(01)
演繹メタ定理は、メタ定理の中でも最も重要である。論理体系のなかには、これを推論規則("→" の導入規則)として採用したもの(自然演繹)もある(演繹定理:ウィキペディア)。
然るに、
(02)
連式表現がトートロジー的であるか否かを決めるために、それに対応する条件法を標準的な方法でテストしもよいのである。
連式に対して10個の原始的規則のみを用いて証明が見出されるならば、その連式を、簡単な言いかたをとって、導出可能(deriable)であるとよぶことにしよう。―中略、―
メタ定理1:すべての導出可能な連式は、トートロジーである。
(E.J.レモン、論理学初歩、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、1973年、97頁)
然るに、
(03)
「E.J.レモンの、自然演繹の、10個の原始的規則(10 primitive rules)」とは、
① 仮定(A)
② 前件肯定(MPP)
③ 後件否定(MTT)
④ 二重否定(DN)
⑤ 条件法的証明(CP)
⑥ 連言導入(&I)
⑦ 連言除去(&E)
⑧ 選言導入(∨I)
⑨ 選言除去(∨E)
⑩ 背理法(RAA)
といふ「規則」をいふ。
然るに、
(04)
そこで演繹定理(Deduction theorem)は次のように表現される。
定理2.2 AとBは論理式で、Γ は論理式の有限の列であるとする。もし、
Γ,A├ B
ならば、
Γ├ A→B
である(長尾真・淵一広、論理と意味、1983年、40頁)。
然るに、
(05)
Γ,A├ B
ならば、
Γ├ A→B
といふのは、
⑤ 条件法的証明(CP)
に、他ならない。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
メタ定理1:「(10個の原始的規則によって)導出可能」な連式は、すべてがトートロジーである。
といふことを、「保証(確約)」してゐるは、他ならぬ、
⑤ 演繹定理(条件法的証明)
である。といふ、ことになる。
従って、
(07)
① 仮定(A)
② 前件肯定(MPP)
③ 後件否定(MTT)
④ 二重否定(DN)
⑤ 条件法的証明(CP)
⑥ 連言導入(&I)
⑦ 連言除去(&E)
⑧ 選言導入(∨I)
⑨ 選言除去(∨E)
⑩ 背理法(RAA)
といふ「規則」のみを用ひて、例へば、
⑪「含意の定義」 が「証明」されたとするならば、その「証明」の「正しさ」を、「保証(確約)」してゐるのは、「⑤ 演繹定理」であり、
⑫「ド・モルガンの法則」が「証明」されたとするならば、その「証明」の「正しさ」を、「保証(確約)」してゐるのは、「⑤ 演繹定理」である。
といふ、ことになる。
然るに、
(08)
(a)P→Q├ ~P∨Q
1 (1) P→Q A
2 (2) ~(~P∨Q) A
3(3) ~P A
3(4) ~P∨Q 3∨I
23(5) ~(~P∨Q)&
(~P∨Q) 24&I
2 (6) ~~P 35RAA
2 (7) P 6DN
12 (8) Q 17MPP
12 (9) ~P∨Q 8∨I
12 (ア) ~(~P∨Q)&
(~P∨Q) 29&I
1 (イ)~~(~P∨Q) 2アRAA
1 (ウ) ~P∨Q イDN
(b)~P∨Q├ P→Q
1 (1) ~P∨ Q A
2 (2) P&~Q A
3 (3) ~P A
2 (4) P 2&E
23 (5) ~P& P 34&I
3 (6)~(P&~Q) 25RAA
7 (7) Q A
2 (8) ~Q A
2 7 (9) Q&~Q 78&I
7 (ア)~(P&~Q) 29RAA
1 (イ)~(P&~Q) 1367ア∨E
ウ (ウ) P A
エ(エ) ~Q A
ウエ(オ) P&~Q エオ&I
1 ウエ(カ)~(P&~Q)&
(P&~Q) イオ&I
1 ウ (キ) ~~Q 7カRAA
1 ウ (ク) Q キDN
1 (ケ) P→ Q ウクCP
(c)P&~Q├ ~(~P∨Q)
1 (1) P&~Q A
2 (2) ~P∨ Q A
1 (3) P 1&E
4 (4) ~P A
1 4 (5) P&~P 34&I
4 (6) ~(P&~Q) 15RAA
1 (7) ~Q 1&E
8(8) Q A
1 8(9) ~Q&Q 78&I
8(ア) ~(P&~Q) 19RAA
2 (イ) ~(P&~Q) 2468ア∨I
12 (ウ) (P&~Q)&
~(P&~Q) 1イ&I
1 (エ)~(~P∨ Q) 2ウRAA
(d)~(~P∨Q)├ P&~Q
1 (1)~(~P∨Q) A
2 (2) ~P A
2 (3) ~P∨Q 2∨I
12 (4)~(~P∨Q)&
(~P∨Q) 13&I
1 (5) ~~P 24RAA
1 (6) P 5DN
7(7) Q A
7(8) ~P∨Q 7∨I
1 7(9)~(~P∨Q)&
(~P∨Q) 13&I
1 (ア) ~Q 79RAA
1 (イ) P&~Q 6ア&I
従って、
(02)(03)(07)(08)により、
(09)
⑪ P→ Q ┤├ ~P∨ Q
⑫ P&~Q ┤├ ~(~P∨Q)
すなはち、
⑪「含意の定義」 は、「導出可能(deriable)」であり、
⑫「ド・モルガンの法則」も、「導出可能(deriable)」であるため、
⑪「含意の定義」は、 突き詰めて言ふと、「⑤ 演繹定理」だけから「導出された連式」であって、
⑫「ド・モルガンの法則」も、突き詰めて言ふと、「⑤ 演繹定理」だけから「導出された連式」である。
然るに、
(10)
5 原始的規則あるい導出された規則を、既に証明されたどのような連式あるいは定理とでも、ともに用いて、証明せよ。
5 Using primitive or derived rules, together with any sequents or theorems already proved, prove;
(c)├((P→Q)→P)→P
(E.J.レモン、論理学初歩、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、1973年、80頁と、原文)
cf.
ただし、「E.J.レモン、論理学初歩」には、「練習問題の解答」は、載ってゐません。
然るに、
(11)
(c)
1 (1) (P→ Q)→P ① A
1 (2) ~(P→ Q)∨P ⑪ 1含意の定義
3 (3) ~(P→ Q) ① A
4 (4) ~P∨ Q ① A
4 (5) P→ Q ⑪ 3含意の定義
34 (6) ~(P→ Q)&
(P→ Q) ⑥ 35&I
3 (7)~(~P∨ Q) ⑩ 46RAA
3 (8) P&~Q ⑫ 7ド・モルガンの法則
3 (9) P ⑥ 8&I
ア(ア) P ① A
1 (イ) P ⑨ 239アア∨E
(ウ) ((P→Q)→P)→P ⑤ 1イCP
(〃)((PならばQ)ならばP)ならばP。
(〃)
1 (1) P ① A
(2) P→P ⑤11CP(同一律)
(3) ~P∨P ⑪ 2含意の定義(排中律)
4 (4) ~P ① A
4 (5) ~P∨Q ⑧ 4∨I
4 (6) P→Q ⑪ 4含意の定義
4 (7) (P→Q)&~P ⑥ 46&I
4 (8)~(~(P→Q)∨ P) ⑫ 7ド・モルガンの法則
9 (9) (P→Q)→ P ① A
9 (ア) ~(P→Q)∨ P ⑪ 9含意の定義
49 (イ)~(~(P→Q)∨ P)&
(~(P→Q)∨ P) ⑥ 8ア&I
4 (ウ) ~((P→Q)→ P) ⑩ 9イRAA
4 (エ) ~((P→Q)→ P)∨P ⑧ ウ∨I
オ(オ) P ① A
オ(カ) ~((P→Q)→ P)∨P ⑧ オ∨I
(キ) ~((P→Q)→ P)∨P ⑨ 34エオカ∨E
(ク) ((P→Q)→ P)→P ⑪ キ含意の定義
(〃) ((PならばQ)ならばPならば)P。
従って、
(09)(10)(11)により、
(12)
⑬├((P→Q)→P)→P≡((PならばQ)ならばP)ならばP。
といふ「連式」、すなはち、「パースの法則」も、「導出可能(deriable)」であるため、
③「パースの法則」も、突き詰めて言ふと、「⑤ 演繹定理」だけから「導出された連式」である。
(13)
例えば、
(d)
1(1)P&Q A
1(2)P 1&E
(3)P&Q→Q 12CP
(〃)PであってQならば、Pである。
といふ「証明」をした際に、その「証明」自体が「妥当」であることを、「⑤ 演繹定理」で「証明」したとすれば、
├ P&Q→Q≡PであってQならば、Pである。
といふ「連式」が「恒真式(トートロジー)」であることを、最終的に「証明」したのは、「⑤ 演繹定理」である。
従って、
(11)(12)(13)により、
(14)
もう一度、確認すると、
⑬((P→Q)→P)→P≡((PならばQ)ならばP)ならばP。
といふ「パースの法則」は、「⑤ 演繹定理」だけから、導くことが、出来る。
然るに、
(15)
命題計算では、パースの法則は ((P→Q)→P)→P のことを言う。この意味するところを書き出すと、命題Pについて、命題Qが存在して、「PならばQ」からPが真であることが従うときには、Pは真でなければならないとなる。とりわけ、Qとして偽を選んだ場合には、Pから偽が従うときは常にPが真であるならば、Pは真であるとなる。
パースの法則は直観論理や中間命題論理では成立せず、演繹定理だけからでは導くことができない。
(パースの法則 - Wikipedia)
従って、
(10)~(15)により、
(16)
(a)「E.J.レモン、論理学初歩」
(b)「パースの法則 - Wikipedia」
に於いて、
(a)は、「パースの法則」は、「演繹定理だけ」から、 導くことが出来る。 と、言ってゐて、
(b)は、「パースの法則」は、「演繹定理だけ」からでは導くことが出来ない。と、言ってゐる。
令和02年02月02日、毛利太。
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