2021年3月16日火曜日

「矛盾・韓非子」の「述語論理」(Ⅷ)。

(01)
楚人有鬻盾与矛者。誉之曰、吾盾之堅、莫能陥也。又誉其矛曰、吾矛之利、於物無不陥也。或曰、以子之矛、陥子之盾、何如。其人弗能応也=
楚の国の人で盾と矛とを売る者がいた。その人が自分の盾を誉めて言った。 私のこの堅い盾を突き通すことが出来るものは何も無い。 また、自分の矛を誉めて言った。 私のこの鋭い矛は、どんな物でも突き通さないものは無い。或るひとが言った。 あなたの矛で、あなたの盾を突いたらどうなるのか。 盾と矛を売る、その人は、答えることが、出来なかった(韓非子・矛盾)。
(02)
(ⅰ)
1   (1)∃x(吾矛x&∀y(~吾盾y&盾y→陥xy)} A
 2  (2)   吾矛a&∀y(~吾盾y&盾y→陥ay)  A
 2  (3)   吾矛a                  2&E
 2  (4)       ∀y(~吾盾y&盾y→陥ay)  2&E
 2  (5)          ~吾盾b&盾b→陥ab   4UE
  6 (6)                 ~陥ab   A
 26 (7)        ~(~吾盾b&盾b)      56MTT
 26 (8)          吾盾b∨~盾b       7ド・モルガンの法則
 26 (9)          ~盾b∨吾盾b       8交換法則
 26 (ア)           盾b→吾盾b       9含意の定義
 2  (イ)    ~陥ab→(盾b→ 吾盾b)      6アCP
   ウ(ウ)    ~陥ab& 盾b            A
   ウ(エ)    ~陥ab                ウ&E
 2 ウ(オ)         (盾b→ 吾盾b)      イエMPP
   ウ(カ)          盾b            ウ&E
 2 ウ(キ)              吾盾b       オカMPP
 2  (ク)          ~陥ab&盾b→吾盾b   ウキCP
 2  (ケ)       ∀y(~陥ay&盾y→吾盾y)  クUI
 2  (コ)   吾矛a&∀y(~陥ay&盾y→吾盾y)  3ケ&I
 2  (サ)∃x{吾矛x&∀y(~陥xy&盾y→吾盾y)} コEI
1   (シ)∃x{吾矛x&∀y(~陥xy&盾y→吾盾y)} 12サEE
(ⅱ)
1   (1)∃x{吾矛x&∀y(~陥xy&盾y→吾盾y)} A
 2  (2)   吾矛a&∀y(~陥ay&盾y→吾盾y)  A
 2  (3)   吾矛a                  2&E
 2  (4)       ∀y(~陥ay&盾y→吾盾y)  2&E
 2  (5)          ~陥ab&盾b→吾盾b   4UE
  6 (6)                 ~吾盾b   A
 26 (7)        ~(~陥ab&盾b)      56MTT
 26 (8)          陥ab∨~盾b       7ド・モルガンの法則
 26 (9)          ~盾b∨陥ab       8交換法則
 26 (ア)           盾b→陥ab       9含意の定義
 2  (イ)     ~吾盾b→(盾b→陥ab)      6アCP
   ウ(ウ)     ~吾盾b& 盾b           A
   ウ(エ)     ~吾盾b               ウ&E
 2 ウ(オ)          (盾b→陥ab)      イエMPP
   ウ(カ)           盾b           ウ&I
 2 ウ(キ)                  陥ab   オカMPP
 2  (ク)          ~吾盾b&盾b→陥ab   ウキCP
 2  (ケ)       ∀y(~吾盾y&盾y→陥ay)  クUI
 2  (コ)   吾矛a&∀y(~吾盾y&盾y→陥ay)  2ケ&I
 2  (シ)∃x(吾矛x&∀y(~吾盾y&盾y→陥xy)} コEI
1   (ス)∃x(吾矛x&∀y(~吾盾y&盾y→陥xy)} 12シEE
従って、
(02)により、
(03)
① ∃x(吾矛x&∀y(~吾盾y&盾y→陥xy)}
② ∃x{吾矛x&∀y(~陥xy&盾y→吾盾y)}
に於いて、すなはち、
① あるxは吾の矛であって、すべてのyについて、yが吾の盾以外の盾であるならば、xはyを陥す。
② あるxは吾の矛であって、すべてのyについて、xがyを陥すことがなく、yが盾であるならば、yは吾の盾である。
に於いて、
①=② である。
従って、
(03)により、
(04)
① 私の矛は、私の盾以外の、すべての盾を陥す
② 私の矛が陥さない盾は、私の盾だけである。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(05)
① 私の矛は、私の盾を含む、すべての盾を陥す。
② 私の盾は、私の矛を含む、すべて矛を陥さない。
といふことは、「矛盾」であるが、
(06)
① 私の矛は、私の盾以外の、すべての盾を陥す
② 私の矛が陥さない盾は、私の盾だけである。
といふことは、「矛盾」ではない
従って、
(06)により、
(07)
吾矛之利、於非吾盾之盾無不陥也=
吾矛之利、於〔非(吾盾)之盾〕無〔不(陥)〕也⇒
吾矛之利、〔(吾盾)非之盾〕於〔(陥)不〕無也=
吾が矛の利なること、〔(吾が盾に)非さるの盾〕於いて〔(陥さ)不る〕無きなり=
私のこの鋭い矛は、〔(私の盾)以外の盾に〕於いて〔(陥さ)ないことが〕無いのである。
であれば、「矛盾しない
(08)
因みに、
① 私のこの鋭い矛は、私の盾以外の盾において、貫さないことが無いのである(原文)。
② 我那尖銳的戟不會穿透我的盾牌以外的盾牌(グーグル翻訳)。
であるが、「私には、②が、全く、理解できない。」
(09)
① 吾矛之利、於非吾盾之盾無不陥也。
② 我那尖銳的戟不會穿透我的盾牌以外的盾牌。
といふ場合が、さうであるやうに、「漢文と、中国語は、完全に別物である」に違ひない。
令和03年03月16日、毛利太。

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