2019年4月9日火曜日

「吾輩は猫である。」の「述語論理」。

―「返り点と括弧」に関しては、『「返り点」と「括弧」の関係(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html)』をお読み下さい。―
(01)
1     (1) ∃x{吾輩x&猫x& ~∃y(名前yx)} A
1     (〃)あるxは吾輩であって猫であるが、名前は無い。 A
1     (〃)    吾輩は猫である。名前はまだ無い。   A
 2    (2)    吾輩a&猫a& ~∃y(名前ya)  A
 2    (3)    吾輩a                2&E
 2    (4)        猫a             2&E
 2    (5)            ~∃y(名前ya)  2&E
  6   (6) ∃x{タマx&     ∃y(名前yx)} A
  6   (〃)あるxはタマであり、あるyはxの名前である。 A
  6   (〃)    タマには名前が有る。         A 
   7  (7)    タマa&     ∃y(名前ya)  A
   7  (8)    タマa&               7&E
   7  (9)             ∃y(名前ya)  7&E
 2 7  (ア)   ~∃y(名前ya)&∃y(名前ya)  59&I
 26   (イ)   ~∃y(名前ya)&∃y(名前ya)  67アEE
 2    (ウ)~∃x{タマx&     ∃y(名前yx)} 6アRAA
  2    (エ)∀x~{タマx&     ∃y(名前yx)} ウ量化子の関係
 2    (オ)  ~{タマa&     ∃y(名前ya)} エUE
 2    (カ)   ~タマa∨    ~∃y(名前ya)  オ、ドモルガンの法則
    キ (キ)   ~タマa                A
    キ (ク) ~∃y(名前ya)∨~タマa        キ∨I
     ケ(ケ) ~∃y(名前ya)             A
     ケ(コ) ~∃y(名前ya)∨~タマa        ケ∨I
 2    (サ) ~∃y(名前ya)∨~タマa        カキクケコ∨E
 2    (シ)  ∃y(名前ya)→~タマa        サ含意の定義
 2 7  (ス)           ~タマa        9シMPP
 2 7  (セ)     吾輩a&~タマa          3ス&I
 2 7  (ソ)     吾輩a&~タマa&猫a       4セ&I
 2 7  (タ)  ∃x(吾輩x&~タマx&猫x)      ソEI
 26   (チ)  ∃x(吾輩x&~タマx&猫x)      67タEE
1 6   (ツ)  ∃x(吾輩x&~タマx&猫x)      12チEE
1 6   (〃)あるxは吾輩であってタマではなく猫である。  12チEE
1 6   (〃)    吾輩はタマではないが、 猫である。  12チEE
従って、
(01)により、
(02)
(1)吾輩は猫である。名前はまだ無い。然るに、
(2)タマには名前が有る。      従って、
(3)吾輩はタマではないが、猫である。
といふ「日本語による推論」は、「述語論理による推論」としても「妥当(valid)」である。
然るに、
(03)
(01)に於いて、
F=吾輩(人称代名詞
G= 猫 ( 普通名詞 )
N=名前( 普通名詞 )
T=タマ( 固有名詞
とするならば、
1     (1) ∃x{Fx&Gx& ~∃y(Nyx)} A
 2    (2)    Fa&Ga& ~∃y(Nya)  A
 2    (3)    Fa               2&E
 2    (4)       Ga            2&E
 2    (5)           ~∃y(Nya)  2&E
  6   (6) ∃x{Tx&     ∃y(Nyx)} A
   7  (7)    Ta&     ∃y(Nya)  A
   7  (8)    Ta&              7&E
   7  (9)            ∃y(Nya)  7&E
 2 7  (ア)   ~∃y(Nya)&∃y(Nya)  59&I
 26   (イ)   ~∃y(Nya)&∃y(Nya)  67アEE
 2    (ウ)~∃x{Tx&     ∃y(Nyx)} 6アRAA
  2    (エ)∀x~{Tx&     ∃y(Nyx)} ウ量化子の関係
 2    (オ)  ~{Ta&     ∃y(Nya)} エUE
 2    (カ)   ~Ta∨    ~∃y(Nya)  オ、ドモルガンの法則
    キ (キ)   ~Ta               A
    キ (ク) ~∃y(Nya)∨~Ta        キ∨I
     ケ(ケ) ~∃y(Nya)            A
     ケ(コ) ~∃y(Nya)∨~Ta        ケ∨I
 2    (サ) ~∃y(Nya)∨~Ta        カキクケコ∨E
 2    (シ)  ∃y(Nya)→~Ta        サ含意の定義
 2 7  (ス)           ~Ta       9シMPP
 2 7  (セ)     Fa&~Ta          3ス&I
 2 7  (ソ)     Fa&~Ta&Ga       4セ&I
 2 7  (タ)  ∃x(Fx&~Tx&Gx)      ソEI
 26   (チ)  ∃x(Fx&~Tx&Gx)      67タEE
1 6   (ツ)  ∃x(Fx&~Tx&Gx)      12チEE
といふ「推論」は、「述語論理による推論」として「妥当(valid)」である。
然るに、
(04)
第1に、固有名詞をつぎの符号のひとつとして定義する。
     m,n,・・・・・
第2に、任意の名前をつぎの符号のひとつとして定義する。
     a,b,c,・・・・・
第3に、個体変数をつぎの符号のひとつとして定義する。
     x,y,z,・・・・・
第4に、述語文字をつぎの符号のひとつとして定義する。
     ,・・・・・
(E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、176頁)
従って、
(03)(04)により、
(05)
「述語論理」の場合は「人称代名詞・普通名詞・固有名詞」の「区別」は、「不要」である。
然るに、
(06)
それでは、狭義の述語論理において究極的な主語となるものは何であろうか。それは「人間」というような一般的なものではない。また「ソクラテス」も述語となりうるし、「これ」すらも「これとは何か」という問にたいして「部屋の隅にある机がこれです」ということができる(沢田允茂、現代論理学入門、1962年、118頁)。
(06)により、
(07)
沢田允茂先生は、
「述語論理」は「普通名詞(人間)・固有名詞(ソクラテス)」の「区別」は、「不要」である。
と、されてゐる。
然るに、
(08)
「日本語に即した文法の樹立を」を目指すわれわれは「日本語で人称代名詞と呼ばれているものは、実は名詞だ」と宣言したい。どうしても区別したいなら「人称名詞」で十分だ。日本語の「人称代名詞」はこれからは「人称名詞」と呼ぼう(金谷武洋、日本語文法の謎を解く、2003年、40・41頁)。
従って、
(08)により、
(09)
金谷武洋先生は、
「日本語」は「人称代名詞(私、あなた 他)・名詞」の「区別」は、「不要」である。
と、されてゐる。
従って、
(05)(07)(09)により、
(10)
「述語論理」の場合は「人称代名詞・普通名詞・固有名詞」の「区別」は、「不要」である。
としても、そのこと自体は、「特別に、ヲカシイ」といふことには、ならない。
平成31年04月09日、毛利太。

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