2019年5月8日水曜日

「君子不以其所以養人者害人」の「述語論理」。

―「返り点と括弧」に関しては、『「返り点」と「括弧」の関係(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html)』他をお読み下さい。―
(01)
① 君子以其所以養人者害人=
① 君子不{以[其所‐以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
① 君子{[其〔(人)養〕所‐以者]以(人)害}不=
① 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所‐以の者を]以て(人を)害せ}ず。
は、「孟子、梁惠王章句下」である
従って、
(01)により、
(02)
④ 君子以其所以養人者害人=
④ 君子以[其所‐以〔養(人)〕者]不〔害(人)〕⇒
④ 君子[其〔(人)養〕所‐以者]以〔(人)害〕不=
④ 君子は[其の〔(人を)養ふ〕所‐以の者を]以て〔(人を)害せ〕ず。
は、「孟子、梁惠王章句下」ではない
従って、
(01)(02)により、
(03)
「(137)「君子不以其所以養人者害人」等の「不」について。」でも、書いたと思ふものの、
① 君子以其所以養人者害人。
④ 君子以其所以養人者害人。
に対する「訓読」は、「両方」とも、
① 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
④ 君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず。
であるものの、「漢文」としては、
①=④ では、決してない
(04)
① 君子不以其所以養人者害人=
① 君子→~(以其所‐以養人者&害人)。
であって、
④ 君子以其所以養人者不害人=
④ 君子→以其所‐以養人者&~(害人)。
であるため、
① に対しては、「ド・モルガンの法則、含意の定義、交換法則」を適用することが、出来るものの、
④ に対しては、「ド・モルガンの法則、含意の定義、交換法則」を適用することが、出来ない
すなはち、
(05)
④ ではなく
① であれば、
1 (1)君子→~(以其所‐以養人者&害人) A
 2(2)君子                A
12(3)   ~(以其所‐以養人者&害人) 12MPP
12(4)   ~以其所‐以養人者∨~害人  3ド・モルガンの法則
12(5)    以其所‐以養人者→~害人  4含意の定義
1 (6)君子→(以其所‐以養人者→~害人) 25CP
12(7)   ~害人∨~以其所‐以養人者  4交換法則
12(8)    害人→~以其所‐以養人者  7含意の定義
1  (9)君子→(害人→~以其所‐以養人者) 28CP
である。
従って、
(05)により、
(06)
① 君子不以其所以養人者害人=
① 君子→~(以其所‐以養人者&害人)。
② 君子→(以其所‐以養人者→~害人)。
③ 君子→(害人→~以其所‐以養人者)。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(06)により、
(07)
① 君子不以其所以養人者害人=
① 君子不{以[其所‐以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
① 君子{[其〔(人)養〕所‐以者]以(人)害}不=
① 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所‐以の者を]以て(人を)害せ}ず=
① 君子であるならば、彼が人々を養ふための所以である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
といふ「漢文・訓読」は、
② 君子であるならば、彼が人々を養ふための所以である土地のためにするならば、その時は、人々を害さない。
③ 君子であるならば、人々を害するのであれば、その時は、彼が人々を養ふための所以である土地のためにしない。
といふ「意味」である。
cf.
其の=his=君子の。
然るに、
(08)
② 君子であるならば、彼が人々を養ふための所以である土地のためにするならば、その時は、人々を害さない。
③ 君子であるならば、人々を害するのであれば、その時は、彼が人々を養ふための所以である土地のためにしない。
といふことは、
① 君子であること、と、
② 彼が、人々を養ふための所以である土地のためにしつつ、人々を害すること、と、
は、「両立ない」。
といふ、意味」である。
然るに、
(09)
ここに至って大王は都の長老を集めて告げました、『蛮族が欲しがっているのは、わが国の土地だ。余はこう聞いている。君子は人々の生活する元(つまり土地)をめぐって争い人命を損ねたりはしない、と。諸君、君主がいなくなっても憂うな。余はこれからこの都を去って、梁山を越え岐山のふもとへ拠点を作って落ちのびようと思う。』と(十五 - 孟子を読む)。
従って、
(08)(09)により、
(10)
③ 大王は、君子であったため、それまで住んでゐた「土地」を「放棄」しなければ、人々を害することになると判断して、その「土地」を「放棄した
といふ、ことになる。
然るに、
(11)
(ⅰ)
1   (1)  ∀x∀y{君xy&人yx→~∃z(養zy&害zy&所zxy)} A
1   (2)    ∀y{君ay&人ya→~∃z(養zy&害zy&所zay)  1UE
1   (3)      {君ab&人ba→~∃z(養zb&害zb&所zab)  2UE
 4  (4)       君ab&人ba                    A
14  (5)               ~∃z(養zb&害zb&所zab)  34MPP
14  (6)               ∀z~(養zb&害zb&所zab)  5量化子の関係
14  (7)                 ~(養cb&害cb&所cab)  6UE
1   (8)       君ab&人ba→  ~(養cb&害cb&所cab)  47CP
  9 (9)       君ab&人ba                    A
   ア(ア)                  (養cb&害cb&所cab)  A
1 9 (イ)                 ~(養cb&害cb&所cab)  89MPP
1 9ア(ウ)  (養cb&害cb&所cab)&~(養cb&害cb&所cab)  アイ&I
1  ア(エ)     ~(君ab&人ba)                   9ウRAA
1   (オ)       (養cb&害cb&所cab)→~(君ab&人ba)  アエCP
1   (カ)    ∀y{(養cy&害cy&所cay)→~(君ay&人ya)} オUI
1   (キ)  ∀x∀y{(養cy&害cy&所cxy)→~(君xy&人yx)} カUI
1   (ク)∀z∀x∀y{(養zy&害zy&所zxy)→~(君xy&人yx)} キUI
(ⅱ)
1   (1)∀z∀x∀y{(養zy&害zy&所zxy)→~(君xy&人yx)} A
1   (2)  ∀x∀y{(養cy&害cy&所cxy)→~(君xy&人yx)} 1UE
1   (3)    ∀y{(養cy&害cy&所cay)→~(君ay&人ya)} 2UE
1   (4)       (養cb&害cb&所cab)→~(君ab&人ba)  3UE
 5  (5)     ∃z(養zb&害zb&所zab)             A         
  6 (6)       (養cb&害cb&所cab)             A
   7(7)                       (君ab&人ba)  A 
1 6 (8)                      ~(君ab&人ba)  46MPP
1 67(9)            (君ab&人ba)&~(君ab&人ba)  78&I
15 7(ア)            (君ab&人ba)&~(君ab&人ba)  569EE
1  7(イ)    ~∃z(養zb&害zb&所zab)             5アRAA
1   (ウ)       君ab&人ba→~∃z(養zb&害zb&所zab)  7イCP
1   (エ)    ∀y{君ay&人ya→~∃z(養zy&害zy&所zay)} ウUI
1   (オ)  ∀x∀y{君xy&人yx→~∃z(養zy&害zy&所zxy)} エUI
従って、
(11)により、
(12)
(ⅰ)  ∀x∀y{君xy&人yx→~∃z(養zy&害zy&所zxy)}
(ⅱ)∀z∀x∀y{(養zy&害zy&所zxy)→~(君xy&人yx)}
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) である。
従って、
(12)により、
(13)
(ⅰ)すべてのxとyについて、xがyの君子であって、yがxの人民であるならば、あるzが、yを養ひ、yを害ふ、xとyの所以である。といふことはない。
(ⅱ)すべてのzとxとyについて、zがyを養ひ、zがyを害ふ、xとyの所以であるならば、xがyの君子であって、yがxの人民である。といふことはない。
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) である。
然るに、
(14)
(ⅰ)すべてのxとyについて、xがyの君子であって、yがxの人民であるならば、あるzが、yを養ひ、yを害ふ、xとyの所以である。といふことはない。
(ⅱ)すべてのzとxとyについて、zがyを養ひ、zがyを害ふ、xとyの所以であるならば、xがyの君子であって、yがxの人民である。といふことはない。
といふことは、
(ⅲ)xがyの君子で、yがxの人民であること。
(ⅳ)zが、yを養ひ、yを害ふ、xとyの所以(理由・目的・手段)であること。
に於いて、
(ⅲ)と(ⅳ)は、「両立ない」。
といふ、「意味」である。
従って、
(08)(14)により、
(15)
① 君子不以其所以養人者害人=
① 君子不{以[其所‐以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
① 君子{[其〔(人)養〕所‐以者]以(人)害}不=
① 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所‐以の者を]以て(人を)害せ}ず=
① 君子であるならば、彼が人々を養ふための所以である土地のために、人々を害する。といふことはしない。
といふ「漢文・訓読」は、
②   ∀x∀y{君xy&人yx→~∃z(養zy&害zy&所zxy)}。
③ ∀z∀x∀y{(養zy&害zy&所zxy)→~(君xy&人yx)}。
といふ「述語論理」に、相当する。
令和元年05月08日、毛利太。

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