―「返り点と括弧」に関しては、
(α)「返り点」と「括弧」に付いて。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_11.html)
(β)「返り点」と「括弧」の条件。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_15.html)
(γ)「返り点」と「括弧」の条件(Ⅱ):(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_16.html)
(δ)「返り点」は、下には戻らない。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_20.html)
(ε)「下中上点」等が必要な「理由」。:(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_22.html)
(ζ)「返り点・モドキ」について。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_24.html)⇒
Web上には存在しますが、何故か、アクセス出来ません。
(η)「一二点・上下点」に付いて。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_26.html)
(θ)「括弧」の「順番」。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post.html)
(ι)「返り点」と「括弧」の関係 :(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html)
等々、「その他、諸々」を、お読み下さい。今となっては、どのやうなことを書いて、どのやうなことを書かなかったのか、ハッキリとは、覚えてはゐません。―
(01)
楚人有鬻盾与矛者。
誉之曰、
吾盾之堅、莫能陥也。
又誉其矛曰、
吾矛之利、於物無不陥也。
或曰、
以子之矛、陥子之盾、何如。
其人弗能応也。
(02)
楚人有[鬻〔盾与(矛)〕者]。
誉(之)曰、
吾盾之堅、莫(能陥)也。
又誉(其矛)曰、
吾矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。
或曰、
以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。
其人弗〔能(応)〕也。
(03)
楚人に[〔盾と(矛)とを〕鬻く者]有り。
(之を)誉めて曰く、
吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。
又た(其の矛を誉めて)曰く、
吾矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)不る〕無きなり。
或ひと曰く、
(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。
其の人〔(応ふる)能は〕ざるなり。
(04)
[一]矛盾〈韓非子〉
(通 釈)
楚の国の人に、楯と矛を売り歩くものがあった。
(その人)がこの商品をほめて「わたしの楯の堅くてじょうぶなこといったら、これを突きとおすことのできるものはない。」と言い、
またその矛をほめて「わたしの矛の鋭利なことといったら、どんな物であろうと突きとおしてしまう。」と言った。
(これを聞いた)ある人が「あなたの矛でもってあなたの楯をついたら、どういうことになりますか。」と言った。
(楯と矛を売っていた)その人は何とも返事をすることができなかった。
(旺文社、漢文の基礎、1973年、31頁)
従って、
(04)により、
(05)
「盾の集合」の中に「いかなる矛も陥さない盾」があって、「わたしの盾」が「その盾」である。
「矛の集合」の中に「すべての盾を陥す矛」 があって、「わたしの矛」が「その矛」である。
と、楚の国の人が、言ってゐる。
従って、
(04)(05)により、
(06)
「盾の集合」の中に「いかなる矛も陥さない盾」がある。
「矛の集合」の中に「すべての盾を陥す矛」 がある。
といふことは、「矛盾」であると、ある人が、言ってゐる。
然るに、
(07)
1 (1) ∃x(盾x)&∃y(矛y) A
1 (2) ∃x(盾x) 1&E
3 (3) 盾a A
1 (4) ∃y(矛y) 1&E
5 (5) 矛b A
6 (6) ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} A
7 (7) 盾a&∀y(矛y→~陥ya) A
7 (8) ∀y(矛y→~陥ya) 7&E
7 (9) 矛b→~陥ba 8UE
5 7 (ア) ~陥ba 59MPP
イ (イ) ∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} A
ウ (ウ) 矛b&∀x(盾x→ 陥bx) A
ウ (エ) ∀x(盾x→ 陥bx) ウUE
ウ (オ) 盾a→ 陥ba エUE
3 ウ (カ) 陥ba 3オMPP
35 7 ウ (キ) ~陥ba&陥ba アカ&I
35 7イ (ク) ~陥ba&陥ba イウキEE
356 イ (ケ) ~陥ba&陥ba 67クEE
13 6 イ (コ) ~陥ba&陥ba 45ケEE
1 6 イ (サ) ~陥ba&陥ba 23コEE
6 イ (シ)~[∃x(盾x)& ∃y(矛y)] 1サRAA
6 イ (ス) ~∃x(盾x)∨~∃y(矛y) シ、ド・モルガンの法則
6 イ (セ) ∃x(盾x)→~∃y(矛y) ス含意の定義
ソ (ソ) ~∃x(盾x) A
ソ (タ) ~∃y(矛y)∨~∃x(盾x) ソ∨I
チ(チ) ~∃x(盾x) A
チ(ツ) ~∃y(矛y)∨~∃x(盾x) チ∨I
6 イ (テ) ~∃y(矛y)∨~∃x(盾x) スソタチツ∨E
6 イ (ト) ∃y(矛y)→~∃x(盾x) スソチツト∨E
6 イ (ナ) ∃x(盾x)→~∃y(矛y)&
∃y(矛y)→~∃x(盾x) セト&I
然るに、
(08)
1 (1)∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} A
2 (2) 盾a&∀y(矛y→~陥ya) A
2 (3) 盾a 2&E
2 (4) ∀y(矛y→~陥ya) 3&E
2 (5) 矛b→~陥ba 4UE
6(6) 矛b A
26(7) ~陥ba 56MPP
26(8) 盾a&~陥ba 37&I
26(9) ∃x(盾x&~陥bx) 8EI
1 6(ア) ∃x(盾x&~陥bx) 129EE
1 (イ) 矛b→∃x(盾x&~陥bx) 6アCP
1 (ウ)∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)} イUI
従って、
(08)により、
(09)
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}
② ∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)}
に於いて、
① ならば、
② である。
cf.
ただし、「逆」は「正しく」はない。
従って、
(07)(08)(09)により、
(10)
1 (1) ∃x(盾x)&∃y(矛y) A
1 (2) ∃x(盾x) 1&E
3 (3) 盾a A
1 (4) ∃y(矛y) 1&E
5 (5) 矛b A
6 (6) ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} A
ではなく、
1 (1) ∃x(盾x)&∃y(矛y) A
1 (2) ∃x(盾x) 1&E
3 (3) 盾a A
1 (4) ∃y(矛y) 1&E
5 (5) 矛b A
6 (6) ∀y{矛y→ ∃x(盾x&~陥yx)} A
である、としても、
次に示す「計算(11)」は、「正しい」。
(11)
1 (1) ∃x(盾x)&∃y(矛y) A
1 (2) ∃x(盾x) 1&E
3 (3) 盾a A
1 (4) ∃y(矛y) 1&E
5 (5) 矛b A
6 (6) ∀y{矛y→ ∃x(盾x&~陥yx)} A
6 (7) 矛b→ ∃x(盾x&~陥bx) 6UE
56 (8) ∃x(盾x&~陥bx) 57MPP
9 (9) 盾a&~陥ba A
9 (ア) ~陥ba 9&E
イ (イ) ∀x{盾x→ ∃y(矛y& 陥yx)} A
イ (ウ) 盾a→ ∃y(矛y& 陥ya) イUE
3 イ (エ) ∃y(矛y& 陥ya) 3ウMPP
オ (オ) 矛b& 陥ba A
オ (カ) 陥ba オ&E
9 オ (キ) ~陥ba&陥ba アカ&I
56 オ (ク) ~陥ba&陥ba 89キEE
356 イ (ケ) ~陥ba&陥ba エオクEE
1 56 イ (コ) ~陥ba&陥ba 23ケEE
1 6 イ (サ) ~陥ba&陥ba 45コEE
6 イ (シ)~{∃x(盾x)& ∃y(矛y)} 1サRAA
6 イ (ス) ~∃x(盾x)∨~∃y(矛y) シ、ド・モルガンの法則
6 イ (セ) ∃x(盾x)→~∃y(矛y) ス含意の定義
ソ (ソ) ~∃x(盾x) A
ソ (タ) ~∃y(矛y)∨~∃x(盾x) ソ∨I
チ(チ) ~∃y(矛y) A
チ(ツ) ~∃y(矛y)∨~∃x(盾x) チ∨I
6 イ (テ) ~∃y(矛y)∨~∃x(盾x) スソタチツ∨E
6 イ (ト) ∃y(矛y)→~∃x(盾x) テ含意の定義
6 イ (ナ) ∃x(盾x)→~∃y(矛y)&
∃y(矛y)→~∃x(盾x) セト&I
従って、
(07)(11)により、
(12)
1 (1) ∃x(盾x)&∃y(矛y) A
1 (1) ∃x(盾x)&∃y(矛y) A
と「仮定」し、
6 (6)∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} A
6 (6)∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)} A
と「仮定」し、
イ (イ)∃y{矛y&∀x(盾x→ 陥yx)} A
イ (イ)∀x{盾x→∃y(矛y& 陥yx)} A
と「仮定」すると、
6 イ (ナ)∃x(盾x)→~∃y(矛y)&∃y(矛y)→~∃x(盾x) セト&I
6 イ (ナ)∃x(盾x)→~∃y(矛y)&∃y(矛y)→~∃x(盾x) セト&I
といふ、『結論』が、「演繹」される。
従って、
(12)により、
(13)
(1)あるxは盾であり、あるyは矛である。
(〃)あるxは盾であり、あるyは矛である。
と「仮定」し、
(6)あるxは盾であり、すべてのyについて、yが矛であるならば、yはxを突き通さない。
(6)すべてのyについて、yが矛であるならば、あるxは盾であり、yはxを突き通さない。
と「仮定」し、
(イ)あるyは矛であり、すべてのxについて、xが盾であるならば、yはxを突き通す。
(イ)すべてのxについて、xが盾であるならば、あるyは矛であり、yはxを突き通す。
と「仮定」すると、
(ナ)ある楯xが存在するならば、ある矛yは存在せず、ある矛yが存在するならば、ある楯xは存在しない。
(〃)ある楯xが存在するならば、ある矛yは存在せず、ある矛yが存在するならば、ある楯xは存在しない。
といふ、『結論』が、「演繹」される。
従って、
(12)(13)により、
(14)
(6)いかなる「矛」であっても、突き通すことが出来ない、「楯」が存在する。と仮定し、
(〃)いかなる「楯」であっても、突き通すことが出来る、 「矛」が存在する。と仮定すると、
(ナ)そのやうな「楯」が存在するならば、そのやうな「矛」は存在せず、
(〃)そのやうな「矛」が存在するならば、そのやうな「楯」は存在しない。
といふ「矛盾(Contradiction)」が、生じることになる。
従って、
(01)~(14)により、
(15)
夫不可陷之楯與無不陷之矛、不可同世而立。
夫不〔可(陷)〕之楯與[無〔不(陷)〕之矛]、不[可〔同(世)而立〕]。
夫れ陥すべからざるの楯と、陥らざる無きの矛とは、世を同じくして立たつべからず。
といふ「主張」、すなはち、
「わたしの盾の堅くてじょうぶなこといったら、これを突きとおすことのできるものはない。」
「わたしの矛の鋭利なことといったら、どんな物であろうと突きとおしてしまう。」といった、「そのやうな盾と矛は、同時には、存在しない」。
といふ「主張」は、「述語論理(Predicate logic)」としても、「妥当(Valid)」である。
―「補足」―
(16)
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}
② ∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)}
に於いて、
①=② であるはず。
と、思っゐたものの、(08)でも示した通り、
1 (1)∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} A
2 (2) 盾a&∀y(矛y→~陥ya) A
2 (3) 盾a 2&E
2 (4) ∀y(矛y→~陥ya) 3&E
2 (5) 矛b→~陥ba 4UE
6(6) 矛b A
26(7) ~陥ba 56MPP
26(8) 盾a&~陥ba 37&I
26(9) ∃x(盾x&~陥bx) 8EI
1 6(ア) ∃x(盾x&~陥bx) 129EE
1 (イ) 矛b→∃x(盾x&~陥bx) 6アCP
1 (ウ)∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)} イUI
であり、それ故、
① ならば、② である。
然るに、
(17)
1 (1)∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)} A
1 (2) 矛b→∃x(盾x&~陥bx) 1UE
3 (3) 矛b A
13 (4) ∃x(盾x&~陥bx) 23MPP
5(5) 盾a&~陥ba A
13 (6) 盾a&~陥ba 455EE
13 (7) ~陥ba 6&E
1 (8) 矛b→~陥ba 37CP
1 (9) ∀y(矛y→~陥ya) 8UI
13 (ア) 盾a 6&E
13 (イ) 盾a&∀y(矛y→~陥ya) 9ア&I
13 (ウ)∃x{盾a&∀y(矛y→~陥ya)} イEI
然るに、
(18)
13 (ウ)∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)} エEI
ではなく、
1 (ウ)∃x{盾a&∀y(矛y→~陥ya)} エEI
でなければ、
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}
② ∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)}
に於いて、
①=② ではない。
従って、
(16)(17)(18)により、
(19)
① ∃x{盾x&∀y(矛y→~陥yx)}
② ∀y{矛y→∃x(盾x&~陥yx)}
に於いて、
① ならば、② であるが、
② ならば、① である。ではない。
令和元年05月18日、毛利太。
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