2020年9月9日水曜日

「(E.J.レモンの)自然演繹の規則」と「公理系PL」。

(01)
標準的な命題論理に対して健全で完全な公理系はいろいろなものが作れます。一つの具体例を示してみましょう。
 公理系PL
公理1 (P∨P)→P
公理2  P→(P∨Q)
公理3 (P∨Q)→(Q∨P)
公理4 (P→Q)→((P∨R)→(Q∨R))
推論規則 P→Q と P から Q を導いてもよい。
定義1  P&Q は ~(~P∨~Q)の略記である。
定義2  P→Q は ~P∨Q の略記である。
(矢野茂樹、まったくゼロからの論理学、2020年、167頁改)
然るに、
(02)
1  (1) P∨P    A
 2 (2) P      A
  3(3)   P    A
1  (4) P      12233∨E
   (5)(P∨P)→P 14CP
従って、
(01)(02)により、
(03)
「公理系PL(公理1)」が「恒真式(トートロジー)」であることを、
「仮定の規則(A)」と「∨‐除去(∨E)」と「条件的証明(CP)」で、「証明」出来る。
(04)
1(1)P       A
1(2)P∨Q     1∨I
 (3)P→(P∨Q) 12CP
従って、
(01)(04)により、
(05)
「公理系PL(公理2)」が「恒真式(トートロジー)」であることを、
「仮定の規則(A)」と「∨‐導入(∨I)」と「条件的証明(CP)」で、「証明」出来る。
(06)
1  (1) P∨Q        A
 2 (2) P          A
 2 (3) Q∨P        2∨I
  4(4)   Q        A
  4(5) Q∨P        4∨I
1  (6)       Q∨P  12345∨E
   (7)(P∨Q)→(Q∨P) 16CP
従って、
(01)(06)により、
(07)
「公理系PL(公理3)」が「恒真式(トートロジー)」であることを、
「仮定の規則(A)」と「∨‐導入(∨I)」と「∨‐除去(∨E)」と「条件的証明(CP)」で、「証明」出来る。
(08)
1   (1) P→Q                A
 2  (2) P∨R                A
  3 (3) P                  A
1 3 (4)   Q                13MPP
1 3 (5) Q∨R                4∨I
   6(6)   R                A
   6(7) Q∨R                6∨I
12  (8) Q∨R                23567∨E
1   (9)(P∨R)→(Q∨R)         28CP
    (ア)(P→Q)→((P∨R)→(Q∨R)) 19CP
従って、
(01)(08)により、
(09)
「公理系PL(公理4)」が「恒真式(トートロジー)」であることを、
「仮定の規則(A)」と「肯定肯定式(MPP)」と「∨‐導入(∨I)」と「∨‐除去(∨E)」と「条件的証明(CP)」で、「証明」出来る。
然るに、
(10)
(ⅰ)
1 (1)P→(Q→R) A
 2(2)P&Q     A
 2(3)P       2&E
12(4)   Q→R  13MPP
 2(5)   Q    2&E
12(6)     R  45MPP
1 (7) P&Q→R  26CP
(ⅱ)
1  (1) P&Q→R  A
 2 (2) P      A
  3(3)   Q    A
 23(4) P&Q    23&I
123(5)     R  14MPP
12 (6)   Q→R  35CP
1  (7)P→(Q→R) 26CP
従って、
(10)により、
(11)
① P→(Q→R)
②(P&Q)→R
に於いて、
①=② である。
然るに、
(12)
① P→(Q→R)
②(P&Q)→R
に於いて、
P=(A→B)
Q= A
R= B
といふ「代入(Substitution)」を行ふと、
① (A→B)→(A→B)
②((A→B)&A)→B
然るに、
(13)
① A→A≡「AならばAである。」
といふ「論理式」は、「同一律(トートロジー)」である。
従って、
(13)により、
(14)
① (A→B)→(A→B)≡「(AならばBである)ならば(AならばBである)。」
であっても、「同一律(トートロジー)」である。
然るに、
(15)
②((A→B)&A)→B ≡「((AならばBである)であってA)であるならばBである。」
は、「肯定肯定式(MPP)」である。
従って、
(10)~(15)により、
(16)
① (A→B)→(A→B)≡ 「(AならばBである)ならば(AならばBである)。」
②((A→B)&A)→B ≡「((AならばBである)であってA)であるならばBである。」
に於いて、
①=② であって、尚且つ、
① は「恒真式(トートロジー)」であって、
② は「肯定肯定式(MPP)」である。
従って、
(16)により、
(17)
肯定肯定式(MPP)」は、「恒真式(トートロジー)」である。
然るに、
(01)(16)(17)により、
(18)
「公理系PL(推論規則)」は、「肯定肯定式(MPP)」である。
従って、
(01)(18)により、
(19)
「公理系PL(推論規則)」が「恒真式(トートロジー)」であることを、
「仮定の規則(A)」と「&‐除去(&E)」と「肯定肯定式(MPP)」と「条件的証明(CP)」と「&‐導入(&I)」で、「証明」出来る。
(20)
(ⅰ)
1   (1)   P& Q   A
 2  (2)  ~P∨~Q   A
1   (3)   P      1&E
  4 (4)  ~P      A
1 4 (5)   P&~P   34&I
  4 (6) ~(P& Q)  15RAA
1   (7)      Q   1&E
   8(8)     ~Q   A
1  8(9)   Q&~Q   78&I
   8(ア) ~(P& Q)  19RAA
 2  (イ) ~(P& Q)  2468ア∨E
12  (ウ)  (P& Q)&
1   (エ)~(~P∨~Q)  2ウRAA
(ⅱ)
1   (1)~(~P∨~Q)  A
 2  (2)  ~P      A
 2  (3)  ~P∨~Q   2∨I
12  (4)~(~P∨~Q)&
        (~P∨~Q)  13&I
1   (5) ~~P      24RAA
1   (6)   P      5DN
  7 (7)     ~Q   A
  7 (8)  ~P∨~Q   7∨I
1 7 (9)~(~P∨~Q)&
        (~P∨~Q)  18&I
1   (ア)    ~~Q   79RAA
1   (イ)      Q   アDN
1   (ウ)   P& Q   6イ&I
従って、
(20)により、
(21)
①       P&  Q
② ~(~P∨~Q)
に於いて、
①=② である。
従って、
(01)(20)(21)により、
(22)
「公理系PL(定義1)」は、
仮定の規則(A)」と「&‐除去(&E)」と「&‐導入(&I)」と「背理法(RAA)」と「∨‐除去(∨E)」と「∨‐導入(∨I)」と「二重否定(DN)」で、「証明」出来る。
然るに、
(23)
(ⅰ)
1 (1)  P→ Q A
 2(2)  P&~Q A
 2(3)  P    2&E
 2(4)    ~Q 2&E
12(5)     Q 13MPP
12(6)  ~Q&Q 45&I
1 (7)   ~~Q 46RAA
1 (8)     Q 7DN
1 (9) ~P∨ Q 8∨I
(ⅱ)
1     (1) ~P∨ Q   A
 2    (2)  P&~Q   A
  3   (3) ~P      A
 2    (4)  P      2&E
 23   (5) ~P&P    34&I
  3   (6)~(P&~Q)  25RAA
   7  (7)     Q   A
 2    (8)    ~Q   2&E
 2 7  (9)  Q&~Q   78&I
   7  (ア)~(P&~Q)  29RAA
1     (イ)~(P&~Q)  2367ア∨E
    ウ (ウ)  P      A
     エ(エ)    ~Q   A
    ウエ(オ)  P&~Q   ウエ&I
1   ウエ(カ)~(P&~Q)&
          (P&~Q)  イオ&I
1   ウ (キ)   ~~Q   エキRAA
1   ウ (ク)     Q   キDN
1     (ケ)  P→ Q   ウクCP
従って、
(23)により、
(24)
①  P→Q
② ~P∨Q
に於いて、
①=② である。
従って、
(01)(23)(24)により、
(25)
「公理系PL(定義2)」は、
「仮定の規則(A)」と「&‐除去(&E)」と「肯定肯定式(MPP)」と「&‐導入(&I)」と「背理法(RAA)」と「二重否定(DN)」と「∨‐導入(∨I)」と「∨‐除去(∨E)」と「条件的証明(CP)」で、「証明」出来る。
従って、
(01)~(25)により、
(26)
 公理系PL
公理1 (P∨P)→P
公理2  P→(P∨Q)
公理3 (P∨Q)→(Q∨P)
公理4 (P→Q)→((P∨R)→(Q∨R))
推論規則 P→Q と P から Q を導いてもよい。
定義1  P&Q は ~(~P∨~Q)の略記である。
定義2  P→Q は ~P∨Q の略記である。
の全ては、『(E.J.レモンの)自然演繹の規則』で、「証明」出来る。
然るに、
(16)(17)(18)により、
(27)
もう一度、確認すると、
① (A→B)→(A→B)≡ 「(AならばBである)ならば(AならばBである)。」
②((A→B)&A)→B ≡「((AならばBである)であってA)であるならばBである。」
に於いて、
①=② であって、尚且つ、
① は「恒真式(トートロジー)」であって、
② は「肯定肯定式(MPP)」 であって、
② は「公理系PL(推論規則)」である。
然るに、
(01)~(09)により、
(28)
公理1 (P∨P)→P
公理2  P→(P∨Q)
公理3 (P∨Q)→(Q∨P)
公理4 (P→Q)→((P∨R)→(Q∨R))
は、全て、「恒真式(トートロジー)」であるし、
公理2  P→(P∨Q)
の場合は、『(E.J.レモンの)自然演繹の規則』でいふ所の、「∨‐導入の規則(∨I)」である。
従って、
(27)(28)により、
(29)
公理(Axioms)」も、「規則(Rules)」も、結局は、「恒真式(tautology)」である。
然るに、
(30)
もし証明をやってみたいのであれば、もっと証明がやりやすい公理系として「自然演繹」と呼ばれる公理系がありますから、それをお薦めします。
(矢野茂樹、まったくゼロからの論理学、2020年、170頁)
然るに、
(31)
自然演繹論理のあるバージョンには、公理が存在しない。ジョン・レモンが開発した体系L は、証明の構文規則に関する「10個の基本的規則(Primitive rules)」だけを持つ。
(ウィキペディア改)
従って、
(29)(30)(31)
(32)
自然演繹論理のあるバージョンには、公理が存在しない。」とは、言ふものの、「規則(Rules)」も、「公理(Axioms)」の「一種」である。
令和02年09月09日、毛利太。

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