2020年5月21日木曜日

「矛盾・韓非子」の「述語論理」(Ⅳ)。

(01)
1    (1)  ∃x(吾盾x)&∃y(吾矛y)       A
1    (2)  ∃x(吾盾x)               1&E
 3   (3)     吾盾a                A
1    (4)          ∃y(吾矛y)       1&E
  5  (5)             吾矛b        A
   6 (6) ~∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}  A
   6 (7) ∀x~{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}  6量化子の関係
   6 (8)   ~{吾盾a&∃y(吾矛y& 陥ya)   7UE
   6 (9)   ~吾盾a∨~∃y(吾矛y& 陥ya)   8ド・モルガンの法則
   6 (ア)    吾盾a→~∃y(吾矛y& 陥ya)   9ド・モルガンの法則
 3 6 (イ)        ~∃y(吾矛y& 陥ya)   3アMPP
 3 6 (ウ)        ∀y~(吾矛y& 陥ya)   イ量化子の関係
 3 6 (エ)          ~(吾矛b& 陥ba)   ウUE
 3 6 (カ)           ~吾矛b∨~陥ba    エ、ド・モルガンの法則
 3 6 (キ)            吾矛b→~陥ba    カ含意の定義
 356 (ク)                ~陥ba    5キMPP
    ケ(ケ) ~∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}  A
    ケ(コ) ∀y~{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}  ケ量化子の関係  
    ケ(サ)   ~{吾矛b&∃x(吾盾x&~陥bx)}  コUE
    ケ(シ)   ~吾矛b∨~∃x(吾盾x&~陥bx)   サ含意の定義
    ケ(ス)    吾矛b→~∃x(吾盾x&~陥bx)   シ含意の定義
  5 ケ(セ)        ~∃x(吾盾x&~陥bx)   5スMPP
  5 ケ(ソ)        ∀x~(吾盾x&~陥bx)   セ量化子の関係
  5 ケ(タ)          ~(吾盾a&~陥ba)   ソUE
  5 ケ(チ)           ~吾盾a∨ 陥ba    タ含意の定義
  5 ケ(ツ)            吾盾a→ 陥ba    チ含意の定義
 35 ケ(テ)                 陥ba    3ツMPP
 356ケ(ト)            ~陥ba&陥ba    クテ&I
1 56ケ(ナ)            ~陥ba&陥ba    13トEE
1  6ケ(ニ)            ~陥ba&陥ba    15ナEE
1  6 (ヌ)~~∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}  ケニRAA
1   ケ(ネ)  ∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}  ヌDN
1   ケ(ノ)~~∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}  6ニRAA
1   ケ(ハ)  ∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}  ノDN
1  6ケ(ヒ)  ∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}&
          ∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}  ネハ&I
   6ケ(フ)  ∃x(吾盾x)&∃y(吾矛y)→ 
          ∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}&
          ∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}  1ヒCP
従って、
(01)により、
(02)
~∃x{吾盾x&∃y(吾矛y&陥yx)},~∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}├
 ∃x(吾盾x)&∃y(吾矛y)→∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&陥yx)}&∃x{吾盾x&∃y(吾矛y&陥yx)}.
といふ「連式(Sequent)」は、「妥当(Valid)」である。
従って、
(02)により、
(03)
「日本語」で言ふと、
「あるxは私の盾であって、あるyが私の矛であって、yはxを陥すこと」が無く、「あるyは私の矛であって、あるxは私の盾であって、yはxを陥さないこと」が無い。が故に、
「あるxが私の盾であって、あるyが私の矛である」ならば「あるyは私の矛であって、あるxは私の盾であるが、yはxを陥さ、あるxは私の盾であって、あるyは私の矛であって、yはxを陥す」。
といふことになる。
従って、
(03)により、
(04)
「私の矛(y)は、私の盾(x)突き通すが、突き通さない。」
といふことになって、それ故、「矛盾する」。
然るに、
(05)
 ― 矛盾・韓非子 ―
楚人有鬻盾与矛者。誉之曰、吾盾之堅、莫能陥也。又誉其矛曰、矛之利、於物無不陥也。或曰、以子之矛、陥子之盾、何如。其人弗能応也=
楚人有[鬻〔盾与(矛)〕者]。誉(之)曰、吾盾之堅、莫(能陥)也。又誉(其矛)曰、矛之利、於(物)無〔不(陥)〕也。或曰、以(子之矛)、陥(子之盾)、何如。其人弗〔能(応)〕也⇒
楚人に[〔盾と(矛)とを〕鬻ぐ者]有り。(之を)誉めて曰く、吾が盾の堅きこと、(能く陥す)莫きなり。又た(其の矛を誉めて)曰く、吾が矛の利なること、(物に)於いて〔(陥さ)不る〕無きなり。或ひと曰く、(子の矛を)以て、(子の盾を)陥さば、何如ん。其の人〔(応ふる)能は〕ざるなり=
楚の国の人で盾と矛とを売る者がゐた。自分の盾を誉めて言った。 私の盾を突き通すことができるものはない。 又其の矛を誉めて言った。 私の矛の鋭いことには、どんな物でも突き通すことができないものはない。或るひとが言った。 あなたの矛で、あなたの盾を突いたらどうなるのか。 其の(盾と矛を売る)人は、答へることが、出来なかった。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
① 吾盾之堅、莫能陥也(吾が盾の堅きこと、能く陥す莫きなり)。
② 矛之利、於物無不陥也(吾が矛の利なること、物に於いて陥さ不る無きなり)。
といふ「命題」は、
① ~∃x{吾盾x&∃y(吾矛y& 陥yx)}
② ~∃y{吾矛y&∃x(吾盾x&~陥yx)}
といふ「命題」を、「含意」し、それ故、
③(陥yx&~陥yx)≡(yはxを突き通すが、突き通さない。)
といふ「矛盾」を生むことになる。
令和02年05月21日、毛利太。

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