(01)
「象の鼻が長いこと」を文にするとき、「象の鼻は長い。」という表現もできますが、「象」を主題にすれば「象は鼻が長い。」という文になります。「象は」の助詞「は」は、文の題目を示すとともに、助詞「の」を兼務しています。この「象は鼻が長い。」の文で、文の柱となるものは述語「長い」であり、「象は」「鼻が」の両文節は、述語に対して同格の修飾語(連用修飾語)であると考えます。
(ヤフー!知恵袋:sid********さん 編集あり2007/8/1002:37:00)
然るに、
(02)
「象は」「鼻が」の両文節は、述語に対して同格の修飾語(連用修飾語)である。
といふのであれば、
「象は(連用修飾語)長い(用言)。」といふことになり、
「鼻が(連用修飾語)長い(用言)。」といふことになるが、
「象の鼻は、長い。」ものの、
「象は、長くない。」
然るに、
(03)
① 象の鼻は長い。⇔
① ∀x∃y{象x&鼻yx→長y}⇔
① すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長い}。
然るに、
(04)
②{象の鼻、兎の鼻、馬の鼻}であるならば、
②{象の鼻は長く、象以外(兎と馬)の鼻は長くない。}
然るに、
(05)
②{象の鼻、兎の鼻、馬の鼻}であるならば、
②{象の鼻が長い。}
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
② 象の鼻が長い。⇔
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}⇔
② すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、xが象ではなくて、yがxの鼻であるならば、yは長くない}。
然るに、
(07)
(ⅱ)
1 (1)∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)} A
1 (2) ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(~象a&鼻ya→~長y)} 1UE
3 (3) (象a&鼻ba→長b)&(~象a&鼻ba→~長b) A
3 (4) 象a&鼻ba→長b 3&E
3 (5) ~象a&鼻ba→~長b 3&E
6 (6) 長b A
6 (7) ~~長b 6DN
36 (8) ~(~象a&鼻ba) 57MTT
36 (9) 象a∨~鼻ba 8ド・モルガンの法則
36 (ア) ~鼻ba∨象a 9交換法則
36 (イ) 鼻ba→象a ア含意の定義
3 (エ) 長b→(鼻ba→象a) 6イCP
エ(エ) 鼻ba&長b A
エ(オ) 長b エ&E
3 エ(カ) 鼻ba→象a エオMPP
エ(キ) 鼻ba エ&E
3 エ(ク) 象a カキMPP
3 (ケ) 鼻ba&長b→ 象a エクCP
3 (コ) (象a&鼻ba→長b)&(鼻ba&長b→象a) 4ケ&I
3 (サ) ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(鼻ya&長y→象a)} コEI
1 (シ) ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(鼻ya&長y→象a)} 23サEE
1 (ス)∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(鼻yx&長y→象x)} シUI
(ⅲ)
1 (1)∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(鼻yx&長y→象x)} A
1 (2) ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(鼻ya&長y→象a)} 1UE
3 (3) (象a&鼻ba→長b)&(鼻ba&長b→象a) A
3 (4) 象a&鼻ba→長b 3&E
3 (5) 鼻ba&長b→象a 3&E
6 (6) ~象a A
36 (7) ~(鼻ba&長b) 56MPP
36 (8) ~鼻ba∨~長b 7ド・モルガンの法則
36 (9) 鼻ba→~長b 8含意の定義
3 (ア) ~象a→(鼻ba→~長b) 69CP
イ(イ) ~象a& 鼻ba A
イ(ウ) ~象a イ&E
3 イ(エ) 鼻ba→~長b アウMPP
イ(オ) 鼻ba イ&E
3 イ(カ) ~長b エオMPP
3 (キ) ~象a&鼻ba→~長b イカCP
3 (ケ) (象a&鼻ba→長b)&(~象a&鼻ba→~長b) 4キ&I
3 (コ) ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(~象a&鼻ya→~長y)} ケEI
1 (サ) ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(~象a&鼻ya→~長y)} 23コEE
1 (シ)∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)} サUI
従って、
(08)
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}
③ ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&( 鼻yx&長y→ 象x)}
に於いて、すなはち、
② すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、xが象ではなくて、yがxの鼻であるならば、yは長くない}。
③ すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、yが、xの鼻であって、長いのであれば、xは象である}。
に於いて、
②=③ である。
従って、
(08)により、
(09)
② すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、xが象ではなくて、yがxの鼻であるならば、yは長くない}。
③ すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、yが、xの鼻であって、長いのであれば、xは象である}。
に於いて、すなはち、
② 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない。
③ 象の鼻は長く、鼻が長ければ、象である。
に於いて、
②=③ である。
従って、
(06)~(09)により、
(10)
② 象の鼻が長い。⇔
② 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない。⇔
② 象の鼻は長く、鼻が長ければ、象である。⇔
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}⇔
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&( 鼻yx&長y→ 象x)}⇔
② すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、xが象ではなくて、yがxの鼻であるならば、yは長くない}。⇔
② すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、yが、xの鼻であって、長いのであれば、xは象である}。
といふ「等式」が、成立する。
然るに、
(11)
②{象の鼻、兎の鼻}であるならば、
②{象の鼻が長い。}
②{象の鼻は長く、象以外の鼻は長くない。}
②{象の鼻は長く、鼻が長ければ象である。}
従って、
(10)(11)により、
(12)
② 象の鼻が長い。
といふ「日本語」は、
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}
といふ「述語論理式」に、相当する。
然るに、
(13)
1 (1)∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(鼻yx&長y→象x)} A
1 (2) ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(鼻ya&長y→象a)} 1UE
3 (3) (象a&鼻ba→長b)&(鼻ba&長b→象a) A
3 (4) 象a&鼻ba→長b 3&E
3 (5) 鼻ba&長b→象a 3&E
6 (6)∃x∃y(兎x&~象x&鼻yx) A
7 (7) ∃y(兎a&~象a&鼻ya) A
8(8) 兎a&~象a&鼻ba A
8(9) 象a 8&E
8(ア) ~象a 8&E
8(イ) 鼻ba 8&E
3 8(ウ) ~(鼻ba&長b) 5アMTT
3 8(エ) ~鼻ba∨~長b ウ、ド・モルガンの法則
3 8(オ) 鼻ba→~長b エ含意の定義
3 8(カ) ~長b イオMPP
3 8(キ) 兎a&~象a&鼻ba&~長b 8カ&I
3 8(ク) ∃y(兎a&~象a&鼻ya&~長y) キEI
3 7 (ケ) ∃y(兎a&~象a&鼻ya&~長y) 789EE
3 7 (コ)∃x∃y(兎x&~象x&鼻yx&~長y) ケEI
36 (サ)∃x∃y(兎x&~象x&鼻yx&~長y) 67コEE
1 6 (シ)∃x∃y(兎x&~象x&鼻yx&~長y) 233EE
従って、
(13)により、
(14)
① ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(鼻yx&長y→象x)} 然るに、
② ∃x∃y(兎x&~象x&鼻yx) 従って、
③ ∃x∃y(兎x&~象x&鼻yx&~長y)
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、
① すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、yが、xの鼻であって、長いのであれば、xは象である}。 然るに、
② あるxと、あるyについて{xは兎であって、象ではなく、yはxの鼻である}。 従って、
③ あるxと、あるyについて{xは兎であって、象ではなく、yはxの鼻であって、長くない}。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(Valid)」である。
従って、
(14)により、
(15)
① 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない。 然るに、
② ある兎は象ではなく、その兎には鼻がある。 従って、
③ ある兎は象ではなく、その兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(Valid)」である。
従って、
(08)(10)(15)により、
(16)
① 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない。 然るに、
② ある兎は象ではなく、その兎には鼻がある。 従って、
③ ある兎は象ではなく、その兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(Valid)」である。
とする一方で、
② 象の鼻が長い。⇔
② 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない。⇔
② 象の鼻は長く、鼻が長ければ、象である。⇔
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}⇔
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&( 鼻yx&長y→ 象x)}。
といふ「等式」を、「否定」することは、出来ない。
然るに、
(17)
① 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない。 然るに、
② ある兎は象ではなく、その兎には鼻がある。 従って、
③ ある兎は象ではなく、その兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(Valid)」である。
従って、
(16)(17)により、
(18)
② 象の鼻が長い。⇔
② 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない。⇔
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}。
といふ「等式」を、「否定」することは、出来ない。
然るに、
(19)
伝統的論理学を速水滉『論理学』(16)で代表させよう。わたしのもっているのが四十三年の第十九刷一万部中の一冊で、なお引続き刊行だろうから、前後かなり多く読者を持つ論理学書と考えられる。新興の記号論理学の方は、沢田充茂の『現代論理学入門』(62)を参照することにする(三上章、日本語の論理、1963年、4頁)。
然るに、
(20)
沢田充茂の『現代論理学入門(岩波新書)』は、「現代論理学の解説書」であって、「現代論理学の教科書」ではないので、その中には、例へば、
① 象は鼻が長い。
② 象の鼻が長い。
③ 鼻は象が長い。
といふ「3つの日本語の文」を、「述語論理の記法」に従って翻訳することにより、その「論理形式」を示せ。
といふ「練習問題」は、載ってゐない。
従って、
(20)により、
(21)
沢田充茂の『現代論理学入門』には、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}
③ ∀x∃y{(鼻xy&象y→長x)&(~象y&鼻xy→~長x)}
といふ「解答」も、載ってゐない。
然るに、
(19)により、
(22)
仮に、沢田充茂の『現代論理学入門』に、
① 象は鼻が長い≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 象の鼻が長い≡∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}。
③ 鼻は象が長い≡∀x∃y{(鼻xy&象y→長x)&(~象y&鼻xy→~長x)}。
といふ「等式」が記載されてゐた。とするならば、三上章 先生は、「これらの等式」を、無視することは、なかったはずである。
従って、
(22)により、
(23)
「三上文法の信奉者」であるならば、その人は、
① 象は鼻が長い≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 象の鼻が長い≡∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}。
③ 鼻は象が長い≡∀x∃y{(鼻xy&象y→長x)&(~象y&鼻xy→~長x)}。
といふ「等式」の「間違ひ」を指摘しない限りは、「これらの等式」を、無視すべきではない。
然るに、
(24)
「三上文法」を提唱しているのは、既に35年前に鬼籍に入った気骨のアマチュア日本語学研究家、三上章である。そのとてもラジカルな主張で、「日本語には主語がない、あるのは述語のみである」、「何々は、は主語でなく主題である」、「何々が、は主語でなく主格である」というものであり、学校文法を根底から覆すものだ。学校文法は単純な英語文法からの輸入で、主語・述語関係を単純に当てはめたものだ。そのため、「象は、鼻が長い」という単純な文でさえ、どれが主語だか指摘できず、複数主語だとか、主語の入れ子だとか、奇矯な技を使う。これに対して三上は、日本語には主語はない、とする。「象は」は、テーマを提示する主題であり、これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する(この場合は「長い」までをスコープとする)。また、「鼻が」は主格の補語にすぎなく、数ある補語と同じ格であるとする。基本文は述語である「長い」だけだ(三上文法! : wrong, rogue and log, by yutakashino)。
従って、
(23)(24)により、
(25)
「三上文法の信奉者」である、yutakashinoさんは、
① 象は鼻が長い≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 象の鼻が長い≡∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}。
③ 鼻は象が長い≡∀x∃y{(鼻xy&象y→長x)&(~象y&鼻xy→~長x)}。
といふ「等式」の「間違ひ」を指摘しない限りは、「これらの等式」を、無視すべきではない。
然るに、
(26)
① 象は鼻が長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない}。
然るに、
(27)
① すべてのxについて{xが象であるならば、
といふことは、
① 象をxとして、「これから象についてのことを述べますよ」
といふ「意味」である。
然るに、
(28)
(ⅰ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲(スコープ)は、問題になっている変数が現れる少なくとも2つの箇所を含むであろう(その1つの箇所は量記号そのもののなかにある);
(ⅱ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲(スコープ)は、同じ変数を用いたいかなる他の量記号も含まないであろう。
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、183頁改)
従って、
(26)(28)により、
(29)
① 象は
① ∀x{象x→
の「作用範囲(スコープ)」は、
① 鼻が長い。
① ∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)
である。
然るに、
(30)
① 象は動物である≡∀x{象x→動物x}。
といふ「述語論理式(右辺)」に於ける、
① 動物x
に対して、
① 動物x=∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)
といふ「代入(Substitution)」を行った「形」が
① 象は鼻が長い≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「述語論理式(右辺)」である。
従って、
(31)
「述語論理」といふ「観点」からすれば、
① 象は動物である≡∀x{象x→動物x}。
① 象は鼻が長い ≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
に於ける、
① 象は
① 象は
は、両方とも、
① ∀x{象x→
① ∀x{象x→
であって、「区別」は、無い。
従って、
(31)により、
(32)
「常識」として、
① 象は動物である。
の「主語」が、
① 象は
である以上、
① 象は鼻が長い。
の「主語」は、
① 象は
である。
従って、
(32)により、
(33)
① 象は鼻が長い。
に於ける「述語」は、
① 鼻が長い。
である。
然るに、
(34)
① 鼻が長い。
に於ける、「主語」は、
① 鼻が
である。
従って、
(31)~(34)により、
(35)
① 象は鼻が長い≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「日本語(左辺)」も、「複数主語であって、主語の入れ子」になってゐる。
令和02年06月20日、毛利太。
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