(01)
① 我有父母=
① 我有(父母)⇒
① 我(父母)有=
① 我に(父母)有り=
① I have parents.
(02)
② 人皆有兄弟=
② 人皆有(兄弟)⇒
② 人皆(兄弟)有=
② 人皆(兄弟)有り=
② Everybody has brothers.
従って、
(01)(02)により、
(03)
「有」とは、即ち、「Have(持つ)」である。
然るに、
(04)
【有】ユウ(イウ・ウ)、ある
〈解字〉会意。意符号「月」(肉)と音と意を表す「又(イウ・ウ)」(右手)。肉を己の所有とする意。
「有無」の「有」はその延長義。「有」は「もつ」が原義だから「・・・・・がある」にあたり「・・・・・である」ではない。(対)無。
(中沢希夫、同訓異字辞典、1980年、21頁)
従って、
(03)(04)により、
(05)
「有」の「原義」は、「持つ(Have)」である。
然るに、
(06)
③ 居上位而不驕=
③ 居(上位)而不(我驕)⇒
③ (上位)居而(驕)不=
③ (上位に)居て(驕ら)ず=
③ 上座に座ってゐても、驕らない。
然るに、
(07)
【在】サイ・ザイ、ある
〈字義〉ある・おる(在)。
(中沢希夫、同訓異字辞典、1980年、21頁)
(08)
【在】4881
(ロ)をる。云々にをる。
(大修館、大漢和辞典)
(09)
を・り【居る】[一](動詞)自ラ変
① 存在する。いる。ある。
② 座っている。
(旺文社、全訳古語辞典、2006年、935頁)
(10)
従って、
(06)~(10)により、
(11)
「在」の「原義」は、「座ってゐる(Sitting)」に近い。
従って、
(05)(11)により、
(12)
「有」の「原義」は、「持つ(他動詞)」であって、
「在」の「原義」は、「座ってゐる(自動詞)」に近い。
然るに、
(13)
存在と出現・消滅の表現法
存在を表す動詞として、古代においても、「有」と「在」とが常用されている。しかし、その存在するものと、存在する場所とをいふ単語の語順は、次のように、全く反対である。
A式 場所語―有―存在物
例 机上有レ書。(机上に書あり)
B式 存在物―在―場所語
例 書在ニ机上一。(書、机上にあり)
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、346頁)
従って、
(12)(13)により、
(14)
① 机上有書。
② 書在机上。
に於いても、
①「有」は「他動詞」の「語順」を取り、
②「在」は「自動詞」の「語順」を取る。
然るに、
(15)
主語や補語は省略されることが多い。
(片桐功雄、究める漢文、2010年、16頁改)
従って、
(14)(15)により、
(16)
① 机上有書。
② 書在机上。
といふ「漢文」は、
① 机上(主語)と、
② 机上(補語)が、「省略」されて、
① 有書。
② 書在。
となることが、多い。
然るに、
(17)
「漢文」と「日本語(訓読)」に於いて、
①「他動詞の語順」は、「逆」であって、
②「自動詞の語順」は、「順」である。
従って、
(16)(17)により、
(18)
① 有書。
② 書在。
に於いて、
① の「語順」は、「日本語」と「逆」になり、
② の「語順」は、「日本語」と「順」になる。
然るに、
(19)
返読文字とは、先に述べた「ヲ・ニ・ト・ヨリ」がなくとも返り点を打つ文字のことである。
(高等学校古文/漢文の読み方/返読文字)
従って、
(17)(18)(19)により、
(20)
①「(漢文の)有」が、「他動詞」であって、
②「(漢文の)在」が、「自動詞」であるが故に、
① 有書。
② 書在。
に於いて、
①「有る」は、「返読文字」であって、
②「在る」は、「返読文字」ではない。
といふ、ことになる。
然るに、
(16)により、
(21)
① 机上有書(机上に、書有り)。
② 書在机上(書、机上に在り)。
であるため、
① 此有人(此に、人有り)。
② 人在此(人、此に在り)。
である。
従って、
(20)(21)により、
(22)
① 此有人(此に、人有り)。
② 人在此(人、此に在り)。
といふ「語順」に対して、
① 此在人(此に、人在り)。
② 人有此(人、此に有り)。
といふ「語順」は、無い。
然るに、
(23)
因みに、「加藤徹、白文攻略 漢文ひとり学び、2013年、95頁」によると、
① 此有人(此に、人有り)。
② 人在此(人、此に在り)。
は、それぞれ、
①「(誰か)人がここにいる。」
②「(さっきから話題にしている、あの)人がここにいる。」
といふ「意味」である、との、ことである。
然るに、
(24)
② 沛公在此(沛公、此に在り)。
に於いて、
② 此(ここに)
は、「補語」である。
cf.
② 沛公 is here.
従って、
(24)により、
(25)
③ 沛公在安(沛公、安くにか在る)。
に於いて、
③ 安(いづくに)
は、「補語」である。
(26)
前置による強調
動詞についての目的語は、その動詞の後に置かれるのが、漢語における基本構造としての単語の配列のしかたである。また、漢語における介詞は、ほとんど、動詞から発達したものであって、その目的語(補語)も、その介詞の後に置かれるのが、通則であるということができる。しかし、古代漢語においては、それらの目的語(補語)が疑問詞である場合には、いずれも、その動詞・介詞の前におかれている。このように、漢語としての通常の語順を変えて、目的語の疑問詞を前置することは、疑問文において、その疑問の中心になっている疑問詞を、特に強調したものにちがいない。
(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、334・5頁改)
従って、
(25)(26)により、
(27)
③ 沛公在安(沛公、安くにか在る)。
ではなく、
③ 沛公安在(沛公、安くにか在る)。
でなければ、ならない。
cf.
③ Where is 沛公?
③ WH移動(生成文法)。
従って、
(22)(23)(27)により、
(28)
① 此有人(此に、人有り)。
② 人在此(人、此に在り)。
③ 人安在(人、安くにか在る)。
に於いて、
① Here is someone.
② The man is here.
③ Where is the man.
といふ、「意味」なる(はずである)。
令和02年08月13日、毛利太。
0 件のコメント:
コメントを投稿