2020年2月23日日曜日

「君子不以其所以養人者害人」と「その対偶」の「述語論理」。

(01)
① 君子於所不知、蓋蓋闕如也=
① 君子於一レ知、蓋闕如也=
① 君子於[所〔不(知)〕]、蓋闕如也⇒
① 君子於[〔(知)不〕所]、蓋闕如也=
① 君子は[其の〔(知ら)不る〕所に]於いて、蓋し闕如す。
然るに、
(02)
君子於所不知、蓋蓋闕如也。
君子は自分のわからないことではだまっているものだ。
(金谷治 訳注、論語、1963年、249頁)
然るに、
(03)
 そノ そレ
[指示形容詞]《人・物・事などを指し、単数・複数のどちらをも指す》
① 連体修飾格
(ⅱ)〈人を指し、主語と一致する場合〉「自分の
(天野成之、漢文基本語辞典、1999年、75頁)
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
① 君子於[其所〔不(知)〕]、蓋闕如也⇒
① 君子於[其〔(知)不〕所]、蓋闕如也=
① 君子は[其の〔(知ら)不る〕所に]於いて、蓋し闕如す。
に於いて、
其の自分の
である。
然るに、
(05)
② 君子不以所以養人者害人=
② 君子不以 養一レ人者甲レ人=
② 君子不{以[所-以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
② 君子{[〔(人)養〕所-以者]以(人)害}不=
② 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所-以の者を]以て(人を)害せ}ず。
従って、
(04)(05)により、
(06)
② 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
② 君子{[其〔(人)養〕所-以者]以(人)害}不=
② 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所-以の者を]以て(人を)害せ}ず。
に於いても、
其の自分の
である。
然るに、
(07)
君子不以其所以養人者害人
君子は人間が生きてゆく手段である土地が惜しさに争って、大切な人間そのものを犠牲にはしないものだ。
(小林勝人 訳注、孟子 上、1968年、104頁)
従って、
(07)により、
(08)
② 所以養人者=
② 人間が生きてゆく手段=
土地
である。
然るに、
(09)
滕文公問曰、滕小國也、竭力以事大國、則不得免焉、如之何則可、孟子對曰、昔者大王居邠、狄人侵之、事之以皮幣、不得免焉、事之以犬馬、不得免焉、事之以珠玉、不得免焉、乃屬其耆老而告之曰、狄人之所欲者、吾土地也、吾聞之也、君子不以其所以養人者害人、
滕文の公問ひて曰く、滕は小國なり、力を竭して以て大國に事うるとも、則ち免るるを得じ。如之何にせば則ち可ならん、孟子對へて曰く、昔者大王邠に居りしとき、狄人之を侵せり。之に事うる皮幣を以てするも、免かるるを得ず。之に事うるに犬馬を以てするも、免かるるを得ず。之に事うる珠玉を以てするも、免かるるを得ず。乃ち其の耆老を屬めて之に告げて曰く、狄人の欲する所の者は、吾が土地なり、吾之を聞く、君子は其の人を養ふ所以の者を以て人を害せず(小林勝人 訳注、孟子 上、1968年、104頁改)。
従って、
(09)により、
(10)
② 君子不以其所以養人者害人。
に於いて、
=王の人民
である。
従って、
(01)~(10)により、
(11)
② 君子不以其所以養人者害人=
② 君子不其所以 養一レ人者甲レ人=
② 君子不{以[其所-以〔養(人)〕者]害(人)}⇒
② 君子{[其〔(人)養〕所-以者]以(人)害}不=
② 君子は{[其の〔(人を)養ふ〕所-以の者を]以て(人を)害せ}ず。
といふ「漢文・訓読」は、突き詰めて言へば、
② 君子は、自分の土地、自分の人民を害さない。
といふ「意味」になる。
然るに、
(12)
② 君子は、自分の土地で、自分の人民を害さない。⇔
② ∀x{君子x→∃y∃z(人yx&地zx&~害zy)}⇔
② すべてのxについて、xが君子であるならば、あるyとあるzについて、yはxの人民であり、zはxの土地であり、zはyを害さない。
従って、
(11)(12)により、
(13)
② 君子不以其所以養人者害人。
といふ「漢文」は、
② ∀x{君子x→∃y∃z(人yx&地zx&~害zy)}
といふ風に、訳すことが、出来る。
然るに、
(14)
(ⅱ)
1   (1)∀x{君子x→∃y∃z(人yx&地zx&~害zy)}   A
1   (2)   君子a→∃y∃z(人ya&地za&~害zy)    1UE
 3  (3)      ∀y∀z[(人ya&地za)→害zy]    A
 3  (4)        ∀z[(人ba&地za)→害zb]    3UE
 3  (5)           (人ba&地ca)→害cb     4UE
 3  (6)          ~(人ba&地ca)∨害cb     5含意の定義
  7 (7)          ~(人ba&地ca)         A
  7 (8)          ~人ba∨~地ca          7ド・モルガンの法則
  7 (9)          ~人ba∨~地ca∨ 害cb     8∨I
   ア(ア)                     害cb     A
   ア(イ)          ~人ba∨~地ca∨ 害cb     ア∨I
 3  (ウ)          ~人ba∨~地ca∨ 害cb     679アイ∨E
 3  (エ)          ~(人ba&地ca&~害cb)    ウ、ド・モルガンの法則
 3  (オ)        ∀z~(人ba&地za&~害zb)    エUI
 3  (カ)        ~∃z(人ba&地za&~害zb)    オ量化子の関係
 3  (キ)      ∀y~∃z(人ba&地za&~害zb)    カUI
 3  (ク)      ~∃y∃z(人ya&地za&~害zy)    キ量化子の関係
13  (ケ)  ~君子a                       2クMTT
1   (コ)   ∀y∀z[(人ya&地za)→害zy]→~君子a  3ケCP
1   (サ)∀x{∀y∀z[(人yx&地zx)→害zy]→~君子x} コUI
(ⅲ)
1   (1)∀x{∀y∀z[(人yx&地zx)→害zy]→~君子x} A
1   (2)   ∀y∀z[(人ya&地za)→害zy]→~君子a  1UE
 3  (3)                        君子a  A
 3  (4)                      ~~君子a  3DN
13  (5)  ~∀y∀z[(人ya&地za)→害zy]       24MTT
13  (6)  ∃y~∀z[(人ya&地za)→害zy]       5量化子の関係
13  (7)  ∃y∃z~[(人ya&地za)→害zy]       6量化子の関係
  8 (8)    ∃z~[(人ba&地za)→害zb]       A
   9(9)      ~[(人ba&地ca)→害cb]       A
   9(ア)     ~[~(人ba&地ca)∨害cb]       9含意の定義
   9(イ)       (人ba&地ca)&~害cb        ア、ド・モルガンの法則
   9(ウ)        人ba&地ca&~害cb         イ結合法則
   9(エ)     ∃z(人ba&地ca&~害cb)        ウEI
  8 (オ)     ∃z(人ba&地ca&~害cb)        89エEE
  8 (カ)   ∃y∃z(人ba&地ca&~害cb)        オEI
13  (キ)   ∃y∃z(人ba&地ca&~害cb)        78カEE
1   (ク)   君子a→∃y∃z(人ya&地za&~害zy)    3キCP
1   (ケ)∀x{君子x→∃y∃z(人yx&地zx&~害zy)}   クUI
従って、
(14)により、
(15)
② ∀x{君子x→∃y∃z(人yx&地zx&~害zy)}⇔
② すべてのxについて、xが君子であるならば、あるyとあるzについて、yはxの人民であり、zはxの土地であり、zはyを害さない。
の「対偶(Contraposition)」は、
③ ∀x{∀y∀z[(人yx&地zx)→害zy]→~君子x}⇔
③ すべての、xとyとzについて、yがxの人民であって、zがxの土地ならば、zがyを害するならば、xは君子でない。
である。
然るに、
(16)
③ ∀x{∀y∀z[(人yx&地zx)→害zy]→~君子x}⇔
③ すべての、xとyとzについて、yがxの人民であって、zがxの土地ならば、zがyを害するならば、xは君子でない。
といふことは、
③ 自分の土地が、自分の人民を害するならば、君子ではない。
といふことである。
然るに、
(17)
③ 自分の土地が、自分の人民を害するならば、君子ではない。
であるならば、
③ 如其地害其人則非君子=
③ 如其地害(其人)則非(君子)⇒
③ 如其地(其人)害則(君子)非=
③ 如し其の地(其の人を)害さ則ち(君子に)非ず。
といふ風に、書くことが出来る。
従って、
(08)(10)(17)により、
(18)
② 君子不以其所以養人者害人。
③ 如其所以人者害人則非君子。
に於いて、
②=③ は、「対偶(Contraposition)」である。
(19)
先ほどの、「ド・モルガンの法則」に関する「記事(令和02年02月23日)」は、
② 君子不以其所以養人者害人。
といふ「漢文」を「述語論理」に翻訳してゐる際に、
(ⅰ)~(P&Q∨R)⇔ ~P∨~Q&~R
(ⅱ)~(P∨Q&R)⇔ ~P&~Q∨~R
といふ「等式(ド・モルガンの法則)」が、成立する。
といふことを、ネットで確認しようとしても、「確認できなかった」ので、「自分で証明」したものです。
(20)
あるいは、探し方が悪いのかもしれませんが、「連言()と選言()」が混在する場合の「ド・モルガンの法則」に関する「説明」は、少なくとも、「グーグルの1ページと2ページ」では、見付けることが出来ません。
令和02年02月23日、毛利太。

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