2019年5月9日木曜日

「伯楽不常有(部分否定)」と「伯楽常不有(全部否定)」の「述語論理」。

―「返り点と括弧」に関しては、『「返り点」と「括弧」の関係(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html)』他をお読み下さい。―
(01)
{a、b、c}が「変域(ドメイン)」であるとき、
① ~∀x( Fx)=~(Fa&Fb&Fc)
然るに、
(02)
「ド・モルガンの法則」により、
① ~∀x( Fx)=~( Fa& Fb& Fc)=(~Fa∨~Fb∨~Fc)
然るに、
(03)
②   ∃x(~Fx)= (~Fa∨~Fb∨~Fc)
従って、
(02)(03)により、
(04)
① ~∀x( Fx)=~( Fa& Fb& Fc)=(~Fa∨~Fb∨~Fc)
②   ∃x(~Fx)= (~Fa∨~Fb∨~Fc)
に於いて、
①=② である。
然るに、
(05)
③  ∀x( Fx)= ( Fa& Fb& Fc)
④ ~∃x(~Fx)=~(~Fa∨~Fb∨~Fc)
然るに、
(06)
「ド・モルガンの法則と、二重否定」により、
④ ~∃x(~Fx)=~(~Fa∨~Fb∨~Fc)=(~~Fa&~~Fb&~~Fc)=( Fa& Fb& Fc)
従って、
(05)(06)により、
(07)
③  ∀x( Fx)= ( Fa& Fb& Fc)
④ ~∃x(~Fx)=~(~Fa∨~Fb∨~Fc)=(~~Fa&~~Fb&~~Fc)=( Fa& Fb& Fc)
に於いて、
③=④ である。
従って、
(07)により、
(08)
⑤  ∀x( ~Fx)= ( ~Fa& ~Fb& ~Fc)
⑥ ~∃x(~~Fx)=~(~~Fa∨~~Fb∨~~Fc)
に於いて、
⑤=⑥ である。
従って、
(09)
「二重否定」により、
⑤  ∀x( ~Fx)= (~Fa&~Fb&~Fc)
⑥ ~∃x(  Fx)=~( Fa∨ Fb∨ Fc)
従って、
(04)(07)(09)により、
(10)
① ~∀x( Fx)=~( Fa& Fb& Fc)=(~Fa∨~Fb∨~Fc)
②   ∃x(~Fx)= (~Fa∨~Fb∨~Fc)
③  ∀x( Fx)= ( Fa& Fb& Fc)
④ ~∃x(~Fx)=~(~Fa∨~Fb∨~Fc)=( Fa& Fb& Fc)
⑤  ∀x(~Fx)= (~Fa&~Fb&~Fc)
⑥ ~∃x( Fx)=~( Fa∨ Fb∨ Fc)
に於いて、
①=② であって、
③=④ であって、
⑤=⑥ であるものの、このこと他を、「量化子の関係」と言ふ。
然るに、
(11)
(ⅰ)
1 (1)~∀x(馬喰x→ 伯楽x) A
1 (2)∃x~(馬喰x→ 伯楽x) 1量化子の関係
 3(3)  ~(馬喰a→ 伯楽a) A
 3(4) ~(~馬喰a∨ 伯楽a) 3含意の定義
 3(5) ~~馬喰a& ~伯楽a  4ド・モルガンの法則
 3(6)   馬喰a& ~伯楽a  5DN
 3(7)∃x(馬喰x& ~伯楽x) 6EI
1 (8)∃x(馬喰x& ~伯楽x) 237EE
(ⅱ)
1 (1)∃x(馬喰x& ~伯楽x) A
 2(2)   馬喰a& ~伯楽a  A
 2(3)~~(馬喰a& ~伯楽a) 2DN
 2(4)~(~馬喰a∨~~伯楽a) 3ド・モルガンの法則
 2(5)~(~馬喰a∨  伯楽a) 4DN
 2(6)  ~ 馬喰a→ 伯楽a) 5含意の定義
 2(7)∃x~(馬喰x→ 伯楽x) 6EI
1 (8)∃x~(馬喰x→ 伯楽x) 127EE
1 (9)~∀x(馬喰x→ 伯楽x) 8量化子の関係
(12)
(ⅲ)
1(1)   ∀x(馬喰x→~伯楽x) A
1(2)      馬喰a→~伯楽a  1UE
1(3)     ~馬喰a∨~伯楽a  2含意の定義
1(4)    ~(馬喰a& 伯楽a) 3ド・モルガンの法則
1(5)  ∀x~(馬喰x& 伯楽x) 4UI
1(6)~∃x~~(馬喰x& 伯楽x) 4量化子の関係
1(7)  ~∃x(馬喰x& 伯楽x) 6DN
(ⅳ)
1(1)  ~∃x(馬喰x& 伯楽x) A
1(2)  ∀x~(馬喰x& 伯楽x) 1量化子の関係
1(3)    ~(馬喰a& 伯楽a) 2UE
1(4)     ~馬喰a∨~伯楽a  3ド・モルガンの法則
1(5)      馬喰a→~伯楽a  4含意の定義
1(6)   ∀x(馬喰x→~伯楽x) 5UI
従って、
(11)(12)により、
(13)
① ~∀x(馬喰x→ 伯楽x)=すべてのxについて、xが馬喰であるならば、xは伯楽である。といふわけではない。
②  ∃x(馬喰x&~伯楽x)=あるxは馬喰であって、伯楽でない(伯楽ではない、馬喰が存在する)。
③   ∀x(馬喰x→~伯楽x)=すべてのxについて、xが馬喰であるならば、xは伯楽ではない。
④ ~∃x(馬喰x& 伯楽x)=あるxが馬喰であって、伯楽である。といふことはない(伯楽である馬喰は、存在しない)。
に於いて、
①=② であって、
③=④ である。
然るに、
(14)
{a、b、c}を「馬喰の変域(ドメイン)」とするとき、
②  ∃x(馬喰x&~伯楽x)= (~伯楽a∨~伯楽b∨~伯楽c)
④ ~∃x(馬喰x& 伯楽x)=~( 伯楽a∨ 伯楽b∨ 伯楽c)
である。
従って、
(14)により、
(15)
「ドモルガンの法則」により、
②  ∃x(馬喰x&~伯楽x)=(~伯楽a∨~伯楽b∨~伯楽c)
④ ~∃x(馬喰x& 伯楽x)=(~伯楽a&~伯楽b&~伯楽c)
然るに、
(16)
②  ∃x(馬喰x&~伯楽x)=(~伯楽a∨~伯楽b∨~伯楽c)
であれば、例へば、       (  伯楽a& 伯楽b& 伯楽c)
であれば、「偽」であるが、     ( 伯楽a&~伯楽b&~伯楽c)
であれば、「真」である。
従って、
(14)(16)により、
(17)
{a、b、c}を「馬喰の変域(ドメイン)」とするとき、
②  ∃x(馬喰x&~伯楽x)=(~伯楽a∨~伯楽b∨~伯楽c)
であれば、例へば、 
② 馬喰aは伯楽である。
② 馬喰bは伯楽ではない
② 馬喰cも伯楽ではない
といふ場合に於いて、「」である。
従って、
(18)
{a、b、c}を「馬喰の変域(ドメイン)」とするとき、
②  ∃x(馬喰x&~伯楽x)=(~伯楽a∨~伯楽b∨~伯楽c)
であれば、
② 三人の内の、一人は伯楽であり、他の二人は伯楽でない
のであれば、その場合は、「」である。
従って、
(19)
②  ∃x(馬喰x&~伯楽x)=(~伯楽a∨~伯楽b∨~伯楽c)
であれば、
②「部分否定」である。
従って、
(13)(19)により、
(20)
① ~∀x(馬喰x→ 伯楽x)=すべてのxについて、xが馬喰であるならば、xは伯楽である。といふわけではない。
②  ∃x(馬喰x&~伯楽x)=あるxは馬喰であって、伯楽でない(伯楽ではない、馬喰が存在する)。
に於いて、
①=② は、「部分否定」である。
然るに、
(15)により、
(21)
{a、b、c}を「馬喰の変域(ドメイン)」とするとき、
④ ~∃x(馬喰x& 伯楽x)=(~伯楽a&~伯楽b&~伯楽c)
であれば、
④ 三人の内の、三人とも伯楽でない。
ならば、そのときに限って、「」である。
従って、
(13)(21)により、
(22)
③   ∀x(馬喰x→~伯楽x)=すべてのxについて、xが馬喰であるならば、xは伯楽ではない。
④ ~∃x(馬喰x& 伯楽x)=あるxが馬喰であって、伯楽である。といふことはない(伯楽である馬喰は、存在しない)。
に於いて、
③=④ は、「全部否定」である。
然るに、
(23)
①「有」は「他動詞的」であって、
②「在」は「自動詞的」である。
従って、
(23)により、
(24)
① 伯楽不常有。
② 伯楽不常在。
であれば、
① よりも、
② の方が、分かり易い。
然るに、
(25)
「不常~」「常ニハ~ず」と読み、「いつも~とはかぎらない」の意を示す一部否定の形。全部否定は「常不」の形で「常に~ず」と読み、「いつもからなず~ない」の意を表す。
(旺文社、漢文の基礎、1973年、155頁)
然るに、
(26)
① 伯楽不常有=
① 伯楽不(常有)=
① 伯楽(常有)不⇒
① 伯楽は(常には有)ず。
(27)
③ 伯楽常不有=
③ 伯楽常不(有)⇒
③ 伯楽常(有)不=
③ 伯楽は常に(有ら)ず。
従って、
(20)(22)(25)(26)(27)により、
(28)
① 伯楽不常有=伯楽は常には有ず。
といふ「漢文・訓読」は、それぞれ、
① ~∀x(馬喰x→ 伯楽x)=すべてのxについて、xが馬喰であるならば、xは伯楽である。といふわけではない。
②  ∃x(馬喰x&~伯楽x)=あるxは馬喰であって、伯楽でない(伯楽ではない、馬喰が存在する)。
といふ「述語論理・訓読」に対応し、
③ 伯楽常不有=伯楽は常に有ず。
といふ「漢文・訓読」は、
① ~∀x(馬喰x→ 伯楽x)=すべてのxについて、xが馬喰であるならば、xは伯楽である。といふわけではない。
②  ∃x(馬喰x&~伯楽x)=あるxは馬喰であって、伯楽でない(伯楽ではない、馬喰が存在する)。
といふ「述語論理・訓読」に対応する。
然るに、
(29)
因みに言ふと、
① 伯楽不常有。
といふ「漢文」は、
① 伯楽不常有=
① 伯楽不〔常(有)〕⇒
① 伯楽〔(有)常〕不=
① 伯楽は〔(有ること)常なら〕ず。
といふ風に、読むことも、可能であるし、
③ 伯楽常不有。
といふ「漢文」は、
③ 伯楽常不有=
③ 伯楽常〔不(有)〕⇒
③ 伯楽〔(有)不〕常=
③ 伯楽は〔(有ら)ざること〕常なり。
といふ風に、読むことも、可能であり、この方が、分かり易い。
cf.
原田種臣、私の漢文講義、1995年、56頁。
(30)
(ⅰ)
1 (1)~∀x(馬喰x→ 伯楽x) A
1 (2)∃x~(馬喰x→ 伯楽x) 1量化子の関係
 3(3)  ~(馬喰a→ 伯楽a) A
 3(4) ~(~馬喰a∨ 伯楽a) 3含意の定義
 3(5) ~~馬喰a& ~伯楽a  4ド・モルガンの法則
 3(6)   馬喰a& ~伯楽a  5DN
 3(7)∃x(馬喰x& ~伯楽x) 6EI
1 (8)∃x(馬喰x& ~伯楽x) 237EE
(ⅱ)
1 (1)∃x(馬喰x& ~伯楽x) A
 2(2)   馬喰a& ~伯楽a  A
 2(3)~~(馬喰a& ~伯楽a) 2DN
 2(4)~(~馬喰a∨~~伯楽a) 3ド・モルガンの法則
 2(5)~(~馬喰a∨  伯楽a) 4DN
 2(6)  ~ 馬喰a→ 伯楽a) 5含意の定義
 2(7)∃x~(馬喰x→ 伯楽x) 6EI
1 (8)∃x~(馬喰x→ 伯楽x) 127EE
1 (9)~∀x(馬喰x→ 伯楽x) 8量化子の関係
といふ「計算」は、
(ⅰ)
1 (1)不常x(馬喰x則 伯楽x) A
1 (2)有x不(馬喰x則 伯楽x) 1量化子の関係
 3(3)  不(馬喰a則 伯楽a) A
 3(4) 不(不馬喰a若 伯楽a) 3含意の定義
 3(5) 不不馬喰a且 不伯楽a  4ド・モルガンの法則
 3(6)   馬喰a且 不伯楽a  5DN
 3(7)有x(馬喰x且 不伯楽x) 6EI
1 (8)有x(馬喰x且 不伯楽x) 237EE
(ⅱ)
1 (1)有x(馬喰x且 不伯楽x) A
 2(2)   馬喰a且 不伯楽a  A
 2(3)不不(馬喰a且 不伯楽a) 2DN
 2(4)不(不馬喰a若不不伯楽a) 3ド・モルガンの法則
 2(5)不(不馬喰a若  伯楽a) 4DN
 2(6)  不 馬喰a則 伯楽a) 5含意の定義
 2(7)有x不(馬喰x則 伯楽x) 6EI
1 (8)有x不(馬喰x則 伯楽x) 127EE
1 (9)不常x(馬喰x則 伯楽x) 8量化子の関係
といふ風に、書いても、構はない。
(31)
1 (1)不常x(馬喰x則 伯楽x) A
1 (2)有x不(馬喰x則 伯楽x) 1量化子の関係
であれば、
1 (1)xが馬喰であるならば、則ち、xが伯楽である。といふことは、常にさうである。といふわけではない。 A
1 (2)有るxが馬喰であるならば、則ち、xが伯楽である。といふわけではない。 1量化子の関係
といふ風に、読めるため、
1 (1)不常x(馬喰x則 伯楽x) A
1 (2)有x不(馬喰x則 伯楽x) 1量化子の関係
よりも、
1 (1)~∀x(馬喰x→ 伯楽x) A
1 (2)∃x~(馬喰x→ 伯楽x) 1量化子の関係
といふ「記号」の方が、「優れてゐる」といふことには、ならない。
令和元年05月09日、毛利太。

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