2019年4月21日日曜日

「一民莫非其臣也(莫民非其臣也)」の「述語論理」。

―「返り点と括弧」に関しては、『「返り点」と「括弧」の関係(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html)』他をお読み下さい。―
(01)
わずか一尺の土地でも紂王の領地でないところはないし、また一人の人民でも紂王の家来でないものはなかった。ところが、一方文王は〔いかに聖人といえ〕わずか百里四方の小さい土地(諸侯)から勃興したのであるから、天下の王者となることはきわめて困難であったのは当然である(孟子、公孫丑章句上、小林勝人 訳)。
(02)
1      (1)∀x{民x→∃y[王yx&∀z(王zx→z=y)]} A
1      (2)   民a→∃y[王ya&∀z(王za→z=y)]  1UE
 3     (3)   民a                      A
13     (4)      ∃y[王ya&∀z(王za→z=y)]  23MPP
  5    (5)         王ba&∀z(王za→z=b)   A
  5    (6)         王ba               5&E
  5    (7)             ∀z(王za→z=b)   5&E
  5    (8)                王ca→c=b    7UE
   9  (9)∃y∃z(紂y&文z&y≠z)             A
    ア (ア)  ∃z(紂b&文z&b≠z)            A
     イ(イ)     紂b&文c&b≠c             A
     イ(ウ)     紂b&文c                 イ&E
     イ(エ)        文c                 イ&E
     イ(オ)           b≠c                        イ&E
  5  イ(カ)               ~王ca        8オMTT
  5  イ(キ)         文c&~王ca           オカ&I
  5  イ(ク)      ∃z(文z&~王za)          キEI
  5 ア (ケ)      ∃z(文z&~王za)          アイクEE
  59  (コ)      ∃z(文z&~王za)          9アケEE
13 9  (サ)      ∃z(文z&~王za)          45コEE
1  9  (シ)   民a→∃z(文z&~王za)          3サCP
1  9  (ス)∀x{民x→∃z(文z&~王zx)          シUI
cf.
「=」の「否定」を「≠」と書いて、「≠」の「否定」を、「=」と書くことにします。
従って、
(02)により、
(03)
(1)すべてのxについて、xが民であるならば、あるyはxの王であって、すべてのzについて、zがxの王であるならば、zはyと同一人物である。 と「仮定」し、
(9)あるyは紂であり、あるzは文であり、yとzは、同一人物ではない。 と「仮定」すると、
(ス)すべてのxについて、xが民であるならば、あるzは文であり、zはxの王ではない。 といふ『結論』を、得る。
従って、
(03)により、
(04)
(1)すべての民が、紂を王とし、紂以外に、民の王がゐない。 と「仮定」し、
(9)紂と文は、同一人物ではない。 と「仮定」すると、
(ス)すべての民の王は、文ではない。 といふ『結論』を、得る。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
① 一民莫非其臣也=
① 一民莫〔非(其臣)〕也=
① 一民〔(其臣)非〕莫也=
① 一民も〔(其の臣)非ざる〕莫きなり=
① 一人の民も其の(王の)臣民でないものはゐないのだ。
といふ「漢文訓読」は、
③ ∀x{民x→∃y[王yx&∀z(王zx→z=y)]}
といふ「述語論理」に、相当する。
然るに、
(06)
② 莫民非其臣也=
② 莫〔民非(其臣)〕也⇒
② 〔民(其臣)非〕莫也=
② 〔民にして(其の臣に)非ざる〕莫きなり=
② 民であって、其の(王の)臣民でないものはゐないのだ。
といふ「漢文」も、
③ ∀x{民x→∃y[王yx&∀z(王zx→z=y)]}
といふ「述語論理」に、相当する。
従って、
(05)(06)により、
(07)
① 一民莫非其臣也。
②  莫民非其臣也。
といふ「漢文」は、
③ ∀x{民x→∃y[王yx&∀z(王zx→z=y)]}
といふ「述語論理」に、相当する
cf.
② 無物不有 =物として有らざるはなし。
といふ「漢文」がある以上、
② 莫民非其臣=民にして其の臣に非ざるはなし。
といふ「漢文」も、有り得るものと、考へます。
平成31年04月21日、毛利太。

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