(01)
枕草子の専門家が次のような頭注をつけている。
「春は」は総主語の提示的用法。「春は曙いとをかし」などの略で、「曙いとをかし」などの述語節の主語。
提示語のような総主語であり、かつ主語である、とは難儀な話である。
(三上章、日本語の論理、1963年、148・9頁)
然るに、
(02)
① 春は曙。⇔
① 春は曙いとをかし(春は曙が良い)。⇔
① ∀x∃y{(春x&曙yx→良y)&(~春x&曙yx→~良y)}⇔
① すべてのxとあるyについて{xが春であって、yがxの曙であるならば、yは良く、xが春ではなくて、yがxの曙であるならば、yは良くない}。
然るに、
(03)
① 春は曙が良い(春以外の曙は、春よりも良くない)。
② 春の曙は良くないか、春以外の曙は良いか、その両方である。
に於いて、
① と ② は、「矛盾」する。
然るに、
(04)
(ⅱ)
1 (1)~∀x∃y{(春x&曙yx→ 良y)& (~春x&曙yx→~良y)} A
1 (2)∃x~∃y{(春x&曙yx→ 良y)& (~春x&曙yx→~良y)} 1量化子の関係
1 (3)∃x∀y~{(春x&曙yx→ 良y)& (~春x&曙yx→~良y)} 1量化子の関係
4 (4) ∀y~{(春a&曙ya→ 良y)& (~春a&曙ya→~良y)} A
4 (5) ~{(春a&曙ba→ 良b)& (~春a&曙ba→~良b)} 4UE
4 (6) ~(春a&曙ba→ 良b)∨~(~春a&曙ba→~良b) 5ド・モルガンの法則
7 (7) ~(春a&曙ba→ 良b) A
7 (8) ~{~(春a&曙ba)∨良b} 7含意の定義
7 (9) (春a&曙ba)&~良b 8ド・モルガンの法則
7 (ア) (春a&曙ba)&~良b ∨ (~春a&曙ba)&良b 9∨I
イ(イ) ~(~春a&曙ba→~良b) A
イ(ウ) ~{~(~春a&曙ba∨~良b} 9含意の定義
イ(エ) (~春a&曙ba)&良b ウ、ド・モルガンの法則
イ(オ) (春a&曙ba)&~良b ∨ (~春a&曙ba)&良b ア∨I
4 (カ) (春a&曙ba)&~良b ∨ (~春a&曙ba)&良b 47アイオ∨E
4 (キ) ∃y{(春a&曙ya)&~良y ∨ (~春a&曙ya)&良y} カEI
1 (ク) ∃y{(春a&曙ya)&~良y ∨ (~春a&曙ya)&良y} 14キEE
1 (ケ)∃x∃y{(春x&曙yx)&~良y ∨ (~春x&曙yx)&良y} クEI
(ⅲ)
1 (1) ∀x∃y{(春x&曙yx)&~良y ∨ (~春x&曙yx)& 良y} A
1 (2) ∃y{(春a&曙ya)&~良y ∨ (~春a&曙ya)& 良y} 1UE
3 (3) (春a&曙ba)&~良b ∨ (~春a&曙ba)& 良b A
4 (4) ∃y{(春a&曙ya)→ 良b & (~春a&曙ya)→~良y} A
5 (5) (春a&曙ba)→ 良b & (~春a&曙ba)→~良b A
5 (6) (春a&曙ba)→ 良b 5&E
5 (7) (~春a&曙ba)→~良b 5&E
8 (8) (春a&曙ba)&~良b A(3選言項左)
8 (9) (春a&曙ba) 8&E
8 (ア) ~良b 8&E
58 (イ) 良b 69MPP
58 (ウ) ~良b&良b アイ&I
8 (エ) ~{(春a&曙ba)→ 良b & (~春a&曙ba)→~良b} 5ウRAA
オ (オ) (~春a&曙ba)& 良b A(3選言項右)
オ (カ) (~春a&曙ba) オ&E
オ (キ) 良b オ&E
5 オ (ク) ~良b 7カPP
5 オ (ケ) 良b&~良b カキ&I
オ (コ) ~{(春a&曙ba)→ 良b & (~春a&曙ba)→~良b} 5ケRAA
3 (サ) ~{(春a&曙ba)→ 良b & (~春a&曙ba)→~良b} 38エオコ∨E
3 5 (シ) {(春a&曙ba)→ 良b & (~春a&曙ba)→~良b}&
~{(春a&曙ba)→ 良b & (~春a&曙ba)→~良b} 35&I
34 (ス) {(春a&曙ba)→ 良b & (~春a&曙ba)→~良b}&
~{(春a&曙ba)→ 良b & (~春a&曙ba)→~良b} 45シEE
3 (セ) ~∃y{(春a&曙ya)→ 良b & (~春a&曙ya)→~良y} 4スRAA
3 (ソ)∃x~∃y{(春x&曙yx)→ 良b & (~春x&曙yx)→~良y} セEI
1 (タ)∃x~∃y{(春x&曙yx)→ 良b & (~春x&曙yx)→~良y} 13ソEE
1 (チ)~∀x∃y{(春x&曙yx)→ 良b & (~春x&曙yx)→~良y} タ量化子の関係
従って、
(04)により、
(05)
①~ ∀x∃y{(春x&曙yx→良y)&(~春x&曙yx→~良y)}
③ ∀x∃y{(春x&曙yx)&~良y∨(~春x&曙yx)&良y}
に於いて、
②=③ である。
然るに、
(06)
③ ∀x∃y{(春x&曙yx)&~良y∨(~春x&曙yx)&良y}⇔
③ すべてのxとあるyについて{xは春であって、yはxの曙であって、yは良くないか、xは春以外であって、yはxの曙であって、yは良いか、または、その両方である}。
といふことは、
③ 春の曙は良くないか、春以外の曙は良いか、その両方である。
といふことである。
従って、
(03)~(06)により、
(07)
① 春は曙が良い(春以外の曙は、春よりも良くない)。
② 春の曙は良くないか、春以外の曙は良いか、その両方である。
に於いて、
① と ② は、「矛盾」し、
① ∀x∃y{(春x&曙yx→良y)&(~春x&曙yx→~良y)}
② 春の曙は良くないか、春以外の曙は良いか、その両方である。
に於いて、
① と ② は、「矛盾」する。
従って、
(02)(07)により、
(08)
① 春は曙。⇔
① 春は曙いとをかし(春は曙が良い)。⇔
① ∀x∃y{(春x&曙yx→良y)&(~春x&曙yx→~良y)}⇔
① すべてのxとあるyについて{xが春であって、yがxの曙であるならば、yは良く、xが春ではなくて、yがxの曙であるならば、yは良くない}。
といふ「等式」は、「正しい」。
令和02年05月15、毛利太。
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