2020年8月13日木曜日

「有(返読文字)る」と「在る」。

(01)
① 我有父母=
① 我有(父母)⇒
① 我(父母)有=
① 我に(父母)有り=
① I have parents.
(02)
② 人皆有兄弟=
② 人皆有(兄弟)⇒
② 人皆(兄弟)有=
② 人皆(兄弟)有り=
② Everybody has brothers.
従って、
(01)(02)により、
(03)
」とは、即ち、「Have持つ)」である。
然るに、
(04)
】ユウ(イウ・ウ)、ある
〈解字〉会意。意符号「月」(肉)と音と意を表す「又(イウ・ウ)」(右手)。肉を己の所有とする意。
「有無」の「有」はその延長義。「有」は「もつ」が原義だから「・・・・・がある」にあたり「・・・・・である」ではない。(対)無。
(中沢希夫、同訓異字辞典、1980年、21頁)
従って、
(03)(04)により、
(05)
」の「原義」は、「持つHave)」である。
然るに、
(06)
上位而不驕=
③ 居(上位)而不(我驕)⇒
③ (上位)居而(驕)不=
③ (上位に)居て(驕ら)ず=
③ 上座に座ってゐても、驕らない。
然るに、
(07)
】サイ・ザイ、ある
〈字義〉ある・おる(在)。
(中沢希夫、同訓異字辞典、1980年、21頁)
(08)
【在】4881
(ロ)をる。云々にをる。
(大修館、大漢和辞典)
(09)
を・り【居る】[一](動詞)自ラ変
① 存在する。いる。ある。
座っている
(旺文社、全訳古語辞典、2006年、935頁)
(10)
従って、
(06)~(10)により、
(11)
「在」の「原義」は、「座ってゐる(Sitting)」に近い。
従って、
(05)(11)により、
(12)
」の「原義」は、「持つ(動詞)」であって、
」の「原義」は、「座ってゐる(動詞)」に近い。
然るに、
(13)
 存在と出現・消滅の表現法
 存在を表す動詞として、古代においても、「」と「」とが常用されている。しかし、その存在するものと、存在する場所とをいふ単語の語順は、次のように、全く反対である。
A式 場所語―有―存在物
 例 机上有書。(机上に書あり)
B式 存在物―在―場所語
 例 書在机上。(書、机上にあり)
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、346頁)
従って、
(12)(13)により、
(14)
① 机上書。
② 書机上。
に於いても、
①「」は「動詞」の「語順」を取り、
②「」は「動詞」の「語順」を取る。
然るに、
(15)
主語補語省略されることが多い。
(片桐功雄、究める漢文、2010年、16頁改)
従って、
(14)(15)により、
(16)
① 机上書。
② 書机上。
といふ「漢文」は、
① 机上(主語)と、
② 机上(補語)が、「省略」されて、
書。
② 書
となることが、多い。 然るに、
(17)
「漢文」と「日本語(訓読)」に於いて、
①「動詞の語順」は、「」であって、
②「動詞の語順」は、「」である。
従って、
(16)(17)により、
(18)
書。
② 書
に於いて、
① の「語順」は、「日本語」と「」になり、
② の「語順」は、「日本語」と「」になる。
然るに、
(19)
返読文字とは、先に述べた「ヲ・ニ・ト・ヨリ」がなくとも返り点を打つ文字のことである。
(高等学校古文/漢文の読み方/返読文字)
従って、
(17)(18)(19)により、
(20)
①「(漢文の)」が、「動詞」であって、
②「(漢文の)」が、「動詞」であるが故に、
書。
② 書
に於いて、
①「る」は、「返読文字」であって、
②「る」は、「返読文字」ではない
といふ、ことになる。
然るに、
(16)により、
(21)
① 机上書(机上に、書有り)。
② 書机上(書、机上に在り)。
であるため、
① 此有人(此に、人有り)。
② 人在此(人、此に在り)。
である。
従って、
(20)(21)により、
(22)
① 此有人(此に、人有り)。
② 人在此(人、此に在り)。
といふ「語順」に対して、
在人(此に、人在り)。
② 人有(人、此に有り)。
といふ「語順」は、無い
然るに、
(23)
因みに、「加藤徹、白文攻略 漢文ひとり学び、2013年、95頁」によると、
① 此有人(此に、人有り)。
② 人在此(人、此に在り)。
は、それぞれ、
①「(誰か)人がここにいる。」
②「(さっきから話題にしている、あの)人がここにいる。」
といふ「意味」である、との、ことである。
然るに、
(24)
② 沛公在此(沛公、此に在り)。
に於いて、
② 此(ここに)
は、「補語」である。
cf.
② 沛公 is here.
従って、
(24)により、
(25)
③ 沛公在(沛公、安くにか在る)。
に於いて、
(いづくに)
は、「補語」である。
(26)
 前置による強調
動詞についての目的語は、その動詞の後に置かれるのが、漢語における基本構造としての単語の配列のしかたである。また、漢語における介詞は、ほとんど、動詞から発達したものであって、その目的語(補語)も、その介詞の後に置かれるのが、通則であるということができる。しかし、古代漢語においては、それらの目的語(補語)が疑問詞である場合には、いずれも、その動詞介詞の前におかれている。このように、漢語としての通常の語順を変えて、目的語の疑問詞を前置することは、疑問文において、その疑問の中心になっている疑問詞を、特に強調したものにちがいない。
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、334・5頁改)
従って、
(25)(26)により、
(27)
③ 沛公在(沛公、安くにか在る)。
ではなく
③ 沛公在(沛公、安くにか在る)。
でなければ、ならない
cf.
Where is 沛公?
WH移動(生成文法)。
従って、
(22)(23)(27)により、
(28)
有人(此に、人有り)。
② 人在(人、此に在り)。
③ 人在(人、安くにか在る)。
に於いて、
① Here is someone.
The man is here.
Where is the man.
といふ、「意味」なる(はずである)。
令和02年08月13日、毛利太。

0 件のコメント:

コメントを投稿