2020年9月23日水曜日

「線形論理(Linear logic)」って「何」ですか?

(01)
(ⅰ)
1 (1)(A→B)&(A→C) 仮定
 2(2) A          仮定
1 (3) A→B        1&E
12(4)   B        23MPP
 2(5)       A→C  1&E
12(6)         C  25MPP
12(7)   B&C      46&I
1 (8) A→B&C      27CP
(ⅱ)
1      (1)A→~(B⇔C)         仮定
 2     (2)A                仮定
12     (3)  ~(B⇔C)         12MPP
12     (4) ~{(B→C)& (C→B)} 3Df.⇔
12     (5)  ~(B→C)∨~(C→B)  4ド・モルガンの法則
12    (6)   (B→C)→~(C→B)  5含意の定義
  3   (7)   (B→C)         A
123   (8)         ~(C→B)  67MPP
123   (9)        ~(~C∨B)  8含意の定義
123   (ア)         (C&~B)  9ド・モルガンの法則
12    (イ)   (B→C)→(C&~B)  3アCP
1     (ウ)A→{(B→C)→(C&~B)} 2イCP
   エ  (エ)A& (B→C)         仮定
   エ  (オ)A                エ&E
1  エ  (カ)   (B→C)→(C&~B)  ウオMPP
   エ  (キ)   (B→C)         エ&E
1  エ  (ク)         (C&~B)  カキMPP
1     (ケ)A& (B→C)→(C&~B)  エクCP
    コ (コ)A&(C∨~B)         仮定
    コ (サ)A                コ&E
    コ (シ)  (C∨~B)         コ&E
    コ (ス)  (~B∨C)         シ交換法則
    コ (セ)   (B→C)         ス含意の定義
    コ (ソ)A& (B→C)         サセ&I
1   コ (タ)         (C&~B)  ケソMPP
1     (チ)A&(C∨~B)→(C&~B)  コタCP
     ツ(ツ)A& C             仮定
     ツ(テ)A                ツ&E
     ツ(ト)   C             ツ&E
     ツ(ナ)   C∨~B          ト∨I
     ツ(ニ)A&(C∨~B)         テナ&I
1    ツ(ヌ)         (C&~B)  チニMPP
1     (ネ)   (A&C)→(C&~B)  ツヌCP
従って、
(01)により、
(02)
①(A→B)&(A→C)├ A→B&C
②    A→~(B⇔C)├ A&C→C&~B
といふ「連式(Sequents)」は、両方とも、「妥当(valid)」である。
従って、
(02)により、
(03)
①(AならばBであり)、尚且つ、(AならばCである)。従って、Aならば、BであってCである。
②  Aならば、(BとCが、同時に、真である)ことない。従って、AであってCであるならば、Cではあるが、Bではない。
といふ「推論」は、「妥当(valid)」である。
従って、
(03)により、
(04)
A=100円をもっている。
B=缶コーヒーが買える。
C=缶ジュースが買える、
とするならば、
①(100円あれば、缶コーヒーが買え)、尚且つ、(100円あれば、缶ジュースが買える)。 従って、100円あれば、缶コーヒーと缶ジュースが買える。
② 100円あれば、(一度に、缶コーヒーと、缶ジュースの両方が買える)というわけではない。100円で、缶ジュースを買うならば、缶ジュースは買えるが、缶コーヒーは買えない。
といふ「推論」は、「妥当(valid)」である。
然るに、
(05)
1980年代後半に見出されて脚光を浴びた新しい論理体系に 「線形論理」がある。線形論理の大きな特徴は「資源」の概念を扱えるという点にある。このことを説明するために しばしば次のような例え話が引き合いに出される。100円の缶コーヒーと100円の缶ジュースが買える自動販売機があるとする。 「100円をもっている」という命題をA、「缶コーヒーが買える」 という命題をB、「缶ジュースが買える」という命題をCとすると、この状況は「A→B」および「A→C」となる。古典論理では これから「A→B&C」が導かれるが、これは「100円あれば 缶コーヒーと缶ジュースが両方買える」という意味になり、 明らかに経済概念に合わない。本当は「100円あれば 缶コーヒーと缶ジュースのどちらか一方のみが買える」とか 「100円玉が2枚あれば缶コーヒーと缶ジュースが買える」 という命題が出て来てほしい。線形論理ではこのような状況が 正しく記述できるのである。このような例を敷延すれば、 計算機やネットワーク上で複数のプログラム(プロセス)が 共有資源にアクセスするような状況も同様であり、実際に、 そのような状況を線形論理で扱うような研究も行われている(I. 記号論理学とは何か)。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
『この状況は「A→B」および「A→C」となる。古典論理では これから「A→B&C」が導かれるが、これは「100円あれば 缶コーヒーと缶ジュースが両方買える」という意味になり、 明らかに経済概念に合わない。』とは言ふものの、
①(A→B)&(A→C)├ A→B&C
では困る。といふのであれば、ただ単に、
② A→~(B⇔C)├ A&C→C&~B
といふ風に、書けば良い。といふことに、過ぎない。
従って、
(05)(06)により、
(07)
私としては、「100円の缶コーヒーと100円の缶ジュースが買える自動販売機があるとする。」といふ「以外の例」を、知りたい。
と、思ってゐる。
令和02年09月22日、毛利太。

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