2022年7月20日水曜日

「天下英雄唯君与我」の「述語論理」(Ⅱ)。

(01)
1      (1)∃x∃y{(君x&英雄x)&(我y&英雄y)&(x≠y)&∀z[英雄z→(z=x)∨(z=y)]} A
 2     (2)  ∃y{(君a&英雄a)&(我y&英雄y)&(a≠y)&∀z[英雄z→(z=a)∨(z=y)]} A
  3    (3)     (君a&英雄a)&(我b&英雄b)&(a≠b)&∀z[英雄z→(z=a)∨(z=b)   A
  3    (4)      君a                                          3&E
  3    (5)               我b                                 3&E
  3    (6)                             ∀z[英雄z→(z=a)∨(z=b)   3&E
  3    (7)                                英雄c→(c=a)∨(c=b)   6UE
   8   (8)  ∃z(~君z&~我z&彼z)                                  A
    9  (9)     ~君c&~我c&彼c                                   A
    9  (ア)     ~君c                                          9&E
  3 9  (イ)      君a&~君c                                      4ア&I
     ウ (ウ)       c=a                                        A
  3 9ウ (エ)      君a&~君a                                      イウ=E
  3 9  (オ)       c≠a                                        ウエRAA
    9  (カ)         ~我c                                      9&E
  3 9  (キ)         ~我c&我b                                   5カ&I
      ケ(ケ)           c=b                                    A
  3 9 ケ(コ)         ~我b&我b                                   キケ=E
  3 9  (サ)           c≠b                                    ケコRAA
  3 9  (シ)    (c≠a)&(c≠b)                                   オサ&I
  3 9  (ス)  ~{(c=a)∨(c=b)}                                  シ、ド・モルガンの法則
  3 9  (セ)                               ~英雄c               7スMTT
    9  (ソ)             彼c                                   9&E
  3 9  (タ)             彼c&~英雄c                              セソ&I
  3 9  (チ)          ∃z(彼z&~英雄z)                             タEI
  38   (ツ)          ∃z(彼z&~英雄z)                             89チEE
 2 8   (テ)          ∃z(彼z&~英雄z)                             23ツEE
1  8   (ト)          ∃z(彼z&~英雄z)                             12テEE
従って、
(01)により、
(02)
(ⅰ)∃x∃y{(君x&英雄x)&(我y&英雄y)&(x≠y)&∀z[英雄z→(z=x)∨(z=y)]}。然るに、
(ⅱ)  ∃z(~君z&~我z&彼z)。                                 従って、
(ⅲ)  ∃z(彼z&~英雄z)。
といふ「推論」、すなはち、
(ⅰ)あるxとyについて{(xは君であって、xは英雄であって)、(yは我であって、yは英雄であって)、(xとyは別人であって)、すべてのzについて[zが英雄であるならば(zはxであるか)、または(zはyである)]}。然るに、
(ⅱ)∃zについて(zは君ではなく、zは我ではなく、zは彼である)。従って、
(ⅲ)∃zについて(zは彼であって、zは英雄ではない)。
といふ「推論」は、「妥当」である。
従って、
(02)により、
(03)
(ⅰ)英雄唯君与我(英雄は君と私だけである)。 然るに、
(ⅱ)彼非君彼非我(彼は君ではなく私でもない)。従って、
(ⅲ)彼非英雄(彼は英雄ではない)。
といふ「推論」は、「述語論理」としても「妥当」である。
然るに、
(04)
人称名詞(にんしょうだいめいし)とは、話し手、受け手、および談話の中で指定された人や物を指す代名詞である。
一般に、話し手を指す一人称、受け手を指す二人称、それ以外の人、物を指す三人称に分けられ、数が区別されることが多い。一部の言語では性も区別する。
(ウィキペディア)
従って、
(04)により、
(05)
「君・我・彼」は、普通は、「人称代名詞」である。
然るに、
(01)~(03)により、
(06)
∃x∃y{(君x&英雄x)&(我y&英雄y)&(x≠y)&∀z[英雄z→(z=x)∨(z=y)]},∃z(~君z&~我z&彼z)├ ∃z(彼z&~英雄z)
に於いて、
「君・我・彼」は、「述語文字」であって、
「x・y・z」は、「変数」である。
然るに、
(07)
変数という記号を採用ることがいかに有効であるかは、進むにつれて次第に明らかになる。さしあたりそれは、代名詞「それ」(it)に似たようなはたらきをするものと考えれば十分であろう。
(E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、121頁)
従って、
(06)(07)により、
(08)
∃x∃y{(君x&英雄x)&(我y&英雄y)&(x≠y)&∀z[英雄z→(z=x)∨(z=y)]}
に於いては、
「x・y・z(変数)」こそが、「代名詞(的)」であって、
(述語)」に関しては、むしろ「普通名詞」である。
然るに、
(09)
「日本語に即した文法の樹立を」を目指すわれわれは「日本語で人称代名詞と呼ばれているものは、実は名詞だ」と宣言したい。どうしても区別したいなら「人称名詞」で十分だ。日本語の「人称代名詞」はこれからは「人称名詞」と呼ぼう(金谷武洋、日本語文法の謎を解く、2003年、40・41頁)。
従って、
(03)(08)(09)により、
(10)
「金谷武洋先生の説」に従ふならば、
(ⅰ)英雄唯君与我(英雄は君と私だけである)。 然るに、
(ⅱ)彼非君彼非我(彼は君ではなく私でもない)。従って、
(ⅲ)彼非英雄(彼は英雄ではない)。
に於ける「」は、「人称名詞」ではなく「名詞」であって、
(ⅰ)∃x∃y{(君x&英雄x)&(我y&英雄y)&(x≠y)&∀z[英雄z→(z=x)∨(z=y)]}。然るに、
(ⅱ)  ∃z(~君z&~我z&彼z)。                                 従って、
(ⅲ)  ∃z(彼z&~英雄z)。
に於ける「」も、「人称名詞」ではなく「名詞」である。
といふ、ことになる。
令和04年07月20日、毛利太。

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