(01)
夫子曰「少子識レ之。苛政猛二於虎一也。」
夫子曰く「少子之を識せ。苛政は虎よりも猛なり。」と、
孔子は(門人たちにむかって)言った。「おまえたち、このことよく覚えておきなさい。きびしい政治は、(人間を食い殺す)虎よりも恐ろしものなのだ。」
(赤塚忠・遠藤哲夫、漢文の基礎、1973年、52頁)
(02)
―「含意の定義(公式)」と「ド・モルガンの法則(公式)」を用ひずに、わざと「複雑な計算」をします。―
(ⅰ)
1 (1)~∀x∀y{(苛政x&虎y)→ 猛xy} A
1 (2)∃x~∀y{(苛政x&虎y)→ 猛xy} 1量化子の関係
1 (3)∃x∃y~{(苛政x&虎y)→ 猛xy} 2量化子の関係
4 (4) ∃y~{(苛政a&虎y)→ 猛ay} A
5 (5) ~{(苛政a&虎b)→ 猛ab} A
6 (6) ~(苛政a&虎b)∨ 猛ab A
7 (7) (苛政a&虎b)&~猛ab A
8 (8) ~(苛政a&虎b) A
7 (9) (苛政a&虎b) 7&E
78 (ア) ~(苛政a&虎b)&(苛政a&虎b) 89&I
8 (イ) ~{(苛政a&虎b)&~猛ab} 7アRAA
ウ (ウ) 猛ab A
7 (エ) ~猛ab 7&E
7 ウ (オ) 猛ab&~猛ab ウエ&I
ウ (カ) ~{(苛政a&虎b)&~猛ab} 7オRAA
6 (キ) ~{(苛政a&虎b)&~猛ab} 68イウカ∨E
ク (ク) (苛政a&虎b) A
ケ (ケ) ~猛ab A
クケ (コ) (苛政a&虎b)&~猛ab クケ&I
6 クケ (サ) ~{(苛政a&虎b)&~猛ab}&
{(苛政a&虎b)&~猛ab} キコ&I
6 ク (シ) ~~猛ab ケサRAA
6 ク (ス) 猛ab クRAA
6 (セ) (苛政a&虎b)→ 猛ab クスC(苛政a&虎b)
56 (ソ) ~{(苛政a&虎b)→ 猛ab}&
{(苛政a&虎b)→ 猛ab} 5セ&I
5 (タ) ~{~(苛政a&虎b)∨ 猛ab} 6ソRAA
チ (チ) ~{(苛政a&虎b)&~猛ab} A
ツ (ツ) ~(苛政a&虎b) A
ツ (テ) ~(苛政a&虎b)∨ 猛ab ツ∨I
5 ツ (ト) ~{(苛政a&虎b)∨ 猛ab}&
{(苛政a&虎b)∨ 猛ab} タテ&I
5 (ナ) ~~(苛政a&虎b) ツトRAA
5 (ニ) (苛政a&虎b) ナDN
ヌ(ヌ) 猛ab A
ヌ(ネ) ~(苛政a&虎b)∨ 猛ab ヌ∨I
5 ヌ(ノ) ~{(苛政a&虎b)∨ 猛ab}&
{(苛政a&虎b)∨ 猛ab} タネ&I
5 (ハ) ~猛ab ヌノRAA
5 (ヒ) (苛政a&虎b)&~猛ab ニハ&I
5 チ (ヘ) ~{(苛政a&虎b)&~猛ab}&
{(苛政a&虎b)&~猛ab} チヒ&I
5 (ホ) ~~{(苛政a&虎b)&~猛ab} チヘRAA
5 (マ) (苛政a&虎b)&~猛ab ホDN
5 (ミ) ∃y{(苛政a&虎y)&~猛ay} 5EI
4 (メ) ∃y{(苛政a&虎y)&~猛ay} 45ミEE
4 (モ) ∃x∃y{(苛政x&虎y)&~猛xy} メEI
1 (ヤ) ∃x∃y{(苛政x&虎y)&~猛xy} 14モEE
(03)
―「普通」に「計算」します。―
(ⅱ)
1 (1) ∃x∃y{(苛政x&虎y)&~猛xy} A
2 (2) ∃y{(苛政a&虎y)&~猛ay} A
3 (3) (苛政a&虎b)&~猛ab A
4(4) (苛政a&虎b)→ 猛ab A
3 (5) (苛政a&虎b) 3&I
34(6) 猛ab 45MPP
3 (7) ~猛ab 3&E
34(8) 猛ab&~猛ab 67&I
3 (9) ~{(苛政a&虎b)→ 猛ab} 48RAA
3 (ア) ∃y~{(苛政a&虎y)→ 猛ay} 9EI
2 (イ) ∃y~{(苛政a&虎y)→ 猛ay} 23アEE
2 (ウ)∃x∃y~{(苛政x&虎y)→ 猛xy} イEI
1 (エ)∃x∃y~{(苛政x&虎y)→ 猛xy} 12ウEE
1 (オ)∃x~∀y{(苛政x&虎y)→ 猛xy} エ量化子の関係
1 (カ)~∀x∀y{(苛政x&虎y)→ 猛xy} オ量化子の関係
従って、
(02)(03)により、
(04)
① ~∀x∀y{(苛政x&虎y)→ 猛xy}
② ∃x∃y{(苛政x&虎y)&~猛xy}
に於いて、すなはち、
① すべてのxとすべてのyについて{xが苛政であってyが虎であるならば、xはyよりも猛である。}といふことはない。
② あるxと あるyについて{xは苛政であってyは虎であって、 xはyよりも猛ではない。}
に於いて、
①=② である。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
① ~(苛政は虎よりも猛なり。)
② (ある苛政は、必ずしも、虎よりも猛ではない。)
に於いて、
①=② である。
(06)
―「計算(02)」を、「含意の定義」と「ド・モルガンの法則」を用ゐて行ふと、次のやうに「簡単」になります。―
(ⅰ)
1 (1)~∀x∀y{ (苛政x&虎y)→ 猛xy} A
1 (2)∃x~∀y{ (苛政x&虎y)→ 猛xy} 1量化子の関係
1 (3)∃x∃y~{ (苛政x&虎y)→ 猛xy} 2量化子の関係
4 (4) ∃y~{ (苛政a&虎y)→ 猛ay} A
5(5) ~{ (苛政a&虎b)→ 猛ab} A
5(6) ~{~(苛政a&虎b)∨ 猛ab} 5含意の定義
5(7) (苛政a&虎b)&~猛ab 6ド・モルガンの法則
5(8) ∃y{(苛政a&虎y)&~猛ay} 7EI
4 (9) ∃y{(苛政a&虎y)&~猛ay} 458EE
4 (ア) ∃x∃y{(苛政x&虎y)&~猛xy} 9EI
1 (イ) ∃x∃y{(苛政x&虎y)&~猛xy} 14アEE
(07)
(ⅰ)
1 (1)~∀x∀y{ (苛政x&虎y)→ 猛xy} A
1 (2)∃x~∀y{ (苛政x&虎y)→ 猛xy} 1量化子の関係
1 (3)∃x∃y~{ (苛政x&虎y)→ 猛xy} 2量化子の関係
4 (4) ∃y~{ (苛政a&虎y)→ 猛ay} A
5(5) ~{ (苛政a&虎b)→ 猛ab} A
5(6) ~{~(苛政a&虎b)∨ 猛ab} 5含意の定義
5(7) (苛政a&虎b)&~猛ab 6ド・モルガンの法則
5(8) ∃y{(苛政a&虎y)&~猛ay} 7EI
4 (9) ∃y{(苛政a&虎y)&~猛ay} 458EE
4 (ア) ∃x∃y{(苛政x&虎y)&~猛xy} 9EI
1 (イ) ∃x∃y{(苛政x&虎y)&~猛xy} 14アEE
といふ「計算」の、
5(5) ~{ (苛政a&虎b)→ 猛ab} A
5(6) ~{~(苛政a&虎b)∨ 猛ab} 5含意の定義
5(7) (苛政a&虎b)&~猛ab 6ド・モルガンの法則
の「部分」は、
5(5) ~{ (P&Q)→ R} A
5(6) ~{~(P&Q)∨ R} 5含意の定義
5(7) (P&Q)&~R 6ド・モルガンの法則
と「同じ」であるため、実質的には、「述語計算」ではなく、「命題計算」である。
従って、
(07)により、
(08)
「述語計算の基礎」にあるのは、「命題計算」であって、そのため、「述語論理」は「命題論理の拡張」である。
令和02年05月12日、毛利太。
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