―「昨日(令和02年03月16日)」の「記事」を補足します。―
(01)
従って、
(02)
① 秦昭王請以城易之。
② 秦昭王請以十五城易之。
③ 秦昭王請以城易和氏之璧。
④ 秦昭王請以十五城易和氏之璧。
⑤ 秦人有以城易之者。
⑥ 秦人有以十五城易之者。
⑦ 秦人有以城易和氏之璧者。
⑧ 秦人有以十五城易和氏之璧者。
に付く「返り点」は、
① 二 レ 一レ
② 下 二 一 上レ
③ 三 レ 二 一
④ 下 二 一 中 上
⑤ 二 レ レ 一
⑥ 下 二 一 レ 上
⑦ 下 レ 二 一 上
⑧ 下 二 一 二 一 上
といふ「返り点」が、「正しい」。
然るに、
(03)
① 請{以(城)易(之)}。
に於いて、
請{ }⇒{ }請
以( )⇒( )以
易( )⇒( )易
といふ「移動」を行ふと、
① 請{以(城)易(之)}⇒
① {(城)以(之)易}請=
① {(城を)以て(之に)易へんことを}請ふ。
従って、
(03)により、
(04)
④ 秦昭王請{以(十五城)易(和氏之壁)}。
に於いて、
請{ }⇒{ }請
以( )⇒( )以
易( )⇒( )易
といふ「移動」を行ふと、
④ 秦昭王請{以(十五城)易(和氏之壁)}⇒
④ 秦昭王{(十五城)以(和氏之壁)易}請=
④ 秦の昭王 {(十五城を)以て(和氏の壁)易へんことを}請ふ。
然るに、
(05)
⑤ 有{以(城)易(之)者}。
に於いて、
請{ }⇒{ }請
以( )⇒( )以
易( )⇒( )易
といふ「移動」を行ふと、
⑤ 有{以(城)易(之)者}⇒
⑤ {(城)以(之)易者}有=
⑤ {(城を)以て(之に)易ふる者}有り。
従って、
(05)により、
(06)
⑧ 秦人有{以(十五城)易(和氏之壁)者}。
に於いて、
請{ }⇒{ }請
以( )⇒( )以
易( )⇒( )易
といふ「移動」を行ふと、
⑧ 秦人有{以(十五城)易(和氏之壁)者}⇒
⑧ 秦人{(十五城)以(和氏之壁)易者}有=
⑧ 秦人に{(十五城を)以て(和氏の壁に)易ふる者}有り。
然るに、
(07)
① 秦昭王請{以(城)易(之)}。
② 秦昭王請{以(十五城)易(之)。
③ 秦昭王請{以(城)易(和氏之璧)}。
④ 秦昭王請{以(十五城)易(和氏之璧)}。
⑤ 秦人有{以(城)易(之)者}。
⑥ 秦人有{以(十五城)易(之)者}。
⑦ 秦人有{以(城)易(和氏之璧)者。
⑧ 秦人有{以(十五城)易(和氏之璧)者}。
から、「主語」を除くと、
① 請{以(城)易(之)}。
② 請{以(十五城)易(之)。
③ 請{以(城)易(和氏之璧)}。
④ 請{以(十五城)易(和氏之璧)}。
⑤ 有{以(城)易(之)者}。
⑥ 有{以(十五城)易(之)者}。
⑦ 有{以(城)易(和氏之璧)者。
⑧ 有{以(十五城)易(和氏之璧)者}。
(08)
① 請{以(城)易(之)}。
② 請{以(十五城)易(之)。
③ 請{以(城)易(和氏之璧)}。
④ 請{以(十五城)易(和氏之璧)}。
⑤ 有{以(城)易(之)者}。
⑥ 有{以(十五城)易(之)者}。
⑦ 有{以(城)易(和氏之璧)者。
⑧ 有{以(十五城)易(和氏之璧)者}。
から、「修飾語」を除くと、
① 請{以(城)易(之)}。
② 請{以(城)易(之)。
③ 請{以(城)易(璧)}。
④ 請{以(城)易(璧)}。
⑤ 有{以(城)易(之)者}。
⑥ 有{以(城)易(之)者}。
⑦ 有{以(城)易(璧)者。
⑧ 有{以(城)易(璧)者}。
然るに、
(09)
繰り返し、書いて来た通り、
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓読は、国語の語順に置きかえて読むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている(鈴木直治、中国語と漢文、1975年、296頁)。
従って、
(03)~(09)により、
(10)
① 秦昭王請{以(城)易(之)}。
② 秦昭王請{以(十五城)易(之)}。
③ 秦昭王請{以(城)易(和氏之璧)}。
④ 秦昭王請{以(十五城)易(和氏之璧)}。
⑤ 秦人有{以(城)易(之)者}。
⑥ 秦人有{以(十五城)易(之)者}。
⑦ 秦人有{以(城)易(和氏之璧)者。
⑧ 秦人有{以(十五城)易(和氏之璧)者}。
に於ける、
①{ ( )( ) }
②{ ( )( ) }
③{ ( )( ) }
④{ ( )( ) }
⑤{ ( )( ) }
⑥{ ( )( ) }
⑦{ ( )( ) }
⑧{ ( )( ) }
といふ「1種類の括弧」は、
(ⅰ)「漢文の補足構造」を表すと「同時」に、
(ⅱ)「漢文訓読の語順」を表してゐる。
従って、
(02)(10)により、
(11)
① 秦昭王請二以レ城易一レ之。
② 秦昭王請下以二十五城一易上レ之。
③ 秦昭王請三以レ城易二和氏之璧一。
④ 秦昭王請下以二十五城一易中和氏之璧上。
⑤ 秦人有二以レ城易レ之者一。
⑥ 秦人有下以二十五城一易レ之者上。
⑦ 秦人有下以レ城易二和氏之璧一者上。
⑧ 秦人有下以二十五城一易二和氏之璧一者上。
に於ける、
① 二 レ 一レ
② 下 二 一 上レ
③ 三 レ 二 一
④ 下 二 一 中 上
⑤ 二 レ レ 一
⑥ 下 二 一 レ 上
⑦ 下 レ 二 一 上
⑧ 下 二 一 二 一 上
といふ「8種類の返り点」は、⑧ を除いて、
(ⅱ)「漢文訓読の語順」だけを、表してゐる。
(12)
「(レ点を除く)返り点」が、「漢字」に付くといふことは、
「漢字」が、「(レ点を除く)返り点」に付くことと、「同じ」である。
従って、
(10)(12)により、
(13)
① 秦昭王請{以(城)易(之)}。
② 秦昭王請{以(十五城)易(之)}。
③ 秦昭王請{以(城)易(和氏之璧)}。
④ 秦昭王請{以(十五城)易(和氏之璧)}。
の場合は、
① 秦昭王請{以(城)易(之)#}。
② 秦昭王請{以(十五城)易(之)#}。
③ 秦昭王請{以(城)易(和氏之璧)#}。
④ 秦昭王請{以(十五城)易(和氏之璧)#}。
でなければ、
① 下 二 一 二 一 上
② 下 二 一 二 一 上
③ 下 二 一 二 一 上
④ 下 二 一 二 一 上
といふ「返り点」を付けることは、出来ない。
従って、
(13)により、
(14)
レ点・一二点だけで示しきれない場合。必ず一二点をまたいで返る場合に用いる(数学の式における( )が一二点で、{ }が上中下点に相当するものと考えるとわかりやすい)。
(原田種成、私の漢文講義、1995年、43頁)
とは言ふものの、
① 下 二 一 二 一 上 と、
① { ( ) ( ) } は、「同じ」ではない。
然るに、
(15)
⑨ 恐二衆狙之一レ不二馴於己一也。
⑨ 恐四衆狙之三 不二馴於己一也。
であるため、
⑨ 二 一レ 二 一
といふ「返り点の、語順」は
⑨ 四 三 二 一
といふ「返り点の、語順」と、「同じ」である。
然るに、
(16)
従って、
(16)により、
(17)
⑩ 下 二 一 上レ 下 二 一 レ 上レ 二 一
といふ「極めて読みにくい、返り点の語順」は、
⑩ 己 二 一 戊 丁 二 一 二 一 丙 乙 甲
といふ「返り点の、語順」と、「同じ」である。
従って、
(15)(16)(17)により、
(18)
(Ⅰ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
(Ⅱ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・・・・・
(Ⅲ)上 中 下
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅴ)天 地 人
といふ「返り点のセット」から、
(Ⅰ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
を「削除」すれば、それだけでも、「返り点」は、「頗る、読みやすいもの」なる。
然るに、
(19)
⑩ 是以大學始敎必使學者即凡天下之物莫不因其已知之理而益極之以求至乎其極=
⑩ 是以、大學始敎、必使〈學者即(凡天下之物)、莫{不[因(其已知之理)、而益極(之)、以求〔至(乎其極)〕]}〉⇒
⑩ 是以、大學始敎、必〈學者(凡天下之物)即、{[(其已知之理)因、而益(之)極、以〔(乎其極)至〕求]不}莫〉使=
⑩ 是を以て、大學の始敎は、必ず〈學者をして(凡そ天下の物に)即きて、{[(其の已に知るの理に)因って、益々(之を)極め、以て〔(其の極に)至るを〕求め]不るを}莫から〉使む=
⑩ そのため、大學の敎へを始める際には、必ず〈學者をして(凡そ天下の物に)ついて、{[(その學者がすでに知っているの理に)依って、益々(これを)極め、以て〔(その極点に)至ることを〕求め]ないことが}無いやうに〉させる。
従って、
(10)(19)により、
(20)
⑩ 是以、大學始敎、必使〈學者即(凡天下之物)、莫{不[因(其已知之理)、而益極(之)、以求〔至(乎其極)〕]}〉
に於ける、
⑩〈 ( ){ [( )( )〔 ( ) 〕 ] } 〉
といふ「括弧」は、
⑩ 是以大學始敎必使學者即凡天下之物莫不因其已知之理而益極之以求至乎其極。
といふ「漢文」の、
(ⅰ)「 補足構造 」を表すと「同時」に、
(ⅱ)「訓読の語順」を示してゐる。
(21)
(Ⅰ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
(Ⅱ)一 二 三 四 五 六 七 八 九 十 ・・・・・
(Ⅲ)上 中 下
(Ⅳ)甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸
(Ⅴ)天 地 人
に於いて、「一番難しい」のは、実は、
(Ⅰ)レ 一レ 上レ 甲レ 天レ
である。
従って、
(22)
「返り点」が「苦手な人」に対しては、「最初」に、
⑨ 四 三 二 一
⑩ 己 二 一 戊 丁 二 一 二 一 丙 乙 甲
といふ「(レ点を除く)返り点」を付けてみて、その上で、
⑨ 四 三 二 一
⑩ 己 二 一 戊 丁 二 一 二 一 丙 乙 甲
といふ「(レ点を除く)返り点」を、
⑨ 二 一レ 二 一レ
⑩ 下 二 一 上レ 下 二 一 レ 上レ 二 一
といふ「(レ点の含む)返り点」に、「付け直す」ことを、勧めたい。
(23)
つい最近も、引用したものの、
中国の口語文(白話文)も、漢文とおなじように漢字を使っていますが、もともと二つのちがった体系で、単語も文法もたいへんちがうのですから、いっしょにあつかうことはできません。漢文と中国語は別のものです(魚返善雄、漢文入門、1966年、17頁)。しからば、口語はAxByであるものを、文章語はABとつづめても、これはこれで完全な文となり得る。かくして記載語のABは、はじめから口語のAxByとは別のものとして発生し、存在したと思われる(吉川幸次郎、漢文の話、1962年、59頁)。
従って、
(23)により、
(24)
漢文は昔の中国語なので、中国語の文法で書かれています(みかちー)。
といふのは、本当ではない。
(25)
まず、そもそも返り点とは何なのか?ということを見ていきましょう。
返り点とは、一言でいうと、「漢文をむりやり並び替えて、日本語のように読むための記号」です(みかちー)。
といふのも、本当ではない。
(26)
「括弧」と「返り点」(12)。
を読んでくれた人であれば、分かってもらえる通り、例へば、
⑪ Who(are{you)}? を、
⑪ あなた誰ですか。 と「読む」のであれば、「英文をむりやり並び替えて、日本語の語順で読んでゐる」ことになる一方で、
⑩ 是以、大學始敎、必使〈學者即(凡天下之物)、莫{不[因(其已知之理)、而益極(之)、以求〔至(乎其極)〕]}〉。
といふ「漢文」を、
⑩ 是を以て、大學の始敎は、必ず〈學者をして(凡そ天下の物に)即きて、{[(其の已に知るの理に)因って、益々(之を)極め、以て〔(其の極に)至るを〕求め]不るを}莫から〉使む。
といふ「語順」で読んだとしても、「漢文の補足構造」と「日本語の補足構造」に従って、読んでゐるのであって、そのため、「漢文をむりやり並び替えて、日本語の語順で読んでゐる。」といふことには、ならない。
令和02年03月17日、毛利太。
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