(01)
然るに、
(02)
一階述語論理は、数学のほぼ全領域を形式化するのに十分な表現力を持っている。実際、現代の標準的な集合論の公理系 ZFC は一階述語論理を用いて形式化されており、数学の大部分はそのように形式化された ZFC の中で行うことができる。すなわち、数学の命題は一階述語論理の論理式によって記述することができ、そのように論理式で記述された数学の定理には ZFC の公理からの形式的証明 (formal proof) が存在する。(ウィキペディア)。
従って、
(01)(02)により、
(03)
日本語<英語<述語論理
といふ「順番」で「論理的」である(?)。
然るに、
(04)
(ⅰ)象は鼻が長い。 然るに、
(ⅱ)兎の耳は長いが、耳は鼻ではない。従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論」は「妥当」である。
然るに、
(05)
(ⅰ)象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。然るに、
(ⅱ)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻である。従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論」は「妥当」ではない。
然るに、
(06)
(ⅰ)象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。 然るに、
(ⅱ)兎の耳は長いが、兎の耳は鼻ではない。従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論」は「妥当」である。
従って、
(04)(05)(06)により、
(07)
① 象は鼻が長い。⇔
① 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。
といふ「等式」が、成立する。
従って、
(07)により、
(08)
① 象は鼻が長い。⇔
① 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
① すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは(xの鼻であって、yは長く)、すべてのzについて(zがxの鼻でないならば、zは長くない)}。
といふ「等式」が、成立する。
然るに、
(09)
② 兎の耳は長いが、耳は鼻ではない。⇔
② ∀x{兎x→∃y(長y&耳yx)&∀z(耳zx→~鼻zx)}⇔
② すべてのxについて{xが兎であるならば、あるyは(xの耳であって、yは長く)、すべてのzについて(zがx耳であるならば、zはxの鼻でない)}。
といふ「等式」が、成立する。
然るに、
(10)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)∃x(兎x&象x) A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 2UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 象a 6&E
6 (8) 兎a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
2 6 (イ) ∃y(長y&耳ya) ア&E
ウ(ウ) 耳ba&長b A
1 6 (エ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
2 6 (オ) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
1 6 (カ) ~鼻ba→~長b エUE
2 6 (キ) 耳ba→~鼻ba オUE
ウ(ク) 耳ba ウ&E
2 6ウ(ケ) ~鼻ba キクMPP
12 6ウ(コ) ~長b カケMPP
ウ(サ) 長b ウ&E
12 6ウ(シ) 長b&~長b コサ&I
12 6 (ス) 長b&~長b イウシEE
123 (セ) 長b&~長b 36スEE
12 (ソ)~∃x(兎x&象x) 36セRAA
12 (タ)∀x~(兎x&象x) ソ量化子の関係
12 (チ) ~(兎a&象a) タUE
12 (ツ) ~兎a∨~象a チ、ド・モルガンの法則
12 (テ) 兎a→~象a ツ含意の定義
12 (ト)∀x(兎x→~象x) テUI
従って、
(10)により、
(11)
(ⅰ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。然るに、
(ⅱ)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。従って、
(ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(11)により、
(12)
(ⅰ)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは(xの鼻であって、yは長く)、すべてのzについて(zがxの鼻でないならば、zは長くない)}。 然るに、
(ⅱ)すべてのxについて{xが兎であるならば、あるyは(xの耳であって、yは長く)、すべてのzについて(zがx耳であるならば、zはxの鼻でない)}。従って、
(ⅲ)すべてのxについて(xが兎であるならば、xは象ではない。)
といふ「推論(三段論法)」は、すなはち、
(ⅰ)象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。然るに、
(ⅱ)兎の耳は長いが、耳は鼻ではない。 従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(04)~(12)により、
(13)
① 象は鼻が長い。⇔
① 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
① すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは(xの鼻であって、yは長く)、すべてのzについて(zがxの鼻でないならば、zは長くない)}。
といふ「等式」が「正しい」のであれば、そのときに限って、
(ⅰ)象は鼻が長い。 然るに、
(ⅱ)兎の耳は長いが、耳は鼻ではない。従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論」は、「日本語」としても、「述語論理」としても、「妥当」である。
然るに、
(14)
(ⅰ)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
1 (2) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
3 (3) 象a A
13 (4) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 23&I
13 (5) ∃y(鼻ya&長y) 4&E
13 (6) ∀z(~鼻za→~長z) 4&E
13 (7) ~鼻ba→~長b 1UE
8 (8) 長b A
9(9) ~鼻ba A
13 9(ア) ~長b 79MPP
1389(イ) 長b&~長b 8ア&I
138 (ウ) ~~鼻ba 9イRAA
138 (エ) 鼻ba ウDN
13 (オ) 長b→ 鼻ba 8エCP
13 (カ) ∀z( 長z→ 鼻za) オUI
13 (キ) ∃y(鼻ya&長y)&∀z( 長z→ 鼻za) 5カ&I
1 (ク) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z( 長z→ 鼻za) 3キCP
1 (ケ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z( 長z→ 鼻zx)} クUI
(ⅱ)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z( 長z→ 鼻zx)} A
1 (2) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z( 長z→ 鼻za) 1UE
3 (3) 象a A
13 (4) ∃y(鼻ya&長y)&∀z( 長z→ 鼻za) 34MPP
13 (5) ∃y(鼻ya&長y) 4&E
13 (6) ∀z( 長z→ 鼻za) 4&E
13 (7) 長b→ 鼻ba 6UE
8 (8) ~鼻ba A
9(9) 長b A
13 9(ア) 鼻ba 79&I
1389(イ) ~鼻ba&鼻ba 8ア&I
138 (ウ) ~長b 9イRAA
13 (エ) ~鼻ba→~長b 8ウCP
13 (オ) ∀z(~鼻za→~長z) エUI
13 (カ) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 5オ&I
1 (キ) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 3カCP
1 (ク)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} キUI
従って、
(14)により、
(15)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z( 長z→ 鼻zx)}。
に於いて、すなはち、
① すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは(xの鼻であって、yは長く)、すべてのzについて(zがxの鼻でないならば、zは長くない)}。
② すべてのxについて{xが象であるならば、あるyは(xの鼻であって、yは長く)、すべてのzについて(zが長いのであれば、xはxの鼻である)}。
に於いて、
①=② である。
従って、
(13)(14)(15)により、
(16)
① 象は鼻が長い。
② 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。
③ 象は鼻は長いが、長いのは鼻である。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(16)により、
(17)
① AはBがCである。
② AはBはCであり、B以外はCではない。
③ AはBはCであり、CはBである。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(17)により、
(18)
例へば、
① T記念会は、私が理事長です。
② T記念会は、私以外は理事長ではない。
③ T記念会は、理事長は私です。
に於いて、
①=②=③ でなければ、ならない。
然るに、
(19)
よく知られているように、「私が理事長です」は語順を変え、
理事長は、私です。 と直して初めて主辞賓辞が適用されるのである。また、かりに大倉氏が、
タゴール記念会は、私が理事長です。
と言ったとすれば、これは主辞「タゴール記念会」を品評するという心持ちの文である。
(三上章、日本語の論理、1963年、40・41頁)
従って、
(18)(16)により、
(20)
果たして、
① T記念会は、私が理事長です。
② T記念会は、私以外は理事長ではない。
③ T記念会は、理事長は私です。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(15)~(20)により、
(21)
① 象は鼻が長い。
② 象は鼻は長いが、鼻以外は長くない。
③ 象は鼻は長いが、長いのは鼻である。
④ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
⑤ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z( 長z→ 鼻zx)}。
に於いて、
①=②=③=④=⑤ である。
然るに、
(22)
一、總主トハ如何ナル者ゾ
動詞、形容詞ニ對シテ其主語アルト同ジク、主語ト説語(動詞或ハ形容詞)トヨリ成レル一ノ説話(即チ文)ニ對シテモ更ニソノ主語アルコト國語ニハ屡々アリ。例ヘバ「象は體大なり」ノ「象」、「熊は力強し」ノ「熊」、「鳥獸蟲魚皆性あり」ノ「鳥獸蟲魚」、「仁者は命長し」ノ「仁者」、「賣藥は效能薄し」ノ「賣藥」、「慾は限無し」ノ「慾」、「酒は養生に害あり」ノ「酒」、「支那は人口多し」ノ「支那」ノ如キハ、皆、「體大なり」「力強し」等ノ一説話ニ對シテ更ニソノ主語タル性格ヲ有ス。何トナレバ「象は體大なり」「熊は力強し」等ヨリ「象」「熊」等ノ再度ノ主語ヲ取去ル時ハ、殘餘ハ「體大なり」「力強し」等トナリテ、文法上ノ文ノ形ハ完全ニ之ヲ具フルニモ拘ラズ、意義ニ不足ヲ生ジ、其事ノ主トアルベキ「象」「熊」等ノ名詞ヲ竢ッテ始メテ意義ノ完全ナル一圓ノ説話ヲ成サントスル傾アルコト、ナホ普通ノ動詞、形容詞ノ名詞ヲ竢ッテ始メテ一ノ完全ナル説話ヲ成サントスル傾アルト同趣味ノモノアレバナリ。殊ニ「性有り」「限無し」等ノ一種ノ説話ニ對シテハ、實用ノ際ニ再度ノ主語ノ必要アル事ハ頗ル顯著ナルニアラズヤ。コレハ「うら(心)やまし(疚)」「て(質)がたし(堅)」ナドノ一説話ノ轉シテ一ノ形容詞トナリ、然ル上ハ實用ノ際ニ更ニソノ主語ヲ取ルト一般ナリ。サレバ「富貴は羨し」ノ「うらやまし」ニ對シテ「富貴」ヲ主語トイフヲ至當トセバ、「體大なり」「力強し」ニ對シテ「象」「熊」ヲソノ主語トイフモ亦不當ニハアラジ。斯カレバコノ類ノ再度ノ主ヲ予ハ別ニ「總主」ト名ヅケントス。
總主ハ斯ク頗ル簡單ニ説明セラルベク、亦容易ニ會得セラルベキ者ナリ。學者ノ潛思苦慮ヲモ要セズ、考古引證ヲモ須タズシテ、小學ノ兒童モ、口頭ニ、文章ニ、此語法ヲ用ヰ、歌人文士モ之ヲ用ヰテ毫モ疑フ事ナシ。コノ語法ハ本ヨリ我國ニ有リシナランガ、漢學ノ流行ニ連レテ益廣ク行ハレ、今日トナリテハ最早之ヲ目シテ國語ノ法則ニ非ズトイフヲ得ザルニ至レリ。然ルニ國語ノ法則トシテ日本ノ文法ニ之ヲ編入スル者ナキハ何故ゾ。西洋ノ言語ニ類似ノ語法ナク、西洋ノ文典ニ類似ノ記載ナキガ故ニハ非ザルカ。
(草野淸民、國語の特有セル語法 ― 總主、『帝國文學』五卷五號、明治三十二年:大修館書店、日本の言語学 第3巻 文法Ⅰ、1978年、533頁)
従って、
(22)により、
(23)
英語のやうな、
西洋ノ言語ニハ、
象は鼻が長い (象は鼻長し)。
象は体が大きい(象は體大なり)。
に類似する「語法」はない。
従って、
(21)(22)により、
(24)
「日本語」には、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「述語論理」に相当する「語法」として、
① 象は鼻が長い。
といふ「語法」が有るが、
「英語」には、そのやうな「語法」はない。
(03)(24)により、
(25)
日本語<英語<述語論理
といふ「順番」で「論理的」であるにも拘らず、
英語には、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「述語論理式」に相当する「語法」が無くて、
日本語には、それが有る。
といふ、ことになる。
(26)
① 象は動物である。
② 象であるならば、それは動物である。
③ すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物である)。
に於いて、
①=②=③ である。
とする。
然るに、
(27)
② ∀x(象x→動物x)。
③ すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物である)。
に於いて、
②=③ である。
従って、
(26)(27)により、
(28)
① 象は動物である。
② ∀x(象x→動物x)。
③ すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物である)。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(28)により、
(29)
① 象は
② ∀x(象x→
③ すべてのxについて(xが象であるならば、
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(29)により、
① 象は の、
② は は、「述語論理的」である。
令和04年05月29日、毛利太。
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