(01)
(3)上中下点(上・下、上・中・下)
レ点・一二点だけで示しきれない場合。必ず一二点をまたいで返る場合に用いる(数学の式における( )が一二点で、{ }が上中下点に相当するものと考えるとわかりやすい)。
(原田種成、私の漢文講義、1995年、43頁)
従って、
(01)により、
(02)
下 二 一 上
であれば、
{ ( ) }
である。
従って、
(03)
下 二 一 二 一 上
であれば、
{ ( ) ( ) }
である。
然るに、
(04)
② 秦昭王請以十五城易之。
② 秦昭王請{以(十五城)易(之)}。
に於いて、
請{ }⇒{ }請
以( )⇒( )以
易( )⇒( )易
といふ「移動」を行ふと、
② 秦昭王請{以(十五城)易(之)}⇒
② 秦昭王{(十五城)以(之)易}請=
② 秦昭王{(十五城を)以て(之に)易へんことを}請ふ=
② 秦の昭王は、15の城と、和氏之璧との交換を求めた。
といふ「訓読」になる。
然るに、
(05)
「(レ点を除く)返り点」が、「漢字」に付くといふことは、
「漢字」が、「(レ点を除く)返り点」に付くことと、「同じ」である。
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
{ ( ) ( ) }
といふ「括弧」と、
下 二 一 二 一 上
といふ「返り点」が、「完全に同じ」であるならば、
下 には 請 が付いてゐて、
二 には 以 が付いてゐて、
一 には 城 が付いてゐて、
二 には 易 が付いてゐて、
一 には 之 が付いてゐて、
上 には # が付いてゐる。
然るに、
(07)
② 秦昭王請以十五城易之。
の場合は、
② 秦昭王請{以(十五城)易(之)}。
であって、
② 秦昭王請{以(十五城)易(之)#}。
ではない。
従って、
(08)
② 秦昭王請以十五城易之。
に付く「返り点」は、
② 秦昭王請上以二十五城一易二之一上 。
ではない。
然るに、
(09)
⑥ 秦人有以十五城易之者=
⑥ 秦人有{以(十五城)易(之)者}。
に於いて、
有{ }⇒{ }有
以( )⇒( )以
易( )⇒( )易
といふ「移動」を行ふと、
⑥ 秦人有{以(十五城)易(之)者}⇒
⑥ 秦人に{(十五城を)以て(之に)易る者}有り=
⑥ 秦の国の人に、15の城と、和氏の璧とを交換する者がゐた。
然るに、
(10)
⑥ 秦人有下以二十五城一易二之一者上。
であるため、この場合は、
⑥ 下 二 一 二 一 上
でも良い、はずである。
然るに、
(11)
実際には、
従って、
(11)により、
(12)
① 秦昭王請以城易之。
② 秦昭王請以十五城易之。
③ 秦昭王請以城易和氏之璧。
④ 秦昭王請以十五城易和氏之璧。
⑤ 秦人有以城易之者。
⑥ 秦人有以十五城易之者。
⑦ 秦人有以城易和氏之璧者。
⑧ 秦人有以十五城易和氏之璧者。
に付く、学校で習ふ所の「返り点」は、
① 二 レ 一レ
② 下 二 一 上レ
③ 三 レ 二 一
④ 下 二 一 中 上
⑤ 二 レ レ 一
⑥ 下 二 一 レ 上
⑦ 下 レ 二 一 上
⑧ 下 二 一 二 一 上
といふ「返り点」が、「正しい」。
然るに、
(13)
① 秦昭王請以城易之。
② 秦昭王請以十五城易之。
③ 秦昭王請以城易和氏之璧。
④ 秦昭王請以十五城易和氏之璧。
⑤ 秦人有以城易之者。
⑥ 秦人有以十五城易之者。
⑦ 秦人有以城易和氏之璧者。
⑧ 秦人有以十五城易和氏之璧者。
に対する、「括弧」は、もちろん、すべて、
①{ ( )( ) }
②{ ( )( ) }
③{ ( )( ) }
④{ ( )( ) }
⑤{ ( )( ) }
⑥{ ( )( ) }
⑦{ ( )( ) }
⑧{ ( )( ) }
である。
従って、
(03)(11)(12)(13)により、
(14)
①{ ( )( ) }
といふ「括弧」は、「返り点」であれば、
⑧ 下 二 一 二 一 上
といふ「1種類の、返り点」が、
① 二 レ 一レ
② 下 二 一 上レ
③ 三 レ 二 一
④ 下 二 一 中 上
⑤ 二 レ レ 一
⑥ 下 二 一 レ 上
⑦ 下 レ 二 一 上
⑧ 下 二 一 二 一 上
といふ「8種類の、返り点」の「役割」を担ってゐる。
従って、
(14)により、
(15)
「返り点」は、「括弧」よりも、「8倍、複雑」である。
然るに、
(16)
(1)レ
下の一字から上の一字に返る場合に用いる。
(2)一二点(一・二・三・・・・・・)二字以上隔てて返る場合。
(原田種成、私の漢文講義、1995年、41・42頁改)
然るに、
(17)
(2)一二点(一・二・三・・・・・・)二字以上隔てて返る場合。ではなく、
(〃)一二点(一・二・三・・・・・・)一字以上隔てて返る場合。であっても、障支はない。
従って、
(14)(16)(17)により、
(18)
① 二 レ 一レ
② 下 二 一 上レ
③ 三 レ 二 一
といふ「返り点」は、
④ 下 二 一 中 上
といふ「返り点」に、「換へる」ことが、出来るし、
⑤ 二 レ レ 一
⑥ 下 二 一 レ 上
⑦ 下 レ 二 一 上
といふ「返り点」は、
⑧ 下 二 一 二 一 上
といふ「返り点」に、「換へる」ことが、出来る。
然るに、
(19)
④ 下{二(一)中(上)}。
に於いて、
下{ }⇒{ }下
二( )⇒( )二
中( )⇒( )中
といふ「移動」を行ふと、
④ 下{二(一)中(上)}⇒
④ {(一)二(上)中}下=
④ 一 二 上 中 下。
であることは、
④ 下{二(一)中(上)#}。
といふことからすれば、「当然」である。
従って、
(01)~(19)により、
(20)
数学の式における( )が一二点で、{ }が上下点に相当する。
とするならば、
① 二 レ 一レ
② 下 二 一 上レ
③ 三 レ 二 一
④ 下 二 一 中 上
⑤ 二 レ レ 一
⑥ 下 二 一 レ 上
⑦ 下 レ 二 一 上
⑧ 下 二 一 二 一 上
といふ「返り点」は、
⑧ 下 二 一 二 一 上
といふ「返り点」である所の、
①{ ( )( ) }
に「置き換へ」ることが、出来る。
然るに、
(21)
ぶりぶりざえもんさん2010/7/2320:43:43
漢文の朝三暮四で
恐(二) 衆 狙 之 不 (一レ) 馴 (二) 於 己(一) 也、・・・ という文がありました。
この文を帰り点に従って訓読すると「衆狙の馴れざらんことを恐るる己に馴れ也、・・・」となり
「馴」を二回読んでしまうのですがこれは正しいですか。
()内は返り点です。
従って、
(21)により、
(22)
ぶりぶりざえもんさん は、
⑨ 恐二衆狙之一レ不二馴於己一也。
といふ、「返り点」、すなはち、
⑨ 二 一レ 二 一
といふ「返り点」を、理解できないものの、
⑨ 恐二衆狙之一レ不二馴於己一也。
⑨ 恐四衆狙之三 不二馴於己一也。
であるため、
⑨ 二 一レ 二 一
といふ「返り点の、語順」は、実際に、
⑨ 四 三 二 一
といふ「返り点の、語順」と、「同じ」である。
従って、
(20)(21)(22)により、
(23)
① 二 レ 一レ
のやうな「返り点」があるため、「その応用」として、本来は、
⑨ 四 三 二 一
に過ぎないにも拘らず、
⑨ 二 一レ 二 一
といふ「変な、返り点」が、出来てしまふ。
従って、
(24)
私自身は、
(Ⅰ)一レ 上レ 甲レ 天レ
(Ⅱ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・・・・・
(Ⅲ)上 中 下
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅴ)天 地 人
からなる「返り点」は、「非合理的」である。
と思ってゐる。
しかしながら、
(25)
実際に、「世の中」に流通してゐるのは、
{ [ 〔 ( )〕 ] }
といふ「括弧」ではなく、「返り点」である上に、
① 秦昭王請{以(城)易(之)}。
② 秦昭王請{以(十五城)易(之)}。
③ 秦昭王請{以(城)易(和氏之璧)}。
④ 秦昭王請{以(十五城)易(和氏之璧)}。
⑤ 秦人有{以(城)易(之)者}。
⑥ 秦人有{以(十五城)易(之)者}。
⑦ 秦人有{以(城)易(和氏之璧)者}。
⑧ 秦人有{以(十五城)易(和氏之璧)者}。
といふ「括弧」が読めたとしても、
① 秦昭王請二
以レ
城
易一レ
之。
② 秦昭王請下
以二
十五城一
易上レ
之。
③ 秦昭王請三
以レ
城
易二
和氏之璧一
。
④ 秦昭王請下
以二
十五城一
易中
和氏之璧上
。
⑤ 秦人有二
以レ
城
易レ
之
者一
。
⑥ 秦人有下
以二
十五城一
易レ
之
者上
。
⑦ 秦人有下
以レ
城
易二
和氏之璧一
者上
。
⑧ 秦人有下
以二
十五城一
易二
和氏之璧一
者上
。
といふ「返り点」が読めなければ、「試験」には、「合格」しない。
従って、
(24)(25)により、
(26)
(Ⅰ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
(Ⅱ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・・・・・
(Ⅲ)上 中 下
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅴ)天 地 人
からなる「返り点」が、「いくら、非合理的」であったとしても、「読めない」。
といふわけには、行かない。
令和02年03月16日、毛利太。
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