2020年5月15日金曜日

「春は曙(春は曙いとをかし)。」の「述語論理」。

(01)
 枕草子の専門家が次のような頭注をつけている。
 「春は」は総主語の提示的用法。「春は曙いとをかし」などの略で、「曙いとをかし」などの述語節の主語。
提示語のような総主語であり、かつ主語である、とは難儀な話である。
(三上章、日本語の論理、1963年、148・9頁)
然るに、
(02)
① 春は曙。⇔
① 春は曙いとをかし(春は曙が良い)。⇔
① ∀x∃y{(春x&曙yx→良y)&(~春x&曙yx→~良y)}⇔
① すべてのxとあるyについて{xが春であって、yがxの曙であるならば、yは良く、xが春ではなくて、yがxの曙であるならば、yは良くない}。
然るに、
(03)
① 春は曙が良い(春以外の曙は、春よりも良くない)。
② 春の曙は良くないか、春以外の曙は良いか、その両方である。
に於いて、
① と ② は、「矛盾」する。
然るに、
(04)
(ⅱ)
1   (1)~∀x∃y{(春x&曙yx→ 良y)& (~春x&曙yx→~良y)} A
1   (2)∃x~∃y{(春x&曙yx→ 良y)& (~春x&曙yx→~良y)} 1量化子の関係
1   (3)∃x∀y~{(春x&曙yx→ 良y)& (~春x&曙yx→~良y)} 1量化子の関係
 4  (4)  ∀y~{(春a&曙ya→ 良y)& (~春a&曙ya→~良y)} A
 4  (5)    ~{(春a&曙ba→ 良b)& (~春a&曙ba→~良b)} 4UE
  4  (6)     ~(春a&曙ba→ 良b)∨~(~春a&曙ba→~良b)  5ド・モルガンの法則
  7 (7)     ~(春a&曙ba→ 良b)                 A
  7 (8)   ~{~(春a&曙ba)∨良b}                 7含意の定義
  7 (9)     (春a&曙ba)&~良b                  8ド・モルガンの法則
  7 (ア)     (春a&曙ba)&~良b ∨ (~春a&曙ba)&良b      9∨I
   イ(イ)                   ~(~春a&曙ba→~良b)  A
   イ(ウ)                 ~{~(~春a&曙ba∨~良b}  9含意の定義
   イ(エ)                    (~春a&曙ba)&良b   ウ、ド・モルガンの法則
   イ(オ)     (春a&曙ba)&~良b ∨ (~春a&曙ba)&良b   ア∨I
 4  (カ)     (春a&曙ba)&~良b ∨ (~春a&曙ba)&良b   47アイオ∨E
 4  (キ)  ∃y{(春a&曙ya)&~良y ∨ (~春a&曙ya)&良y}  カEI
1   (ク)  ∃y{(春a&曙ya)&~良y ∨ (~春a&曙ya)&良y}  14キEE
1   (ケ)∃x∃y{(春x&曙yx)&~良y ∨ (~春x&曙yx)&良y}  クEI
(ⅲ)
1      (1) ∀x∃y{(春x&曙yx)&~良y  ∨   (~春x&曙yx)& 良y}  A
1      (2)   ∃y{(春a&曙ya)&~良y  ∨   (~春a&曙ya)& 良y}  1UE
 3     (3)      (春a&曙ba)&~良b ∨   (~春a&曙ba)& 良b   A
  4    (4)   ∃y{(春a&曙ya)→ 良b &  (~春a&曙ya)→~良y}  A
   5   (5)      (春a&曙ba)→ 良b &   (~春a&曙ba)→~良b   A
   5   (6)      (春a&曙ba)→ 良b                    5&E
   5   (7)                      (~春a&曙ba)→~良b   5&E
    8  (8)      (春a&曙ba)&~良b                    A(3選言項左)
    8  (9)      (春a&曙ba)                        8&E
    8  (ア)               ~良b                    8&E
   58  (イ)                良b                    69MPP
   58  (ウ)            ~良b&良b                    アイ&I
    8  (エ)    ~{(春a&曙ba)→ 良b &   (~春a&曙ba)→~良b}  5ウRAA
     オ (オ)                      (~春a&曙ba)& 良b   A(3選言項右)
     オ (カ)                      (~春a&曙ba)       オ&E
     オ (キ)                                 良b   オ&E
   5 オ (ク)                                ~良b   7カPP
   5 オ (ケ)                             良b&~良b   カキ&I
     オ (コ)    ~{(春a&曙ba)→ 良b &   (~春a&曙ba)→~良b}  5ケRAA
 3     (サ)    ~{(春a&曙ba)→ 良b &   (~春a&曙ba)→~良b}  38エオコ∨E
 3 5   (シ)     {(春a&曙ba)→ 良b &   (~春a&曙ba)→~良b}&
              ~{(春a&曙ba)→ 良b &   (~春a&曙ba)→~良b}  35&I
 34    (ス)     {(春a&曙ba)→ 良b &   (~春a&曙ba)→~良b}&
              ~{(春a&曙ba)→ 良b &   (~春a&曙ba)→~良b}  45シEE
 3     (セ)  ~∃y{(春a&曙ya)→ 良b &  (~春a&曙ya)→~良y}  4スRAA
 3     (ソ)∃x~∃y{(春x&曙yx)→ 良b &  (~春x&曙yx)→~良y}  セEI
1      (タ)∃x~∃y{(春x&曙yx)→ 良b &  (~春x&曙yx)→~良y}  13ソEE
1      (チ)~∀x∃y{(春x&曙yx)→ 良b &  (~春x&曙yx)→~良y}  タ量化子の関係
従って、
(04)により、
(05)
①~ ∀x∃y{(春x&曙yx→良y)&(~春x&曙yx→~良y)}
③  ∀x∃y{(春x&曙yx)&~良y∨(~春x&曙yx)&良y}
に於いて、
②=③ である。
然るに、
(06)
③  ∀x∃y{(春x&曙yx)&~良y∨(~春x&曙yx)&良y}⇔
③ すべてのxとあるyについて{xは春であって、yはxの曙であって、yは良くないか、xは春以外であって、yはxの曙であって、yは良いか、または、その両方である}。
といふことは、
③ 春の曙は良くないか、春以外の曙は良いか、その両方である。
といふことである。
従って、
(03)~(06)により、
(07)
① 春は曙が良い(春以外の曙は、春よりも良くない)。
② 春の曙は良くないか、春以外の曙は良いか、その両方である。
に於いて、
① と ② は、「矛盾」し、
① ∀x∃y{(春x&曙yx→良y)&(~春x&曙yx→~良y)}
② 春の曙は良くないか、春以外の曙は良いか、その両方である。
に於いて、
① と ② は、「矛盾」する。
従って、
(02)(07)により、
(08)
① 春は曙。⇔
① 春は曙いとをかし(春は曙が良い)。⇔
① ∀x∃y{(春x&曙yx→良y)&(~春x&曙yx→~良y)}⇔
① すべてのxとあるyについて{xが春であって、yがxの曙であるならば、yは良く、xが春ではなくて、yがxの曙であるならば、yは良くない}。
といふ「等式」は、「正しい」。
令和02年05月15、毛利太。

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