2019年4月12日金曜日

「虎求百獸而食之得狐。」の「述語論理」。

―「返り点と括弧」に関しては、『「返り点」と「括弧」の関係(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html)』他をお読み下さい。―
(01)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎求(百獸)而食(之)得(狐)⇒
① 虎(百獸を)求めて(之を)食ひ(狐を)得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふ場合の、【百獸】といふのは、
       【百獸】すべてのけだもの。あらゆる獸類(旺文社、漢文の基礎、1973年、40頁)。
従って、
(01)により、
(02)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎百獸を求めて之を食ひ狐を得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふのであれば、『虎は狐を食らふ。』
然るに、
(03)
1    (1)  ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)} A
 2   (2)     虎a&∀y(獸y→求ay&食ay)  A
 2   (3)     虎a                 2&E
 2   (4)        ∀y(獸y→求ay&食ay)  2&E
 2   (5)           獸b→求ab&食ab   4UE
  6  (6)  ∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy)    A
   7 (7)    ∃y(虎a&狐y&獸y&得ay)    A
    8(8)       虎a&狐b&獸b&得ab     A
    8(9)          狐b            8&E
    8(ア)             獸b         8&E
 2  8(イ)              求ab&食ab   5アMPP
 2  8(ウ)                   食ab  イ&E
 2  8(エ)     虎a&狐b              39&I
 2  8(オ)     虎a&狐b&食ab          ウエ&I
 2  8(カ)  ∃y(虎a&狐y&食ay)         オEI
 2 7 (キ)  ∃y(虎a&狐y&食ay)         78カEE
 2 7 (ク)∃x∃y(虎x&狐y&食xy)         キEI
1 6  (ケ)∃x∃y(虎x&狐y&食xy)         12クEE
従って、
(03)により、
(04)
(1)あるxは虎であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、xはyを求めてこれを食らふ。 と「仮定」して、
(6)あるxは虎であって、あるyは狐であって獸であり、xはyを得る。 と「仮定」すると、
(ケ)あるxは虎であって、あるyは狐であり、xはyを食らふ。 といふ『結論』を得る。
従って、
(02)(03)(04)により、
(05)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎百獸を求めて之を食ひ狐を得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふ「漢文訓読」は、
② ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}&∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy).
といふ「述語論理」に、「翻訳」される。
然るに、
(06)
1    (1)∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)} A
1    (2)   獸b→∃x(虎x&求xb&食xb)  1UE
 3   (3)  ∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy)  A
  4  (4)    ∃y(虎a&狐y&獸y&得ay)  A
   5 (5)       虎a&狐b&獸b&得ab   A
   5 (6)       虎a             A
   5 (7)          狐b          5&E
   5 (8)             獸b       5&E
1  5 (9)      ∃y(虎x&求xb&食xb)  28MPP
    ア(ア)         虎a&求ab&食ab   A
    ア(イ)                食ab   ア&E
   5 (ウ)      虎a&狐b            67&I
   5ア(エ)     虎a&狐b&食ab        イウ&I
   5ア(オ)  ∃y(虎a&狐y&食ay)       エEI
1  5 (カ)  ∃y(虎a&狐y&食ay)       9アオEE
1  5 (キ)∃x∃y(虎x&狐y&食xy)       カEI
1 4  (ク)∃x∃y(虎x&狐y&食xy)       45キEE
13   (ケ)∃x∃y(虎x&狐y&食xy)       34クEE
従って、
(06)により、
(07)
(1)すべてのyについて、yが獸であるならば、あるxは虎であり、xはyを求めてこれを食らふ。 と「仮定」して、
(3)あるxは虎であって、あるyは狐であって獸であり、xはyを得る。 と「仮定」すると、
(ケ)あるxは虎であって、あるyは狐であり、xはyを食らふ。 といふ『結論』を得る。
従って、
(02)(06)(07)により、
(08)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎百獸を求めて之を食ひ狐を得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふ「漢文訓読」は、
③ ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}&∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy).
といふ「述語論理」に、「翻訳」される。
従って、
(05)(08)により、
(09)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎百獸を求めて之を食ひ狐を得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふ「漢文訓読」は、
② ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}&∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy).
③ ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}&∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy).
といふ、「ニ通りの、述語論理」に、「翻訳」される。
然るに、
(10)
(a)
1  (1) ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)} A
 2 (2)    虎a&∀y(獸y→求ay&食ay)  A
 2 (3)    虎a                 2&E
 2 (4)       ∀y(獸y→求ay&食ay)  2&E
 2 (5)          獸b→求ab&食ab   4UE
  6(6)          獸b           A
 26(7)            求ab&食ab   56MPP
 26(8)          虎a&求ab&食ab   37&I
 26(9)       ∃x(虎x&求xb&食xb)  8EI
 2 (ア)    獸b→∃x(虎x&求xb&食xb)  69CP
 2 (イ) ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)} アUI
1  (ウ) ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)} 12イEE
(b)
1  (1) ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)} A
1  (2)    獸b→∃x(虎x&求xb&食xb)  1UE
 3 (3)    獸b                 A
13 (4)       ∃x(虎x&求xb&食xb)  23MPP
  5(5)          虎a&求ab&食ab   A
  5(6)          虎a           5&E
  5(7)             求ab&食ab   5&E
13 (8)             求ab&食ab   457EE
1  (9)          獸b→求ab&食ab   38CP
1  (ア)       ∀y(獸y→求ay&食ay)  9UI
1 5(イ)    虎a&∀y(獸y→求ay&食ay)  6ア&I
1 5(ウ) ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)} イEI
1  (エ) ∃x(虎x&求xb&食xb)→
       ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)} 5ウCP
従って、
(10)により、
(11)
(a)∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}
(b)∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}
に於いて、
(a)ならば(b)であるが、
(b)ならば(a)ある。ではない。
従って、
(11)により、
(12)
(a)∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}
(b)∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}
に於いて、
(a)=(b) ではない。
従って、
(12)により、
(13)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎百獸を求めて之を食ひ狐を得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふ「漢文訓読」は、
② ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}&∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy).
③ ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}&∃x∃y(虎x&狐y&獸y&得xy).
といふ、「ニ通りの、述語論理」に、「翻訳」されるものの、その一方で、
② ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}
③ ∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}
に於いて、
②=③ である。
といふ、わけではない。
従って、
(04)(07)(12)により、
(14)
(a)あるxは虎であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、xはyを求めてこれを食らふ。
(b)すべてのyについて、yが獸であるならば、あるxは虎であり、 xはyを求めてこれを食らふ。
といふ「日本語」に於いても、
(a)=(b) ではない。
然るに、
(15)
(a)
1(1)∀x{∀y(Fxy)} A
1(2)   ∀y(Fay)  1UE
1(3)      Fab   2UE
1(4)   ∀x(Fxb)  3UI
1(5)∀y{∀x(Fxy)  4UI
(b)
1(1)∀y{∀x(Fxy)} A
1(2)   ∀x(Fxb)  1UE
1(3)      Fab   1UE
1(4)   ∀y(Fay)  3UI
1(5)∀x{∀y(Fxy)} 4UI
 cf.
(E.J.レモン 著、武生治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、163頁改)
従って、
(15)により、
(16)
(a)∀x{∀y(Fxy)}
(b)∀y{∀x(Fxy)}
に於いて、
(a)ならば(b)であり、
(b)ならば(a)である。
従って、
(16)により、
(17)
(a)∀x{∀y(Fxy)}
(b)∀y{∀x(Fxy)}
に於いて、
(a)=(b) である。
然るに、
(18)
(a)
1 (1)∃x{∀y(Fxy)} A
 2(2)   ∀y(Fay)  A
 2(3)      Fab   2UI
 2(4)   ∃x(Fxb)  3EI
1 (5)   ∃x(Fxb)  134EE
1 (6)∀y{∃x(Fxy}  5UI
(b)
1 (1)∀y{∃x(Fxy)} A
1 (2)   ∃x(Fxb)  1UE
 )      Fa   A
 3(4)   ∀y(Fay)  UI?
 3(5)∃x{∀y(Fxy)} 4EI
1 (6)∃x{∀y(Fxy)} 235EE
然るに、
(19)
ただ一つの誤った段階は、(b)の(4)である。(3)は、「」を含み、その結果UIの制限が破られている点が誤りである。
(E.J.レモン 著、武生治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、166頁改)
従って、
(18)(19)により、
(20)
(a)∃x{∀y(Fxy)}
(b)∀y{∃x(Fxy)}
に於いて、
(a)ならば(b)であるが、
(b)ならば(a)ある。ではない。
従って、
(20)により、
(21)
(a)∃x{∀y(Fxy)}
(b)∀y{∃x(Fxy)}
に於いて、
(a)=(b) ではない。
従って、
(21)により、
(22)
(a)∃x{∀y(Fxy)}=ある人は、すべての人の親である。
(b)∀y{∃x(Fxy)}=すべての人は、ある人の子である。
に於いて、
(a)=(b) ではない。
従って、
(12)(14)(22)により、
(23)
(a)∃x{∀y(Fxy)}=ある人は、すべての人の親である。
(b)∀y{∃x(Fxy)}=すべての人は、ある人の子である。
に於いて、
(a)=(b) ではなく、
(a)∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}=あるxは虎であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、xはyを求めてこれを食らふ。
(b)∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}=すべてのyについて、yが獸であるならば、あるxは虎であり、 xはyを求めてこれを食らふ。
に於いて、
(a)=(b) ではない。
然るに、
(01)(23)により、
(24)
(a)∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}=あるxは虎であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、xはyを求めてこれを食らふ。
(b)∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}=すべてのyについて、yが獸であるならば、あるxは虎であり、 xはyを求めてこれを食らふ。
に於いて、
(a)の場合は、
(a)少なくとも、「一頭の虎」がゐて、その「一頭の虎」が、「単独で、100獣を求め、これを食らふ。」
といふ「意味」であるが、
(b)の場合は、
(b)例えば、  「二頭の虎」がゐて、その「二頭の虎」が、それぞれ「50獸」づつ、「50獸+50獸=100獸を求めて、これを食らふ。」
といふ「意味」であること、「可能」である。
従って、
(24)により、
(25)
(a)∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}=あるxは虎であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、xはyを求めてこれを食らふ。
(b)∀y{獸y→∃x(虎x&求xy&食xy)}=すべてのyについて、yが獸であるならば、あるxは虎であり、 xはyを求めてこれを食らふ。
に於いて、確かに、
(a)=(b) ではない。
然るに、
(26)
① 虎求百獸而食之=
① 虎求(百獸)而食(之)⇒
① 虎(百獸を)求めて(之を)食ふ=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていた。
といふのであれば、
(a)少なくとも、「一頭の虎」がゐて、その「一頭の虎」が、「単独で、100獣を求め、これを食らふ。」
といふ「意味」であって、
(b)例えば、  「二頭の虎」がゐて、その「二頭の虎」が、それぞれ「50獸」づつ、「50獸+50獸=100獸を求めて、これを食らふ。」
といふ「意味」ではない。
従って、
(25)(26)により、
(27)
① 虎求百獸而食之=
① 虎求(百獸)而食(之)⇒
① 虎(百獸を)求めて(之を)食ふ=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていた。
といふ「漢文訓読」は、
① ∃x{虎x&∀y(獸y→求xy&食xy)}=あるxは虎であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、xはyを求めてyを食らふ。
といふ「述語論理」に、相当する。
然るに、
(28)
1  (1)∃y{虎y&∀x[獸x→求yx&食yx&∃z(狐z&獸z&得yz)]} A
 2 (2)   虎b&∀x[獸x→求bx&食bx&∃z(狐z&獸z&得bz)]  A
 2 (3)   虎b                               2&E
 2 (4)      ∀x[獸x→求bx&食bx&∃z(狐z&獸z&得bz)]  3UE
 2 (5)         獸→求ba&食ba&∃z(狐z&獸z&得bz)   4UE
 2 (6)         獸a→求ba&食ba                 5&E
 2 (7)                    ∃z(狐z&獸z&得bz)   6&E
  8(8)                       狐a&獸a&得ba    A
  8(9)                       狐a           8&E    
  8(ア)                          獸a        8&E
 28(イ)            求ba&食ba                 6アMPP
 28(ウ)                食ba                 イ&E
 28(エ)     虎b&狐a                          39&I             
 28(オ)     虎b&狐a&食ba                      エオ&I
 28(カ)  ∃x(虎b&狐x&食bx)                     オEI
 2 (キ)  ∃x(虎b&狐x&食bx)                     78カEE
 2 (ク)∃y∃x(虎y&狐x&食y

x)                     キEI
1  (ケ)∃y∃x(虎y&狐x&食yx)                     12クEE
然るに、
(29)
 2 (7)                    ∃z(狐z&獸z&得bz)   6&E
  8(8)                       狐a&獸a&得ba    A
  8(9)                       狐a&獸a        8&E
  8(ア)                    ∃z(狐z&獸z)       9EI
 2 (イ)                    ∃z(狐z&獸z)       28アEE
 2 (〃)                    ある狐は獸である。       28アEE
然るに、
(30)
獸の変域(ドメイン)={a、b、c、d}
とするならば、
∀x(      獸x)=(      獸)&(   獸b)&(   獸c)&(   獸d)  
∃z(狐z&獸z)=(狐&獸)∨(狐b&獸b)∨(狐c&獸c)∨(狐d&獸d)
従って、
(28)(29)(30)により、
(31)
 2 (4)      ∀x[獸x→求bx&食bx&∃z(狐z&獸z&得bz)]  3UE
 2 (5)         獸→求ba&食ba&∃z(狐z&獸z&得bz)   4UE
 2 (6)         獸a→求ba&食ba                 5&E
 2 (7)                    ∃z(狐z&獸z&得bz)   6&E
  8(8)                       狐&獸&得ba    A(7の代表的選言項)
に於ける、(8)に、「問題」はない。
従って、
(28)~(31)により、
(32)
(1)あるyは虎であり、すべてのxについて、xが獸であるならば、yはxを求めてこれを食らひ、あるzは狐であって、獸であり、yはzを得る。 といふ風に「仮定」すると、
(ケ)あるxは虎であって、あるyは狐であり、xはyを食らふ。 といふ『結論』を得る。
従って、
(01)(28)(32)により、
(33)
① 虎求百獸而食之得狐=
① 虎求(百獸)而食(之)得(狐)⇒
① 虎(百獸を)求めて(之を)食ひ(狐を)得たり=
① 虎は、すべてのけだものをつかまえてはこれを食べていたが、(あるとき)狐をつかまえた。
といふ「漢文訓読」は、
① ∃y{虎y&∀x[獸x→求yx&食yx&∃z(狐z&獸z&得yz)]}=
① あるyは虎であり、すべてのxについて、xが獸であるならば、yはxを求めてxを食らひ、あるzは狐であって、獸であり、yはzを得る。
といふ「述語論理」に、相当する。
平成31年04月12日、毛利太。

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