2019年6月2日日曜日

「象は鼻が長い。」の「述語論理」の「対偶」(Ⅱ)。

―「返り点と括弧」に関しては、
(α)「返り点」と「括弧」に付いて。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_11.html
(β)「返り点」と「括弧」の条件。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_15.html
(γ)「返り点」と「括弧」の条件(Ⅱ):(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_16.html
(δ)「返り点」は、下には戻らない。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_20.html
(ε)「下中上点」等が必要な「理由」。:(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_22.html
(ζ)「返り点・モドキ」について。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_24.html)⇒
 Web上には存在しますが、何故か、アクセス出来ません。
(η)「一二点・上下点」に付いて。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_26.html
(θ)「括弧」の「順番」。      :(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post.html
(ι)「返り点」と「括弧」の関係   :(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html
等々、「その他、諸々」を、お読み下さい。―
(01)
「先の記事」にも書いた通り、
(ⅰ)
1  (1) P→Q  A
 2 (2) P    A
  3(3)  ~Q  A
12 (4)   Q  12MPP
123(5)~Q&Q  34&I
1 3(6)~P    25RAA
1  (7)~Q→~P 36CP
(ⅱ)
1  (1)~Q→~P A
 2 (2)~Q    A
  3(3)    P A
12 (4)   ~P 12MPP
123(5) P&~P 34&I
1 3(6)~~Q   25RAA
1 3(7)  Q   6DN
1  (8)P→Q   37CP
従って、
(ⅰ)(ⅱ)により、
(02)
①  P→ Q=PであるならばQである。
② ~Q→~P=QでないならばPでない。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(03)
命題「PならばQ」の真偽とその対偶「QでないならPでない」の真偽とは必ず一致する(すなわち真理値が等しい)。
(ウィキペディア改)
従って、
(04)
① ∀x{ 象x→ ∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)→~象x}
に於いて、
① は、② の「対偶」であるが故に、
② は、① の「対偶」であり、それ故、
①=② である。
然るに、
(05)
「先の記事」にも書いた通り、
(ⅱ)
3  (3)   ~[∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z)]      A
3  (4)    ~∃y(鼻ya&長y)∨~∀z(~鼻za→~長z)       3ド・モルガンの法則
3  (5)     ∃y(鼻ya&長y)→~∀z(~鼻za→~長z)       4含意の定義
 6 (6)     ∃y(鼻ya&長y)                     A
36 (7)                ~∀z(~鼻za→~長z)       56MPP
36 (8)                ∃z~(~鼻za→~長z)       7量化子の関係
  9(9)                  ~(~鼻ca→~長c)       A
  9(ア)                 ~(~~鼻ca∨~長c)       9含意の定義
  9(イ)                   ~(鼻ca∨~長c)       アDN
  9(ウ)                   ~鼻ca&~~長c        イ、ド・モルガンの法則
  9(エ)                    ~鼻ca& 長c        ウDN
  9(オ)                 ∃z(~鼻za& 長z)       オEI
36 (カ)                 ∃z(~鼻za& 長z)       89オEE
3  (キ)      ∃y(鼻ya&長y)→∃z(~鼻za& 長z)       6カCP
(ⅲ)
3  (3)      ∃y(鼻ya&長y)→∃z(~鼻za& 長z)       A
 4 (4)      ∃y(鼻ya&長y)                    A               
34 (5)                 ∃z(~鼻za& 長z)       34MPP
  6(6)                    ~鼻ca& 長c        A
  6(7)                 ~~(~鼻ca& 長c)       6DN
  6(8)                 ~(~~鼻ca∨~長c)       7ド・モルガンの法則
  6(9)                  ~(~鼻ca→~長c)       8含意の定義
  6(ア)                ∃z~(~鼻ca→~長c)       6EI
34 (イ)                ∃z~(~鼻ca→~長c)       56EE
34 (ウ)                ~∀z(~鼻za→~長z)       イ量化子の関係
3  (エ)     ∃y(鼻ya&長y)→~∀z(~鼻za→~長z)       4ウCP
3  (オ)    ~∃y(鼻ya&長y)∨~∀z(~鼻za→~長z)       エ含意の定義
3  (カ)   ~[∃y(鼻ya&長y)& ∀z(~鼻za→~長z)]      オ、ド・モルガンの法則
従って、
(05)により、
(06)
② ~[∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)]
③   ∃y(鼻ya&長y)→∃z(~鼻za& 長z)
に於いて、
②=③ である。
cf.
含意の定義(Df.→)
従って、
(06)により、
(07)
②[ ]を省略すると、
② ~∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)
③   ∃y(鼻ya&長y)→∃z(~鼻za& 長z)
に於いて、
②=③ である。
従って、
(07)により、
(08)
② ~∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)
③   ∃y(鼻ya&長y)→∃z(~鼻za& 長z)
に於いて、
②=③ であるが故に、
② ~∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)→~象x
③   ∃y(鼻ya&長y)→∃z(~鼻za& 長z)→~象x
従って、
(08)により、
(09)
② ∀x{~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)→~象x}
③ ∀x{ ∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx& 長z)→~象x}
に於いて、
②=③ である。
従って、
(04)(09)により、
(10)
① ∀x{ 象x→ ∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)→~象x}
③ ∀x{ ∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx& 長z)→~象x}
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(10)により、
(11)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
③ ∀x{∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)→~象x}
に於いて、
①=③ である。
従って、
(11)により、
(12)
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
③ すべてのxについて、あるyがxの鼻であって、yが長いならば、あるzがxの鼻でなくて、zが長いならば、xは象ではない。
に於いて、
①=③ である。
然るに、
(13)
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
といふことは、要するに、
① 象は、鼻は長く、鼻以外は長くない
といふ、「意味」である。
然るに、
(14)
③ すべてのxについて、あるyがxの鼻であって、yが長いならば、あるzが、xの鼻でなくて、zも長いならば、xは象ではない。
といふことは、
③ あるyがxの鼻であって長いのであれば、yの次に、あるzが、xの鼻ではなくて、長いのであれば、xは象ではない。
といふ、「意味」である。
然るに、
(15)
③ あるyがxの鼻であって長いのであれば、yの次に、あるzが、xの鼻ではなくて、長いのであれば、xは象ではない。
といふことは、要するに、
③ 象は、鼻は長く、鼻以外は長くない
といふ、「意味」である。
従って、
(11)~(15)により、
(16)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
③ ∀x{∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)→~象x}
に於いて、
①=③ である「理由」は、両方とも、
① 象は、鼻は長く、鼻以外は長くない
③ 象は、鼻は長く、鼻以外は長くない
といふ「意味」であるからである。
といふ、ことになる。
然るに、
(17)
① 象は、鼻は長く、鼻以外は長くない
③ 象は、鼻は長く、鼻以外は長くない
といふのであれば、
① 象は、鼻長い。
③ 象は、鼻長い。
と言ふのであって、
① 象は、鼻は長い。
③ 象は、鼻は長い。
とは、言はない。
然るに、
(18)
④ ある兎は象であって、その兎は耳が長い。
とする。
然るに、
(19)
① 象は、鼻は長く、鼻以外は長くない
といふ、ことからすると、
④ あるであって、その耳が長い
と、いふのであれば、
兎の耳は、でなければ、ならない。
従って、
(19)により、
(20)
⑤ ある兎が、象であって、尚且つ、その兎の耳長いにも拘らず、その兎の耳が、鼻ではない
とするならば、「矛盾」する。
従って、
(18)(19)(20)により、
(21)
次のやうな、「述語計算(Predicate calculation)」が、成立する。
1    (1)  ∀x{ 象x→ ∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→ ~長z)}  A
1    (2)  ∀x{~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)→~象x} 1対偶(contraposition)
1    (3) ∀x{ ∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&  長z)→~象x} 2等式(11)
 4   (4) ∀x{ 兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→ ~鼻zx)} A
 4   (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、あるyはxの耳であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの耳ならば、zはxの鼻ではない。 A
  5  (5)~∀x(兎x→~象x)                        A
  5  (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。といふわけではない。 A
1    (6)     象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)    1UE
     (7)     ∃y(鼻ya&長y)→∃z(~鼻za&長z)→~象a    3UE
 4   (8)     兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)}   4UE
  5  (9) ∃x~(兎x→~象x)                       5量化子の関係
   ア (ア)   ~(兎a→~象a)                       A
   ア (イ)   ~(~兎a∨~象a)                      ア含意の定義
   ア (ウ)   ~~兎a&~~象a                       イ、ド・モルガンの法則
   ア (エ)     兎a&象a                         ウDN
   ア (オ)     兎a                            エ&E
 4 ア (カ)     ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)       8オMPP
 4 ア (キ)     ∃y(耳ya&長y)                    カ&E
    ク(ク)        耳ba&長b                     A
    ク(ケ)        耳ba                        ク&E
    ク(コ)            長b                     ケ&E
 4 ア (サ)                ∀z(耳za→~鼻za)       カ&E
 4 ア (シ)                   耳ba→~鼻ba        サUE
 4 アク(ス)                       ~鼻ba        ケシMPP
 4 アク(セ)                    ~鼻ba&長b        コス&I
 4 アク(ソ)                 ∃z(~鼻za&長b)       セEI
 4 ア (タ)                 ∃z(~鼻za&長z)       キクソEE
   ア (チ)        象a                         エ&E
1  ア (ツ)        ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)    6チMPP
1  ア (テ)        ∃y(鼻ya&長y)                 ツ&E
1  ア (ト)                ∃z(~鼻za&長z)→~象a    7テMPP
14 ア (ナ)                            ~象a    タトMPP
14 ア (ニ)        象a&~象a                     チナ&I
145  (ヌ)        象a&~象a                     9アニEE
14   (ネ)~∃x~(兎x→~象x)                       9ヌRAA
14   (ノ)∀x~~(兎x→~象x)                       ネ量化子の関係
14   (ハ)∀x(兎x→~象x)                         ノDN
14   (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。       ノDN
14   (〃)ではない
従って、
(10)(16)(17)(21)により、
(22)
① ∀x{ 象x→ ∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{~∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)→~象x}
③ ∀x{ ∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx& 長z)→~象x}
といふ「述語論理式」は、三つとも、
① 象は、鼻長い。
② 象は、鼻長い。
③ 象は、鼻長い。
といふ「意味」である(Q.E.D)。
然るに、
(23)
学校文法は単純な英語文法からの輸入で、主語・述語関係を単純に当てはめたものだ。そのため、「象は、鼻が長い」という単純な文でさえ、どれが主語だか指摘できず、複数主語だとか、主語の入れ子だとか、奇矯な技を使う。これに対して三上は、日本語には主語はない、とする。「象は」は、テーマを提示する主題であり、これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する(この場合は「長い」までをスコープとする)。また、「鼻が」は主格の補語にすぎなく、数ある補語と同じ格であるとする。基本文は述語である「長い」だけだ(三上文法! : wrong, rogue and log)。
然るに、
(24)
① 象は、鼻が長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
すべてのxについてxが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
といふことからすれば、
これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する。」といふ「説明」は「正しい」。
然るに、
(25)
括弧は、論理演算子のスコープ(scope)を明示する働きを持つ。スコープは、論理演算子の働きが及ぶ範囲のことをいう。
(産業図書、数理言語学辞典、2013年、四七頁:命題論理、今仁生美)
然るに、
(26)
(ⅰ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲は、問題になっている変数が現れる少なくとも2つの箇所を含むであろう(その1つの箇所は量記号そのもののなかにある);
(ⅱ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲は、同じ変数を用いたいかなる他の量記号も含まないであろう。
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、183頁)
従って、
(23)~(26)により、
(27)
「象は、鼻が長い」という単純な文でさえ、どれが主語だか指摘できず、複数主語だとか、主語の入れ子だとか、奇矯な技を使う。
とは言ふものの、
① 象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
は、「複数主語とyとz)」による、
①{ ( )( ) }
といふ「形」の、「入れ子」であって、が、「全体の、主語」である。
(28)
思ふに、「日本語には主語があろうと、なかろう。」と、そんなことは、おそらくは、「どうでも良い」。
令和元年06月02日、毛利太。

0 件のコメント:

コメントを投稿