2020年11月5日木曜日

「ルカジェヴィッツの公理(1)」と「実質含意のパラドックス」。

(01)
①  P
② ~P&Q
に於いて、すなはち、
① Pである
② Pでないが、Qである。
に於いて、
①と② は「矛盾」する。
従って、
(01)により、
(02)
①  P
② ~P&Q
に於いて、
① が「真(本当)」であるならば、
② は「偽(ウソ)」であって、
② が「偽(ウソ)」であるといふことは、
② の「否定」、すなはち、
② ~(~P&Q) が「(本当)」である。
といふことである。
然るに、
(03)
「・・・・・という仮定が与えられたならば、・・・・・と正しく結論することが出来る」という煩雑な表現の略記法があれば好都合であろう。このためにわたしは、論理学の文献のなかでしばしば、しかし誤解を招きやすい仕方で、断定記号(assertion-sign)とよばれている記号、
 
を導入する。これは「故に」(therefore)と読むのが便利であろう。
従って、
(02)(03)により、
(04)
① P├ ~(~P&Q)
といふ「連式(Sequent)」は、「妥当」である。
然るに、
(05)
(ⅰ)
1   (1)     P  A
1   (2)  ~Q∨P  1∨I
 3  (3)  ~P&Q  A
  4 (4)  ~Q    A
 3  (5)     Q  3&E
 34 (6)  ~Q&Q  45&I
  4 (7)~(~P&Q) 36RAA
   8(8)     P  A
 3  (9)  ~P    3&E
 3 8(ア)  ~P&P  89&I
   8(イ)~(~P&Q) 3アRAA
1   (ウ)~(~P&Q) 2478イ∨E
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
「命題計算」の「結果」からも、
① P├ ~(~P&Q)
といふ「連式(Sequent)」は、すなはち、
① Pなので、(Pでなくて、Qである)といふことはない。
といふ「言ひ方」は、「妥当」である。
然るに、
(07)
(ⅱ)
1      (1)        P   A
(ⅲ)
1      (2)     ~Q∨P   1∨I
(ⅳ)
 3     (3)     ~P&Q   A
  4    (4)     ~Q     A
 3     (5)        Q   3&E
 34    (6)     ~Q&Q   45&I
  4    (7)   ~(~P&Q)  36RAA
   8   (8)        P   A
 3     (9)     ~P     3&E
 3 8   (ア)     ~P&P   89&I
   8   (イ)   ~(~P&Q)  3アRAA
1      (ウ)   ~(~P&Q)  2478イ∨E
    エ  (エ)     ~P     A
     オ (オ)        Q   A
    エオ (カ)     ~P&Q   エオ&I
1   エオ (キ)   ~(~P&Q)&
              (~P&Q)  ウカ&I
1   エ  (ク)       ~Q   オキRAA
1      (ケ)    ~P→~Q   エクCP
(ⅴ)
       (コ) P→(~P→~Q)  1ケCP
      サ(サ) P& ~P      A
      サ(シ) P          サ&E
      サ(ス)    ~P→~Q   コシMPP
      サ(セ)    ~P      サ&E
      サ(ソ)       ~Q   スセMPP
       (タ)(P&~P)→~Q   サソCP
従って、
(07)により、
(08)
② P├  P
③ P├ ~Q∨P
④ P├ ~P→~Q
⑤  ├ (P&~P)→~Q
といふ「連式(Sequents)」は、3つとも、「妥当」である。
従って、
(03)(08)により、
(09)
②  Pなので、Pである。
③  Pなので、Qでないか、または、Pである。
④  Pなので、 Pでない ならば、Qでない。
⑤(Pであって、Pでない)ならば、Qでない。
といふ「言ひ方」は、4つとも、「妥当」である。
然るに、
(09)により、
(10)
③ Pなので、Qでないか、または、Pである。
といふ「言ひ方」は、「奇異」である。
然るに、
(09)により、
(11)
② Pなので、Pである。
といふことからするれば、
③ Pなので、Qでないか、または、Pである。
に於いて、
② P の「真・偽」は、「」として「確定」であるが、
② Q の「真・偽」は、「不明」である。
従って、
(08)~(11)により、
(12)
③ P├ ~Q∨P
③ Pなので、Qでないか、または、Pである。
といふことは、実際には、
③ Pであるが、Qでないか、Qであるかは、分からない
といふ「意味」になる。
(13)
④ Pなので、Pでないならば、Qでない。
といふ「言ひ方」も、「奇異」である。
然るに、
(09)(12)(13)により、
(14)
③  Pであるが、Qでないか、Qであるかは、分からない
⑤(Pであって、Pでない)ならば、Qでない。
といふことからすると、
④ Pなので、Pでないならば、Qでない。
といふ「言ひ方」は、
④「P&~P(矛盾)」を認めるならば、「任意の命題」が、「」になってしまふ。
が故に、
④「P&~P(矛盾)」を認めるべきではない
といふ「意味」に、解することが出来る。
(15)
(ⅴ)
1     (1)     P   A
1     (2)  ~Q∨P   1∨I
 3    (3)  ~P&Q   A
  4   (4)  ~Q     A
 3    (5)     Q   3&E
 34   (6)  ~Q&Q   45&I
  4   (7)~(~P&Q)  36RAA
   8  (8)     P   A
 3    (9)  ~P     3&E
 3 8  (ア)  ~P&P   89&I
   8  (イ)~(~P&Q)  3アRAA
1     (ウ)~(~P&Q)  2478イ∨E
    エ (エ)  ~P     A
     オ(オ)     Q   A
    エオ(カ)  ~P&Q   エオ&I
1   エオ(キ)~(~P&Q)&
          (~P&Q)  ウカ&I
1    オ(ク)   ~~P   オキRAA
1    オ(ケ)     P   クDN
1     (コ)   Q→P   オケCP
      (サ)P→(Q→P)  1コCP
従って、
(11)(12)(15)により、
(16)
⑤├ P→(Q→P)
といふ「連式」と、
⑤ Pであるならば(Qであるか、Qでないかは、不明であるが、いづれにせよ、Pである。)
といふ「言ひ方」は、「妥当」である。
然るに、
(17)
⑤ Pであるならば(Qであるか、Qでないかは、不明であるが、いづれにせよ、Pである。)
といふことは。
⑤ Pであるならば(Qであらうと、Qでなからうと、いづれにせよ、Pである。)
といふ、ことである。
従って、
(16)(17)により、
(18)
⑤├ P→(Q→P)
といふ「連式」は、
⑤ Pであるならば(Qであらうと、Qでなからうと、いづれにせよ、Pである。)
といふ「意味」になる。
然るに、
(19)
例えば以下の二つの条件文は全て「古典論理」においてはであるが、我々はであるとは考えない
「1+1=」ならば「雪は白い」
「1+1=」ならば「雪は白い」
この我々が普段使用する「ならば」と「古典論理」における実質含意(質料含意ともいふ)の乖離が「実質含意のパラドクス」である。
(ウィキペディア改)
然るに、
(18)(19)により、
(20)
⑤├ P→(Q→P)
⑤├ Pであるならば(Qであらうと、Qでなからうと、いづれにせよ、Pである。)
である所の、「ルカジェヴィッツによる公理(1)」からすると、
⑤「雪が白い」ならば(「1+1=」であらうと、「1+1=」であらうと、いづれにせよ、「雪は白い」。)
は、「恒真式(トートロジー)」である。
然るに、
(21)
 ルカジェヴィッツによる公理
(1) P→(Q→P)
(2){P→(Q→R)}→{(P→Q)→(P→R)}
(3)(~P→~Q)→(Q→P)
(これはフレーゲが提出した6つの公理をより簡単にしたものである。)
(沢田允茂、現代論理学入門、1962年、173頁)
といふ「ルカジェヴィッツによる公理」は、「古典論理」である。
従って、
(20)(21)により、
(22)
⑤├ P→(Q→P)
⑤├ Pであるならば(Qであらうと、Qでなからうと、いづれにせよ、Pである。)
である所の、「古典論理の公理」からしても、
⑤「雪が白い」ならば(「1+1=」であらうと、「1+1=」であらうと、いづれにせよ、「雪は白い」。)
といふ「命題」は「真」になるため、
「1+1=」ならば「雪は白い」
「1+1=」ならば「雪は白い」
といふ「二つの条件文」が「同時に、真」であることは、「パラドックス」であるとは、言へない
然るに、
(23)
1     (1)     ~P   A
1     (2)  ~Q∨~P   1∨I
 3    (3)  ~~P&Q   A
  4   (4)   ~Q     A
 3    (5)      Q   3&E
 34   (6)   ~Q&Q   45&I
  4   (7) ~(~~P&Q) 36RAA
   8  (8)     ~P   A
 3    (9)   ~~P    3&E
 3 8  (ア)   ~~P&~P 89&I
   8  (イ) ~(~~P&Q) 3アRAA
1     (ウ) ~(~~P&Q) 2478イ∨E
    エ (エ)   ~~P    A
     オ(オ)      Q   A
    エオ(カ)   ~~P&Q  エオ&I
1   エオ(キ) ~(~~P&Q)&
           (~~P&Q) ウカ&I
1    オ(ク)    ~~~P  オキRAA
1    オ(ケ)      ~P  クDN
1     (コ)    Q→~P  オケC~P
      (サ)~P→(Q→~P) 1コC~P
従って、
(22)(23)により、
(24)
⑤├  P→(Q→P)
⑤├  Pであるならば(Qであらうと、Qでなからうと、いづれにせよ、Pである。)
が、「公理(恒真式)」である以上、
⑥├ ~P→(Q→~P)
⑥├  Pでないならば(Qであらうと、Qでなからうと、いづれにせよ、Pでない。)
も、「公理(恒真式)」である。
従って、
(22)(24)により、
(25)
⑤「雪が白い  」ならば(「1+1=」であらうと、「1+1=」であらうと、いづれにせよ、「雪は白い  」。)
⑥「雪が白くない」ならば(「1+1=」であらうと、「1+1=」であらうと、いづれにせよ、「雪は白くない」。)
といふ「仮言命題」は、2つとも「」であるため、
「1+1=5」ならば「雪は白い」
「1+1=2」ならば「雪は白い」
「1+1=5」ならば「雪は黒い
といふ「三つの条件文」が「同時に、真」であることは、「パラドックス」であるとは、言へない
令和02年11月05日、毛利太。

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