2019年4月27日土曜日

「選言除去の規則(∨E)」について(Ⅱ)。

―「返り点と括弧」に関しては、『「返り点」と「括弧」の関係(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html)』他をお読み下さい。―
(01)
最初にこれ(「選言除去の規則」についての説明)を読んでも、いったいどんな規則なのか、すぐには飲み込めないことでしょう。この規則がいわゆる「場合分けの原理」を表していることを理解する必要があります。
 証明における場合わけとは?
数学の証明において、「場合分けをして証明する」ということが頻繁にあります。すなわち、証明の途中で、場合Pと場合Qのどちらかになることを示します。そして、まず、Pの場合にRが成り立つことを証明します。次に、Qの場合もRが成り立つと証明します。これによって。結局Rそのものが成り立つと結論する、という議論の仕方です。
具体例を使って解説しましょう。次のような証明問題を考えてみます。
 例6.4 3で割りきれない自然数nに対して、「nの2乗」を「3で割った余り」は1であることを証明せよ。
先に解答を与えると以下です。
(解答)
3で割り切れない整数nは、3で割ると余り1または2となる。
(ⅰ)nを3で割ると、余り1の場合は、・・・・・・・。
(ⅱ)nを3で割ると、余り2の場合は、・・・・・・・。
(小島寛之、証明と論理に強くなる、2017年、157・8頁改)
しかしながら、
(02)
実を言ふと、
3で割り切れない整数nは、3で割ると余り1または2となる。
(ⅰ)nを3で割ると、余り1の場合は、・・・・・・・。
(ⅱ)nを3で割ると、余り2の場合は、・・・・・・・。
といふ「説明」は、「例」としては、「3分の2」しか、「正しく」はありません。
(03)
(a)
1  (1)P&Q→R A
 2 (2)P     A
  3(3)  Q   A
 23(4)P&Q   23&I
123(5)    R 14MPP
従って、
(03)により、
(04)
①「Pであって、Qである」ならば、  「Rである。」といふのであれば、
①「Pであって、Qである」でなければ、「Rである。」とは、言へません。
然るに、
(05)
(b)
1  (1)P∨Q→R A
 2 (2)     A
 2 (3)P∨Q   2∨I
12 (4)    R 13MPP
(c)
1  (1)P∨Q→R A
 2 (2)     A
 2 (3)P∨Q   2∨I
12 (4)    R 13MPP
(d)
1  (1)P∨Q→R A
 2 (2)   A
 2 (3)P     2&E
 2 (4)P∨Q   2∨I
12 (5)    R 14MPP
従って、
(05)により、
(06)
①「Pであるか、または、Qであるならば、Rである。」といふのであれば、
②「Pであって、Qでないとしても」、  「Rであり」、
③「Pでなくて、Qであるとしても」、   「Rであり」、
④「Pであって、Qであっても」、       「Rである」。
といふことに、なります。
従って、
(07)
「論理学」でいふ、「Pであるか、または、Qである」が「真」である場合には、「4-1=3通り」が有ります。
cf.
数理論理学において論理和(ろんりわ、英語: Logical disjunction)とは、与えられた複数の命題のいずれか少なくとも一つが真であることを示す論理演算である。離接(りせつ)、選言(せんげん)とも呼び、ORとよく表す(ウィキペディア)。
然るに、
(08)
3で割り切れない整数nは、3で割ると余り1または2となる。としても、
(ⅰ)nを3で割ると余りが、 1 の場合は、・・・・・・・。
(ⅱ)nを3で割ると余りが、 2 の場合は、・・・・・・・。
(ⅲ)nを3で割ると余りが、1と2の場合は、・・・・・・・。
といふことは、有り得ません
然るに、
(09)
例へば、
(e)
1  (1)P∨Q A
 2 (2)P   A
 2 (3)Q∨P 2∨I
  4(4)  Q A
  4(5)Q∨P 4∨I
であれば、
① Pから、 Q∨P を「証明」してゐて、その時点では、
② Qから  Q∨P は「証明」してはゐません。
しかしながら、
(10)
1  (1)P∨Q A
 2 (2)P   A
 2 (3)Q∨P 2∨I
  4(4)  Q A
  4(5)Q∨P 4∨I
であれば、
①  Pから、  Q∨P を「証明」したで、それに続けて、
②  Qから   Q∨P を「証明」し終へたならば、その時点では、
から、 Q∨P を「証明」したことに、なります。
従って、
(09)(10)により、
(11)
(e)
1  (1)P∨Q A
 2 (2)P   A
 2 (3)Q∨P 2∨I
  4(4)  Q A
  4(5)Q∨P 4∨I
(e)
1  (1)P∨Q A
 2 (2)  Q A
 2 (3)Q∨P 2∨I
  4(4)P   A
  4(5)Q∨P 4∨I
といふ「計算」は、その実、
①  Pから、  Q∨P を「証明」し、
②  Qから   Q∨P を「証明」し、
から、 Q∨P を「証明」してゐます。
従って、
(11)により、
(12)
(f)
1  (1) P∨(Q&R)    A
 2 (2) P          A
 2 (2) P∨Q        2∨I
 2 (3) P∨R        2∨I
 2 (4)(P∨Q)&(P∨R) 23&I
  5(5)    Q&R     A
  5(6)    Q       5&E
  5(7)      R     5&E
  5(8) P∨Q        6∨I
  5(9)       P∨R  7∨I
  5(ア)(P∨Q)&(P∨R) 89&I
1  (イ)(P∨Q)&(P∨R) 1245ア∨E
といふ「計算」も、その実、
① Pから、           (P∨Q)&(P∨R) を「証明」し、
②       Q&R から、(P∨Q)&(P∨R) を「証明」し、
と(Q&R)から、(P∨Q)&(P∨R) を「証明」してゐます。
然るに、
(13)
ちなみに、
(g)
1 (1) (P∨Q)&(P∨R) A
1 (2)  P∨Q        1&E
1 (3)~~P∨Q        2DN
1 (4) ~P→Q        3含意の定義
1 (5)        P∨R  1&E
1 (6)      ~~P∨R  5DN
1 (7)       ~P→R  6含意の定義
 2(8) ~P          A
12(9)    Q        48MPP
12(ア)          R  78MPP
12(イ)    (Q&R)    9ア&I
1 (ウ) ~P→(Q&R)    8イCP
1 (エ)~~P∨(Q&R)    ウ含意の定義
1 (オ)  P∨(Q&R)    エDN
従って、
(12)(13)により、
(14)
(f) P∨(Q&R)
(g)(P∨Q)&(P∨R)
に於いて、
(f)=(g) である。
然るに、
(15)
(f) P∨(Q&R)
(g)(P∨Q)&(P∨R)
に於いて、
(f)=(g) であることを、「加法の分配法則」と言ひ、「数式」であれば、
(f) P+(Q×R)
(g)(P+Q)×(P+R)
に相当します。
然るに、
(16)
(f) 2+(3×4)   =14
(g)(2+3)×(2+4)=30
従って、
(15)(16)により、
(17)
加法の分配法則」は、「数学」では、成立しません。
平成31年04月27日、毛利太。

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