(01)
① 誰不愛其才而惜其命薄=
① 誰不下愛二其才一而惜中其命薄上=
① 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕⇒
① 誰〔(其才)愛而(其命薄)惜〕不=
① 誰か〔(其の才を)愛して(其の命の薄きを)惜しま〕ざらんや。
は、「反語」である。
然るに、
(02)
反語とは、表現されている内容と反対のことを意味する言い方で、多くは疑問形と同じ形であり、けっきょく、肯定している場合は否定に、否定している場合は肯定の内容になる。
(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、45頁、1973年)
従って、
(01)(02)により、
(03)
① 誰か〔(其の才を)愛して(其の命の薄きを)惜しま〕ざらんや。
は、「反語」であるため、
① 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕。
② 不[不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕]。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(04)
P≡愛(其才) ≡賈島の才能を愛す。
Q≡惜(其命薄)≡賈島の薄命を惜しむ。
であって、尚且つ、
不=~
而=&
であるとする、
従って、
(03)(04)により、
(05)
① 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕。
② 不[不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕]。
といふ「漢文」は、
① ~{~(P&Q)}
といふ「命題論理式」に、「等しい」。
然るに、
(06)
(ⅰ)
1 (1)~{~(P& Q)} A
3(2) P→~Q A
3(3) ~P∨~Q 2含意の定義
3(4) ~(P& Q) 3ド・モルガンの法則
13(5)~{~(P& Q)}&
{~(P& Q)} 14&I
1 (6) ~(P→~Q) 35RAA
(ⅱ)
1 (1) ~(P→~Q) A
2(2) ~P∨~Q A
2(3) P→~Q 2含意の定義
12(4) ~(P→~Q)&
(P→~Q) 13&I
1 (5) ~(~P∨~Q) 24RAA
1 (6) (P& Q) 5ド・モルガンの法則
1 (7)~{~(P& Q)} 6DN
従って、
(06)により、
(07)
① ~{~(P& Q)}
② ~(P→~Q)
に於いて、
①=② である。
従って、
(04)~(07)により、
(08)
① 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕。
② 不[不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕]。
といふ「漢文」は、
② ~(P→~Q)
といふ「命題論理式」に、「等しい」。
従って、
(01)(04)(08)により、
(09)
① 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕。
① 誰か〔(其の才を)愛して(其の命の薄きを)惜しま〕ざらんや。
②(賈島の才能を愛するならば、賈島の薄命を惜しまない。)といふことない。
に於いて、
①=①=② である。
然るに、
(10)
②(賈島の才能を愛するならば、賈島の薄命を惜しまない。)といふことない。
といふことは、
②(賈島の才能を愛する者は、誰もが賈島の薄命を惜しむ)。
といふ、ことである。
従って、
(08)(09)(10)により、
(11)
① 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕。
②(賈島の才能を愛する者は、誰もが賈島の薄命を惜しむ)。
② ~(P→~Q)。
に於いて、
①=②=② である。
然るに、
(12)
「漢文」の場合は、「現在形」と「過去形」の「区別」が無い。
従って、
(11)(12)により、
(13)
① 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕。
②(賈島の才能を愛した者は、誰もが賈島の薄命を惜しんだ)。
② ~(P→~Q)。
に於いて、
①=②=② である。
然るに、
(14)
③ 死に臨んだ日に、家に一銭の貯金なく、ただ病気にかかったロバと古琴だけがあった。その当時、
③ 誰がその(詩人賈島の)才能を愛さず、賈島の命が短いことを惜しまないことがあろうか、その才能と短命を哀惜した。
(多久弘一、多久の漢文公式110、1988年、85頁を参照)
然るに、
(15)
③ 誰がその(詩人賈島の)才能を愛さず、賈島の命が短いことを惜しまないことがあろうか。
であるならば、「不(ず・ない)」の「個数」が「2個」であることから、「漢文訓読」は、
① 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕。
ではなく、
③ 誰不[不〔愛(其才)〕而惜(其命薄)]⇒
③ 誰[〔(其才)愛〕不而(其命薄)惜]不=
③ 誰か[〔(其の才)愛さ〕ずして(其の命の薄きを)惜しま]ざらんや。
でなければ、ならないが、「原文」は、さうではない。
従って、
(14)(15)により、
(16)
① 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕。
に対する、
③ 誰がその(詩人賈島の)才能を愛さず、賈島の命が短いことを惜しまないことがあろうか、その才能と短命を哀惜した。
といふ「訳」は、
③ 愛さず
の「部分」が、「誤訳」である。
然るに、
(17)
goo国語辞書
はく‐めい【薄命】 の解説
1 早死にすること。短命。「佳人薄命」
2 運に恵まれないこと。ふしあわせ。薄幸。「薄命の身を嘆く」
然るに、
(18)
大修館大漢和辞典(第9巻、940頁)を見ると、
「(漢文の)薄命」には、
2 運に恵まれないこと。ふしあわせ。薄幸。
といふ「意味」は有っても、
1 早死にすること。短命。
といふ「意味」は無い。
加へて、
(19)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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賈 島(か とう、779年(大暦14年)- 843年8月27日(会昌3年7月28日))は、中国・唐の詩人。字は浪仙、または閬仙。幽州范陽県(現在の河北省保定市涿州市)の出身である。
従って、
(19)により、
(20)
賈島は、「還暦」を過ぎてから亡くなってゐるため、当時としては、「短命」とは言へないはずである。
従って、
(16)(20)により、
(21)
① 誰不〔愛(其才)而惜(其命薄)〕。
に対する、
③ 誰がその(詩人賈島の)才能を愛さず、賈島の命が短いことを惜しまないことがあろうか、その才能と短命を哀惜した。
といふ「訳」は、
③ 愛さず
といふ「部分」と、
③ 短命
といふ「部分」が、「誤訳」になってゐる。
令和02年05月23日、毛利太。
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