2019年4月24日水曜日

「象は鼻が長い」の「第一階述語論理」。

―「返り点と括弧」に関しては、『「返り点」と「括弧」の関係(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html)』他をお読み下さい。―
(01)
(ⅰ)
1  (1)∀x(Fx→Gx& Gx→ Fx) A
1  (2)   Fa→Ga& Ga→ Fa  1UE
1  (3)   Fa→Ga          2&E
1  (4)          Ga→ Fa  2&E
 5 (5)          Ga      A
  6(6)             ~Fa  A
15 (7)              Fa  45MPP
156(8)          ~Fa&Fa  67&I
1 6(9)         ~Ga      58RAA
1  (ア)         ~Fa→~Ga  69CP
1  (イ)   Fa→Ga&~Fa→~Ga  3ア&I
1  (ウ)∀x(Fx→Gx&~Fx→~Gx) イUI
(ⅱ)
1  (1)∀x(Fx→Gx&~Fx→~Gx) A
1  (2)   Fa→Ga&~Fa→~Ga  1UE
1  (3)   Fa→Ga          2&E
1  (4)         ~Fa→~Ga  2&E
 5 (5)         ~Fa      A
  6(6)              Ga  A
15 (7)             ~Ga  45MPP
156(8)          Ga&~Ga  67&I
1 6(9)        ~~Fa      58RAA
1 6(ア)          Fa      9DN
1  (イ)          Ga→ Fa  6アCP
1  (ウ)   Fa→Ga& Ga→ Fa  3イ&I
1  (エ)∀x(Fx→Gx& Gx→ Fx) ウUI
従って、
(01)により、
(02)
(ⅰ)∀x(Fx→Gx& Gx→ Fx)
(ⅱ)∀x(Fx→Gx&~Fx→~Gx)
に於いて、
(ⅰ)ならば(ⅱ)であり、
(ⅱ)ならば(ⅰ)である。
従って、
(02)により、
(03)
(ⅰ)∀x(Fx→Gx& Gx→ Fx)
(ⅱ)∀x(Fx→Gx&~Fx→~Gx)
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) である。
従って、
(03)におり、
(04)
(ⅰ)すべてのxについて、xがFならば、xはGであり、xがGであるならば、xはFである。
(ⅱ)すべてのxについて、xがFならば、xはGであり、xがFでないならば、xはGでない。
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) である。
従って、
(04)により、
(05)
(ⅰ)すべてのxについて、xがFならば、xはGであり、xがGであるならば、xはFである。
(ⅱ)すべてのxについて、xがFならば、xはGであり、xがF以外でれあば、xはGでない。
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) である。
従って、
(06)
(ⅰ)すべてのxについて、xが私であるならば、xは大野であり、xが大野であるならば、xは私である。
(ⅱ)すべてのxについて、xが私であるならば、xは大野であり、xが私以外であれば、xは大野でない。
然るに、
(07)
(3) 未知と既知
この組み合わせは次のような場合に現われる。
 私大野です。
これは、「大野さんはどちらですか」というような問いに対する答えとして使われる。つまり文脈において、「大野」なる人物はすでに登場していて既知である。ところが、それが実際にどの人物なのか、その帰属する先が未知である。その未知の対象を「私」と表現して、それをガで承けた。それゆえこの形は、
 大野私です。
に置きかえてもほぼ同じ意味を表わすといえる(大野晋、日本語の文法を考える、1978年、34頁)。
従って、
(06)(07)により、
(08)
(3) 既知と未知
といふこととは、無関係に、
(ⅰ)すべてのxについて、xが私であるならば、xは大野であり、xが大野であるならば、xは私である。
(〃)            私は        大野であり、  大野は        私です。
(ⅱ)すべてのxについて、xが私であるならば、xは大野であり、xが私以外であれば、xは大野でない。
(〃)            私は        大野であり、  私が        大野です。
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) である。
従って、
(08)により、
(09)
(ⅰ)すべてのxについて、xが大野であるならば、xは私である。
(〃)            大野は        私です。
(ⅱ)すべてのxについて、xが私以外であれば、xは大野でない
(〃)            私        大野です。
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) である。
従って、
(10)
(ⅰ)すべてのxについて、xが「長」であるならば、xは「鼻」である。
(〃)            「長」は        「鼻」です。
(ⅱ)すべてのxについて、xが「鼻」以外であれば、xは「長」でない。
(〃)            「鼻」が        「長」です。
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) である。
従って、
(10)により、
(11)
(ⅰ)∀z( 長z→ 鼻z)
(〃)「長」は「鼻」です。
(ⅱ)∀z(~鼻z→~長z)
(〃)「鼻」が「長」です。
に於いて、
(ⅰ)=(ⅱ) である。
然るに、
(12)
〔①〕
1  (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)} A
1  (2)   象a→∃y(鼻ya&長y)&~∀z(~鼻za→~長z)  1UE
 3 (3)   象a                           A
13 (4)      ∃y(鼻ya&長y)&~∀z(~鼻za→~長z)  23MPP
13 (5)      ∃y(鼻ya&長y)                4&E
13 (6)                 ~∀z(~鼻za→~長z)  4&E
13 (7)                 ∃z~(~鼻za→~長z)  6量化子の関係
  8(8)                   ~(~鼻ca→~長c)  A
  8(9)                  ~(~~鼻ca∨~長c)  8含意の定義
  8(ア)                    ~(鼻ca∨~長c)  9DN
  8(イ)                    ~鼻ca&~~長c   ア、ドモルガンの法則
  8(ウ)                     ~鼻ca& 長c   イDN
  8(エ)                  ∃z(~鼻za& 長z)  ウEI
13 (オ)                  ∃z(~鼻za& 長z)  78エEE
13 (カ)      ∃y(鼻ya&長y)&  ∃z(~鼻za& 長z)    5オ&I
1  (キ)   象a→∃y(鼻ya&長y)&  ∃z(~鼻za& 長z)  3カCP
1  (ク)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&  ∃z(~鼻zx& 長z)} キUI
〔②〕
1  (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&  ∃z(~鼻zx& 長z)} A
1  (2)   象a→∃y(鼻ya&長y)& ∃z(~鼻za& 長z)  1UE
 3 (3)   象a                           A
13 (4)      ∃y(鼻ya&長y)& ∃z(~鼻za& 長z)  23MPP
13 (5)      ∃y(鼻ya&長y)                4&E
13 (6)                  ∃z(~鼻za& 長z)  4&E
  7(7)                     ~鼻ca& 長c   A
  7(8)                  ~~(~鼻ca& 長c)  7DN
  7(9)                  ~(~~鼻ca∨~長c)  8ドモルガンの法則
  7(ア)                   ~(~鼻ca→~長c)  9含意の定義
  7(イ)                 ∃z~(~鼻za→~長z)  アEI
13 (ウ)                 ∃z~(~鼻za→~長z)  67イEE
13 (エ)                 ~∀z(~鼻za→~長z)  ウ量化子の関係
13 (カ)      ∃y(鼻ya&長y)&~∀z(~鼻za→~長z)  5エ&I
1  (キ)   象a→∃y(鼻ya&長y)&~∀z(~鼻za→~長z)  3カCP
1  (ク)∀x{象a→∃y(鼻ya&長y)&~∀z(~鼻za→~長z)} キUI
従って、
(12)により、
(13)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&  ∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
① ならば ② であり、
② ならば ① である。
従って、
(13)により、
(14)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&  ∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
① = ② である。
然るに、
(15)
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&  ∃z(~鼻zx& 長z)}
② すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzはxの鼻でないが、zは長い。
といふことは、すなはち、
② 象は鼻は長く、鼻以外も長い。
といふことは、
② 象は鼻も長い。
といふ、ことである。
然るに、
(16)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&  ~∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&    ∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
① = ② であるため、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~~∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&  ~∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
① = ② である。
従って、
(16)により、
(17)
「二重否定(DN)」により、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&   ∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&  ~∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
①=② である。
然るに、
(18)
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&~∃z(~鼻zx& 長z)}
② すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、あるzがxの鼻ではなく、尚且つ、zが長い。といふことはない。
といふことは、
② 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
といふ、ことである。
然るに、
(10)(11)により、
(19)
② 象は鼻は長く、鼻以外は長くない
といふことは、
② 象は鼻長い。
といふ、ことである。
従って、
(17)(18)(19)により、
(20)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&  ∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)& ~∃z(~鼻zx& 長z)}
に於いて、
①=② であって、尚且つ、
② 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
といふことは、
② 象は鼻が長い。
といふ、ことである。
従って、
(20)により、
(21)
② 象は鼻長い。
といふ「日本語」は、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「述語論理」に、翻訳される。
然るに、
(22)
② ∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
に於いて、すなはち、
② すべてのxについて、xが兎であるならば、あるyはxの耳であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの耳であるならば、zは鼻ではない。
③ すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻であるならば、zは長くない。
に於いて、
②&③ は、「矛盾」しない。
然るに、
(23)
① ∃x(兎x&象x)=ある兎は象である。
② ∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
に於いては、
①&②&③ のセットは、「矛盾」する。
すなはち、
(24)
① ∃x(兎x&象x)=ある兎は象である。
② ∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)}
③ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
であるならば、
④ すべて象は、鼻以外長くないはずなのに、ある象は、鼻以外に、耳も長い
といふことになり、「矛盾」する。
従って、
(24)により、
(25)
1    (1)∃x(兎x&象x)                      A
 2   (2)   兎a&象a                       A
 2   (3)   兎a                          2&E
 2   (4)      象a                       2&E
  5  (5)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
  5  (6)   兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  5UI
 25  (7)      ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  36MPP
 25  (8)      ∃y(耳ya&長y)               7&E
   9 (9)         耳ba&長b                A
   9 (ア)         耳ba                   9&E
   9 (イ)             長b                ア&E
 25  (ウ)                 ∀z(耳za→~鼻za)  7&E
 25  (エ)                    耳ba→~鼻ba   ウUE
 259 (オ)                        ~鼻ba   アエMPP
    カ(カ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
    カ(キ)   象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  カUE
 2  カ(ク)      ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  4キMPP
 2  カ(ケ)                 ∀z(~鼻za→~長z)  ク&E
 2  カ(コ)                    ~鼻ba→~長b   ケUE
 259カ(サ)                         ~長b   オコMPP
 259カ(シ)             長b&~長b            イサ&I
 25 カ(ス)             長b&~長b            ハクシEE
1 5 カ(セ)             長b&~長b            12スEE
  5 カ(ソ)~∃x(兎x&象x)                     2セRAA
  5 カ(タ)∀x~(兎x&象x)                     ソ量化子の関係
  5 カ(チ)  ~(兎a&象a)                     タUE
  5 カ(ツ)  ~兎a∨~象a                      チ、ドモルガンの法則
  5 カ(テ)   兎a→~象a                      ツ含意の定義
  5 カ(ト)∀x(兎x→~象x)                     テUI
  5 カ(〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。   テUI
  5 カ(〃)兎は象ではない。                       テUI
といふ「述語計算(Predicate calculus)」は、「正しい」。
従って、
(21)(25)により、
(26)
② 象は鼻が長い。
といふ「日本語」に対する、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「述語論理」への「翻訳」は、やはり、「正しい」。
然るに、
(27)
伝統的論理学を清水滉『論理学』(1916年)で代表させよう。わたしのもっているのが四十三年の第十九冊の一冊で、なお引き続き刊行だろうから、前後かなり多くの読者をもつ論理学書と考えられる。新興の記号論理学は、沢田允茂『現代論理学入門』(1962年)を参照することにする(三上章、日本語の論理、1963年、4頁)。
といふ風に、述べてゐる、三上先生は、「象は鼻が長い(1960年)」といふ「有名な著書」の著者であって、尚且つ、ご自分では、
② 象は鼻長い。
といふ「日本語」を、例へば、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「述語論理」には、翻訳されてゐない。
従って、
(28)
「象は鼻が長い・日本語の論理」の著者である、三上先生の、
② 象は鼻長い。
といふ「日本語」に対する、「論理学的な分析」は、「不十分」であると、言はざるを得ない。
平成31年04月24日、毛利太。

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