2019年6月19日水曜日

「象は鼻が長い。」と「鼻は象が長い。」の「述語論理」。

― 長い間、「返り点」に関する「記事」を書いてゐません。「返り点と括弧」に関しては、
(α)「返り点」と「括弧」に付いて。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_11.html
(β)「返り点」と「括弧」の条件。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_15.html
(γ)「返り点」と「括弧」の条件(Ⅱ):(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_16.html
(δ)「返り点」は、下には戻らない。 :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_20.html
(ε)「下中上点」等が必要な「理由」。:(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_22.html
(ζ)「返り点・モドキ」について。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_24.html)⇒
 Web上には存在しますが、何故か、アクセス出来ません。
(η)「一二点・上下点」に付いて。  :(https://kannbunn.blogspot.com/2017/12/blog-post_26.html
(θ)「括弧」の「順番」。      :(https://kannbunn.blogspot.com/2018/01/blog-post.html
(ι)「返り点」と「括弧」の関係   :(https://kannbunn.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html
等々、「その他、諸々」を、お読み下さい。―

(01)
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない
② 兎は耳は長く、耳以外は長くない
従って、
(02)
③ ある兎が象である。ならば、
③ 兎は、耳以外は長くない。にも拘らず、その
③ 兎は、鼻も長いことになる。
従って、
(01)(02)により、
(03)
③ ある象が兎である。
ならば、「矛盾」する。
のかと言へば、さうではない。
何となれば、
(04)
③ 兎の耳は、鼻である。
かも、知れないからである。
もちろん、
(05)
「常識的」には、
③ 兎の耳は、鼻ではない。
然るに、
(06)
「常識的」には、ともかく、
論理的(?)」には、
③ 兎のは、である。
としても、かまはない。
従って、
(01)~(06)により、
(07)
③ ある象は兎である(象であって兎である動物が存在する)。
といふ「命題」を「否定」するためには、
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
② 兎は耳は長く、耳以外は長くない。
といふことだけは、「不十分」であって、
③ 兎のは、ではない
といふことを、「必要」とする。
然るに、
(08)
要するに「すべて」という語も「人間」といふ語も、「存在する」ということとは無関係である。そこで「すべての人間は正直である」という文の論理的構造をしめす
 「すべてのxについて、もしxが人間ならばxは正直である」
は命題論理の法則の一つである
 (P→Q)=~(P&~Q)
をあてはめれば、
 「すべてのxについて、xが人間であってそして正直でないということではない」ということと等値である(沢田允茂、現代論理学入門、1962年、122頁)。
といふ、ことになる。
従って、
(01)(08)により、
(09)
「常識的」には、さうでなくとも、
少なくとも、「論理学的」には、
① 象は、存在せず、
② 兎も、存在しない。としても、
すべての象は、鼻は長く、鼻以外は長くない。
すべての兎は、耳は長く、耳以外は長くない。
といふ「命題」は、「(本当)」である。
従って、
(01)~(09)により、
(10)
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
② 兎は耳は長く、耳以外は長くなく、兎の耳は鼻ではない。
③ ある兎は象である(ある象は兎である)。
といふ「3つ(4つ)の条件」が揃った。ならば、そのときに、初めて、
①、② と、
③ ある兎は象である(ある象は兎である)。
が、「矛盾」するが故に、
③ すべての兎は、象ではない。
といふ「命題」は、「真(本当)」である。
といふ、ことになる。
然るに、
(11)
その場合であっても、
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
② 兎は耳は長く、耳以外は長くなく、兎の耳は鼻ではない。
③ ある兎は象である(ある象は兎である)。
とある内の、例へば、
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
を「否定」する。すなはち、
① 象は鼻は長く、鼻以外は長くない。
といふ「命題」を、「偽(ウソ)」とするならば、
③ ある兎は象である(ある象は兎である)。
といふ「命題」は、「(本当)」になる。
然るに、
(12)
1     (1)象は鼻が長い。                        A
1     (〃)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
 2    (2)兎の耳は長く、兎の耳は鼻ではない。              A
 2    (〃)∀x{兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
  3   (3)ある兎は象である。                      A
  3   (〃)∃x(兎x&象x)                      A
  3   (〃)あるxは兎であって象である。                 A
1     (4)   象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  1UE
 2    (5)   兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  1UE
   6  (6)   兎a&象a                       A
   6  (7)      象a                       6&E
   6  (8)   兎a                          6&E
1  6  (9)      ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)  47MPP
 2 6  (ア)      ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za)  58MPP
1  6  (イ)      ∃y(鼻ya&長y)               9&E
 2 6  (ウ)      ∃y(耳ya&長y)               ア&E
    エ (エ)         鼻ba&長b                A
     オ(オ)         耳ba&長b                A
1  6  (カ)                 ∀z(~鼻za→~長z)  9&E
1  6  (キ)                    ~鼻ba→~長b   カUE
 2 6  (ク)                 ∀z(耳za→~鼻za)  ア&E
 2 6  (ケ)                    耳ba→~鼻ba   クUE
    オ (コ)                    耳ba        オ&E
 2 6オ (サ)                        ~鼻ba   ケコMPP
12 6オ (シ)                         ~長b   キサMPP
    オ (ス)             長b                エ&E
12 6オ (セ)             長b&~長b            シス&I
12 6  (ソ)             長b&~長b            ウオセEE
123   (タ)             長b&~長b            36ソEE
12    (チ)~∃x(兎x&象x)                     3タRAA
12    (ツ)∀x~(兎x&象x)                     チ量化子の関係
12    (テ)  ~(兎a&象a)                     ツUE
12    (ト)  ~兎a∨~象a                      テ、ド・モルガンの法則
12    (ナ)   兎a→~象a                      ト含意の定義
12    (ニ)∀x(兎x→~象x)                     ナUI
12    (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。   ナUI
12    (〃)兎は象ではない。                       ナUI
従って、
(12)により、
(13)
(1)(1st:象は鼻が長い)。
(2)(2nd:兎には長い耳が有り)、(3rd:兎の耳は鼻ではない)。
(3)(4th:ある兎は象である)。
といふ「3つ(4つ)の仮定」の内の、
(1)(象は鼻が長い)。
(2)(兎には長い耳が有り)、(兎の耳は鼻ではない)。
といふ「仮定」を、「否定」しない限り、
(3)(ある兎は象である)。
といふ「仮定」が、「否定」されて、
(二)ではない
といふ『結論』を得る。
従って、
(01)~(13)により、
(14)
① 象長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
① 象長い=すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、yは長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
といふ「日本語・述語論理」は、「正しい」。
然るに、
(15)
(ⅰ)
1   (1)象には鼻がある。                            A
1   (〃)∃x∃y(鼻xy&象y)                        A
1   (〃)あるxはあるyの鼻であって、yは象である。                A
 2  (2)  ∃y(鼻ay&象y)                         A
  3 (3)     鼻ab&象b                                               A
   4(4)鼻は象が長い。                             A
      4(〃)∀x∀y{[(鼻xy&象y)→長x]&[鼻xy→(~象y→~長x)]} A
      4(5)  ∀y{[(鼻ay&象y]→長a]&[鼻ay→(~象y→~長a)]} 4UE
   4(6)      (鼻ab&象b)→長a & 鼻ab→(~象b→~長a)   5UE
   4(7)      (鼻ab&象b)→長a                   6&E
   34(8)               長a                   37MPP
  34(9)      鼻ab&象b&長a                                            38&I
  34(ア)   ∃y(鼻ay&象y&長a)                     9EI
 2 4(イ)  ∃y(鼻ay&象y&長a)                     23アEE
 2 4(ウ)∃x∃y(鼻xy&象y&長x)                     イEI
1  4(エ)∃x∃y(鼻xy&象y&長x)                     12ウEE
1  4(〃)あるxは、あるyの鼻であって、yは象であって、xは長い。        12ウEE
1  4(〃)長い。                             12ウEE
(ⅱ)
1   (1)兎には鼻があるが、兎は象ではない。                   A
1   (〃)∃x∃y(鼻xy&兎y&~象y)                    A
1   (〃)あるxはあるyの鼻であって、yは兎であって、象でない。         A
 2  (2)   ∃y(鼻ay&兎y&~象y)                     A
  3 (3)      鼻ab&兎b&~象b                                       A
  3 (4)     鼻ab                            3&E
  3 (5)         兎b                         3&E
  3 (6)            ~象b                     3&E
   7(7)鼻は象が長い。                             A
      7(〃)∀x∀y{[(鼻xy&象y)→長x]&[鼻xy→(~象y→~長x]]} A
      7(8)  ∀y{[(鼻ay&象y]→長a]&[鼻ay→(~象y→~長a)]} 74UE
   7(9)      (鼻ab&象b)→長a & 鼻ab→(~象b→~長a)   8UE
   7(ア)                    鼻ab→(~象b→~長a)   9&E
  37(イ)                         ~象b→~長a    4アMPP
  37(ウ)                             ~長a    6イMPP 
  3 (エ)     鼻ab&兎b                         45&I
  37(オ)     鼻ab&兎b&~長a                     ウエ&I 
  37(カ)  ∃y(鼻ay&兎y&~長a)                    オEI
 2 7(キ)  ∃y(鼻ay&兎y&~長a)                    23カEE
 2 7(ク)∃x∃y(鼻xy&兎y&~長x)                    キEI
1  7(ケ)∃x∃y(鼻xy&兎y&~長x)                    12クEE
1  7(〃)あるxは、あるyの鼻であって、yは兎であって、xは長くない。      12クEE
1  7(〃)長くない。                           12クEE
従って、
(15)により、
(16)
(ⅰ)「象には鼻がある。        & 鼻長い。」⇔「象の鼻は長い。」
(ⅱ)「兎には鼻があり、兎は象ではない。& 鼻長い。」⇔「兎の鼻は長くない。」
然るに、
(17)
② ∀x∀y{[(鼻xy&象y)→長x]&[鼻xy→(~象y→~長x)]}⇔
② すべてのxとすべてのyについて、(xはyの鼻であって、yが象である)ならば、xは長く、xがyの鼻であるならば(yが象でないならば、xは長くない)。
然るに、
(18)
② すべてのxとすべてのyについて、(xはyの鼻であって、yが象である)ならば、xは長く、xがyの鼻であるならば(yが象でないならば、xは長くない)。
といふことは、
② 鼻は、象ならば、長く、鼻は、象でないならば、長くない。
といふ、ことである。
然るに、
(19)
{xの変域}={兎、象、キリン} であるとして、
② 耳、兎長い。
② 鼻、象長い。
② 首、キリン長い。
加へて、
(20)
{xの変域}={兎、象、キリン} であるとして、
② 耳は、兎ならば、長く、耳は、兎でないならば、長くない。
② 鼻は、象ならば、長く、鼻は、象でないならば、長くない。
② 首は、キリンならば、長く、首は、キリンでないならば、長くない。
従って、
(19)(20)により、
(21)
② 鼻長い。
といふことは、
② 鼻、象ならば、長く、鼻、象でないならば、長くない
といふ、ことである。
然るに、
(22)
従って、
(15)~(22)により、
(23)
② 鼻長い=∀x∀y{[(鼻xy&象y)→長x]&[鼻xy→(~象y→~長x)]}。
② 鼻長い=すべてのxとすべてのyについて、(xはyの鼻であって、yが象である)ならば、xは長く、xがyの鼻であるならば(yが象でないならば、xは長くない)。
といふ「日本語・述語論理」は、「正しい」。
従って、
(14)(23)により、
(24)
① 象長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 鼻長い=∀x∀y{[(鼻xy&象y)→長x]&[鼻xy→(~象y→~長x)]}。
といふ「日本語・述語論理」は、「正しい」。
然るに、
(25)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② ∀x∀y{[(鼻xy&象y)→長x]&[鼻xy→(~象y→~長x)]}。
に於いて、「両者は、全然、似てゐない。」
従って、
(24)(25)により、
(26)
両方とも、
① AはBがCである。
② AはBがCである。
であるにも、拘らず、
① 象長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 鼻長い=∀x∀y{[(鼻xy&象y)→長x]&[鼻xy→(~象y→~長x)]}。
といふ「日本語の論理構造」は、「全く、似てゐない」。
(27)
① 象長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
② 鼻長い=∀x∀y{[(鼻xy&象y)→長x]&[鼻xy→(~象y→~長x)]}。
に於いて、
① は、「象の、象の、象の」  等を、「話題」にしてゐて、
② は、「の鼻、の鼻、キリンの鼻」等を、「話題」にしてゐる。
令和元年06月19日、毛利太。

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