2020年8月21日金曜日

「二畳庵主人(加地伸行 先生)」の「(ド・モルガンの法則、に対する)誤解」について。

(01)
「漢文」とはなにか
受験参考書をはるかに超え出たZ会伝説の名著、待望の新版! ― 中略 ―、
基礎とはなにか。二畳庵先生が考える基礎ということばは、基礎医学とか、基礎物理研究所といったことばで使われているような意味なんだ。(中略)基礎というのは、初歩的知識に対して、いったいそれはいかなる意味をもっているのか、ということ。つまりその本質を反省することなのである。初歩的知識を確認したり、初歩的知識を覚える、といったことではなく、その初歩的知識を材料にして、それのもっている本質を根本的に反省するということなのだ。――<本書より>
※本書は1984年10月に増進会出版社より刊行された『漢文法基礎』(新版)を大幅に改訂したものです。
(02)
(ⅰ)
1  (1)~〔P& Q〕  A
 2 (2)     Q   A
  3(3)  P      A
 23(4)  P& Q   23&I
123(5)~〔P& Q〕&
       〔P& Q〕  14&I
12 (6) ~P      35RAA
1  (7)  Q→~P   26CP
(ⅱ)
1  (1)  Q→~P   A
 2 (2)  P& Q   A
 2 (3)     Q   2&E
12 (4)    ~P   13MPP
 2 (5)  P      2&E
12 (6)  P&~P   45&I
1  (7)~〔P& Q〕  26RAA
従って、
(02)により、
(03)
① ~〔P& Q〕≡〔Pであって、尚且つ、Qである〕といふことはない。
②  〔Q→~P〕≡〔Qであるならば、Pでない。〕
に於いて、
①=② である。
然るに、
(04)
① ~〔P& Q〕≡(Pであって、尚且つ、Qである)といふことはない。
②   Q→~P ≡ Qであるならば、Pでない。
に於いて、
「~」=「不」
「P」=「知(其能千里)」
「&」=「而」
「Q」=「食(養ふ)」
「→」=「ならば
であるとする。
cf.
」は「養う」の「意味」である。
従って、
(03)(04)により、
(05)
① 不〔知(其能千里)而食〕。
② 食ならば不〔知(其能千里)〕。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(06)
① 不〔知(其能千里)而食〕。
② 食ならば不〔知(其能千里)〕。
に於いて、
不〔 〕⇒〔 〕不
知( )⇒( )知
といふ「移動」を行ひ、「平仮名」を加へると、
① 〔(其の能の千里なるを)知りて食は〕ず。
② 食ふならば〔(其の能の千里なるを)知ら〕ず。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(07)
① 食馬者、不其能千里
① 馬を食ふ者は、其の能の千里なるを知りて食はず。
① 馬の飼い主は、自分の馬が千里も走る能力があることを知って飼うことをしない。
(旺文社、漢文の基礎、1973年、153・154頁改)
然るに、
(08)
言ふまでもなく、
②(馬を食ふ者は、馬を)食ふ
従って、
(06)(07)(08)により、
(09)
① 食馬者、不知其能千里而食。
といふ「漢文」は、
馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知らずに、馬を養ふ
といふ、「意味」になる。
然るに、
(10)
① 食馬者、不其能千里
② 知其能千里而食食。
この ①・② の読み方を書き下し文になおすと、どちらも「その能の千里なるを知ってしかし食わず」であって同じである。だから書き下し文を見ただけでは、①か②か どちらかという判断はできない。
それでは、意味はどうなるかと、全く違うのである。すなわち、次のようになる。
①「その(馬の)働きが一日に千里も走れるのを知らないし、それ相応に飼育しない
②「その(馬の)働きが一日に千里も走れるほどであることを知っておりながら、〈それ相応に飼育しない〉」
(二畳庵主人、漢文法基礎、1984年10月、390頁)
然るに、
(11)
①「その(馬の)働きが一日に千里も走れるのを知らないし、それ相応に飼育しない
といふのであれば、
① 食馬者、知其能千里而_食。
ではなく、
① 食馬者、不知其能千里而不食
でなければ、ならない。
然るに、
(07)(10)により、
(12)
「原文」は、
① 食馬者、不知其能千里而不食
ではなく、
① 食馬者、知其能千里而_食。
である。
従って、
(10)(11)(12)により、
(13)
① 食馬者、不其能千里
であれば、
①「その(馬の)働きが一日に千里も走れるのを知らないし、それ相応に飼育しない
といふ「意味」になるといふ、「二畳庵主人(加地伸行 先生)」の「説明」は、「マチガイ」である。
(14)
(ⅲ)
1  (1)~(P∨Q)       A
 2 (2)  P          A
 2 (3)  P∨Q        2∨I
12 (4)~(P∨Q)&(P∨Q) 13&I
1  (5) ~P          24RAA
  6(6)    Q        A
  6(7)  P∨Q        6∨I
1 6(8)~(P∨Q)&(P∨Q) 17&I
1  (9)   ~Q        68RAA
1  (ア)~P&~Q        59&I
(ⅳ)
1   (1)  ~P&~Q   A
 2  (2)   P∨ Q   A
1   (3)  ~P      1&E
  4 (4)   P      A
1 4 (5)  ~P&P    34&I
  4 (6)~(~P&~Q)  15RAA
1   (7)     ~Q   1&E
   8(8)      Q   A
1  8(9)   ~Q&Q   78&I
   8(ア)~(~P&~Q)  19RAA
 2  (イ)~(~P&~Q)  2468ア∨E
12  (ウ) (~P&~Q)&
       ~(~P&~Q)  1イ&I
1   (エ) ~(P∨ Q)  2ウRAA
従って、
(14)により、
(15)
③ ~(P∨ Q)≡(Pであるか、または、Qである)といふことはない
④  ~P&~Q ≡ Pでもないし、Qでもない。
に於いて、
③=④ である(ド・モルガンの法則)。
従って、
(15)により、
(16)
③(字を書くか、または、書を読まない)といふことはない
④ 字も書かなければ、 書も読まない
に於いて、
③=④ である。
然るに、
(17)
④ 字も書かなければ、書も読まない
といふのであれば、「漢文」は、
字、書。
であって、
字読一レ書。
ではない。
然るに、
(18)
入門編で述べたもっと簡単な例でいうと、たとえば、
③ 書字不書。
④ 不字読一レ書。
③ は「字は書くけれども、本は読まない。」
④ は「字も書かなければ、書も読まない。」ということで、ここでも「」の管到のちがいがよくでている。
(二畳庵主人、漢文法基礎、1984年10月、390頁)
従って、
(17)(18)により、
(19)
「二畳庵主人(加地伸行 先生)」は、要するに、
字、書。
といふ「漢文」と、
字読一レ書。
といふ「漢文」とを、「混同」していて、このことは、
③ ~(P& Q)≡(Pであって、尚且つ、Qである)といふことはない。
④  ~P&~Q ≡ Pでもないし、Qでもない。
に於いて、
③=④ である(「ド・モルガンの法則」ではない)。
と、見做してゐる
といふことに、「等しい」。
然るに、
(20)
(ⅰ)
1   (1) ~( P& Q)         A
 2  (2) ~(~P∨~Q)         A
  3 (3)   ~P             A
  3 (4)   ~P∨~Q          3∨I
 23 (5) ~(~P∨~Q)&(~P∨~Q) 24&I
 2  (6)  ~~P             35RAA
 2  (7)    P             6DN
   8(8)      ~Q          A
   8(9)   ~P∨~Q          8∨I
 2 8(ア) ~(~P∨~Q)&(~P∨~Q) 28&I
 2  (イ)     ~~Q          8アRAA
 2  (ウ)       Q          イDN
 2  (エ)    P& Q          7ウ&I
12  (オ) ~( P& Q)&( P& Q) 1エ&I
1   (カ)~~(~P∨~Q)         2オRAA
1   (キ)   ~P∨~Q          1DN
(ⅱ)
1   (1)   ~P∨~Q          A
 2  (2)    P& Q          A
  3 (3)   ~P             A
 23 (4)    P             2
 23 (5)   ~P& P          34&I
  3 (6)  ~(P& Q)         25RAA
   7(7)      ~Q          A
 2  (8)       Q          2&E
 2 7(9)    ~Q&Q          78
   7(ア)  ~(P& Q)         29RAA
1   (イ)  ~(P& Q)         1367ア∨E
従って、
(20)により、
(21)
① ~(P& Q)≡(Pであって、尚且つ、Qである)といふことはない。
②  ~P∨~Q ≡ Pでないか、または、Qでないか、または、その両方である。
に於いて、
①=② である(ド・モルガンの法則)。
従って、
(19)(21)により、
(22)
「番号」を付け直すと、
① ~(P& Q)≡(Pであって、尚且つ、Qである)といふことはない。
②  ~P∨~Q ≡ Pでないか、または、Qでないか、または、その両方である。
③  ~P&~Q ≡ Pでもないし、Qでもない。
に於いて、「ド・モルガンの法則」としては、
①=② こそが「正しい」ものの、
「二畳庵主人(加地伸行 先生)」の場合は、
①=③ である。
といふ風に、「誤解」してゐる。
令和02年08月21日、毛利太。

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