(ⅰ)『返り点』については、『「返り点」の「付け方」を教へます(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html)』をお読み下さい。
(ⅱ)『返り点と括弧』については、『「一二点・上下点」について(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_26.html)』他をお読み下さい。
(ⅲ)「AがBならば」については、『「aがFならば、」の「aが」について(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post_29.html)』をお読み下さい。
(01)
① 象は動物である。
然るに、
(02)
はな子(はなこ、1947年 - 2016年5月26日)は、東京都武蔵野市の井の頭自然文化園で飼育されていたメスのアジアゾウである。
https://ja.wikipedia.org/wiki/はな子
従って、
(01)(02)により、
(03)
② はな子が象ならば、はな子は動物である。
従って、
(03)により、
(04)
③ xが象ならば、xは動物である。
然るに、
(05)
③ xが象ならば、xは動物である。
といふことに関して、「例外」は無い。
従って、
(04)(05)により、
(06)
④「全てのx」について、xが象ならば、xは動物である。
然るに、
(07)
⑤ ∀x(象x→動物x).
といふ「論理式」は、
④ 全てのxについて、xが象ならば、xは動物である。
といふ、「意味」である。
従って、
(01)~(07)により、
(08)
① 象は動物である。
といふ「日本語」は、
⑤ ∀x(象x→動物x)=全てのxについて、xが象ならば、xは動物である。
といふ「述語論理」に、「翻訳」される。
然るに、
(09)
AとBは、「命題関数」であって、
A=象x(xは象である)。
B=動物y(yは動物である)。
とする。
然るに、
(10)
(a)
1 (1) A→ B 仮定
2 (2) ~B 仮定
3(3) A 仮定
12 (4) B 13前件肯定
123(5) B&~B 42&導入
12 (6)~A 35背理法
1 (7)~B→~A 26条件法
(b)
1 (1)~B→~A 仮定
2 (2) A 仮定
3(3)~B 仮定
12 (4) ~A 13前件肯定
123(5)~A& A 42&導入
12 (6) B 35背理法
1 (7) A→ B 26条件法
従って、
(10)により、
(11)
① AならばBである。
② BでないならばAでない。
といふ「対偶(Contraposition)」に於いて、
①=② である。
従って、
(09)(10)(11)により、
(12)
① 任意のxについて、xが象であるならば、xは動物である。
② 任意のxについて、xが動物でないならば、xは象ではない。
に於いて。
①=② である。
従って、
(08)(12)により、
(13)
① 象ならば動物である。
② 動物でないならば象でない。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(14)
① 象ならば動物である。
② 動物でないならば象でない。
といふことは、
① 象は動物である。
② 動物以外は象でない。
といふことに、他ならない。
従って、
(14)により、
(15)
① 象は動物である。
② 動物以外は象でない。
に於いて、
①=② である。
従って、
(15)により、
(16)
③ 動物は象である。
④ 象以外は動物でない。
に於いても、
③=④ である。
然るに、
(17)
{ゾウ、ミカン、コタツ}であれば、
{ゾウ}が動物であって、
{ミカン、コタツ}は動物ではない。
然るに、
(18)
{ゾウ、キリン、カバ}であれば、
{ゾウ}が動物である。とは、言へない。
従って、
(17)(18)により、
(19)
{象、麒麟、河馬}ではなく、
{象、蜜柑、炬燵}であれば、
② 象が動物である。
④ 象以外は動物ではない。
に於いて、
②=④ である。
従って、
(16)(19)により、
(20)
② 象が動物である。
③ 動物は象である。
④ 象以外は動物ではない。
に於いて、
②=③=④ である。
然るに、
(21)
② 象が動物である。
① 象は動物ない。
に於いて、
② と ① は、「矛盾」する。
従って、
(21)により、
(22)
② 象が動物である。
① 象は動物である。
に於いて、
② ならば、① である。
従って、
(20)(22)により、
(23)
② 象が動物である=
② 象は動物であり(象以外は動物ではない)。
といふ、「意味」になる。
従って、
(23)により、
(24)
{象、蜜柑、炬燵}に於いて、
② 象が動物である=
② 象は動物であり(象以外は動物ではない)。
といふ、「意味」になる。
然るに、
(25)
{象、蜜柑、炬燵}ではなく、
{象、麒麟、河馬}であれば、
① 象は動物である。
としても、
② 象が動物である=
② 象は動物であり(象以外は動物ではない)。
とは、言へない。
従って、
(24)(25)により、
(26)
① 象は動物である。であるからと言って、
③ 動物は象である。とは、限らない。
従って、
(20)(26)により、
(27)
① 象は動物である。
② 象が動物である。
③ 動物は象である。
④ 象以外は動物ではない。
に於いて、必ずしも、
①=② ではないが、必ず、
②=③=④ である。
従って、
(28)
一般に、
① AはBである。
② AがBである。
③ BはAである。
④ A以外はBでない。
に於いて、必ずしも、
①=② ではないが、必ず、
②=③=④ である。
然るに、
(29)
α:誰が行くのか。
β:私は行きます。
に対して、
γ:私も行きます。
といふのであれば、
βとγが行く。ことなる。
然るに、
(30)
α:誰が行くのか。
β:私は行きます。
に対して、
γ:私が行きます。
といふのであれば、
行くのは、γだけである。
従って、
(29)(30)により、
(31)
α:誰が行くのか。
γ:私が行きます。
といふのであれば、
行くのは、γだけである。
といふことからも、
① AはBである。
② AがBである。
③ BはAである。
④ A以外はBでない。
に於いて、必ずしも、
①=② ではないが、必ず、
②=③=④ である。
といふことは、「疑ふ余地」が無い。
従って、
(31)により、
(32)
② 象がゐる。
といふのであれば、
②(今、私の目の前に、) 象はゐるが(象以外はゐない)。
といふ風に、「理解」することになる。
従って、
(32)により、
(33)
②(今、見てゐる図鑑の中では、)象が鼻は長い。
といふのであれば、
②{象、麒麟、河馬、獅子、大猩猩}等を「比較」する限り、
④ 象の鼻は長く、象以外の鼻は長くない。
といふ「意味」になる。
従って、
(33)により、
(34)
① 象は鼻は長い。
といふのであれば、
①{象}と{象の鼻}だけを見て(思って)、
① 象の鼻は長い。
といふ風に、述べてゐる(思ってゐる)。
従って、
(34)により、
(35)
① 象は鼻は長い。
といふのであれば、
①{象} 以外については、何も述べてゐないし、
①{象の鼻}以外についても、何も述べてはゐない。
従って、
(35)により、
(36)
① 象は鼻は長い。
といふのであれば、
① 象の鼻は長い。としても、象の体の、他の部分が、長いかどうかは、分からない。
然るに、
(37)
① 象の鼻は長い。としても、象の体の、他の部分が、長いかどうかは、分からない。
といふ「日本語」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}=全てのxについて、xが象ならば、あるyはxの鼻であって、yは長い。
といふ風に、訳すことになる。
従って、
(36)(37)により、
(38)
① 象は鼻は長い。
といふ「日本語」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}=全てのxについて、xが象ならば、あるyはxの鼻であって、yは長い。
といふ風に、訳すことになる。
然るに、
(28)(38)により、
(39)
② 象は鼻が長い。
といふのであれば、
①{象} 以外については、何も述べてはゐないものの、
②{象の鼻}以外については、特には長くない。
といふ風に、述べてゐる。
cf.
従って、毛長マンモスは、象ではないし、象の牙も、鼻に比べれば、特別に長いわけではない。
然るに、
(40)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}=全てのxについて、xが象ならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、尚且つ、
② ∀x{象x→∀z(鼻以外zx→~長z)}=全てのxについて、xが象ならば、全てのzについて、zがxの鼻以外の部分ならば、zは長くない。
とするならば、
① 象の鼻は長く、
② 象の体の中の、鼻以外は長くない。
といふ「意味」になる。
従って、
(39)(40)により、
(41)
② 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}&
② ∀x{象x→∀z(鼻以外zx→~長z)}
といふ「述語論理(連言)」に、相当する。
従って、
(41)により、
(42)
② 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}=全てのxについて、xが象ならば、あるyはxの鼻であって、yは長い。
といふ「意味」を、含んでゐる。
然るに、
(43)
SはPである。
という一般的な 主語-述語文は、
Fx Gx
という二つの文で構成されていると考える。そしてこの場合、Fx はもとの文の主語に対応し、Gx は述語に対応していることがわかる。
(沢田允茂、現代論理学入門、1962年、119頁)
従って、
(42)(43)により、
(44)
①「象x」と「鼻yx」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}=全てのxについて、xが象ならば、あるyはxの鼻であって、yは長い。
といふ「述語論理」の「主語」である。
然るに、
(45)
括弧は、論理演算子のスコープ(scope)を明示する働きを持つ。スコープは、論理演算子の働きが及ぶ範囲のことをいう。
(産業図書、数理言語学辞典、2013年、四七頁:命題論理、今仁生美)
従って、
(45)により、
(46)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)}
に於いて、
① x は、
① {象x→∃y(鼻yx&長y)} に、掛ってゐて、
① ∃y(鼻yx&長y)
に於いて、
① yは、
① (鼻yx&長y) に、掛ってゐる。
従って、
(44)(46)により、
(47)
「述語論理」といふ「観点」からすれば、
② 象は鼻は長い。
といふ「日本語」には、
② 象=x
② 鼻=y
といふ、「二つの主語」が、有って、
② 象 は、
② 鼻は長い。 の「主語」であって、
② 鼻 は、
② 長い。 の「主語」である。
といふ、ことになる。
(48)
Q:鼻が長い動物は何か。に対して、
A:象である。 ならば、
② 象は鼻が長い。
に於いて、
② 象 が、
② 鼻が長い。
の「主語」である。
(49)
Q:象の何が長いのか。に対して、
A:鼻である。 ならば、
② 象は鼻が長い。
に於いて、
② 長い。
の「主語」は、
② 鼻 である。
従って、
(41)~(49)により、
(50)
② 象は鼻は長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(鼻以外zx→~長z)}。
といふ「日本語」の「例文」を基にして、「述語論理」といふ「観点」から、「日本語には、主語が無い。」とすることは、出来ない。
然るに、
(51)
教えてくれたのは日本の本好きな友人である。ラヴァル大学で日本語を教えた際に学校文法が役にたたなかったことを、私が以前に手紙でぼやいたのだった。返事の手紙はこう結ばれていた。「送ってあげようか。三上章って人が書いた本だ。タイトルがいいよ。『象は鼻が長い』ってんだ。じゃ健闘を祈る」(金谷武洋、主語をころした男、2006年、36頁)。2017/04/03 - 語学に関係する人なら誰でも一回は見聞きしたと思います。 「象は 鼻が 長い」. この文の主語は何か?ということなのです(Webサイト:京都山科中国語学習会)。
従って、
(41)(50)(51)により、
(52)
② 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(鼻以外zx→~長z)}。
といふ「日本語」には、「明らかに、少なくとも、二つの主語(xとy)が」有るにも、かかはらず、三上章先生は、『象は鼻が長い』といふタイトルの、今でも有名な本の中で、『日本語には、主語が無い。』といふ風に、述べてゐる。
然るに、
(53)
マルチネにとっては(あ)が唯一の「主語の条件」であるが、特に英仏語の様子を勘案しながら、さらに3点を加えてみる。
(あ)基本文に不可欠の要素である。
(い)語順的には、ほとんどの場合、文頭に置かれる。
(う)動詞の人称変化(つまり活用)を起こさせる。
(え)一定のカク(主格)を持って現れる。
(金谷武洋、日本語に主語はいらない、2002年、62頁)
然るに、
(54)
(あ)~(え)が、当てはまるのは、英語やフランス語でいふ「主語」に過ぎず、
(あ)と(い)は、ラテン語やギリシャ語の「主語」には、当てはまらない。
従って、
(53)(54)により、
(55)
(あ)~(え)といふ「条件」に当てはまらないが故に、「日本語には、主語が無い。」といふのであれば、ただ単に、「日本語には、英語やフランス語のやうな『主語』が無い。」といふことに、過ぎない。
従って、
(52)~(55)により、
(56)
② 象 は、文頭であるが、
② 鼻 は、文頭ではないが故に、
② 英仏語 の「基準」からすれば、
② 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(鼻以外zx→~長z)}。
といふ「日本語」には、「英語やフランス語」のやうな『主語』は無い。といふことに、過ぎない。
然るに、
(39)により、
(57)
② 象は鼻が長い。
といふのであれば、
①{象} 以外については、何も述べてはゐないものの、
②{象の鼻}以外については、特には長くない。
といふ風に、述べてゐる。といふことは、要するに、
② 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、「象だけを、話題にしてゐる」。
従って、
(57)により、
(58)
② 象は鼻が長い。
に於ける「話題(トピック)」は、なるほど、「象」である。
然るに、
(59)
② 象は鼻が長い。
に於ける、
② 象 が、「主語」であることと、
② 象は鼻が長い。
に於ける、
② 象は が、「話題(トピック)」であることは、「矛盾」しない。
従って、
(59)により、
(60)
『象は鼻が長い』では、「は」が表わすのはの主語ではなくて「主題(トピック)」だと、主張している。のであれば、さうした主張は「誤り」であって、
『象は鼻が長い』の「象」は、「主語」であって、その上、「主題(トピック)」であると、すべきである。
(61)
「分りやすい例」なので、何度も書くものの、
① これは良いです。
② これが良いです。
③ 良いのはこれです。
④ これ以外は良くない。
に於いて、必ずしも、
①=② ではないが、必ず、
②=③=④ である。
従って、
(61)により、
(62)
商品をいろいろ見せてもらって選択するときに、
② これがいいです。
とは言はずに、敢へて、
① これはいいです。
と言ふのであれば、
③ 良いのはこれです(とは言へない)。
④ これ以外は良くない(とは言へない)。
といふ、「意味」になる。
従って、
(61)(62)により、
(63)
商品をいろいろ見せてもらって選択するときに、
② これが良いです。
と言ふのであれば、
③ 良いのはこれです。 といふ「意味」になり、
④ これ以外は良くない。といふ「意味」になる。
従って、
(62)(63)により、
(64)
商品をいろいろ見せてもらって選択するときに、
① これはいいです。
② これがいいです。
と言ふのであれば、
① これはいいです(他のを見せて下さい)。
② これがいいです(これを下さい)。
③ 良いのはこれです(これを下さい)。
④ これ以外は良くない(これを下さい)。
といふ、「意味」になる。
従って、
(64)により、
(65)
商品をいろいろ見せてもらって選択するときに、
① これはいいです(他のを見せて下さい)。
② これがいいです(これを下さい)。
といふのであれば、
①と②では、「反対の意味」になる。
然るに、
(66)
商品をいろいろ見せてもらって選択するときに、ハとガで意味が反対になることがある。
これはいいです。(不用)
これがいいです。(入用)
ここで異を立てる方にはハを使っているが、述語が同型意義になっている。不用の方はテモイイ、デモイイ(許可)で、入用の方はほめことば(好適)である。つまり、初めの方は「これはもらわ(有償)なくてもいいです」「これは引っ込めてもらっていいです」などの短絡的表現だろう(三上章、日本語の論理、1963年、156・7頁)。
従って、
(61)~(66)により、
(67)
三上章先生は、
① これは良いです。
② これが良いです。
③ 良いのはこれです。
④ これ以外は良くない。
に於いて、必ずしも、
①=② ではないが、必ず、
②=③=④ である。
といふことには、「言及」せずに、
つまり、初めの方は「これはもらわ(有償)なくてもいいです」「これは引っ込めてもらっていいです」などの短絡的表現だろう。
といふ風に、「説明にならない、説明」をしてゐる。
従って、
(67)により、
(68)
三上章先生は、
① これは良いです(他のを見せてください)。
② これが良いです(これを下さい)。
③ 良いのはこれです(これを下さい)。
④ これ以外は良くない(これを下さい)。
に於いて、必ずしも、
①=② ではないが、必ず、
②=③=④ である。
といふ「事実」に、気付いてゐないに、違ひない。
然るに、
(69)
① AはBである。
② AがBである。
③ BはAである。
④ A以外はBでない。
に於いて、必ずしも、
①=② ではないが、必ず、
②=③=④ である。
といふ「基本的な事実」を踏まへないままに、「組み立てられた、日本語の主語に関する理論」が、「正しい」はずがない。
平成30年02月07日、毛利太。
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