2020年2月2日日曜日

(パースの法則、1885)の「証明」(其の参:大きな、疑問)。

(01)
演繹メタ定理は、メタ定理の中でも最も重要である。論理体系のなかには、これを推論規則("→" の導入規則)として採用したもの(自然演繹)もある(演繹定理:ウィキペディア)。
然るに、
(02)
連式表現トートロジー的であるか否かを決めるために、それに対応する条件法を標準的な方法でテストしもよいのである。
連式に対して10個の原始的規則のみを用いて証明が見出されるならば、その連式を、簡単な言いかたをとって、導出可能(deriable)であるとよぶことにしよう。―中略、―
メタ定理1:すべての導出可能な連式は、トートロジーである。
(E.J.レモン、論理学初歩、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、1973年、97頁)
然るに、
(03)
「E.J.レモンの、自然演繹の、10個の原始的規則(10 primitive rules)」とは、
① 仮定(A)
② 前件肯定(MPP)
③ 後件否定(MTT)
④ 二重否定(DN)
条件法的証明(CP)
⑥ 連言導入(&I)
⑦ 連言除去(&E)
⑧ 選言導入(∨I)
⑨ 選言除去(∨E)
⑩ 背理法(RAA)
といふ「規則」をいふ。
然るに、
(04)
そこで演繹定理(Deduction theorem)は次のように表現される。
定理2.2 AとBは論理式で、Γ は論理式の有限の列であるとする。もし、
 Γ,A├ B
ならば、
 Γ├ A→B
である(長尾真・淵一広、論理と意味、1983年、40頁)。
然るに、
(05)
 Γ,A├ B
ならば、
 Γ├ A→B
といふのは、
条件法的証明(CP)
に、他ならない。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
メタ定理1:「(10個の原始的規則によって)導出可能」な連式は、すべてがトートロジーである。
といふことを、「保証(確約)」してゐるは、他ならぬ、
演繹定理条件法的証明)
である。といふ、ことになる。
従って、
(07)
① 仮定(A)
② 前件肯定(MPP)
③ 後件否定(MTT)
④ 二重否定(DN)
条件法的証明(CP)
⑥ 連言導入(&I)
⑦ 連言除去(&E)
⑧ 選言導入(∨I)
⑨ 選言除去(∨E)
⑩ 背理法(RAA)
といふ「規則」のみを用ひて、例へば、
⑪「含意の定義」    が「証明」されたとするならば、その「証明」の「正しさ」を、「保証(確約)」してゐるのは、「⑤ 演繹定理」であり、
⑫「ド・モルガンの法則」が「証明」されたとするならば、その「証明」の「正しさ」を、「保証(確約)」してゐるのは、「⑤ 演繹定理」である。
といふ、ことになる。
然るに、
(08)
(a)P→Q├ ~P∨Q
1  (1)    P→Q   A
 2 (2) ~(~P∨Q)  A
  3(3)   ~P     A
  3(4)   ~P∨Q   3∨I
 23(5) ~(~P∨Q)&
        (~P∨Q)  24&I
 2 (6)  ~~P     35RAA
 2 (7)    P     6DN
12 (8)      Q   17MPP
12 (9)   ~P∨Q   8∨I
12 (ア) ~(~P∨Q)&
        (~P∨Q)  29&I
1  (イ)~~(~P∨Q)  2アRAA
1  (ウ)   ~P∨Q   イDN
(b)~P∨Q├ P→Q
1     (1) ~P∨ Q   A
 2    (2)  P&~Q   A
  3   (3) ~P      A
 2    (4)  P      2&E
 23   (5) ~P& P   34&I
  3   (6)~(P&~Q)  25RAA
   7  (7)     Q   A
 2    (8)    ~Q   A
 2 7  (9)  Q&~Q   78&I
   7  (ア)~(P&~Q)  29RAA
1     (イ)~(P&~Q)  1367ア∨E
    ウ (ウ)  P      A
     エ(エ)    ~Q   A
    ウエ(オ)  P&~Q   エオ&I
1   ウエ(カ)~(P&~Q)&
          (P&~Q)  イオ&I
1   ウ (キ)   ~~Q   7カRAA
1   ウ (ク)     Q   キDN
1     (ケ)  P→ Q   ウクCP
(c)P&~Q├ ~(~P∨Q)
1   (1)   P&~Q   A
 2  (2)  ~P∨ Q   A
1   (3)   P      1&E
  4 (4)  ~P      A
1 4 (5)   P&~P   34&I
  4 (6) ~(P&~Q)  15RAA
1   (7)     ~Q   1&E
   8(8)      Q   A
1  8(9)   ~Q&Q   78&I
   8(ア) ~(P&~Q)  19RAA
 2  (イ) ~(P&~Q)  2468ア∨I
12  (ウ)  (P&~Q)&
        ~(P&~Q)  1イ&I
1   (エ)~(~P∨ Q)  2ウRAA
(d)~(~P∨Q)├ P&~Q
1  (1)~(~P∨Q)  A
 2 (2)  ~P     A
 2 (3)  ~P∨Q   2∨I
12 (4)~(~P∨Q)&
       (~P∨Q)  13&I
1  (5) ~~P     24RAA
1  (6)   P     5DN
  7(7)     Q   A
  7(8)  ~P∨Q   7∨I
1 7(9)~(~P∨Q)&
       (~P∨Q)  13&I 
1  (ア)    ~Q   79RAA
1  (イ)  P&~Q   6ア&I
従って、
(02)(03)(07)(08)により、
(09)
⑪ P→  Q ┤├    ~P∨ Q
⑫ P&~Q ┤├ ~(~P∨Q)
すなはち、
⑪「含意の定義」    は、「導出可能(deriable)」であり、
⑫「ド・モルガンの法則」も、「導出可能(deriable)」であるため、
⑪「含意の定義」は、    突き詰めて言ふと、「⑤ 演繹定理だけから「導出された連式」であって、
⑫「ド・モルガンの法則」も、突き詰めて言ふと、「⑤ 演繹定理だけから「導出された連式」である。
然るに、
(10)
原始的規則あるい導出された規則を、既に証明されたどのような連式あるいは定理とでも、ともに用いて、証明せよ。
5 Using primitive or derived rules, together with any sequents or theorems already proved, prove;
(c)├((P→Q)→P)→P 
(E.J.レモン、論理学初歩、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、1973年、80頁と、原文)
cf.
ただし、「E.J.レモン、論理学初歩」には、「練習問題の解答」は、載ってゐません。
然るに、
(11)
(c)
1   (1)  (P→ Q)→P   ① A
1   (2) ~(P→ Q)∨P   ⑪ 1含意の定義
 3  (3) ~(P→ Q)     ① A
  4 (4)  ~P∨ Q      ① A
  4 (5)   P→ Q      ⑪ 3含意の定義
 34 (6) ~(P→ Q)&
         (P→ Q)     ⑥ 35&I
 3  (7)~(~P∨ Q)     ⑩ 46RAA
 3  (8)   P&~Q      ⑫ 7ド・モルガンの法則
 3  (9)   P         ⑥ 8&I
   ア(ア)         P   ① A
1   (イ)   P         ⑨ 239アア∨E
    (ウ) ((P→Q)→P)→P ⑤ 1イCP
    (〃)((PならばQ)ならばP)ならばP。
(〃)
1  (1)    P          ① A
   (2)    P→P        ⑤11CP(同一律)
   (3)   ~P∨P        ⑪ 2含意の定義(排中律)
4  (4)   ~P          ① A
4  (5)   ~P∨Q        ⑧ 4∨I
4  (6)    P→Q        ⑪ 4含意の定義
4  (7)   (P→Q)&~P    ⑥ 46&I
4  (8)~(~(P→Q)∨ P)   ⑫ 7ド・モルガンの法則
 9 (9)   (P→Q)→ P    ① A
 9 (ア)  ~(P→Q)∨ P    ⑪ 9含意の定義
49 (イ)~(~(P→Q)∨ P)&
       (~(P→Q)∨ P)   ⑥ 8ア&I
4  (ウ) ~((P→Q)→ P)   ⑩ 9イRAA
4  (エ) ~((P→Q)→ P)∨P ⑧ ウ∨I
  オ(オ)      P        ① A
  オ(カ) ~((P→Q)→ P)∨P ⑧ オ∨I
   (キ) ~((P→Q)→ P)∨P ⑨ 34エオカ∨E
   (ク)  ((P→Q)→ P)→P ⑪ キ含意の定義
   (〃)  ((PならばQ)ならばPならば)P。
従って、
(09)(10)(11)により、
(12)
⑬├((P→Q)→P)→P≡((PならばQ)ならばP)ならばP。
といふ「連式」、すなはち、「パースの法則」も、「導出可能(deriable)」であるため、
③「パースの法則」も、突き詰めて言ふと、「⑤ 演繹定理」だけから「導出された連式」である。
(13)
例えば、
(d)
1(1)P&Q   A
1(2)P     1&E
 (3)P&Q→Q 12CP
 (〃)PであってQならば、Pである。
といふ「証明」をした際に、その「証明自体が「妥当」であることを、「⑤ 演繹定理」で「証明」したとすれば、
├ P&Q→Q≡PであってQならば、Pである。
といふ「連式」が「恒真式(トートロジー)」であることを、最終的に「証明」したのは、「⑤ 演繹定理」である。
従って、
(11)(12)(13)により、
(14)
もう一度、確認すると、
⑬((P→Q)→P)→P≡((PならばQ)ならばP)ならばP。
といふ「パースの法則」は、「⑤ 演繹定理だけから、導くことが、出来る
然るに、
(15)
命題計算では、パースの法則は ((P→Q)→P)→P のことを言う。この意味するところを書き出すと、命題Pについて、命題Qが存在して、「PならばQ」からPが真であることが従うときには、Pは真でなければならないとなる。とりわけ、Qとして偽を選んだ場合には、Pから偽が従うときは常にPが真であるならば、Pは真であるとなる。
パースの法則は直観論理や中間命題論理では成立せず、演繹定理だけからでは導くことができない
(パースの法則 - Wikipedia)
従って、
(10)~(15)により、
(16)
(a)「E.J.レモン、論理学初歩」
(b)「パースの法則 - Wikipedia」
に於いて、
(a)は、「パースの法則」は、「演繹定理だけ」から、 導くことが出来る。 と、言ってゐて、
(b)は、「パースの法則」は、「演繹定理だけ」からでは導くことが出来ない。と、言ってゐる。
令和02年02月02日、毛利太。

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