2019年5月21日火曜日

「All the nice girls love all the sailor.」の述語論理。

―「返り点と括弧」に関しては、
(α)「返り点」と「括弧」に付いて。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_11.html
(β)「返り点」と「括弧」の条件。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_15.html
(γ)「返り点」と「括弧」の条件(Ⅱ):(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_16.html
(δ)「返り点」は、下には戻らない。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_20.html
(ε)「下中上点」等が必要な「理由」。:(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_22.html
(ζ)「返り点・モドキ」について。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_24.html)⇒
 Web上には存在しますが、何故か、アクセス出来ません。
(η)「一二点・上下点」に付いて。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_26.html
(θ)「括弧」の「順番」。      :(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post.html
(ι)「返り点」と「括弧」の関係   :(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html
等々、「その他、諸々」を、お読み下さい。―
(01)
 All the nice girls love a sailor.
(すべてのすてきな女の子は、水夫を愛している)
という文を取り上げてみよう。この文は、「どのすてきな女の子も、水夫を誰か愛している。アリスはジョーを愛し、メアリーはバートを愛し、デスデモーナはビリーを愛している」という意味にもとれるし、また、「どのすてきな女の子も、一人の特定の水夫を愛している。その水夫の名前は、ジャック・タールである」という意味にもとれる。論理学では、この二つの異なる構造をはっきり示す、厳密な表記を提供してくれるのである。
(ジーン・エイチソン著、田中晴美 田中幸子訳、入門言語学、1980年、92頁)
然るに、
(02)
②「ある水夫を愛してゐる。」と、言ふだけでは、「すべての水夫を愛してゐる。」といふことには、ならないものの、
③「すべての水夫を愛してゐる。」と、言ふのであれば、「ある水夫を愛してゐる。」といふ、ことになる。
cf.
「九九」が言へるのであれば、「2の段の九九」も言へることになるが、「2の段の九九」を言へるからと言って、「九九」が言へることには、ならない。
従って、
(01)(02)により、
(03)
② All the nice girls love a sailor.
③ All the nice girls love all the sailors.
に於いて、
③ ならば、② であるが、
② ならば、③ ではない
然るに、
(04)
1   (1)∀x{素敵x&少女x→∀y(水夫y→愛xy)} A
 2  (2)∃x(素敵x&少女x)&∃y(水夫y)     A
 2  (3)∃x(素敵x&少女x)             2&E
  4 (4)   素敵a&少女a              A
 2  (5)            ∃y(水夫y)     2&E
   6(6)               水夫b      A
1   (7)   素敵a&少女a→∀y(水夫y→愛ay)  1UE
1 4 (8)           ∀y(水夫y→愛ay)  47MPP
1 4 (9)              水夫b→愛ab   8UE  
1 46(ア)                  愛ab   69MPP
1 46(イ)              水夫b&愛ab   6ア&I
1 46(ウ)           ∃y(水夫y&愛ay)  イEI
124 (エ)           ∃y(水夫y&愛ay)  56ウEE
12  (オ)   素敵a&少女a→∃y(水夫y&愛ay)  4エCP
12  (カ)∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)} オUI
12  (〃)すべてのxについて、xが素敵な少女であるならば、あるyは水夫であって、xはyを愛す。 オUI
従って、
(04)により、
(05)
1   (1)∀x{素敵x&少女x→∀y(水夫y→愛xy)} A
 2  (2)∃x(素敵x&少女x)&∃y(水夫y)     A
であるならば、
12  (カ)∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)} オUI

である。
然るに、
(06)
1    (1)∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)} A
 2   (2)∃x(素敵x&少女x)&∃y(水夫)      A
 2   (3)∃x(素敵x&少女x)             2&E
  4  (4)   素敵a&少女a              A
 2   (5)            ∃y(水夫y)     A
   6 (6)               水夫b      A
1    (7)   素敵a&少女a→∃y(水夫y&愛ay)  1UE
1 4  (8)           ∃y(水夫y&愛ay)  47MPP
    9(9)              水夫b&愛ab   A
    9(ア)                  愛ab   9&E
    9(イ)             ~水夫b∨愛ab   9∨I
    9(ウ)              水夫b→愛ab   イ含意の定義
    9(エ)           ∀y(水夫y→愛ay)  9UI
1 4  (オ)           ∀y(水夫y→愛ay)  89エEE
1    (カ)   素敵a&少女a→∀y(水夫y→愛ay)  4オCP
1    (キ)∀x{素敵x&少女x→∀y(水夫y→愛xy)} カUI
1    (〃)すべてのxについて、xが素敵な少女であるならば、すべてのyについて、yが水夫であるならば、xはyを愛す。 カUI
然るに
(07)
    9(9)              水夫&愛a   A
    9(エ)           ∀y(水夫→愛a)  9UI
は、「UI(普遍量記号導入の規則)」に対する「違反」である。
従って、
(06)(07)により、
(08)
1    (1)∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)} A
 2   (2)∃x(素敵x&少女x)&∃y(水夫)      A 
であったとしても、
1    (キ)∀x{素敵x&少女x→∀y(水夫y→愛xy)} カUI
ではない。
従って、
(04)~(08)により、
(09)
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}
③ ∀x{素敵x&少女x→∀y(水夫y→愛xy)}
に於いて、
③ ならば、② であるが、
② ならば、③ ではない
従って、
(03)(09)により、
(10)
② All the nice girls love a sailor.
③ All the nice girls love all the sailors.
といふ「英文」は、
② ∀x{素敵x&少女x→∃y(水夫y&愛xy)}
③ ∀x{素敵x&少女x→∀y(水夫y→愛xy)}
といふ「述語論理」に、対応する。
然るに、
(11)
「昨日の記事」で説明した通り、
①「ジャック・タールだけを、愛してゐる。」といふ場合の、
① All the nice girls love a sailor.
に関しては、
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}
① あるyは水夫であって、すべてのxについて、xが素敵な少女であるならば、xはyを愛す。
といふ「述語論理」に、対応する。
然るに、
(12)
① すべての素敵な少女は、ジャック・タールだけを、愛してゐる。
③ すべての素敵な少女は、すべての水夫を愛してゐる。
に於いて、
① と ③ は、「矛盾」する。
然るに、
(13)
1  (1)∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)} A
 2 (2)   水夫b&∀x(素敵x&少女x→愛xb)  A
 2 (3)   水夫b                  2&E
 2 (4)       ∀x(素敵x&少女x→愛xb)  2&E
 2 (5)          素敵a&少女a→愛ab   4UE
  6(6)          素敵a&少女a       A
 26(7)                  愛ab   56MPP
 26(8)             ~水夫b∨愛ab   7∨I
 26(9)              水夫b→愛ab   8含意の定義
 26(ア)           ∀y(水夫y→愛ay)  9UI
 2 (イ)   素敵a&少女a→∀y(水夫y→愛ay)  6アCP
1  (ウ)   素敵a&少女a→∀y(水夫y→愛ay)  12イEE
1  (エ)∀x{素敵x&少女x→∀y(水夫y→愛xy)} ウUI
然るに、
(14)
 2 (2)   水夫&∀x(素敵x&少女x→愛x)  A
 26(9)              水夫→愛a   8含意の定義
 26(ア)           ∀y(水夫→愛a)  9UI
は、「UI(普遍量記号導入の規則)」に対する「違反」である。
然るに、
(15)
1  (1)    ∀x{素敵x&少女x→∀y(水夫y→愛xy)} A
1  (2)       素敵a&少女a→∀y(水夫y→愛ay)  1UE
 3 (3)       素敵a&少女a              A
13 (4)               ∀y(水夫y→愛ay)  23MPP
13 (5)                  水夫b→愛ab   4UI
  6(6)                  水夫b       A
136(7)                      愛ab   56MPP
1 6(8)              素敵a&少女a→愛ab   37CP
1 6(9)           ∀x(素敵x&少女x→愛xb)  8UI
1 6(ア)       水夫b&∀x(素敵x&少女x→愛xb)  69&I
1 6(イ)    ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)} アEI
1  (ウ)水夫b→∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)} 6イCP
従って、
(15)により、
(16)
1  (1)    ∀x{素敵x&少女x→∀y(水夫y→愛xy)} A
ならば、
1  (ウ)水夫b→∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)} 6イCP
なのであって、
1  (1)    ∀x{素敵x&少女x→∀y(水夫y→愛xy)} A
ならば、
1  (ウ)    ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)} 
ではない。
従って、
(11)~(16)により、
(17)
① すべての素敵な少女は、ジャック・タールだけを、愛してゐる。
③ すべての素敵な少女は、すべての水夫を愛してゐる。
といふ「命題」は、
① ∃y{水夫y&∀x(素敵x&少女x→愛xy)}
③ ∀x{素敵x&少女x→∀y(水夫y→愛xy)}
といふ「述語論理」に、対応し、尚且つ、
① ならば、③ ではないし、
③ ならば、① ではない
令和元年05月21日、毛利太。

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