2020年3月22日日曜日

「括弧」と「返り点」(22)―「返り点」と「補足構造」―。

(01)
① 我非必求以解中文法解漢文事者=
① 我非{必求[以〔解(中文)法〕解(漢文)事]者}。
に於いて、
非{ }⇒{ }非
求[ ]⇒[ ]求
以〔 〕⇒〔 〕以
解( )⇒( )解
解( )⇒( )解
といふ「移動」を行ふと、
① 我非必求以解中文法解漢文事者=
① 我非{必求[以〔解(中文)法〕解(漢文)事]者}⇒
① 我{必[〔(中文)解法〕以(漢文)解事]求者}非=
① 我は{必ずしも[〔(中文を)解する法を〕以て(漢文を)解する事を]求むる者に}非ず。
といふ「漢文訓読」が、成立する。
然るに、
(02)
② 我不必求以解中文解漢文=
② 我不{必求[以〔解(中文)〕解(漢文)]}。
不{ }⇒{ }不
求[ ]⇒[ ]求
以〔 〕⇒〔 〕以
解( )⇒( )解
解( )⇒( )解
といふ「移動」を行ふと、
② 我不{必求[以〔解(中文)〕解(漢文)]}⇒
② 我{必[〔(中文)解〕以(漢文)解]求}不=
② 我{は必ずしも[〔(中文を)解するを〕以て(漢文を)解するを]求め}不。
といふ「漢文訓読」が、成立する。
然るに、
(03)
① 我 非 必 求 以 解 中 文 法 解 漢 文 事 者。
に於ける、
①                        法     事 者
の3つは、「被修飾語」である。
従って、
(03)により、
(04)
① 我 非 必 求 以 解 中 文 法 解 漢 文 事 者。
といふ「漢文」から、
①                        法     事 者
の3つの、「被修飾語」を除いても、
① 我 非 必 求 以 解 中 文 法 解 漢 文 事 者。
といふ「漢文の、補足構造」は、「不変」である。
従って、
(04)により、
(05)
① 我 非 必 求 以 解 中 文 法 解 漢 文 事 者。
② 我 不 必 求 以 解 中 文 解 漢 文。
といふ「漢文の、補足構造」自体は、「同じ」である。
然るに、
(06)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(01)~(06)により、
(07)
① 我 非 必 求 以 解 中 文 法 解 漢 文 事 者。
② 我 不 必 求 以 解 中 文 解 漢 文。
といふ「漢文」に付く所の、
①{ [ 〔 ( ) 〕( ) ] }
②{ [ 〔 ( ) 〕( ) ] }
といふ「括弧」は、
① 我 非 必 求 以 解 中 文 法 解 漢 文 事 者。
② 我 不 必 求 以 解 中 文 解 漢 文。
といふ「漢文の、補足構造」を、表してゐる。
然るに、
(08)
① 我非必求以解中文法解漢文事者=
① 我非必求中文漢文
① 我必中文漢文
① 我は必ずしも中文を解する法を以て漢文を解する事を求むる者に非ず。
従って、
(01)(08)により、
(09)
二 一 は、( )であって、
下 上 は、〔 〕であって、
乙 甲 は、[ ]であって、
地 天 は、{ }である。
従って、
(01)(08)(09)により、
(10)
① 我非{必求[以〔解(中文)法〕解(漢文)事]者}。
① 我非必求中文漢文
に於ける、
①  {  [ 〔 (  ) 〕 (  ) ] }
①  地  乙 下 二  一 上 二  一 甲 天
といふ「括弧」と「返り点」は、「同じ」である。
従って、
(07)(10)により、
(11)
① 我非必求中文漢文
である所の、
① 地 乙 下 二 一 上 二 一 甲 天
といふ「返り点」もまた、
① 我 非 必 求 以 解 中 文 法 解 漢 文 事 者。
といふ「漢文の、補足構造」を表してゐる。
従って、
(07)~(11)により、
(12)
② 我 不 必 求 以 解 中 文 解 漢 文。
といふ「漢文」に対しても、
② 地 乙 下 二 一 上 二 一 甲 天
といふ「返り点」が付くのであれば、そのときに限って
② 我 不 必 求 以 解 中 文 解 漢 文。
といふ「漢文」に付く「返り点」もまた、
② 我 不 必 求 以 解 中 文 解 漢 文。
といふ「漢文の、補足構造」を表してゐる。
然るに、
(13)
② 我不必求以解中文解漢文=
② 我不必求中文漢文
② 我不必求中文漢文
② 我必中文漢文
② 我必ずしも中文を解するを以て漢文を解するを求め不
従って、
(13)により、
(14)
② 我 不 必 求 以 解 中 文 解 漢 文。
に付く「返り点」は、
② 丁 丙 レ 二 一 乙 甲
であって、
② 地 乙 下 二 一 上 二 一 甲 天
ではない
従って、
(12)(14)により、
(15)
例へば、
② 我不必求以解中文解漢文=
② 我不必求中文漢文
に於ける、
② 丁 丙 レ 二 一 乙 甲
といふ「返り点」は、
② 我不必求以解中文解漢文。
といふ「漢文の、補足構造」を表してはゐない
令和02年03月22日、毛利太。

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