖人が存在し、xを知ってゐる愚人が存在する。
③ 聖人の知らないことでも、必ずしも愚人が知らないとは限らない。
に於いて、
②=③ ではない。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
① ~∀x{∃y(聖人y&~知yx)→∀z(愚人z→~知zx)}
③ 聖人所知未必不一レ愚人所一レ知也。
に於いて、
①=③ ではない。
(07)
良くは知らないものの、あるいは、
③ 聖人所知未必不一レ愚人所一レ知也。⇔
③ 聖人の知らないことでも、必ずしも愚人が知らないとは限らない。
のやうな「命題」を「翻訳」する場合は、「様相論理学」が用ひられるのかも知れない。
令和元年08月17日、毛利太。

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