2019年7月30日火曜日

「他ならぬ・~ガ」の「が(既知)」について(Ⅱ)。

― 長い間、「返り点」に関する「記事」を書いてゐません。「返り点と括弧」に関しては、
(α)「返り点」と「括弧」に付いて。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_11.html
(β)「返り点」と「括弧」の条件。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_15.html
(γ)「返り点」と「括弧」の条件(Ⅱ):(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_16.html
(δ)「返り点」は、下には戻らない。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_20.html
(ε)「下中上点」等が必要な「理由」。:(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_22.html
(ζ)「返り点・モドキ」について。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_24.html)⇒
 Web上には存在しますが、何故か、アクセス出来ません。
(η)「一二点・上下点」に付いて。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_26.html
(θ)「括弧」の「順番」。      :(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post.html
(ι)「返り点」と「括弧」の関係   :(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html
等々、「その他、諸々」を、お読み下さい。―

(01)
B:君は踊りがうまいと聞いたことがあるぞ、お願いだ、踊ってくれ。
A:ほかの人に頼めよ。
B:君自身が踊るのを見たいんだよ。
(白水社、CDエクスプレスラテン語、2004年、67頁)
然るに、
(02)
B:Te bene saltare audivi.Salta, obsecro.
A:Alium roga.
B:Te ipsum saltare videre volo.
(白水社、CDエクスプレスラテン語、2004年、66頁)
従って、
(01)(02)により、
(03)
A:Alium roga.
B:Te ipsum saltare videre volo.
といふ「ラテン語」は、
A:他の人に頼めよ。
B:他ならぬ君に踊って欲しいんだ。
といふ「日本語」に、相当する。
然るに、
(04)
B:Te ipsum の、
     ipsum は、ipse の「対格」であって、
             ipse は「強意代名詞」である。
然るに、
(05)
上述の指示代名詞のほかに、「~自身、自体」「他ならぬ~」を意味する強意代名詞の ipse も、三人称代名詞になります(大西英文、はじめてのラテン語、1997年、174頁改)。
従って、
(03)(04)(05)により、
(06)
B:Te ipsum saltare videre volo.
といふ「ラテン語」は、
B:他ならぬ君に踊って欲しいんだ。
といふ「日本語」に相当し、尚且つ、
B:ipsum(強意代名詞)が、
B:他ならぬ
といふ「意味」を、担ってゐる
然るに、
(07)
B:君に踊って欲しいんだ。
に於いて、
B:君に を、「強く発音(強調)」すれば、
B:他ならぬ、君に踊って欲しいんだ。
といふ、「意味」になる。
従って、
(06)(07)により、
(08)
強調形」は、「ラテン語」も、「日本語」も、「他ならぬ~」といふ意味を、表すことが、出来る。
然るに、
(09)
 マリリンモンローディマジオと結婚!
のような見出しが女性週刊誌を賑わすのは、ガによってその上の体言を未知扱いにし、まったく驚いた、新しい情報だぞ! と読者に迫る手法である。
 あのチャップリン大往生。
のような場合、「あの」がついている以上、未知とはいえないという議論も有りうるが、むしろ既知のものを未知扱いすることによって、驚異を表す表現なのである。
(大野晋、日本語の文法を考える、1978年、41頁)
然るに、
(09)により、
(10)
これらの場合は、二つとも、
③(他ならぬ)マリリンモンローディマジオと結婚!
④(他ならぬ)あのチャップリン大往生。
といふ「意味」であある。
然るに、
(11)
③(他ならぬ)マリリンモンローディマジオと結婚!
④(他ならぬ)あのチャップリン大往生。
に対して、
①(他ならぬ)マリリンモンローはディマジオと結婚!
②(他ならぬ)あのチャップリンは大往生。
といふ「日本語」は、存在しない
従って、
(12)
①      マリリンモンローはディマジオと結婚!
②      あのチャップリンは大往生。
③(他ならぬ)マリリンモンローディマジオと結婚!
④(他ならぬ)あのチャップリン大往生。
である。
従って、
(08)(12)により、
(13)
① マリリンモンローは
② あのチャップリンは
に対する、
③ マリリンモンロー
④ あのチャップリン
は、「強調形」であると、「推定」できる。
従って、
(13)により、
(14)
① マリリンモンローは(音)
② あのチャップリンは(音)
に対する、
③ マリリンモンロー音)
④ あのチャップリン音)
は、「強調形」であると、「推定」できる。
然るに、
(15)
清音の方は、小さくきれいで速い感じで、コロコロと言うと、ハスの上を水玉がころがるような時の形容である。ロと言うと、大きく荒い感じで、力士が土俵でころがる感じである(金田一春彦、日本語(上)、1988年、131頁)。もし音を発音するときの物理的・身体的な口腔の膨張によって「音=大きい」とイメージがつくられているのだとしたら、面白いですね。この仮説が正しいとすると、なぜ英語話者や中国語話者も濁音に対して「大きい」というイメージを持っているか説明がつきます(川原繁人、音とことばの不思議な世界、2015年、13頁)。
従って、
(14)(15)により、
(16)
① マリリンモンローは(清音)
② あのチャップリンは(清音)
に対する、
③ マリリンモンローが(音)
④ あのチャップリンが(音)
は、実際に、「強調形」である。
従って、
(08)(19)により、
(17)
③(他ならぬ
④(他ならぬ
といふ「意味」を、「言外に表したい」のであれば、その場合は、
① マリリンモンローは
② あのチャップリンは
とは書かずに、
③ マリリンモンロー
④ あのチャップリン
といふ風に、書くことになる。
従って、
(09)(17)により、
(18)
 マリリンモンローディマジオと結婚!
のような見出しが女性週刊誌を賑わすのは、によってその上の体言を未知扱いにし、まったく驚いた、新しい情報だぞ! と読者に迫る手法である。
といふ「必然性」は、無い
従って、
(19)
 あのチャップリンが大往生。
のような場合、「あの」がついている以上、未知とはいえないという議論も有りうるが、むしろ既知のものを未知扱いすることによって、驚異を表す表現なのである。
といふ「言ひ方」は、「詭弁」に過ぎない。
(20)
 あのチャップリン大往生。
は、「驚異」ではなく、「強意」を表してゐる。
令和元年07月30日、毛利太。

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