2020年8月21日金曜日

「日本語」と「命題計算」で考へる「ド・モルガンの法則」と「千里の馬」。

(01)
①(Pであって、尚且つ、Qである)といふことはない。
といふことは、
②(PとQが、同時に「真(本当)」になる)といふことはない。
といふことである。
然るに、
(02)
②(PとQが、同時に「真(本当)」になる)といふことはない。
といふことは、
②  Pでないか、または、Qでないか、または、Pでも、Qでもない。
といふことである。
然るに、
(03)
②(PとQが、同時に「真(本当)」になる)といふことはない。
といふことは、
③  Pが「真(本当)」であるならば、Qは「偽(ウソ)」であり、
④  Qが「真(本当)」であるならば、Pは「偽(ウソ)」である。
といふことである。
然るに、
(04)
③  Pが「真(本当)」であるならば、Qは「偽(ウソ)」であり、
④  Qが「真(本当)」であるならば、Pは「偽(ウソ)」である。
といふことは、
③  Pであるならば、Qではなく、
④  Qであるならば、Pではない。
といふことである。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
日本語」で考へれば、「簡単に分る」通り、
①(Pであって、尚且つ、Qである)といふことはない。
②  Pでないか、または、Qでないか、または、Pでも、Qでもない。
③  Pであるならば、Qでない。
④  Qであるならば、Pでない。
に於いて
①=②=③=④ である。
従って、
(05)により、
(06)
「命題計算」の「記号」で書くと、
① ~(P& Q)
②   ~P∨~Q
③   P→~Q
④   Q→~P
に於いて
①=②=③=④ である。
然るに、
(07)
(ⅰ)
1   (1) ~( P& Q)         A
 2  (2) ~(~P∨~Q)         A
  3 (3)   ~P             A
  3 (4)   ~P∨~Q          3∨I
 23 (5) ~(~P∨~Q)&(~P∨~Q) 24&I
 2  (6)  ~~P             35RAA
 2  (7)    P             6DN
   8(8)      ~Q          A
   8(9)   ~P∨~Q          8∨I
 2 8(ア) ~(~P∨~Q)&(~P∨~Q) 28&I
 2  (イ)     ~~Q          8アRAA
 2  (ウ)       Q          イDN
 2  (エ)    P& Q          7ウ&I
12  (オ) ~( P& Q)&( P& Q) 1エ&I
1   (カ)~~(~P∨~Q)         2オRAA
1   (キ)   ~P∨~Q          1DN
(ⅱ)
1   (1)   ~P∨~Q          A
 2  (2)    P& Q          A
  3 (3)   ~P             A
 23 (4)    P             2
 23 (5)   ~P& P          34&I
  3 (6)  ~(P& Q)         25RAA
   7(7)      ~Q          A
 2  (8)       Q          2&E
 2 7(9)    ~Q&Q          78
   7(ア)  ~(P& Q)         29RAA
1   (イ)  ~(P& Q)         1367ア∨E
然るに、
(08)
(ⅰ)
1  (1)~(P& Q)  A
 2 (2)  P      A
  3(3)     Q   A
 23(4)  P& Q   23&I
123(5)~(P& Q)&
       (P& Q)  14&I
12 (6)    ~Q   35RAA
1  (7)  P→~Q   26CP
(ⅲ)
1  (1)  P→~Q   A
 2 (2)  P& Q   A
 2 (3)  P      2&E
12 (4)    ~Q   13MPP
 2 (5)     Q   2&E
12 (6)  ~Q&Q   45&I
1  (7)~(P& Q)  26RAA
然るに、
(09)
(ⅰ)
1  (1)~(P& Q)  A
 2 (2)     Q   A
  3(3)  P      A
 23(4)  P& Q   23&I
123(5)~〔P& Q〕&
       〔P& Q〕  14&I
12 (6) ~P      35RAA
1  (7)  Q→~P   26CP
(ⅳ)
1  (1)  Q→~P   A
 2 (2)  P& Q   A
 2 (3)     Q   2&E
12 (4)    ~P   13MPP
 2 (5)  P      2&E
12 (6)  P&~P   45&I
1  (7)~(P& Q)  26RAA
従って、
(05)~(09)により、
(10)
① ~(P& Q)≡(Pであって、尚且つ、Qである)といふことはない。
②   ~P∨~Q ≡ Pでないか、または、Qでないか、または、その両方である。
③   P→~Q  ≡ Pであるならば、Qでない。
④   Q→~P ≡ Qであるならば、Pでない。
に於いて、
日本語」で考へても、「命題論理」で計算しても、
①=②=③=④ である。
然るに、
(11)
(ⅰ)
1 (1)Q    A
 2(2)Q→~P A
12(3)  ~P 12MPP
従って、
(11)により、
(12)
① Q,Q→~P├ ~P
といふ「連式(Sequent)」は、「妥当」である。
然るに、
(10)により、
(13)
「番号」を付け直すと、
①   Q→~P ≡ Qであるならば、Pでない。
② ~(P& Q)≡(Pであって、尚且つ、Qである)といふことはない。
に於いて、
①=② である。
従って、
(12)(13)により、
(14)
① Q,  Q→~P ├ ~P
② Q,~(P& Q)├ ~P
といふ「連式(Sequents)」は、「妥当」である。
従って、
(14)により、
(15)
「~」=「不」
「&」=「而」
「Q」=「食馬(馬を養ふ)。」
「P」=「知其能千里(その能の千里なるを知る)。」
とするならば、
① 食馬、不(知其能千里而食)。故、不(知其能千里)。
といふ「連式(Sequent)」は、「妥当」である。
然るに、
(16)
② 食馬者、不其能千里
② 馬を食ふ者は、其の能の千里なるを知りて食はず。
② 馬の飼い主は、自分の馬が千里も走る能力があることを知って飼うことをしない。
(旺文社、漢文の基礎、1973年、153・154頁改)
然るに、
(17)
言ふまでもなく、
②(馬を食ふ者は、馬を食ふ
従って、
(15)(16)(17)により、
(18)
② 食馬者、不(知其能千里而食)。故に、不(知其能千里)。
といふ「連式(Sequent)」は、「妥当」である。
従って、
(16)(17)(18)により、
(19)
② 馬を食ふ者は、其の能の千里なるを知りて食はず。故に、其の能の千里なるを知らず。
といふ「連式(Sequent)」は、「妥当」である。
従って、
(16)(19)により、
(20)
② 食馬者、不其能千里
といふ「漢文」は、
馬を養ふ者は、其の能の千里なるを知らずに馬を養ふ
といふ、「意味」になる。
然るに、
(21)
① 食馬者、不其能千里
② 知其能千里而食食。
この ①・② の読み方を書き下し文になおすと、どちらも「その能の千里なるを知ってしかし食わず」であって同じである。だから書き下し文を見ただけでは、①か②か どちらかという判断はできない。
それでは、意味はどうなるかと、全く違うのである。すなわち、次のようになる。
①「その(馬の)働きが一日に千里も走れるのを知らないし、それ相応に飼育しない
②「その(馬の)働きが一日に千里も走れるほどであることを知っておりながら、〈それ相応に飼育しない〉」
(二畳庵主人、漢文法基礎、1984年10月、390頁)
然るに、
(22)
①「その(馬の)働きが一日に千里も走れるのを知らないし、それ相応に飼育しない
②「其の能の千里なるを知らずに、馬を養ふ。」
に於いて、
①=② ではない。
従って、
(20)(21)(22)により、
(23)
① 食馬者、不其能千里
といふ「漢文」は、
②「其の能の千里なるを知らずに、馬を養ふ。」
といふ「意味」であって、
①「その(馬の)働きが一日に千里も走れるのを知らないし、それ相応に飼育しない
といふ「意味」でない。
然るに、
(21)(23)により、
(24)
①「その(馬の)働きが一日に千里も走れるのを知らないし、それ相応に飼育しない
から、
①「それ相応に」といふ「副詞句を除くと、
①「馬を飼育する者は、その(馬の)働きが一日に千里も走れるのを知らないし、飼育しない。」
といふことになる。
然るに、
(25)
①「馬を飼育する者は、馬を、飼育しない。」
といふのは、「矛盾」である。
従って、
(24)(25)により、
(26)
①「馬を飼育する者は、馬を、飼育しない。」
といふ「矛盾」を「糊塗する」する上で、
①「馬を飼育する者は、その(馬の)働きが一日に千里も走れるのを知らないし、それ相応に飼育しない」
といふ「訳文」から、
①「それ相応に」といふ「副詞句」を除くことは、出来ない
令和02年08月21日、毛利太。

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