2020年6月20日土曜日

「象の鼻が長い(鼻は象が長い、象は鼻が長い)」の「述語論理」。

(01)
「象鼻が長いこと」を文にするとき、「象鼻は長い。」という表現もできますが、「象」を主題にすれば「象長い。」という文になります。「象」の助詞「」は、文の題目を示すとともに、助詞「」を兼務しています。この「象長い。」の文で、文の柱となるものは述語長い」であり、「象は」「鼻が」の両文節は、述語に対して同格の修飾語(連用修飾語)であると考えます。
(ヤフー!知恵袋:sid********さん 編集あり2007/8/1002:37:00)
然るに、
(02)
「象は」「鼻が」の両文節は、述語に対して同格の修飾語(連用修飾語)である。
といふのであれば、
「象は(連用修飾語)長い(用言)。」といふことになり、
「鼻が(連用修飾語)長い(用言)。」といふことになるが、
「象の鼻は、長い。」ものの、
「象は、長くない。」
然るに、
(03)
① 象の鼻は長い。⇔
① ∀x∃y{象x&鼻yx→長y}⇔
① すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長い}。
然るに、
(04)
②{象の鼻、兎の鼻、馬の鼻}であるならば、
②{象の鼻は長く、象以外(兎と馬)の鼻は長くない。}
然るに、
(05)
②{象の鼻、兎の鼻、馬の鼻}であるならば、
②{象の鼻長い。}
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
② 象の鼻長い。⇔
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}⇔
② すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、xが象ではなくて、yがxの鼻であるならば、yは長くない}。
然るに、
(07)
(ⅱ)
1   (1)∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)} A
1   (2)  ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(~象a&鼻ya→~長y)} 1UE
 3  (3)     (象a&鼻ba→長b)&(~象a&鼻ba→~長b)  A
 3  (4)      象a&鼻ba→長b                 3&E
 3  (5)                  ~象a&鼻ba→~長b   3&E
  6 (6)                           長b   A
  6 (7)                         ~~長b   6DN
 36 (8)                ~(~象a&鼻ba)      57MTT
 36 (9)                  象a∨~鼻ba       8ド・モルガンの法則
 36 (ア)                  ~鼻ba∨象a       9交換法則
 36 (イ)                   鼻ba→象a       ア含意の定義
 3  (エ)               長b→(鼻ba→象a)      6イCP
   エ(エ)               鼻ba&長b           A
   エ(オ)                   長b           エ&E
 3 エ(カ)                   鼻ba→象a       エオMPP
   エ(キ)               鼻ba              エ&E
 3 エ(ク)                       象a       カキMPP
 3  (ケ)               鼻ba&長b→ 象a       エクCP
 3  (コ)     (象a&鼻ba→長b)&(鼻ba&長b→象a)    4ケ&I
 3  (サ)  ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(鼻ya&長y→象a)}   コEI
1   (シ)  ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(鼻ya&長y→象a)}   23サEE
1   (ス)∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(鼻yx&長y→象x)}   シUI
(ⅲ)
1   (1)∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(鼻yx&長y→象x)}   A
1   (2)  ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(鼻ya&長y→象a)}   1UE
 3  (3)     (象a&鼻ba→長b)&(鼻ba&長b→象a)    A
 3  (4)      象a&鼻ba→長b                 3&E
 3  (5)                  鼻ba&長b→象a     3&E
  6 (6)                        ~象a     A
 36 (7)                ~(鼻ba&長b)       56MPP
 36 (8)                ~鼻ba∨~長b        7ド・モルガンの法則
 36 (9)                 鼻ba→~長b        8含意の定義
 3  (ア)            ~象a→(鼻ba→~長b)       69CP
   イ(イ)            ~象a& 鼻ba            A
   イ(ウ)            ~象a                 イ&E
 3 イ(エ)                 鼻ba→~長b        アウMPP
   イ(オ)                 鼻ba            イ&E
 3 イ(カ)                     ~長b        エオMPP
 3  (キ)             ~象a&鼻ba→~長b        イカCP
 3  (ケ)     (象a&鼻ba→長b)&(~象a&鼻ba→~長b)  4キ&I
 3  (コ)  ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(~象a&鼻ya→~長y)} ケEI
1   (サ)  ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(~象a&鼻ya→~長y)} 23コEE
1   (シ)∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)} サUI
従って、
(08)
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}
③ ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(  鼻yx&長y→  象x)}
に於いて、すなはち、
② すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、xが象ではなくて、yがxの鼻であるならば、yは長くない}。
③ すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、yが、xの鼻であって、長いのであれば、xは象である}。
に於いて、
②=③ である。
従って、
(08)により、
(09)
② すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、xが象ではなくて、yがxの鼻であるならば、yは長くない}。
③ すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、yが、xの鼻であって、長いのであれば、xは象である}。
に於いて、すなはち、
② 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない
③ 象の鼻は長く、鼻が長ければ、象である。
に於いて、
②=③ である。
従って、
(06)~(09)により、
(10)
② 象の鼻が長い。⇔
② 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない。⇔
② 象の鼻は長く、鼻が長ければ、象である。⇔
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}⇔
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(  鼻yx&長y→  象x)}⇔
② すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、xが象ではなくて、yがxの鼻であるならば、yは長くない}。⇔
② すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、yが、xの鼻であって、長いのであれば、xは象である}。
といふ「等式」が、成立する。
然るに、
(11)
②{象の鼻、兎の鼻}であるならば、
②{象の鼻が長い。}
②{象の鼻は長く、象以外の鼻は長くない。}
②{象の鼻は長く、鼻が長ければ象である。}
従って、
(10)(11)により、
(12)
② 象の鼻長い。
といふ「日本語」は、
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}
といふ「述語論理式」に、相当する。
然るに、
(13)
1    (1)∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(鼻yx&長y→象x)} A
1    (2)  ∃y{(象a&鼻ya→長y)&(鼻ya&長y→象a)} 1UE
 3   (3)     (象a&鼻ba→長b)&(鼻ba&長b→象a)  A
 3   (4)      象a&鼻ba→長b               3&E
 3   (5)                  鼻ba&長b→象a   3&E
  6  (6)∃x∃y(兎x&~象x&鼻yx)              A
   7 (7)  ∃y(兎a&~象a&鼻ya)              A
    8(8)     兎a&~象a&鼻ba               A
    8(9)     象a                       8&E
    8(ア)        ~象a                   8&E
    8(イ)            鼻ba               8&E
 3  8(ウ)                ~(鼻ba&長b)     5アMTT
 3  8(エ)                ~鼻ba∨~長b      ウ、ド・モルガンの法則
 3  8(オ)                 鼻ba→~長b      エ含意の定義
 3  8(カ)                     ~長b      イオMPP
 3  8(キ)     兎a&~象a&鼻ba&~長b           8カ&I
 3  8(ク)  ∃y(兎a&~象a&鼻ya&~長y)          キEI
 3 7 (ケ)  ∃y(兎a&~象a&鼻ya&~長y)          789EE
 3 7 (コ)∃x∃y(兎x&~象x&鼻yx&~長y)          ケEI
 36  (サ)∃x∃y(兎x&~象x&鼻yx&~長y)          67コEE
1 6  (シ)∃x∃y(兎x&~象x&鼻yx&~長y)          233EE
従って、
(13)により、
(14)
① ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(鼻yx&長y→象x)} 然るに、
② ∃x∃y(兎x&~象x&鼻yx) 従って、
③ ∃x∃y(兎x&~象x&鼻yx&~長y)
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、
① すべてのxと、あるyについて{xが象であって、yがxの鼻であるならば、yは長く、yが、xの鼻であって、長いのであれば、xは象である}。 然るに、
②   あるxと、あるyについて{xは兎であって、象ではなく、yはxの鼻である}。 従って、
③   あるxと、あるyについて{xは兎であって、象ではなく、yはxの鼻であって、長くない}。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(Valid)」である。
従って、
(14)により、
(15)
① 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない。  然るに、
② ある兎は象ではなく、その兎には鼻がある。 従って、
③ ある兎は象ではなく、その兎の鼻は長くない
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(Valid)」である。
従って、
(08)(10)(15)により、
(16)
① 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない。  然るに、
② ある兎は象ではなく、その兎には鼻がある。 従って、
③ ある兎は象ではなく、その兎の鼻は長くない
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(Valid)」である。
とする一方で、
② 象の鼻長い。⇔
② 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない。⇔
② 象の鼻は長く、鼻が長ければ、象である。⇔
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}⇔
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(  鼻yx&長y→  象x)}。
といふ「等式」を、「否定」することは、出来ない
然るに、
(17)
① 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない。  然るに、
② ある兎は象ではなく、その兎には鼻がある。 従って、
③ ある兎は象ではなく、その兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当(Valid)」である。
従って、
(16)(17)により、
(18)
② 象の鼻長い。⇔
② 象の鼻は長く、象以外の鼻は、長くない。⇔
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}。
といふ「等式」を、「否定」することは、出来ない
然るに、
(19)
伝統的論理学を速水滉『論理学』(16)で代表させよう。わたしのもっているのが四十三年の第十九刷一万部中の一冊で、なお引続き刊行だろうから、前後かなり多く読者を持つ論理学書と考えられる。新興の記号論理学の方は、沢田充茂の『現代論理学入門』(62)を参照することにする(三上章、日本語の論理、1963年、4頁)。
然るに、
(20)
沢田充茂の『現代論理学入門(岩波新書)』は、「現代論理学の解説書」であって、「現代論理学の教科書」ではないので、その中には、例へば、
① 象は鼻長い。
② 象の鼻長い。
③ 鼻は象長い。
といふ「3つの日本語」を、「述語論理記法」に従って翻訳することにより、その「論理形式」を示せ。
といふ「練習問題」は、載ってゐない
従って、
(20)により、
(21)
沢田充茂の『現代論理学入門』には、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&  ∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}
③ ∀x∃y{(鼻xy&象y→長x)&(~象y&鼻xy→~長x)}
といふ「解答」も、載ってゐない
然るに、

(19)により、
(22)
仮に、沢田充茂の『現代論理学入門』に、
① 象は鼻長い≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&  ∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 象の鼻長い≡∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}。
③ 鼻は象長い≡∀x∃y{(鼻xy&象y→長x)&(~象y&鼻xy→~長x)}。
といふ「等式」が記載されてゐた。とするならば、三上章 先生は、「これらの等式」を、無視することは、なかったはずである
従って、
(22)により、
(23)
「三上文法の信奉者」であるならば、その人は、
① 象は鼻長い≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&  ∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 象の鼻長い≡∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}。
③ 鼻は象長い≡∀x∃y{(鼻xy&象y→長x)&(~象y&鼻xy→~長x)}。
といふ「等式」の「間違ひ」を指摘しない限りは、「これらの等式」を、無視すべきではない
然るに、
(24)
三上文法」を提唱しているのは、既に35年前に鬼籍に入った気骨のアマチュア日本語学研究家、三上章である。そのとてもラジカルな主張で、「日本語には主語がない、あるのは述語のみである」、「何々は、は主語でなく主題である」、「何々が、は主語でなく主格である」というものであり、学校文法を根底から覆すものだ。学校文法は単純な英語文法からの輸入で、主語・述語関係を単純に当てはめたものだ。そのため、「象は、鼻長い」という単純な文でさえ、どれが主語だか指摘できず、複数主語だとか、主語の入れ子だとか、奇矯な技を使う。これに対して三上は、日本語には主語はない、とする。「象は」は、テーマを提示する主題であり、これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する(この場合は「長い」までをスコープとする)。また、「鼻が」は主格の補語にすぎなく、数ある補語と同じ格であるとする。基本文は述語である「長い」だけだ(三上文法! : wrong, rogue and log, by yutakashino)。
従って、
(23)(24)により、
(25)
「三上文法の信奉者」である、yutakashinoさんは、
① 象は鼻長い≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&  ∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 象の鼻長い≡∀x∃y{(象x&鼻yx→長y)&(~象x&鼻yx→~長y)}。
③ 鼻は象長い≡∀x∃y{(鼻xy&象y→長x)&(~象y&鼻xy→~長x)}。
といふ「等式」の「間違ひ」を指摘しない限りは、「これらの等式」を、無視すべきではない
然るに、
(26)
① 象は鼻長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない}。
然るに、
(27)
① すべてのxについて{xが象であるならば、
といふことは、
① 象をxとして、「これから象についてのことを述べますよ
といふ「意味」である。
然るに、
(28)
(ⅰ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲(スコープ)は、問題になっている変数が現れる少なくとも2つの箇所を含むであろう(その1つの箇所は量記号そのもののなかにある);
(ⅱ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲(スコープ)は、同じ変数を用いたいかなる他の量記号も含まないであろう。
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、183頁改)
従って、
(26)(28)により、
(29)
① 象は
① ∀x{象x→
の「作用範囲(スコープ)」は、
① 鼻長い。
① ∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)
である。
然るに、
(30)
① 象動物である≡∀x{象x→動物x}。
といふ「述語論理式(右辺)」に於ける、
① 動物x
に対して、
① 動物x=∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)
といふ「代入(Substitution)」を行った「形」が
① 象鼻が長い≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「述語論理式(右辺)」である。
従って、
(31)
「述語論理」といふ「観点」からすれば、
① 象動物である≡∀x{象x→動物x}。
① 象鼻が長い ≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
に於ける、
① 象
① 象
は、両方とも、
① ∀x{象x→
① ∀x{象x→
であって、「区別」は、無い
従って、
(31)により、
(32)
常識」として、
① 象は動物である。
の「主語」が、
① 象は
である以上、
① 象は鼻が長い。
の「主語」は、
① 象は
である。
従って、
(32)により、
(33)
① 象は鼻長い。
に於ける「述語」は、
①     鼻長い。
である。
然るに、
(34)
①     鼻長い。
に於ける、「主語」は、
①     鼻
である。
従って、
(31)~(34)により、
(35)
① 象は鼻長い≡∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「日本語(左辺)」も、「複数主語であって、主語の入れ子」になってゐる。
令和02年06月20日、毛利太。

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