(01)
借虎威(戦國策)
① 虎求(百獸)而食(之)得(狐)。
② 狐曰子無〔敢食(我)〕也。
③ 天帝使〔我長(百獸)〕。
④ 今子食(我)是逆(天帝命)也。
⑤ 子以(我)爲〔不(信)〕吾爲(子)先行。
⑥ 子隨(我後)觀。
⑦ 百獸之見(我)而敢不(走)乎。
(借虎威、戦國策)
従って、
(01)により、
(02)
① 虎(百獸)求而(之)食(狐)得。
② 狐曰子〔敢(我)食〕無也。
③ 天帝〔我(百獸)長〕使。
④ 今子(我)食是(天帝命)逆也。
⑤ 子(我)以〔(信)不〕爲吾(子)爲先行。
⑥ 子(我後)隨觀。
⑦ 百獸之(我)見而敢(走)不乎。
従って、
(02)により、
(03)
① 虎百獸を求めて之を食らひ狐を得たり。
② 狐曰く、子敢へて我を食らふこと無かれ。
③ 天帝、我をして百獸に長たら使む。
④ 今、子我を食らはば、是れ天帝の命に逆らふなり。
⑤ 子我を以て信なら不と爲さば、吾子の爲に先行せむ。
⑥ 子我が後に隨ひて觀よ。
⑦ 百獸之我を見て敢へて走ら不らんや、と。
然るに、
(04)
⑦ 敢不(走)乎⇒
⑦ 敢(走)不乎=
⑦ 敢へて(走ら)ざらんや=
⑦ 敢へて逃げないなどといふことが、あるだろうか。
は「反語」である。
cf.
【走】②《動》にげる。はや足でにげる。
(学研 緩和大辞典、1978年、1269頁)
従って、
(04)により、
(05)
「番号」を付け直すと、
① 敢不走乎(敢へて走らざらんや)。
② 不敢不走(敢へて走らずんばあらず)。
に於いて、
①=② である。
然るに、
(06)
① 敢不走乎(敢へて走らざらんや)。
ではなく、
① 敢不走(敢へて走らず)。
であるならば、「反語」ではない。
従って、
(05)(06)により、
(07)
① 敢不走(敢へて走らず)。
② 不敢不走(敢へて走らずんばあらず)。
に於いて、
① は、② の「否定」であって、
② は、① の「否定」である。
然るに、
(08)
①「逃げたくない」といふ「気持ち」。
②「逃げたい」 といふ「気持ち」。
といふ、「(アンビバレントな、)二つの気持ち」があって、
① の方が、②よりも、大きい。のであれば、
① 敢不走(敢へて走らず)。といふことなる。
従って、
(07)(08)により、
(09)
①「逃げたくない」といふ「気持ち」。
②「逃げたい」 といふ「気持ち」。
といふ、「(アンビバレントな、)二つの気持ち」があって、
② の方が、① よりも、大きい。のであれば、
② 不敢不走(敢へて走らずんばあらず)。といふことになる。
従って、
(07)(08)(09)により、
(10)
① 敢不走(敢へて走らず)。
② 不敢不走(敢へて走らずんばあらず)。
に於いて、「順番」に、
① 敢へて逃げない。
② 敢へて逃げる。
といふことになる。
然るに、
(11)
「不走(逃げない)」といふことは、
「止(とどまる)」といふことである。
従って、
(10)(11)により、
(12)
① 敢止(敢へて止まる)。
② 不敢止(敢へて止まらず)。
に於いて、「順番」に、
① 敢へて逃げない。
② 敢へて逃げる。
といふことになる。
従って、
(10)(11)(12)により、
(13)
「順番」を付け直すと、
① 敢不走(敢へて走らず)。
② 敢 止(敢へて止まる)。
③ 不敢不走(敢へて走らずんばあらず)。
④ 不敢 止(敢へて止まらず)。
に於いて、
①=② であって、
③=④ であって、
① と ③ は「矛盾」し、
② と ④ は「矛盾」する。
従って、
(13)により、
(14)
① 敢視(敢へて視る)。
② 不敢視(敢へて視ず)。
に於いて、
① と ② は「矛盾」する。
従って、
(09)(14)により、
(15)
①「視たい」 といふ「気持ち」。
②「視たくない」といふ「気持ち」。
といふ、「(アンビバレントな、)二つの気持ち」があって、
② の方が、① よりも、大きい。のであれば、
② 不敢視(敢へて視ず)。といふことになる。
従って、
(15)により、
(16)
② 不敢視(敢へて視ず)。といふ「漢文(訓読)」は、たとへば、
② 視たくとも(勇気が無くて)視れない。
といふ「意味」になる。
然るに、
(17)
① 敢視(敢へて視る)。
② 不敢視(敢へて視ず)。
③ 敢不視(敢へて視ず)。
であるため、「訓読」としては、
②=③ である。
然るに、
(18)
① 敢視。
② 不敢視。
③ 敢不視。
の於いて、「漢文の語順」としては、
① の「否定」は、飽くまでも、
② であって、
③ ではない。
然るに、
(19)
(ⅰ)① の方が、② よりも、大きい。
(ⅱ)② の方が、① よりも、大きい。
に於いて、
(ⅰ)は、(ⅱ)の「否定」であり、
(ⅱ)は、(ⅰ)の「否定」である。
従って、
(15)~(19)により、
(20)
① 敢視(敢へて視る)。
② 不敢視(敢へて視ず)。
に於いて、
① に対する、
② の場合は、
② 視たいのではあるが(それだけの勇気が無くて)視れない。
といふ「意味」になる。
然るに、
(21)
蘇秦といふ者は、鬼谷先生を師とす。
初め出游し、困しみて帰る。
妻は機を下らず、嫂は為に炊がず。
是に至り、従約の長となり、六国に并せ相たり。
行きて洛陽を過ぎる。車騎輜重、王者に擬す。
昆弟妻嫂、目を側めて敢て視ず、俯伏して侍して食を取る。
(三省堂、明解古典シリーズ18、1973年)
従って、
(20)(21)により、
(22)
② 昆弟妻嫂、目を側めて敢へて視ず、俯伏して侍して食を取る。
に於ける、
② 敢へて視ず。
の場合は、
② 不敢視(敢へて視ず)。
でなければ、ならない。
然るに、
(23)
② 不二敢視一。
(三省堂、明解古典シリーズ18、1973年)
従って、
(22)(23)により、
(24)
果たして、
② 昆弟妻嫂、目を側めて敢へて視ず、俯伏して侍して食を取る。
に於ける、
② 敢へて視ず。
の場合は、
② 不敢視(敢へて視ず)。
である。
従って、
(20)~(24)により、
(25)
② 不二敢視一。
といふ「漢文」は、
② 蘇秦を視たいのではあるが(兄弟・妻・兄嫁には、それだけの勇気が無くて、まともに、蘇秦を)視ることが出来ない。
といふ「意味」になる。
令和02年05月03日、毛利太。
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