―「返り点と括弧」に関しては、『「返り点」と「括弧」の関係(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html)』他をお読み下さい。―
(01)
今両虎共闘、其勢不倶生。
今両虎共に闘はば、其の勢ひ俱には生きず。
いま、二頭の虎(e.g.藺相如と廉頗)が戦ひ合へば、両方とも死なないで済む。といふわけにいかない。
(02)
(ⅰ)
1 (1)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x&生y)} A
1 (2) ∀y{虎a&虎y&闘ay→~(生a&生y)} 1UI
1 (3) 虎a&虎b&闘ab→~(生a&生b) 2UI
4 (4) 生a&生b A
4 (5) ~~(生a&生b) 4DN
14 (6) ~(虎a&虎b&闘ab) 34MTT
14 (7) ~虎a∨~虎b∨~闘ab 7ド・モルガンの法則
14 (8) (~虎a∨~虎b)∨~闘ab 8結合法則
9 (9) (~虎a∨~虎b) A
9 (ア) ~闘ab∨(~虎a∨~虎b) 9∨I
イ (イ) ~闘ab A
イ (ウ) ~闘ab∨(~虎a∨~虎b) イ∨I
14 (エ) ~闘ab∨(~虎a∨~虎b) 89アイウ∨E
14 (オ) 闘ab→(~虎a∨~虎b) エ含意の定義
1 (カ) 生a&生b→闘ab→(~虎a∨~虎b) 4オCP
キ(キ) 闘ab&生a&生b A
キ(ク) 闘ab&(生a&生b) キ結合法則
キ(ケ) 生a&生b ク&E
1 キ(コ) 闘ab→(~虎a∨~虎b) カケMPP
キ(サ) 闘ab ク&E
1 キ(シ) (~虎a∨~虎b) コサMPP
1 (ス) 闘ab&生a&生b→(~虎a∨~虎b) キシCP
1 (セ) ∀y{闘ay&生a&生y→(~虎a∨~虎y)} スUI
1 (ソ)∀x∀y{闘xy&生x&生y→(~虎x∨~虎y)} セUI
(ⅱ)
1 (1)∀x∀y{闘xy&生x&生y→(~虎x∨~虎y)} A
1 (2) ∀y{闘ay&生a&生y→(~虎a∨~虎y)} 1UE
1 (3) 闘ab&生a&生b→(~虎a∨~虎b) 2UE
4 (4) 虎a& 虎b A
4 (5) ~~(虎a& 虎b) 4DN
4 (6) ~(~虎a∨~虎b) 5ド・モルガンの法則
14 (7) ~(闘ab&生a&生b) 36MTT
14 (8) ~闘ab∨~生a∨~生b 5ド・モルガンの法則
14 (9) ~闘ab∨(~生a∨~生b) 8結合法則
14 (ア) 闘ab→(~生a∨~生b) 9含意の定義
1 (イ) 虎a&虎b→闘ab→(~生a∨~生b) 4アCP
ウ (ウ) 虎a&虎b&闘ab A
ウ (エ) (虎a&虎b)&闘ab ウ結合法則
ウ (オ) 虎a&虎b エ&E
1 ウ (カ) 闘ab→(~生a∨~生b) イオMPP
ウ (キ) 闘ab エ&E
1 ウ (ク) (~生a∨~生b) カキMPP
1 (ケ) 虎a&虎b&闘ab→(~生a∨~生b) ウクCP
1 (コ) ∀y{虎a&虎y&闘ay→(~生a∨~生y)} ケUI
1 (サ)∀x∀y{虎a&虎y&闘ay→(~生a∨~生y)} コUI
従って、
(02)により、
(03)
(ⅰ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x& 生y)}
(ⅱ)∀x∀y{闘xy&生x&生y→(~虎x∨~虎y)}
に於いて、
(ⅰ)ならば(ⅱ)であり、
(ⅱ)ならば(ⅰ)である。
従って、
(03)により、
(04)
(ⅰ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x& 生y)}
(ⅱ)∀x∀y{闘xy&生x&生y→(~虎x∨~虎y)}
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) である。
然るに、
(05)
(ⅰ)
1 (1)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x&生y)} A
1 (2) ∀y{虎a&虎y&闘ay→~(生a&生y) 1UE
1 (3) 虎a&虎b&闘ab→~(生a&生b) 2UE
4 (4) 虎a&虎b&闘ab A
14 (5) ~(生a&生b) 34MPP
14 (6) ~生a∨~生b 5ド・モルガンの法則
14 (7) 生a→~生b 6含意の定義
8 (8) ~生a A
8 (9) ~生b∨~生a 8∨I
ア(ア) ~生b A
ア(イ) ~生b∨~生a ア∨I
14 (ウ) ~生b∨~生a 689アイEE
14 (エ) 生b→~生a ウ含意の定義
14 (オ) (生a→~生b)&(生b→~生a) 7エ&I
1 (カ) 虎a&虎b&闘ab→(生a→~生b)&(生b→~生a) 4オCP
1 (キ) ∀y{虎a&虎y&闘ay→(生a→~生y)&(生y→~生a)} カUI
1 (ク)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→(生x→~生y)&(生y→~生x)} キUI
(ⅲ)
1 (1)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→(生x→~生y)&(生y→~生x)} A
1 (2) ∀y{虎a&虎y&闘ay→(生a→~生y)&(生y→~生a)} 1UE
1 (3) 虎a&虎b&闘ab→(生a→~生b)&(生b→~生a) 2UE
4 (4) 虎a&虎b&闘ab A
14 (5) (生a→~生b)&(生b→~生a) 34MPP
14 (6) 生a→~生b 5&E
14 (7) ~生a∨~生b 6含意の定義
14 (8) ~(生a&~生b) 7ド・モルガンの法則
1 (9) 虎a&虎b&闘ab→~(生a&生b) 48CP
1 (ア) ∀y{虎a&虎y&闘ay→~(生a&生y) 9UI
1 (イ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x&生y)} アUI
従って、
(05)により、
(06)
(ⅰ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x& 生y)}
(ⅲ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→ (生x→~生y)&(生y→~生x)}
に於いて、
(ⅰ)ならば(ⅲ)であり、
(ⅲ)ならば(ⅰ)である。
従って、
(06)により、
(07)
(ⅰ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x& 生y)}
(ⅲ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→ (生x→~生y)&(生y→~生x)}
に於いて、
(ⅰ)=(ⅲ) である。
従って、
(04)(07)により、
(08)
(ⅰ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x& 生y)}
(ⅱ)∀x∀y{闘xy&生x&生y→(~虎x∨~虎y)}
(ⅲ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→ (生x→~生y)&(生y→~生x)}
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) であって、
(ⅰ)=(ⅲ) である。
従って、
(08)により、
(09)
(ⅰ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x& 生y)}
(ⅱ)∀x∀y{闘xy&生x&生y→(~虎x∨~虎y)}
(ⅲ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→ (生x→~生y)&(生y→~生x)}
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ)=(ⅲ) である。
従って、
(09)により、
(10)
(ⅰ)すべてのxとすべてのyについて、xが虎であり、yも虎であり、xとyが闘へば、xが生き、yも生きる。といふことはない。
(ⅱ)すべてのxとすべてのyについて、xとyが闘ひ、xが死なず、yも死なないのであれば、xは虎でないか、または、yは虎でない。
(ⅲ)すべてのxとすべてのyについて、xが虎であり、yも虎であり、xとyが闘へば、xが生きるならば、yは生きず、yが生きるならば、xは生きない。
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ)=(ⅲ) である。
然るに、
(11)
「PまたはQ」に対する真理値の割り当てを「排他的または」に対して行うと、二つの命題PとQのどちらか一つだけが真のときに限って、「PまたはQ」が真になるに対し、「包含的または」に対して行うと、二つの命題PとQのどちらか一つか、あるいは、二つが真のときに「PまたはQ」が真になる。― 中略 ―、命題論理は、「包含的または」の方を採用しており、「真理表」にもそれが反映されている(早川書房、「不可能、不確定、不完全、」、2011年、207頁改)。
従って、
(10)(11)により、
(12)
(ⅱ)∀x∀y{闘xy&生x&生y→(~虎x∨~虎y)}
(ⅱ)すべてのxとすべてのyについて、xとyが闘ひ、xが死なず、yも死なないのであれば、xは虎でないか、または、yは虎でない。
に於いて、
(ⅱ)~虎x∨~虎y
(ⅱ)xは虎でないか、または、yは虎でない。
である。といふことは、
① 両方とも、虎でない。
② どちらか一方が、虎でない。
といふことを、「意味」してゐる。
然るに、
(13)
① xとyの両方が、非力ではあるが、丈夫であるとすれば、xとy同士が闘ったとしても、xとyは、両方とも、死なない。
然るに、
(14)
有衆逐虎。虎負嵎。莫之敢攖。望見馮婦、趨而迎之。
有(衆)逐(虎)。虎負(嵎)。莫(之敢攖。望‐見(馮婦)、趨而迎(之)。
(衆)有り(虎を)逐ふ、虎(嵎を)負ふ。(之に敢へて攖る)莫し。(馮婦を)望‐見し、趨りて(之を)迎ふ。
人々が虎を追いかけてゐた。虎は山を背にして構へた。誰にも虎に近づく勇気が無かった。馮婦が遠くに見えたので、人々は走って行き、彼を迎へた(孟子、盡心章句下)。
でいふ、馮婦といふ男は、虎と素手で闘って、虎を生け捕りにすることが、出来る。
従って、
(14)により、
(15)
② xが馮婦であり、yが虎であるならば、xとyが闘っても、xは、虎を生け捕りできるため、xとyは、両方とも生きてゐる。
従って、
(13)(15)により、
(16)
① xとyの両方が、非力ではあるが、丈夫であるとすれば、xとy同士が闘ったとしても、xとyは、両方とも、死なない。
② xが馮婦であり、yが虎であるならば、xとyが闘っても、xは、虎を生け捕りできるため、xとyは、両方とも生きてゐる。
従って、
(12)(16)により、
(17)
(ⅱ)∀x∀y{闘xy&生x&生y→(~虎x∨~虎y)}
(ⅱ)すべてのxとすべてのyについて、xとyが闘ひ、xが死なず、yも死なないのであれば、xは虎でないか、または、yは虎でない。
に於いて、「不都合」は無い。
然るに、
(18)
(ⅲ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→(生x→~生y)&(生y→~生x)}
(ⅲ)すべてのxとすべてのyについて、xが虎であり、yも虎であり、xとyが闘へば、xが生きるならば、yは生きず、yが生きるならば、xは生きない。
に於いて、
(ⅲ)(生x→~生y)&(生y→~生x)
(ⅲ)xが生きるならば、yは生きず、yが生きるならば、xは生きない。
といふのであれば、
(ⅲ)xとyの、どちらか一方だけが生きる(どちらか一方だけが死ぬ)。
といふ風に、思はれるかも、知れない。
しかしながら、
(19)
③(生x→~生y)=xが生きるならば、yは生きず。
④(生y→~生x)=が生きるならば、xは生きない。
に於いて、
③ の「対偶」が ④ であり、
④ の「対偶」が ③ であるため、
③ とは、④ であって、
④ とは、③ である。
然るに、
(20)
「含意の定義」により、
③(生x→~生y)=(~生x∨~生y)
である。
然るに、
(11)により、
(21)
③(~生x∨~生y)=(xは生きないか、またはyは生きない。)
④(~生x&~生y)=(xは生きず、yも生きない。)
に於いて、
③ と ④ は、「矛盾」しない。
従って、
(18)~(21)により、
(22)
(ⅲ)(生x→~生y)&(生y→~生x)
(ⅲ)xが生きるならば、yは生きず、yが生きるならば、xは生きない。
といふのであれば、
(ⅲ)xとyの、どちらか一方だけが生きる(どちらか一方だけが死ぬ)。
といふ風に、思はれるかも、知れないが、「論理学的」には、さうではない。
従って、
(01)~(22)により、
(23)
① 今両虎共闘、其勢不倶生。
① 今両虎共に闘はば、其の勢ひ俱には生きず。
① いま、二頭の虎(e.g.藺相如と廉頗)が戦ひ合へば、両方とも死なないで済む。といふわけにいかない。
といふ「漢文訓読」は、
(ⅰ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x& 生y)}
(ⅱ)∀x∀y{闘xy&生x&生y→(~虎x∨~虎y)}
(ⅲ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→ (生x→~生y)&(生y→~生x)}
といふ「三通リの述語論理」に、対応する。
平成31年04月23日、毛利太。
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